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『Deus Ex(デウスエクス)』を語り尽くしてもらったインタビュー完全版をアップ

ゲーム プレイステーション3 Xbox 360
スクウェア・エニックスの新作『Deus Ex(デウスエクス)』の開発チームに行ったインタビューの完全版をお届けする。

 スクウェア・エニックスのプレイステーション3&Xbox 360用ソフト『Deus Ex(デウスエクス)』の、週刊ファミ通本誌10月28日号に掲載した、開発チームへのロングインタビュー完全版をお届けする。先日ご紹介したデモプレイに引き続き、Eidosモントリオールスタジオでチーフプロデューサーを務めるデイヴィッド・アンフォッシー氏とジャン・フランソワ・デュガ氏、アートディレクターのジョナサン・ジャック・ベレテット氏に話を聞いた。FPS(一人称視点シューティング)とアクションアドベンチャー、パズル、RPGと、各要素が絶妙に組み合わさった本作の世界に興味を持っていただければ幸いだ。

●バックグラウンド編

a

――まずは本作の背景からお伺いします。本作ではサイバネティックな人体改造が可能になっていますね。
デュガ オーグメンテーションと呼ばれる人体拡張技術を巡って、積極的にその技術の恩恵を享受することができる層と、経済的、信条的な理由などからその恩恵を受けることができない層の間にかなり不公平な関係が生まれています。現時点ではこの二者の間に目に見える形での争いはおきていませんが、じょじょに緊張が高まっており、この先もしかしたら危機的な状況が生まれるかもしれない、危機感が高まっているという状況です。

――時代としてはPCで2000年に発売された『Deus Ex』から前の時代になっていますね。
デュガ いくつか理由があるのですが、今作はブランドとしての名前は継承していますが、新しいIP、新しいシリーズとして見て頂きたいと思っています。日本だけでなくワールドワイドでブランドの再立ち上げとなる作品を目指しています。そのためには前作に縛られない時代に設定する必要がありました。今回はオーグメンテーションというものを中央に置いて、ビジュアル的にもまったく新しい、独特の世界を築いていきたいと思っています。

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――金と黒を基調にしたビジュアルが印象的ですが、どういう狙いが込められているのですか?
ベレテット 現実のリアルな世界をそのまま写すようなもの、現実世界のまねごとをした写実的な世界(フォト・リアリズム)にはしたくありませんでした。例えばキャラクターの顔は写真のようであっても、背景が同じようなレベルに至っていないために、その世界に溶け込んでいないような印象を受けることもあります。我々はそういったものではなく、この世界全てに一体感のあるビジュアルを目指しました。小さな物から大きなものまで全てがこのデウスエクスの世界の一部として、上手く溶け合い違和感のないものになっています。実はこうした試みはフォトリアルを目指す以上にコストがかかるものなのですが、プロデューサーであるデイビッドはじめ、チームがサポートしてくれたおかげで、とても上手くいったと思っています。

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――トレイラームービーでは主人公アダムがイカロスのように描かれていましたね。
デュガ 神話をそのままストーリーに活かしているわけではありませんが、トランスヒューマニズム(人体の変様)という点で共通しています。オーグメンテーションによって人類は新たなステージへと飛び立ちましたが、人体改造の行きつく先は未知の領域であり、個人レベルだけでなく人類の未来を考えた時には危険や警告が存在するという面で共通点があります。また、ちょっとした設定やデザインにもモチーフとしても取り入れています。例えば、アダムの勤める巨大バイオテクノロジー企業は「サリフ・インダストリー」と言うのですが、このサリフというのはセラフィムという神話上の登場人物の名前からきており、サリフ・インダストリーのロゴはイカロスを彷彿させる羽の形になっています。また、アダムに対抗する組織のロゴは雄牛をモチーフとしたロゴになっています。これは神話の中でイカロスが迷宮の塔に幽閉される原因ともなったミノタウロスに関連しています。

E

――インテリアなどの小物をすごい沢山作ったそうですね。
ベレテット システム的に組み込むことは勿論、単純な物量としても大変でした。コンセプトアートをデザインするだけでもかなりの数になりますし、一体感のあるスタイルでクオリティを維持しなければならないので、大変なエネルギーを必要としました。たとえば、沢山のオフィスが登場しますが、そのオフィスごとに違ったテイストのテーブルやソファー、机や椅子を生み出さなければなりません。IKEAひとつ分くらいの家具を作ったかもしれませんね(笑)。個人的にはメカデザインが好きなので、研究所にある機器やマシンなどを気に入っています。柔らかい線ではなく、きちっと正確な線で描かれた、非常にSF的でありながら、実在しそうなデザインをチームの人間が苦労して作り上げてくれました。

――サイバーパンク作品では個人の選択が人類や世界に影響を与えていくという構造を持っていることが多いですね。本作でプレイヤーの行動は世界にどう影響を与えていくのでしょうか?
アンフォッシー 物語はプレイヤーの選択によって変化が生じます。影響は大きなものから小さなものまで様々です。たとえばデモの中で登場した警官ですが、会話の中でアダムに便宜を図ったら首になるというエピソードがあったかと思います。プレイヤーの選択次第ではゲーム本来の目的とは全く関係のない所で、彼は仕事を失って一般市民の一人として町中にいるかもしれません。こうした細かなものも含め、プレイヤーの判断が様々なものに影響します。今のは小さな例ですが、人間には様々な欲求があり、そこには選択が生まれます。「自分はこうしたい!しかし他人に迷惑がかかる。それでも自分の欲求にしたがうか?」など。こうした選択の結果が他者にどのような影響を及ぼすのかといったところも我々は描きたいし、プレイヤーに問いかけたいと考えています。

I

▲彼の運命もプレイヤーの手にかかっている?

●ゲームプレイ編

――今回デモで3通りのクリアー方法を見せてもらいました。ソーシャルで警官を説得して進入したほうが楽だし、アイテムなどを入手できていましたが、例えばコンバット、つまり戦って攻略するメリットなどはあるのですか?
デュガ 先ほどは、同じ目的に対して3つのパターンのクリアー方法をお見せしましたが、通常はどの選択肢を選び、そこにどのような結末がまっているのかわかりませんし、メリットもその時々でさまざまで、クリアーすることで初めてわかるわけです。戦わなければいけないボス戦がいくつかありますが、それ以外ではどのミッションでもコンバットとステルスのどちらを選んでもクリアーできます。ミッションによってはソーシャルやハッキングがサポートできるといった感じですね。

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――選んだ手段によって報酬は違いますか?
デュガ 目的達成の手段が変われば、クリアー後の経験値が変化します。コンバットで目的を達成すると、比較的低い経験値しか手に入りませんが、ステルスは難度が高いため、得られる経験値は多めに設定しています。また、プレイヤーの行動次第で物語が分岐する点にも注目してください。あるミッションで警察署に進入する際、ソーシャルで警官を懐柔すると、しばらくしてその警官が仕事を失った一般人として登場することもあります。

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――そんなに細かく影響するんですか?
アンフォッシー 自分の行動が他者にどんな影響を及ぼすかも我々が描きたかった部分です。ですから、ゲーム的に効率よくクリアーする方法に加えて、"自分のしたいことと、それがもたらす他人への迷惑"を考慮して、それでもなおかつ倫理的に受け入れられるか、プレイヤーへ判断を委ねたいと思っています。

――ミッションをクリアーするためにはオーグメンテーションが重要になりそうですが、トレイラーで登場した光学迷彩のほかにはどんなものが用意されていますか?

デュガ プレイスタイルによってオーグメンテーションを選ぶ必要がありますが、たとえば、映画『ランボー』の主人公のように、勇敢に戦いたいときは、自分の周囲に爆弾をまき散らして敵を一掃するクレイモアや、照準を安定させるエイムステイブライザー、アダムの皮膚を硬質化させて防御力を上げるダーマプレイティングといったオーグメンテーションが役立つでしょう。非常に地味な効果のものもありますが、特定のミッションをクリアーする場合に重宝することがあります。アダムをどんなタイプのキャラクターに成長させるかは、すべてプレイヤーの自由です。

アンフォッシー ゲーム中のサイバネティックスの設定については、専門家を招いて技術的な面で矛盾のないものを構築しています。アメリカ軍などの仕事をしているサイバネティックスの専門家にコンサルタントを依頼し、技術的な面でもおかしくない物を作り上げようと努力しました。現代に実在するサイボーグ技術のほうが想像をはるかに超えてクレイジーだったこともありましたが(笑)。

デュガ 常人にはできないことをやってのけるのがオーグメンテーションの特殊性でもあるので、どのような事をさせるか、スタッフと多くのミーティングを重ねました。あまりに突拍子もないものでは、バランスが悪くなりますし。トレイラーにある、敵の頭を持って回転させるアクションシーンも、一度はクレイジーすぎるという理由で外されたのですが、議論の末ここまでならバランスを壊すことがないということで、再度入れることになりました。

――アダムを強化しすぎると、イカロスのように手痛いしっぺ返しを受けることも?
デュガ イカロスのような悲劇的な結末を迎えることはありませんよ(笑)。オーグメンテーションをアップグレードしなくても進めますし、すべての機能を最高まで上げることもできます。ただ、ひとつ覚えておいてほしいのは、プレイ中にどんなオーグメンテーションを進化させたかは、すべて記録しているので、物語にも何かしらの影響を及ぼす可能性があります。そこは忘れないでくださいね。

――それでは最後にココを見てほしいという部分を教えてください。
アンフォッシー いわゆる洋ゲーでも和ゲーでもない、ユニークなゲーム体験を味わって頂けるゲームだと思います。まだまだお話できないこともたくさんありますが、例えばオーグメンテーションによるコンバット(戦闘)は単なるFPSには無い爽快感とアクション性を楽しんで頂けると思います。

ベレテット アートに関してですが、スタッフ一同多かれ少なかれ、多くの日本のゲームから非常に大きな影響を受けています。そうした影響を自分のできる範囲でこのゲームには取り入れています。それを日本のゲーマーの方々がどう受け止めて頂けるのか、今からとても楽しみにしていますし、またそこに是非注目して頂きたいと思っています。
デュガ 個人的にはFPSという体裁をとりながら、シューティング以外の部分でたくさん遊べるところがあるのは本作ならではだと思っているので、FPSが苦手なかたや初めてプレイするかたにも絶対に楽しんで頂けると思っています。過激で暴力的なだけのシューティングとは一線を画した、一歩進んだゲームになっていると思いますので、日本のゲーマーの方に受け入れて頂けるか今から非常に楽しみに(少し怖いですが!)しています。

(C) 2010 SQUARE ENIX LTD. All Rights Reserved.Published by Square Enix Co., Ltd. ※画面は開発中のものです。

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