スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

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“椿姫彩菜のゲームの話”第8回 セガの名越稔洋氏に聞く『龍が如く』シリーズ最新作

2014-08-04 13:05:00

椿姫 前回の記事で次回作を予定していると伺ったわけですが、それはどんなものになるのでしょうか?
名越 プレイステーション4に一番乗りした理由にもつながる部分だけど、せっかくだったらハイエンドのよさをゲームに置き換えなきゃ意味がないと思うんですよ。ジャンルで言えば『龍が如く』アクションアドベンチャーだから、アクションの部分、アドベンチャーの部分それぞれのよさを新ハードでどうやって高めていくか、ということはボンヤリと考えていて、コアメンバーの中で「こうしてみたらどうだろう?」という実験をしてはいるといった感じですね。

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椿姫 いまの段階で相当な技術が詰め込まれていると思うんですが、これ以上の技術革新ってあるんでしょうか?
名越 たぶん……あるんですよ。
椿姫 あるんですか!
名越 たとえば他社さんの話になるけど、『メタルギア』シリーズの新作の映像を見て「スゴイな」って感じたりもするけど、きっとあれもとっかかりでしかないと思う。あの規模で基礎研究をやっていたら、実際はもっとスゴイものができあがってくるんじゃないか? って思いますね。俺たちも、いつとはハッキリ言えないですが、ある時期から革新的にグラフィックがよくなるはずです。
椿姫 これ以上キレイになるんですか!?
名越 うん。おそらく『龍が如く 維新!』のグラフィックが見劣りするくらいのものにはなるんじゃないかな。そして、グラフィックだけではなく、遊びかたも変えてしまうくらいの変化が起こるはず。
椿姫 えーーっ!?
名越 でも、たぶんそうなるんですよ。
椿姫 技術革新ってスゴイんですね……。
名越 『龍が如く 維新!』は、プレイステーション3版もあったので、共有しなきゃいけないものが……ないとは言えなかった。でも、今後はそれがないわけだからね。
椿姫 確かに。あのー、ゲームを作る立場としては、ハイエンドな映像に対する挑戦はしたいと思うものなんですか?
名越 『龍が如く』シリーズを長年支えてきたメンバーって、『龍が如く』のスタッフに選ばれた時点で業界のキャリアがあった人間たちが多いから、業界歴で言えば15年、20年の人間が多いんですよ。そして、それだけの経歴を持っているってことは、セガがハードメーカーであった時代からの人間だということ。そんな彼らは、やっぱり驚きや提案をしていくこと、チャレンジを仕事のモチベーションとしている人も多い。言うなれば、“できること”に対しては、やらきゃ気が済まない質の人間ばかりなんですよね(笑)。
椿姫 なんだか職人肌! って感じですね。
名越 そうかもね(笑)。ただ『龍が如く』シリーズって、毎年リリースされるタイトルでしょ? だから、いろいろな部分でチャレンジはしているんだけど、実際に見える進化としては、地味に見えてしまったりもする。ほかの作品と同じような……たとえば3年とかのサイクルで『龍が如く』を見てもらえれば、革新的な進化を遂げていたりするんだけど……そうやって見てもらわないとわからないんだよね(苦笑)。

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椿姫 あー! 確かに前作と比べちゃいがちですね。
名越 タイトルにコアユーザーがいるということは、ライバルは前作になるんですよ。ありがたい反面、「前のほうがよかった」なんて言われることもあるので、それはプレッシャーですね。まあ実際は、変えても変えなくても文句を言われたりするんだけど(笑)。
椿姫 ありそうですね(笑)。でも素人考えだと、新作イコール必ずしも変わらなきゃいけないってことじゃないような気がするんですが……。
名越 いや。新製品というものは絶対に何かしら変えなきゃいけないと思う。そして、何かを変えて「よくなった」と言われることがゴールなんですよ。もちろん、要らなかったものを捨てたりはするんだけど……理想を言えば、新要素が入っていれば入っているだけいいと思う。その新要素の中で、「よくぞコレを入れてくれた」って言われるものを新製品にどれくらい入れられたかが重要なんだと思います。当然、その続編ではさらに要素の取捨選択をしていく。世の中の続いているものって、変わらないように見えても、つねに何かしらのチャレンジをしているんじゃないかな? 
椿姫 確かに言われて見ればそうかもしれません。
名越 長年仕事をしてきて、いろいろなプロジェクトを見てきた経験から言うと、考えかたが保守的なプロジェクトは不思議に早く終わりが来るんですよ。攻めたものはその瞬間瞬間に失敗はあれど、案外その後がよかったりする。そういうことを肌で学んできたので、攻めの姿勢は崩せないですね。もちろんタイトルごとに守るべきもの、外しちゃいけないポイントはあるんだけど(笑)。
椿姫 そういう意味ではチャレンジでもあった『龍が如く 維新!』の無料アプリですが、今後も無料なものって増えていくと思われますか?

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名越 少なくともゲーム業界には、間違いなく“無料で遊べる”という流れは来ていると思いますよ。それは、たぶん今後の家庭用ゲームに影響してくるし、もっと言えば、エンタテインメントと交わるスタイルが変化してしまったんだと思う。
椿姫 具体的に言うと、どういう部分でしょう?
名越 たとえば……外でスマートフォンを使って音楽を聴くときも、家で音楽を聴くときも同じイヤホンを使っているでしょ? でも、俺たちからすれば「もっと家では家らしい環境で聴けば」なんて思えて残念な気持ちになったりもするわけなんです。でも、それはある意味仕方がないことだとも感じている。「とは言え、いまさらコンポはないよな」って。そうやって俺たちが「残念だ」と思っていることって、じつは懐古でしかない。若い子からしてみたら、悲しいことでも何でもないわけで。
椿姫 ああ、確かにそうかもしれませんね。
名越 栄養という要素が入るから厳密には違うんだけど、食事に例えるともっとわかりやすいかもしれない。昔は食事って言ったら、家で食べるか、外食をするかしかなかったと思うんだよね。
椿姫 ふむふむ。
名越 で、しばらくすると、もっと手軽な外食としてファーストフードなんかが生まれて。さらにインスタント食品とか、栄養も取れちゃうお菓子なんてものも出てくる。いまの時代に据え置き機でゲームをするっていうのは、たくさんの選択肢があるなかで、高いお金と時間をかけてレストランに来てもらうようなもの。
椿姫 なるほど、そうかもしれません。
名越 じゃあ、スマートフォンのゲームが手軽な栄養も取れるお菓子だと仮定して、家でゴロゴロしながらお菓子ばっかり食べているのが不幸せかと言えば……。
椿姫 それはそれで幸せかもしれないですね(笑)。
名越 でしょ? で、そこでレストランの親父が「お菓子なんて食い物じゃねえ!」って騒ぐのはおかしくないか? っていう。
椿姫 あはははは。確かに!

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名越 それなら、レストランはレストランの意味を大切にすべき。レストランは100円で買えるコーラを何倍もの金額で提供する代わりに、快適な空間を演出するとか、それだけのお金を払える価値を作っているわけ。逆に、その価値があるとわかっているからこそ「たまにはレストランに行こうよ」っていうことになるわけだし。
椿姫 そうですね。
名越 そして、ゲームというものにこれだけたくさんの選択肢ができた以上、昔の“家で食べるかレストランに行くか”みたいな状況にはもう戻らないと思う。何なら、まだまだ選択肢は増えると思うんですよ。
椿姫 なるほどー! ものすごく納得しちゃいました。

次回は個人的に気になる疑問を
片っ端から名越さんにぶつけてみます!