スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

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“椿姫彩菜のゲームの話”第7回 セガの名越稔洋氏が語る『龍が如く 維新!』開発秘話

2014-07-29 00:00:00

龍が如く/01

椿姫彩菜さん(左)、名越稔洋氏(右)。

椿姫 今回は、『龍が如く3』でお世話になった名越さんをゲストにお迎えしました! まずは名越さんの近況から伺ってもいいですか?
名越 『龍が如く 維新!』が終わってしばらく経ちましたが、両ハードを併せて想定通りの数字が出せたのでひと安心しているところですね。じつは『龍が如く 維新!』はふたつのハードでのリリースだったので数字的な面での予測が難しかったんです。売上データを見ると、「シリーズ作品を買ってくださるプレイヤーの方と、いまのマーケットが望んでいるものって若干乖離が出てきているのかな?」という印象を持ったし、つぎに我々が何をしなければならないかというものを考えさせられました。ちょっと堅苦しい話ではありますけど、ここ最近はそんな時間を過ごしていました。
椿姫 プレイステーション4で『龍が如く 維新!』が思ったよりも売れたというのは、正直うれしい誤算だったんですか?
名越 せっかくプレイステーション4に対応したので、素直にうれしかったですよ。まあ、ロンチタイトル(プレイステーション4と同時発売のソフト)だったからこそ、こういう結果になったのかもしれないし。
椿姫 ロンチタイトルとして『龍が如く』シリーズがリリースされるということは誇らしいことだったんじゃないですか?
名越 そうですね。ただ、『龍が如く 維新!』は少なくともハードの企画段階ではロンチタイトルとして挙げられていなかったんですよ(笑)。
椿姫 そうだったんですか!?
名越 そうそう(苦笑)。だから、後にロンチタイトルにしたいというオファーが来たときはけっこうバタバタしたけど……俺は「ぜひ対応したい」って思う性格だから。
椿姫 で、間に合わせた、と(笑)。ところで個人的な感想なんですが、『龍が如く 維新!』って、これまでのシリーズ作品より挑戦的でしたよね? プレイステーションVitaと連動したこともそうだし、難度もこれまでより高めな気がしました。私はやり込めるからうれしかったんですけど。

龍が如く/アプリ

名越 ただクリアーするだけなら、そこまで過去のシリーズと難度は変わってはいないと思う。ただ、プレイステーションVitaとのクロスプレイをやり込み要素として用意したからには、やっぱり手応えがないと物足りないわけで……。そういう意味では、すべてを遊ぼうとすると、これまでのシリーズ作よりもややコアな方向に針が振れているタイトルなのかもしれないね。
椿姫 難度的なものは個人差があると思うんですが、プレイステーションVitaで『龍が如く 維新!』の発売前に無料アプリを配信するという流れは本当にうれしかったし、とても楽しめました! 今後も同じようなスタイルの作品が出ることもあるんでしょうか?
名越 今後、“無料で遊べる部分がある”というものが増えていくのは避けられないことだと思う。無料っていうのはある種の宣伝行為なんですよ。宣伝に使うコストを、たとえばテレビの広告に支払うのか、あるいは無料の部分を作ってクチコミで広げていくのかっていう差。質問の答えとしては、今後無料を宣伝として使うもののほうが増えていく気がしますね。
椿姫 宣伝とはいえ、『龍が如く5』に“『バーチャファイター2』をそのまま入れちゃう”とかはやりすぎなんじゃないですか?(笑)

龍が如く/02

名越 そこは難しいところなんだけど(苦笑)。たとえば『龍が如く』に『バーチャファイター2』というセガの資産がそのまま入っているとして……じゃあ『バーチャファイター2』分のお金をもらったほうがいいのか? と言えば、俺はもらう意義を感じられない。
椿姫 ほほう!
名越 「資産を再利用して、どうやってお金をもらおう?」って考えるよりは、「どういうタイミングでプレゼントしてサービスしたほうがいいだろう?」って考えるほうがずっと効果的だと思う。無料で何かをあげるという行為はそれ以上でも以下でもないわけで、それなら「これが無料なの!?」っていうサプライズを与えたいって考えます。ま、会社とか状況によっても違うだろうけど、そういう考えかたのクリエーターもいるよね? ってことで(笑)
椿姫 なるほど-! でも、遊ぶ側としてはよろこばしいことですよ。
名越 あんまりケチくさいことを言っても仕方がないからね。タイアップにしても、「『龍が如く』に出すからお金を下さい」っていまだったら言えるかもしれない。だけど、「お互い宣伝になるからやりましょう、お金とかなしで」って言うから、100社とかふつうは考えられないような企業さんに協力していただけるんですよ。
椿姫 えー! あのタイアップって、ぜんぶタダなんですか?
名越 すべてにお金が動かないわけじゃないですよ? たとえばタイアップ商品を企画していただいたりすることは、その企業さんの時間や労力を割いていただくわけで、無料とは言いがたいものだし。
椿姫 とは言っても、直接的なお金のやりとりはないですもんね?
名越 まあ「いくら払ってここに出します」とかはないですね。「タイアップもビジネスにしたほうがいい」っていう人もいますけど。
椿姫 ですよね(笑)。でも、そうしないところが名越さんらしい! おっと、少し脱線したので、また『龍が如く 維新!』の話に戻しますね。この作品を作っているときに苦労したことはありますか?
名越 『龍が如く 維新!』はプロデューサーの歴史好きの横山のカラーが強いタイトルなんです。俺自身は歴史オンチだから、「○○っていう人がいたよね?」って言われても……わからなかったりする(笑)。俺がこだわっていたのは、あくまでも“物語としておもしろいかどうか”っていう部分だけ。
椿姫 ほうほう。
名越 で、横山としてはリアリティーを出したい部分があるわけなんですよ。たとえば、「ある有名なエピソードはあくまで俗説だから省きたい」とかね。でも、俺からすればそれを省くとおかしく見えちゃうワケ。だから、俺の役割としては、「リアルさはこだわるポイントじゃないよ」って横山に言って、歴史好きとそうでもない人との両側の目線から見て納得できる物語にしていく係。
椿姫 なるほどー。じゃあ、つぎはアクションに関する質問です。名越さんが『龍が如く 維新!』でいちばん好きな型は何ですか?
名越 乱舞ですね。あれで遊べることが『龍が如く 維新!』最大のポイントだと思うし。
椿姫 確かに特徴的ですよね。

龍が如く/03

名越 ぶっちゃけ、ほかの型はたぶん今後、どうにかして『龍が如く』シリーズに盛り込めるようなものだったと思うんです。でも、乱舞だけは操作性はもちろん、銃と剣を同時に使うっていう設定自体も異質だったから(笑)。ただ、乱舞自体は“『龍が如く』的な何か”という範疇に入っている要素だと思うし、乱舞がなければ『龍が如く 維新!』として物足りなくなるだろうと思ったので、入れてよかったと思いますね。
椿姫 なるほど。続いては人物について伺いますね。実際に作品ができあがって、予想よりうまくできたと思えるキャラクターは誰ですか?
名越 うーん……。誰、と言われると難しいな(笑)。
椿姫 個人的には井上源三郎がいい味を出していたと思うんです。最初は何とも思っていなかったし……オジサンなんですけど(笑)。私は遊ぶ側としてはそう感じたんですが、作る側の立場だとて少し違うのかな? って思って。
名越 じつは『龍が如く』のキャラクターって、台本の状態だと完成形がまだわからないんですよ。そこからキャスティングをして、声を収録して、CGを作って……初めて見えてくるものなんです。つまり、最初にデキを予想しづらいから、予想よりっていうのは難しい質問かな(笑)。
椿姫 あー。言われてみればそうかもしれないですね。では、今週最後の質問です。グラフィックはもちろん、舞台、ゲームの要素などいろいろな挑戦をしてきた『龍が如く』シリーズなんですが、今後はどうなるんだろう? って思うんですけれど。今後について語れることはありますか?
名越 次回作のための「男の出演者オーディション」と「セクシー女優人気投票」をスタートしました。ですから、つぎがあるかないかで言えば、「ある」ですね。
椿姫 おおおおー! これは詳しく伺うしかないですね!

次回は『龍が如く』シリーズの
最新作についての話題と
ゲーム業界の今後についてお届けします!