『ギアーズ オブ ウォー 3』の秘密に迫る、キーパーソンに聞く【スタジオツアー3】
ゲーム Xbox 360●クリフ・ブレジンスキ氏をはじめとする、開発陣を直撃
■『ギアーズ オブ ウォー 3』スタジオツアー
※『ギアーズ オブ ウォー 3』の真髄に迫る、“Horde”いよいよ解禁!(第1回)
※『ギアーズ オブ ウォー 3』の進化に触れる、“Horde”インプレッション(第2回)
Xbox 360用ソフト『ギアーズ オブ ウォー3』 のスタジオツアーの締めくくりとして、ここでは、開発元であるエピック・ゲームズの関係者へのインタビューをお届けしよう。
■クリフ・ブレジンスキ氏「よりスケールが大きくなった」
エピック・ゲームズ |
言わずと知れた、『ギアーズ オブ ウォー』シリーズの顔とも言うべき存在。デザイン・ディレクターとして、チームを取りまとめる。
――“Horde”をプレイして、以前よりもいろいろとパワーアップしているのがわかりましたが、『3』を作るにあたっては、“Horde”の強化は相当意識しましたか?
クリフ “Horde”は、ハイリスクハイリターンで考えました。大型クリーチャーを数多く登場させて、バラエティーを持たせるようにしたんです。それだけ大きな敵と戦うには、さらに強力な銃や装備が必要になるということで、味方もパワーアップしていきました。そういった意味では、よりスケールが大きくなっています。
――北米ではこの春マルチプレイヤーβテストが行われましたが、ユーザーからの反応はどうですか?
クリフ βテストはとても好評でしたよ。とくに、強力な武器はユーザーからの評価も高かったです。プレイヤーが積極的に戦うのは、システムがうまく回っているということなので、ゲームに対する自信を深めました。今後は、数字を検討して細かいバランス調整をしていくつもりです。
――βテストの結果を受けて、製品版の調整を行う予定ですか?
クリフ 武器を削除するといったような、大きな変更を加えるつもりはありません。現状でもすでによいバランスになっていますが。製品版のリリースまでに、さらに細かいところの調整を行う予定です。
――ストーリーモードについては具体的な情報がまだありませんが……。
クリフ E3ではストーリーがちょっとだけわかるようなトレーラーを公開する予定でいますが、まだ詳しいことは明らかにしていません。あまり多く話していないのは、できるだけサプライズにしておきたいからです。一方で、『ギアーズ オブ ウォー 3』には、まだまだお見せしたいところがたくさんあるということでもあります。『ギアーズ オブ ウォー 3』は、3〜4本のゲームをひとつにまとめたようなものなので、ストーリーモード以外にもお見せしたいところはたくさんあるんです。まあ、ストーリーに関しては、ある程度秘密にしておいてもいいかな……と思っています(笑)。『ギアーズ オブ ウォー 3』に関しては、ちょっとデートする……という軽い気持ちではなくて、本気で結婚するつもりで遊んでほしいんです。
――そういえば、オンラインで気になったことがあります。これまで対戦では1回倒されるとつぎの試合まで参加できませんでした。それが今回は、チームデスマッチだとリスポーン(再生)できるようになっています。これは、いまのFPSやTPSの流れに沿ったものですか?
クリフ なぜ、チームデスマッチでリスポーンできるようにしたか、ということはそんなに大きな変化ではないと思っています。『アンリアルトーナメント』でもいろいろな形でやってきましたし。より大きな要因としては、いまの世の中の現状として、かつてないくらい人の注意を惹くものがたくさんあるということです。つねにパソコンや携帯電話などにつながっているので、3〜4分じっと待たなくてはいけないゲームモードを作ると、プレイヤーがゲームをやめてほかのことに意識を飛ばしてしまうリスクが高くなるんです。そういった意味では、リスポーンして戻れるほうがいいんですね。もちろん、倒されたあとで、そのまま状況を見ているという選択もできます。ちなみに、私の場合は15秒が限界です。それ以上待たせられると、すぐにTwitterをチェックしてしまいます(笑)。
――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
クリフ 東日本大震災による地震と津波の恐ろしい光景を見てとても心が痛みました。自分は子供のころから日本のカルチャーに囲まれて育っています。『Gears』ファンの皆さんには、私たちといっしょにゲームを楽しんでほしいです。震災の影響を受けた方々が少しでも早く復興されることをお祈りしています。
■リー・ペリー氏「ゲームプレイの多様性を心がけた」
エピック・ゲームズ |
『ギアーズ オブ ウォー 3』では、ゲームデザインをふたつに分けると、クリフがキャラクターやストーリー、設定など全体のゲームデザインを担当するのに対して、ペリー氏は武器の機能やどんなクリーチャーを加えるかなどの部分にフォーカスしているという。
――『ギアーズ オブ ウォー 3』の武器とクリーチャーでこだわったのはどのようなところですか?
ペリー 『1』と『2』は短距離用の武器が中心で、長距離の武器はあまり効果的ではありませんでした。このギャップを埋めるために、『3』では5つの主要な武器で、超短距離から長距離まで、それぞれ特定の距離で効果的に使えるようにしています。
一方、クリーチャーでは、今回“Horde 2.0”があまりにおもしろいので、それに負けないような印象に残るクリーチャーを入れたいと思っていました。たとえば、大型ムカデ。ただ印象に残るだけではなく、尻尾を攻撃することでムカデが倒せる……といった要素を加えることで、ゲームプレイにも多様性が出るようにしています。実際のところ、『ギアーズ オブ ウォー』シリーズのカバーシステムは、クリーチャー作りにとっても、極めて重要なポイントだと思います。プレイヤーがカバーに入るためには、クリーチャーが何かを撃ってこないといけない。つまり、爪を立てて追いかけてくるクリーチャーでは、プレイヤーはカバーに入らないということです。プレイヤーがカバーに入る必要のあるクリーチャーを作るのはチャレンジですね。
――どのクリーチャーが気に入っていますか?
ペリー 大型ムカデは気に入っています。出てくるとぞっとしますよ(笑)。それとコープサー。コープサーは前作でも出てきたのですが、とても大きかったんですね。『3』では、小さくしてビルの中でも入れるようになっていますよ。
――お気に入りの武器はありますか?
ペリー シルバーバック(人型のパワーアーマー)の出来には満足しています。じつはシルバーバックに関しては、『1』でも入れたかったのですが、時間が足りずに断念したという経緯があるんです。当初は、ファクトリーでレッチが湧いてくるところで登場させようと考えていました。パワーアーマーを身にまとったプレイヤーが、ジャンプしてくるレッチを倒す……という設定だったのですが、アーマーを装備していたのではちっとも怖くない。もっと恐怖感を出すようにしようということで、中止になりました。
――『3』からの新武器、レトロランサーに対するユーザーの反響はいかがですか?
ペリー 良好ですよ。よくオンラインでプレイする人はショットガンを使うことが非常に多いのですが、それに対抗してバランスを取るために導入したのがレトロランサーです。ショットガンがあまり好きでない人にとっては、使える武器ができたので、人気があります。オリジナルのショットガンを使いこなしていた方のあいだでは、賛否両論がありますが、おおむねレトロランサーのアイデアは受け入れてもらっているようです。ただ、レトロランサーで刺そうとすると、だいたい撃たれるみたいですね(笑)。
――『2』から『3』に移行するにあたって、デザイン面で重要だったことは?
ペリー 新しいユーザーを惹きつけること。『Gears』シリーズは新しいプレイヤーには、かなり怖くて入りにくい一面があるようなので、すんなりとゲームに入れるようにしています。そして、すんなりと新しいゲームプレイになじめるように心がけています。
――シリーズを重ねるごとにグラフィックが進化していますが、これは技術の進化によるもの?
ペリー 基盤となるゲームエンジンである“アンリアルエンジン”の進化もありますが、スタッフの技量の進歩も大きいです。より美麗に表現するためにコンテンツを最適化できました。ちなみに『3』では、前作までに比べて明るいシーンが多くなっています。ファンの方の反応を見ると、マップが明るいほど人気が高い傾向があるようです。とくにマルチプレイでは、暗いマップで遊ぶのはあまり好きではないようです(笑)。明るいほうが敵もよく見えるし、チームメイトの動きも見やすいみたいですね。
――最後に、日本のゲームファンにメッセージをお願いします。
ペリー 『ギアーズ オブ ウォー』シリーズをプレイしたことのない人は、まずは一度遊んでみてください。初めてでもプレイしやすいように、意図して作ってありますよ。
■クリス・ペルナ氏「軽いタッチのSFにはしたくなかった」
最後にお話を聞いたのは、クリス・ペルナ氏。エピック・ゲームズが手がける全ゲームのビジュアルクオリティーをコントロールしているという重鎮だ。『1』ではリードデザイナーを担当し、『2』と『3』では現職とのこと。海外で発表された限定版『ギアーズ オブ ウォー 3 エピックエディション』のマーカス・フェニックスのフィギュア(→こちら)を監修した方でもある。
――『ギアーズ オブ ウォー』シリーズのアートディレクションのテーマは何になりますか?
ベルナ “破壊された美しさ”です。端的に言えば、美しいが破壊されたヨーロッパ的建造物を背景にした、ずっしりと重い感じの世界観です。キャラの装備も重くずっしりしており、カバーに入ったときの武器の感じも重い。軽いタッチのSFにはしたくなかったんです。
――『3』でとくに表現したかった方向性を教えてください?
ペルナ ビデオゲームはライティングがすべてです。ボリューム感のあるグラフィックを構築するために、本作ではテコ入れをしました。『1』は全体的にモノトーンでダークなタッチ。『2』ではそれに色を加えています。『3』では、すべてのライティングシステムを作り直して、光の反射によって生き生きとした環境が生まれるようにしています。光と影によって、さらにカラフルになっていますよ。
――それは、やはりアンリアルエンジンによる効果が大きい?
ペルナ もちろん。アンリアルエンジンによって、デザイナーは自分の持つビジョンをしっかりとグラフィックに落としこむことができます。同時にそれは、私たちがアンリアルエンジンを洗練させてきた結果でもあるわけです。
――最後に、日本のゲームファンにメッセージをお願いします。
ペルナ 何よりもゲーム経験を楽しんでほしいです。ゲームファンは、ひとつの世界に没頭してプレイするのが何よりの魅力だと思いますが、本作はそんな楽しさを叶えてくれる1作です。ゲームの背景にある世界観を感じ取ってもらい、私たちがゲーム作りを楽しんだのと同じくらい、『ギアーズ オブ ウォー 3』を好きになってもらえたら、本当にうれしいです。
●『ギアーズ オブ ウォー』シリーズの開発の最深部に迫る!
スタジオツアーの最後には、エピック・ゲームズのオフィスを案内してもらった。ガイドを務めてくれたのは、マーケティング部門の重役、ケンドル・ボイド氏。ここでは、写真を交えながら、オフィスの模様を紹介していこう。『ギアーズ オブ ウォー』シリーズの開発の最深部に迫る!
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