HOME> ニュース> 『ソニック フリーライダーズ』サントラCD誕生秘話は、Crush40ファン必見!

『ソニック フリーライダーズ』サントラCD誕生秘話は、Crush40ファン必見!

ゲーム Xbox 360 インタビュー
セガのKinect(キネクト)専用タイトル『ソニック フリーライダーズ』。同ソフトのサントラCDが2010年12月8日に発売。それを記念して、サントラCDに関わるキーマン3人に直撃インタビューを敢行した。

●サントラCDに関わったビッグ3が勢揃い

WM0639_H1

 セガから2010年11月20日に発売されたXbox 360用ソフト『ソニック フリーライダーズ』(以下、『フリーライダーズ』)。同ソフトはKinect(キネクト)専用タイトルとして発売された『ソニック ライダーズ』シリーズ(以下、『ライダーズ』シリーズ)の第3作目にあたる。同ソフトのサントラCDが同年12月8日に発売。今回サントラCDに収録されているテーマ曲を手掛けた瀬上純氏、サウンドディレクターの澤田朋伯氏、そしてゲームのプロデューサーの森本兼次郎氏の3人に、直撃インタビューを敢行した。ファン必聴のサントラCD誕生秘話をご堪能あれ。

YOS_3559

左から森本兼次郎氏、澤田朋伯氏、瀬上純氏。

YOS_3518

−−Kinect(キネクト)専用タイトル『ソニック フリーライダーズ』)のテーマ曲を、瀬上さんが手掛けられています。これまでの『ソニック』シリーズ、『ソニック ライダーズ』(以下、『ライダーズ』)シリーズとも一線を画すタイトルだと思うのですが、どのようなコンセプトで作られたのでしょう?

瀬上 テーマ曲に関しては、「Kinectだから」ということをそれほど強く意識して作ることはありませんでした。ただし、『ソニック』シリーズにはいろいろなジャンルの作品があって、今回は『ソニックライダーズ』シリーズの3作目にあたります。1作目、2作目をとおして、音楽的にはダンス調のビートを中心に据えたタイトルでしたが、僕はふだんそういった曲を作らないので、最終的にはセガサターンで発売した『ソニックR』というレースゲームの楽曲などに携わっていた、その手のジャンルに精通しているイギリスのリチャードという人間に、僕が作ったものを仕上げてもらうという手法を採りました。

−−確かにこれまでの瀬上さんが手掛けてきた『ソニック』シリーズの曲とは違った雰囲気に感じました。

瀬上 ひとつKinectらしさというところで言うと、歌詞を作るときにコントローラーフリーだったり、いろいろなものから解き放たれていたりするという意味で、“フリー”がひとつのテーマとなりました。歌詞を担当する人間に“フリー”であったり、『ソニック フリーライダーズ』から連想するキーワードをいろいろと提示したうえで、それらを年乙に置いて作るように指示はしました。

−−実際にゲームを作っている立場から注文などはあったのでしょうか?

森本 僕はいままで、『ソニックライダーズ』シリーズを手掛けてきました。その1作目を作ったときに、澤田にお願いしたのが「王道の『ソニックアドベンチャー』とは差別化したい」ということなんです。根本となるコンセプト“スピード感”や“爽快感”は踏襲しつつも、レースゲームとしての気持ちいいサウンドを作ってほしいと。

−−それは難しそう(笑)。スピード感、爽快感とレースゲームの気持ちよさって似ていませんか?

森本 言葉で表現するとそうかもしれません。ただ、先ほど瀬上が話したダンス調のように、ロックに対してテクノとか。同じビートを刻むにしてもテクノとロックは違う。「ユーザーさんが気持ちよくなる」という到達点は同じでも、印象としての差別化をはかりたかったんです。僕は音楽に関しては素人なので、すごく曖昧な形でしか言えなかったんですけどね(笑)。

−−なるほど。

森本 今回、『フリーライダーズ』に関しては、初代『ソニックライダーズ』の思いっきりテクノ調に戻そうかという話をしたんですね。これは、楽曲に限った話ではないのですが、マーケティングのことを考えるとKinect専用タイトルということで、どちらかというと『ソニックライダーズ』シリーズが遊びたい人よりもKinectを購入した人全体が手に取りやすいものにしたほうがいいという意見もありました。そういう意味で、いままでの尖った印象よりもやわらかいというかニュートラルな印象に楽曲の方向性も変えていきました。

瀬上 コマーシャルな感じですかね。

YOS_3485

澤田 『ライダーズ』シリーズは『ソニック』の外伝的な存在なので、これまではけっこう好きにやらせてもらってきました。ただ、テーマ曲に関して言うと、今回3作目になって自由にやる部分もありつつ、『ソニック』と言えば瀬上というのもありますので、これまでの『ライダーズ』のテイストと王道のテイストを融合できるといいなと思ったんです。瀬上のロック系からちょっと変えてリチャードに頼んで、『ライダーズ』の方向にするという風にまとめました。

−−ただ、『フリーライダーズ』はほかのレースゲームと違って、リゾート都市や西部開拓時代風の渓谷、雪原などバラエティ豊かなステージ用意されています。それを一貫したテーマで統一するというものたいへんなことだと思うのですが。

澤田 『ライダーズ』シリーズの3作目になるので、基本的なBGMの方向はほぼかたまっているので……慣れました(笑)。

瀬上 『ライダーズ』シリーズはまかせろ的な(笑)。

澤田 いやいや、『ソニック』の外伝的なシリーズなので、瀬上よりは気が楽です(笑)。最初は違う方向に持っていくという点で迷うことも多かったですが、3作目ですから。

−−Kinect専用ということで、初めて『ライダーズ』シリーズに触れる方もいるというお話がありましたが、その点で気をつけた点は?

澤田 Kinectは体を動かして遊ぶゲームなので、“楽しく”という部分をこれまで以上に押し出せればと思っていました。1作目に近い形ですね。2作目はストーリー性を重視していたので、曲調的にはシリアスな感じも盛り込んだんですが、3作目は全体的に1作目と同様の楽しさを前面に持ってきた感じですね。

−−実際、瀬上さんが作られたテーマ曲をお聴きになった感想はいかがでしたか?

森本 わかりやすいなって(笑)。じつに瀬上らしい。瀬上の曲を言葉にたとえると、中学生や小学生の高学年、自分から洋楽をすすんで聴く人にグッと来るテイストだと思うんです。じつにわかりやすくカッコイイ。小学生の高学年の子たちが、ちょっと大人な雰囲気を味わいたいという願望が強い年ごろだと思うので、逆に瀬上の大人っぽい曲が『ソニック』という作品に合致しているんだと思います。背伸びしたい感じというんでしょうか。そういう意味で今回のテーマ曲もカッコイイ。わかりやすい。

−−瀬上さんはその話を聴いていかがですか?

瀬上 そう言ってもらえるとうれしいですね(笑)。テーマ曲なので、オープニングに使われるんだろうなと思って、つかみを最初に持ってこようと思いました。絵コンテなどをまったく見ていない状態で作り始めたので、自分で絵コンテを作る感じで、ここをこうして、ここでタイトルが出て、ジャンプしてということを思い浮かべながら、構成をまとめていきました。

−−そういう作りかたが出来るのも、ずっと『ソニック』を手掛けられてきた瀬上さんならではですよね。

森本 本当にそうだと思います。

−−今回のサントラには、通常のテーマ曲とCrush40バージョンのテーマ曲が収録されていて、Crush40のファンにとってもうれしい1枚と言えそうですね。

瀬上 通常のテーマ曲に関しては、いかにコマーシャルなものに、わかりやすいものにするかが課題でした。その課題をクリアーするためにはアレンジャーのリチャードの力が必要で、シンガーの声質にもこだわって選定して、ひとつの形としてまとまりました。それで今回サントラを作ることになった際に、森本に「オマケ欲しい?」って聞いたんですよ。そしたら、「欲しいです」と。それで何ができるかということを考えると、『フリーライダーズ』のコンセプトとは違ったもので、僕が作ったものを自分の世界観でまとめたらこうなるよ、というものを入れてみました。

YOS_3452

−−聴かせていただきましたが、同じメロディなのに雰囲気がまったく違いましたね。

森本 オリジナルとは全然ちがう印象ですね。どちらもスピード感を表現していますが、オリジナルにはシャープな効果線が走っているような清々しいイメージを想像しますが、Crush40バージョンには同じスピード感でも激流のような激しさ・情熱を感じます。個人的には「より瀬上らしい作品」だと思います。メインテーマは我々作り手にとってはタイトルの完成図を想像するためのコンセプトとなるものですが、もしこのCrush40バージョンが最初にあったら、また違う『フリーライダーズ』ができあがったでしょうね。
 
澤田 実際にゲームに使ったほうは、ゲームのテーマ曲らしい。Crush40バージョンは、これぞCrush40! といった感じがしますよね。リスナーの方にもそこを楽しんでいただきたいですね。

−−Kinectということで、体を動かして遊ぶタイプのゲームの楽曲を作るという点で、意識したことなどはありますか?

澤田 これまで以上にステージの特徴を曲で表現できたらなということは考えました。最初のステージは楽しく、徐々に進んでいくに連れシリアスで緊張感が出るような形を目指していきました。

−−ゲーム自体も作りかたがかなり変わったと思うのですが、いかがでしょうか?

森本 これはKinectだからとは言えないかもしれませんが、レースゲームのサウンドの作りかたがすごく難しいと思うのは、主張しすぎてはいけないという部分があると思うんです。もちろん曲がすばらしい、ゲームもすばらしいのも大事だと思うんですが、レースゲームにおいて楽曲は気持ちよさを盛り上げる材料だと思っていて、曲が主張しすぎると逆にゲームへの没入感が薄れる可能性があるんじゃないかと思うんです。『フリーライダーズ』は体を動かして遊ぶレースゲームということで、体を動かしながらもサウンドを心地よく味わえるというテイストを澤田が意識して作ってくれたんじゃないかなと思います。

澤田 テクノっぽいダンスミュージック系だとメロディがはっきりしているというよりは、曲が流れていて時間の流れがわからなくなるような、クラブで流れているような曲。トランス状態になるような気持ちよさですね。レースゲームもそれと同じような形で、レースに没入しても邪魔にならない、自然と時間の感覚がわからなくなるようなものを、ということは意識しています。

−−なるほど。瀬上さんはご自身以外の曲を聴いていかがですか?

瀬上 以前、僕が手掛けた『ソニックアドベンチャー2』のグリーンフォレストというステージがあって、レースゲームじゃないんですけど制限時間内に島を出ないと爆発するという設定があったんですね。急いで駆け抜けろと。まさにレースゲームのような感じだったんですが、そこには結局メロディを入れてないんですよ。実際にメロディを入れてみたんですが、高揚感が薄れちゃう部分があるんですよ。それで抜こうと。フレーズのくり返しが逆に没入感を高める効果があると思うんです。

−−そのほかに各ステージで苦労した点はありますか?

澤田 いかにステージの雰囲気を合わせてつつ、『ライダーズ』っぽい感じを出すところですかね。遺跡のようなステージがあるんですが、民族系の音を入れてみたり、アメリカ西部のステージだとカントリーの音を入れてみたり、それに『ライダーズ』の雰囲気を融合させるのには苦労しました。それでいて全体的な統一感を出さなきゃいけないというのもたいへんな作業ではありますね。あとKinectということで、楽曲よりも効果音には気をつけました。コントローラーとはまったく違うので、ユーザーのアクション、動きに合った効果音を出さないと、とは思いました。

−−確かにKinectは何もない空間で体を動かす分、ユーザーの触った感触は音でしか表現できない部分ではありますよね。

森本 プレイ環境もテレビから1.8メートル離れた場所でプレイすることが決まっているので、そのあたりは忠実に検証していきました。たとえばインパクトを与えたいシーンだと、わざと音の発生位置をずらしてみたり。

−−ゲーム作りの根本的なところも変わるんですね。

森本 そうですね。

澤田 よりわかりやすい音の反応が返ってくるほうが、プレイヤーの爽快感につながると思いますね。

−−瀬上さんは実際遊んでいかがでしたか?

瀬上 操作に慣れるまでは難しかったですね(笑)。まだ、多人数でのプレイは試していないので、年末はぜひみんなを家に招いて遊びたいと思います。

−−今回のサントラのなかでいちばんオススメの曲は?

瀬上 最後に付け加えさせていただいたボーナストラックは、いつも応援していただいている皆さんへのプレゼントです。一方ゲームに収録されているほうは、自分の作った曲がこういった振り幅もあるんだよ、というひとつの形。そういう対比が楽しめる1枚になっていると思うので、ぜひ両方のテーマ曲を聴いていただきたいですね。

澤田 ステージ曲の部分をがんばって作ったので、すべて聴いてほしいですね。

森本 開発の後半、8月9月デバックをやっていてなかなかチューニングが終わらないステージがあったんです。そこがロッキーリッジというステージなんですが、そこの曲をずっと聴いていたので、いまだにクルマに乗っていても思わず口ずさんでしまいますね(笑)。

−−ステージと曲がそれだけ合っているということなんでしょうね(笑)。では最後にファンに向けてひと言お願いします。

瀬上 2010年、とくに年末は『ソニック』シリーズのタイトルが集中して、『ソニック』シリーズのファンの方たちにはどれをプレイしようか迷うところかもしれませんが、『フリーライダーズ』はひとりで遊ぶだけでなく、みんなで遊んで見ている人も楽しめるタイトルだと思うので、ぜひプレイしてみてください。

澤田 これまでの『ライダーズ』ファンの方も、Kinectをきっかけに初めてシリーズを遊ぶ方にも楽しめる作品に仕上がっていますので、ぜひ年末に遊んでいただければと思います。

森本 『ライダーズ』シリーズのファンの方に楽しんでいただける要素も入っていますし、Kinectという新しいインターフェースを使った、いままでになかったリアルコミュニケーションが楽しめる作品になっています。ぜひ年末にご家族、ご兄弟で集まった際に『フリーライダーズ』を遊んでいただければと思います。

−−ありがとうございました。

YOS_3553

ソーシャルブックマーク

  • Yahoo!ブックマークに登録

評価の高いゲームソフト(みんなのクロスレビュー

※ ブログ・レビューの投稿はこちら!ブログの使い方

この記事の関連URL

この記事の個別URL

その他のニュース

【『戦場のフーガ』開発記録】『インターミッション』第50回

サイバーコネクトツー松山社長が『戦場のフーガ』の開発秘話を赤裸々に解説する『インターミッション』。第50回をお届け。

【新生! サイバーコネクトフォー】『チェイサーゲーム』シーズン2 第33話 悪事千里(3)

アニメ業界の闇に切り込む内容となったシーズン2の『チェイサーゲーム』は、実在のゲーム制作会社サイバーコネクトツーを舞台にしたゲーム業界お仕事マンガ。シーズン2の第33話を掲載。

【ブログ】【ChinaJoy 2024】開催まであと1週間弱!ChinaJoyの見どころを勝手に推測!

今年で21回目を数える「ChinaJoy」。7月26日から7月29日まで、例年どおり上海新国際博覧中心で行われる。この「ChinaJoy」の見どころを推測!

【シェインの正体 “戦争×復讐×ケモノ”マンガ】『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』第50話

ファミ通.comで連載されている“戦争×復讐×ケモノ”をテーマにしたドラマティックシミュレーションRPG『戦場のフーガ』の公式コミカライズ、『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』の第50話を掲載。

【漫画の裏側を語る!】『チェイサーゲーム』原作コラム 『デバッグルーム』シーズン2 第32回

サイバーコネクトツー松山社長が『チェイサーゲーム』の短期連載期間中、ゲーム業界のウラ秘話を赤裸々に解説する『デバッグルーム』のシーズン2の第32回をお届け。

【『戦場のフーガ』開発記録】『インターミッション』第49回

サイバーコネクトツー松山社長が『戦場のフーガ』の開発秘話を赤裸々に解説する『インターミッション』。第49回をお届け。

【宮崎太一郎氏、享年52歳】『チェイサーゲーム』シーズン2 第32話 浮沈要塞(11)

アニメ業界の闇に切り込む内容となったシーズン2の『チェイサーゲーム』は、実在のゲーム制作会社サイバーコネクトツーを舞台にしたゲーム業界お仕事マンガ。シーズン2の第32話を掲載。