『放浪息子』Blu-ray&DVDがいよいよ発売! あおき監督に単独インタビュー

アニメ
2011年1月よりフジテレビのノイタミナ枠で放送され、話題を呼んだテレビアニメ『放浪息子』(原作:志村貴子)。今回は監督を務めたあおきえい氏に、ファミ通.comで単独インタビューを敢行。

●こだわりにこだわった作品の裏側をあおき監督が語る

 2011年1月よりフジテレビのノイタミナ枠で放送され、話題を呼んだテレビアニメ『放浪息子』(原作:志村貴子)。原作の持つ独特の空気感や絵のタッチを、アニメーションでどう表現するのかという点や、作品の持つテーマ性が注目を集めた作品である。そんな同作のBlu-ray&DVD第1巻が、2011年4月27日についに発売された。同BD&DVDには、多数の特典のほか、Extraバージョンという本放送とはバージョンの違う第1話が収録されているのだ。これらの要素について、今回は監督を務めたあおきえい氏に、ファミ通.comで単独インタビューを敢行。制作の裏話から、特典の内容まで、いろいろと語っていただいた。

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▲あおきえい監督。代表作には、『GIRLSブラボー』シリーズや、『劇場版 空の境界「俯瞰風景」』、『喰霊-零-』などがある。

――まずは、『放浪息子』全12話を終えたいまの感想をお聞かせください。
あおきえい(以下、あおき) 最終回の本放送をリアルタイムで観ていたんですけれど、クレジットが流れたときはちょっと悲しい気分になりました。終わっちゃうんだ……って。納品したときは、どっちかというと解放感のほうが強かったんですよ。「終わった!!」って(笑)。でも、最終回をリアルタイムで観たときは、終わってしまうことが、だんだん悲しくなってきましたね。

――それは、もし第2期をやるという話になったら、やる気があるということですか?
あおき それはもう! ホントに。呼んでいただければ、いくらでも馳せ参じますよ(笑)。

――制作をしていた当時の苦労というのはありましたか?
あおき 全体的に技術的な苦労の多い作品だったんですけれど、画面作りとか。イチバン苦労したのはやっぱり志村さんのテイストをアニメで再現しつつ、でも、いわゆるコピーにならないようにしないといけないよな、という部分ですね。その辺のバランスの取りかたを個人的にはずいぶん悩みながらやっていたので、イチバン気を使いました。

――“コピーにならないように”というのは?
あおき 『放浪』に限った話ではないんですけれど、僕のいままでの監督作品って全部原作つきなんですよ。それぞれ原作はマンガだったり、小説だったり、媒体は違うんですけれど、原作つきでアニメにするときに、原作に対してのスタンスをどう取るのかということでいつも悩むんです。原作ファンからすれば“まんま観たい”っていう気持ちがあると思うんですよ。あの単行本のあのセリフ、あのコマが観たいんだよ、という。僕自身も『放浪』が好きで「やりたい!」って言った人間なので、「再現したい」という気持ちは当然あって。ただ、“再現する”というのは、あくまで再現じゃないですか。同じコマですよ、っていう主張をするだけで、それが“表現”かと言われたら違うよね、という個人的な違和感はいつもあります。かといって、滅多やたらに原作とまったく違うものにする意志もないんですけれども。ただ、再現するということが純粋にファンサービスになっちゃっていて、いわゆる二次創作みたいなアニメーションになっちゃうのが、アニメの作り手としてちょっとマズいんじゃないか、といつも思っているんです。原作をリスペクトしているという感情は当然根底にあるんですが、原作から自立しないといけない。アニメーション作品単品として成立するにはどうすればいいか。それを意識して作らないと、経験上うまくいかなくて、そのさじ加減が難しいというか、たいへんでした。

――原作から自立していくという部分で、今回イチバン注力したというか、ここがアニメのオリジナリティーなんだというのはどこになるんでしょう?
あおき 言ってしまえば、中学から始まるというところですよね。

――それはたしかに驚きましたね。
あおき イチバン賭けをした部分ですよね。たぶん原作ファンからはいろいろ言われるだろうな、ということはわかっていたんですけれど。いまだから言えますけど、スタート前はけっこう言われましたからね。「なんで小学生編やらないんだよ」って。原作を知っている方は、究極に言っちゃえばどこでスタートしてもストーリーは追えると思うんですよね。ただ、原作を好きな人というのを視聴者として意識しつつ、原作を知らない方というのもやっぱり意識しないと作品のバランスがおかしくなっちゃう。初めて『放浪息子』に触れる人にとっては、テーマ的にも修一が女装したりとか、よしのも男の子の格好をしたりとか、ジェンダーの描写を含んでくるので、苦手な人は苦手だと思うんですよ。「女装男子!?」みたいな。ただ、志村さんの原作も修一というキャラクターを、ことさら特異なキャラクターとしては描いていなくて、こういう子なんだよ、とわりと自然に、必要以上にそこを立てない描きかたをされているんですね。自分が着たい服が女性の着る服で、自分がなりたい自分がかわいい女の子のような自分で、結果として女装しちゃうんですよ、という感じ。キーワードとして“女装”というものはありますけれど、そこを特別なものにしないという志村さんの感覚はあったので、初見の人に“女装男子”というキーワードで引かれないようにしようというのはありました。そうすると、ホントに当時は賭けだったんですけれど、キャラクターが出揃っていない原作の1巻からゆったり始めるよりは、思い切って魅力的なキャラクターがたくさん登場するところからスタートすることで、そのハードルが少しは下がるかな、と思ったんです。物語を観ていくうちに、修一の気持ちも後半になれば絶対にわかってくるとは思っていたんで、スタート部分で拒否反応が起こらないようにしたいな、というのはひとつありましたね。

――そういう意味でいうと、1話と2話がすごく難しいところだったんじゃないでしょうか?
あおき 1話がイチバン難しかったですね(笑)。ほぼオリジナルだったんで。

――キャラクターの紹介をしつつ、過去のわだかまりというのが残ったまま中学生になっているので、どう説明していくんだ、っていう。
あおき そうなんですよね。結局、原作で4巻分もかけているものを、アニメの1話って正味20分尺なんで、そのなかで全部消化するのは無理じゃないですか(笑)。だから、あとは、回想シーンも使いましたけれど雰囲気を匂わせる形で、なぜ仲が悪いのかわからないんだけれど、彼らには小学生のときに何かがあって、それでいまこういう人間関係なんですよ、ということをなるべく直接的ではなく、会話の端々とかキャラクターの立ち位置、ちょっと遠いところに立っているとか、空気感や雰囲気でとくに初見の人にはわかってもらおうと思って。

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▲監督がイチバン難しかったというアニメ第1話。

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▲アニメの物語は原作の5巻から始まる。それ以前の物語を知りたいという人は、原作1〜4巻でチェックしよう。

――実際のところ、原作の1巻から始めていると、終わらせるところが難しいですよね。2クールならともかく、1クールしかない中では。
あおき そうですね。小学生編メインでみんながケンカして終わるっていうのも、さすがに(笑)。あ、でももうひとつ、中学生編から始めた理由はあります。原作の8巻の終わりに修一が女装をして学校に行くというエピソードがあるじゃないですか。これが『放浪息子』を語るうえでキモになるエピソードかな、と思ったんですよ。イチバンわかりやすいというか。このエピソードを読んだときに、これをやらなければいけない気がするって思ったんです。イチバン『放浪息子』という話が凝縮されている感じがしたんですね。修一の気持ちとか、まわりの変化とか、ここからの流れが重要なように思って。

――なるほど。たしかに非常に大きなエピソードのひとつですね。
あおき そうなんですよね。最初にシリーズ構成を組んでいるときに原作の9巻まで出ていたぐらいだったんです。アニメだと10巻の終わりの文化祭のところまで描いているんですけれど、シリーズ構成を始めた当初は、最終回の構成がなかったんですね。原作がなかったので。でも、きっと何とかなるに違いないと(笑)。

――(笑)。そのときは、どう決着をつけようと考えられていたんですか?
あおき 考えてなかったです(笑)。たしか、9話までシリーズ構成をやっていたんですよね。
プロデューサー・黄樹弐悠氏(以下、黄樹) 『放浪息子』をアニメ化するという話が来たときに、小学生編を純粋にやると思っていたんですよ。そしたらいきなり、えいさんが「決まったのは超うれしいんですけど、これどうしましょう?」って言い出して。何を言っているんだ、と(笑)。それで「ちょっとだけ考えさせてください」と言って後日持ってきた構想が、「じつは中学生編からやりたい」というものだったんです。それも自信満々で「ナイスアイデアでしょ?」という空気なんですよ(笑)。でも、私自身もおもしろいな、と思って。過去のシーンをどう入れるのか逆に興味があったんですよ。ちょうどそんな話をしていた直後ぐらいに8巻が発売されると、今度は「これがやりたくてしょうがない!」って言い出しまして(笑)。最初は中学生編にするか小学生編にするか、「半々かな」と言っていたのに、その後は「中学生編でやるんで!」って完全に監督の中で決まっていたんです。ただ、やりたいことが決まったときからの作業はすごく早かったですね。でも、やっぱり最後のオチがまったくわからないまま、「とにかくやっていけばなんとかなるよ」と言われて(笑)。だから、じつは最初に作り始めていたものはもうちょっとのんびりとしたペースで進むような内容だったんですね。その後、8話ぐらいまでの構成を作ったときに「あ、最後までが突然見えた!」と監督が言い出して。
あおき (笑)。そうなんですよ。10巻が出て、文化祭のエピソードを読んだときに「あ、ラストできる!」と興奮して、みんなに「できますよ! 幕が開いて終わるんですよ!」って言ったら、全員がポカーンとしちゃって(笑)。
黄樹 第一、僕らは8話以降の構想を聞いてなかったですから、唐突にラストの話をされても(笑)。
あおき 修一が女装をして学校に行って、いわゆる全否定されて強制的に帰らされてしまう。「なりたい自分はこうなんだー」って世の中にアピールしたら、世の中から拒否されちゃうというような話だったので、だとすると最終回はもう1度世の中と対峙していく話になるだろうな、とは思ったんですよ。ただ、その対峙の仕方を具体的にどうするのか、ということが僕にもぜんぜんわからなかったんです。そんな中で文化祭のエピソードを聞いたときに「これだったらぜんぜんイケる」と思いました。だから、ラストカットのイメージもシリーズ構成をやっているときにはできていたんですよ。幕が開いて、修一が暗いところから明るいところへと1歩踏み出すんだ、ということがそのときに頭に全部思い浮かんだんです。

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▲アニメの方向性を決定付けたという原作8巻。そして、結末に大きな影響を与えた10巻。

――アニメのほうで注目されていたところには、作品のテーマもそうなんですが、映像表現も大きく注目された部分だと思います。その辺のこだわりというか、苦労というのはありますか?
あおき 映像表現は、志村さんのカバーイラストや水彩のタッチをアニメでも何とか再現できないかなぁ、と思って試行錯誤をくり返しました。志村さんの水彩表現をアニメーションでも見せたい、というところからスタートして、テストを何回も重ねて。最終的には、第1話の放送が2011年1月から放送なんですけど、テストをスタートしたのが、ちょうど1年前、2010年の1月ぐらいから始めているんですよ。

――えええ!? そんなにかかってるんですか?
あおき そうなんです。たしか最初のテストから9ヵ月ぐらいかかったんですね。本格的にやり始めたのは、3月……4月ぐらいかな。それでも半年ぐらいはかかっているんで。

――あれは、CGか何かで表現されているんですか?
あおき ざっくり言うと、アニメーションは分業なので、いくつかのパートに分かれているんです。いわゆる、絵を描く人、色を塗る人、それを撮影する人。以前はアニメーション自体はセル画でやっていたので、色塗りと撮影っていうポジションがあったんですけれど、いまは全部PC上でやっているんですよ。絵を描くところまでは鉛筆で、それ以降はPC上で色をつけて、PC上で背景の素材と合成していくということをやっているんです。昔で言うと撮影、いまはコンポジションと呼んでいるんですが、そこのセクションを技術力をフル活用して作っているんですね(笑)。だから、セルの素材自体……、セルというか色を塗ったデータ自体はいつものアニメっぽい塗りになっていて、コンポジションの段階でぼかしたりとか、水彩チックなテクスチャー的なものを乗せてみたりしているんです。

――かなり手間がかかっているんですね。
あおき とくに撮影部はたいへんだったと思います(笑)。通常だと、絵を描いて、色をつけて、撮影テストをするという手順なんですけれど、今回は撮影ありきで作っているんです。“撮影でこういう処理を入れます”という前提のもとに作って、テストの結果を前のセクションに戻していくんですよ。撮影でこういう処理が入るから、こういう作画にしてくれとか。撮影でこういう処理をするから、色塗りのときにマスクを作っておいてくれ、とか。そうすることで、最終的にこのような画面になっているんです。

――時間をかけて作られてるっていうことですね。
あおき ええ。まぁ、後半は時間がなかったんですけれど(笑)。スケジュールを食いつぶしちゃって。いつものアニメのスケジュールで作ってました(笑)。

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▲原作の持つ独特の空気感をアニメでどのように表現するのか、ということが放送前から非常に注目された。

――この作品は、音や音楽というところもポイントになってくると思うのですが。
あおき まず役者さんですね。修一とよしのに関してはふたりともほぼ新人で。修一君は、子役の畠山航輔君にお願いしています。全体的にアニメアニメした芝居じゃないほうがいいんだろうな、と思ったんですよ。アニメーションってあくまで絵なので、芝居も若干ふつうの芝居よりは派手につけないと、画面で浮いちゃうんですよね。でも、この作品はそうじゃないと。もっと芝居は抑えちゃって、ナチュラルな感じのほうがきっといいんだろうなって。あと、SEは予想以上に音響さんががんばってくれて、細かい音付けになっているんですよね。テレビで観ているとあんまりわからないかもしれないんですが、ヘッドフォンとかをするとかなり衣擦れとか足音とか、相当細かいところまで音が入っていて。街中の描写の音とか、空間を感じる音作りをしてくれて、それはすごく助かったというか(笑)。こっちもダビングのときに、「わー、音ちゃんとしてる、すごいー」って感動しました。

――たしかにドラマチックというか、生活感があるというか、空間を感じますよね。
あおき アニメーションに限らず、映像作品って、意外に音の情報に印象を左右されるんですよ。歩いているときの音とか、音によって質感がわかるんです。コンクリートの上を歩いているのか、草の上なのか。絵にしちゃうとぺたっとしちゃって、床は床にしかならないんですけれど、音の付けかたをしっかりすることで、そこの情報量がどんどん増してきて、たぶん観ている人はそこまで意識しないと思うんですけれど、なんとなくそれっぽいリアリティーみたいなものは出てくるんですよね。音をがんばると。

――なるほど。その音の効果もあってなのか、映像の表現もあってなのか、美術というんでしょうか? 街の風景などがすごくリアルで。本当にそこにあるような感じがして、作品の世界観作りにひと役買っているのかな、と。
あおき 美術はスタジオ・イースターさんが母体になって、美術監督は伊藤さん(※美術設定をスタジオ・イースターが担当。美術監督は伊藤聖氏)という方に担当していただきました。画面を作るときに、レイアウトというんですけれど、ふつうは絵なので、全部手で描くんです。でも、今回なるべくロケハンをいっぱいやって写真をたくさん撮ったんですよ。(『放浪息子 完全設定資料集』を見ながら)これにもチラッと載っているんですけれど、各話のコンテに合わせて、欲しいアングルをロケに行って撮影してきて、その写真にキャラクターを乗せていくみたいなやり方をしているんです。美術さんにもこの写真はお渡しして、ここから絵にしてもらっています。美術も最終的には線の情報量はしっかり作って、色はちょっとファンタジックに少し淡い感じにして。色の情報は少ないけど、線の情報量はしっかり残っているんで、キャラクターがどこで何をしているのか、ということは画面を観ていればわかるようになっています。写真レイアウトは個人的には助かりましたね。けっこう大きな役割を果たしてくれた部分だと思います。

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▲背景美術の美しさも、作品の特徴として挙げられる。

――DVDにはExtraバージョンが入っているということですが、これは何が違うものなんでしょうか?
あおき 1巻の第1話のみExtraバージョンが用意されているんですが、具体的に言うと、音が違います。映像はいっしょなんですが、音をミックスするダビングという作業でのSEと音楽の入れかたが違うものになっていますね。なぜこういうバージョンが存在するのかというと、本放送のバージョンより以前に作ったものがExtraバージョンなんですよ。もう少し詳しく説明すると、このExtraバージョンが、本来は本放送バージョンになる予定だったんです。これで一度完成していたんですよ。1話はこれで終わりですねって。

――それをなぜ変えてしまったんですか?
あおき 変えたくなったんです、僕が(笑)。これはこれでアリだな、と思いつつ、もうひと押し何か欲しいと映像を観ていて思ってしまったんですね。何かもうひと味あってもいいんじゃないかな、と。それで一度、皆さんに相談させていただいて。ぶっちゃけた話、音響費の問題とか、いろいろとついて回るものはありますから。何とかワガママを聞いていただけることになったので、追加アフレコと、ダビングをやり直したんですよ。聴き比べていただければわかると思うんですけれども、イチバン大きいのは1話の最後に修一が夜の街を走っていく描写があると思うんですけれども、放送版だとあそこにドビュッシーの『月の光』という曲が入るんですよ。ただ、Extra版はそれがないんです。別の曲が掛かっているんです。そこがイチバン大きいですね。ほかには、入学式のシーンで誠との会話のあとに修一の顔が画面に映ったところで本放送版だと曲が掛かるんですが、Extra版はそこで曲が掛からないんです。佐々が教室で自己紹介を始めるところから曲が流れ始めるんです。でも、それを観ているうちに、やっぱり修一の顔で曲を入れたいな、と思いまして。そっちのほうが絶対に修一のキャラが立つはずだ、と思ったので、仁さん(※音響監督の明田川仁氏)にワガママを言って「こっちから曲を入れて、この曲じゃなくて、こっちの曲でいいっすか?」っていう曲の入れ替えをやっています。あとは、いくつかナレーションを足していますね。

 


■『放浪息子』#1 オンエアー版とExtra version の違い

<BGMの違い>
◆入学式のシーン〜教室での自己紹介のシーンまで
【オンエアーver.】体育館での修一の顔のアップのカットからBGMが流れ始める
【Extra ver.】教室での佐々の自己紹介シーンからBGMが流れ始める

◆廊下を早足で歩くさおりを追う佐々のシーン〜帰宅したさおりのシーンまで
【オンエアーver.】BGMあり
【Extra ver.】BGMなし

◆修一が家を飛び出して外を走るシーン
【オンエアーver.】ドビュッシーの『月の光』が流れる
【Extra ver.】BGMなし。よしのが修一にパーカーを差し出すシーンの後からBGMが流れ始める。

◆ラスト、修一の部屋のシーン〜洗濯機前のシーン
【オンエアーver.】ラストの修一のナレーションに合わせてBGMが流れる
【Extra ver.】BGMなし

<ナレーションの追加> ※【オンエアーver.】のみ
・入学式(体育館での修一と誠のシーン)の後、修一のナレーションを追加。
・昇降口のよしの、歩道橋の修一、帰宅したさおり。それぞれナレーションを追加。

<セリフの追加>※【オンエアーver.】のみ
・廊下を早足で歩くさおりを追う佐々のシーンで、うわさ話をする生徒たちのセリフを追加。

 


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▲第1話でとくに印象的なシーンとして挙げる人も多いだろう、修一が街を走っていくシーン。

――最後の修一が走っていくシーンの楽曲というのは、すごく重要な要素だと思うんですけれど、それが違っていたというのは驚きました。
あおき そうなんですよ。だから、ぜひ印象の違いというか、音の違いでこんなにも印象が変わるんだ、ということを感じていただけるといいな、と思います。ついでなんで話しちゃうんですけれど、『月の光』を掛けているシーンの画面と、音楽が意外にシンクロしているんですね。よしのがパーカーの入った袋を差し出すところで、転調で音がポーンと入ったりとか、曲合わせで編集しているように見えるんですけれど、じつは一切曲には合わせていないんですよ。

――ええええ?(笑)
あおき このシーンに合う曲、何かないかな、と捜していて。MONACAさんからいただいている曲も何度も聴き比べたんですけれども、どうしてもこのシーンにピッタリな曲が見つからなくて。僕はそれほどクラシックは明るくないんですけれども、そういえば『月の光』という曲があったな、と思って。自分でCDも持っていたんで、たまたまCDと画面を「えいやっ!」って同時スタートして観てみたらどうなるんだろうってやってみたら、ピッタリ合ったんで、「これだ!」と(笑)。

――ほかにも、DVDの見どころというのはありますか?
あおき 今回、Blu-rayとDVDが同時発売となっていて、どちらも内容はもちろんいっしょなんですけれども、作り手としてのワガママを言わせていただくと、ぜひBlu-rayで観て欲しいという部分がありますね。もともと『放浪』は、色もギリギリまで淡くしてあって、HDで観ることを前提とした画面作りをしているんです。観ている人が気づくかわからないんですけれども、DVDだと若干、作り手の意図とは違う画面なんですよね。

――くっきり映像が出ずに、より淡くなって観えるということなんですかね。
あおき やはり、DVDのほうが画面が眠くなるんですよね。少し緩い画面になる。Blu-rayを観るともう少しキリッとしていて。解像度が高いので、背景の細かい奥のほうとか、モブキャラの動きとかもBlu-rayのほうがキッチリ観えるかな、と思います。もし、再生機器をお持ちでしたら、Blu-rayのほうがいいかな、と。

■今後の特典も目が離せない

――Blu-rayとDVDは、1巻だけではなく、ほかの巻にも特典が用意されているんですよね。
あおき 1巻と2巻にサントラが同梱されて、3巻にはドラマCDが同梱されます。3巻につくドラマCDは、ちょうど6話のエピソードの裏側を描いたものになります。本編では、どちらかというと誠とさおりが中心のエピソードになっているんですが、ドラマCDのほうは、その裏側で何があったのかということを岡田さん(※シリーズ構成と脚本を担当した岡田麿里氏)のほうで書いてもらっているんですよ。具体的に言うとクラスメイトの小林さんというメガネの女の子と、アニメのオリジナルキャラクターで長谷川君というメガネの男の子がいるんですれども、そのふたりを中心に、誠やさおりが舞台をやっているあいだ、裏ではこんなことが起きていたんですよ、というエピソードをドラマCDでまとめた感じですね。

――メインのキャラクターは全員出てくるんですか?
あおき メインも出てくるんですけれど、クラスメイトが中心になってきますね。岡田さんが好き勝手書いた感じで(笑)。長谷川君と言ってもピンと来ないと思うんですけれども、佐々がエスカラス公爵を演じていて、アニメだと馬に乗って「静まれー! ここは花のヴェローナ。これ以上の狼藉は許さんぞ!」みたいなことを宣言するシーンがあるんですよ。その佐々が乗っている馬役が長谷川君です(笑)。

――わかんないです(笑)。
あおき その長谷川君と小林さんの舞台にかける情熱、みたいなお話になっています。アニメにするときに、クラスメイトの設定もしっかり作っていまして。いわゆるモブキャラではあるんですけれども、生徒A、Bではなくて、ちゃんと名前も設定も与えましょう、と。志村さんの原作で名前のあるキャラクターはそこからいただいて、名前がないキャラクターはこちらで設定させていただきました。アニメーションの学園モノっていっぱいあるんですけれど、個人的にはいつも作っていて、あまり学校感がない、学校っぽくない、と感じていたんです。「なんでかな?」という疑問をずっと抱いていた。もしかしたらクラスメイトの特徴なのかな、とか。声の使いかただったりするのかな、といろいろ考えていたんですよ。そこで『放浪』では、しっかりと設定をつけてみたんです。

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▲馬を演じているのが、長谷川君。

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▲アニメ制作スタッフのこだわりを垣間見ることができる『放浪息子 完全設定資料集』。

――なるほど。(『放浪息子 完全設定資料集』を見ながら)あ、クラスメイトの席順まで決まっているんですね。
あおき そうなんです。しかも、恐ろしいことに7話から進級してクラス替えもしちゃうので、6話までの設定が使えないんですよ(笑)。牧野さん(※キャラクターデザインと総作画監督を担当した牧野竜一氏)がうんざりした顔して、「まーた、作るの?(笑)」って。

――『放浪息子 完全設定資料集』には、そんな牧野さんの苦労も収録されているわけですね(笑)。
あおき いやー、でも、この資料集は作っていただいてうれしかったですね。現場スタッフ的には。スタッフみんな喜んでいましたよ。ぜひアニメを観て世界観を楽しんでいただいた方には手にとって欲しいです。

――今回、Blu-rayやDVDのパッケージもこだわって作られているそうですね。
あおき デジパック仕様で、これも逸話がたくさんありますよ(笑)。
アニプレックス宣伝担当 デザイナーさんがアニメを観て構想を練られたデザインなんです。とくに1話の桜の描写に感動したということで、そのモチーフを取り入れたいと。『放浪息子』は四季がいろいろと変わるんですけれど、それにあわせてジャケットも変化させていこうということで、かなり四季を意識したデザインになっています。初回仕様のデジパック部分限定版が志村先生のイラストになっていて、クリアケースに収納すると、そこに描かれたアニメの桜の画と先生のイラストが重なるんです。これもデザイナーさんの希望でしたね。今回、デザインをしていただいているのが、名和田耕平さんという方で、コミックスの装丁などはよくされているようなんですが、DVDは初めてということでした。『放浪息子』がもともとお好きな方で、志村先生とも一度お仕事をされていたみたいです。そのお話を聞いたときに、業界に『放浪息子』のことが好きな方っていっぱいいるんだな、と実感しました。
あおき ホントに多いですよね。「やりたい!」っていうことをよく言われますし。
黄樹 明田川さんもそうですよね。ふだんはあまり対応が早いほうではないんですけれども、メールを入れた瞬間になぜかすぐ電話がかかってきて。メールにはタイトルを入れてなかったんですけれども、予感があったんでしょうね。「タイトルをとにかく教えてくれ!」って言われて、『放浪息子』なんですがって言ったら、その場で「やる!」って。

――監督も含めて、スタッフさんみんな『放浪息子』が好きな人が集まって作られているということなんですね。
黄樹 明田川さんの気合の入りかたが違いましたね。「この作品のフィルムがよくなかったら、俺は怒るよ?」って言われて。終わってみたら「AICできるじゃん!」って言われて、なんて失礼な話だと(笑)。「ほかの作品もがんばってます!」って。
あおき いや、でもホントにAICはできる子でしたよ。素晴らしいな、と思いました。さすがです。

――皆さんが『放浪息子』のことを好きだから、皆さん好き勝手にこだわるんでしょうね。
あおき そうなんですよね。名和田さんもリテイクがけっこう多くて。「この桜の色がですね」って言われて(笑)。
アニプレックス宣伝担当 志村先生からもあおき監督からもオーケーをいただいていたんですけれど、名和田さんからもっと色を淡くして、でも人物は飛ばさないで、とリテイクをいただいたりもしていて(笑)。すごくこだわっていただいたので、いいものに仕上がっていると思います。

――最後に読者の皆さんにひと言コメントをいただければ。
あおき Blu-rayもDVDも、ストレートに言っちゃうと決して安いものではないので、買ってね、と簡単には言いにくい部分もあるんですけれど(笑)。なるべく1回観て終わりにならないような作りに個人的にはしたつもりですので、最低でも2回は観られると思います。2回は発見があるはず。観ていて飽きない、何度もくり返し観られる作りにしたいとつねに思って作っていたんです。なので、最初に気づかなかったところに2回目で気づいたりとか、そういう楽しみかたができるようになっています。何回でも観られるようにしてあるので、お小遣いに余裕がある方はぜひ買っていただけるとうれしいです。さらに、再生機器をお持ちの方は、Blu-ray版を買っていただければ!(笑)

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【放浪息子 1】
2011年4月27日発売
【Blu-ray】6825円[税込]
【DVD】5775円[税込]
・初回仕様限定版特典
 原作者:志村貴子描き下ろしデジパック仕様
 三方背クリアケース
・通常版・初回仕様限定版共通
 2枚組み(本編ディスク+オリジナルサウンドトラックCD)

【#1&#2オーディオコメンタリー】
2011年2月13日(日)に公式サイトにて公開生中継された、メインスタッフ&キャストによるコメンタリー音声を収録!
出演:畠山航輔(二鳥修一役)、瀬戸麻沙美(高槻よしの役)、あおきえい監督、牧野竜一(キャラクターデザイン・総作画監督)、加藤友宜(コンポジットディレクター)、大内綾(色彩設計) 司会進行:吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)

【#1 Extra version】
#1「おんなのこって なんでできてる? 〜Roses are red, violets are blue〜」の本編音声をTVオンエア時とは異なる Extra ver.で収録。

【『放浪息子』の裏側 〜ぼくたちの、めいきんぐ。〜】
アニメ『放浪息子』制作現場、AICに潜入! 水彩画タッチの映像が出来るまでの過程や、現場での作業風景、さらにはアフレコの様子などを、監督のインタビューを交えながら紹介。

【#2〜#3 web版予告】
公式サイトでのみ公開のweb版予告映像を収録。

【番宣PV 第1〜3弾】

【収録話】
#1「おんなのこって なんでできてる? 〜Roses are red, violets are blue〜」
#2「きらい きらい 大きらい 〜Cry baby cry〜」

(C)2011 Takako Shimura/PUBLISHED BY ENTERBRAIN, INC. / 「放浪息子」製作委員会

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