『デモンエクスマキナ タイタニックサイオン』レビュー。手塩にかけて育てた主人公が徐々に闇堕ち異形化。代償を伴う育成要素はさらなるおもしろさと同時に新たな“癖(ヘキ)”をもたらす!?
 2025年9月5日にマーベラスより発売されたメカアクションゲーム『デモンエクスマキナ タイタニックサイオン』(以下、『デモエクTS』)。対応プラットフォームはNintendo Switch 2/プレイステーション5(PS5)/Xbox Series X|S /Steam。

 本作は、多彩なパーツで外部装甲“アーセナル”をカスタマイズしながら、さまざまな敵に挑むハイスピードメカアクションゲーム『
デモンエクスマキナ』(以下、『デモエク』)の続編だ。
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 アーセナルをカスタマイズして自分だけの機体を構築するシリーズのおもしろさはそのままに、フィールドやアクション、グラフィックが大幅な進化を遂げている。今回はその中から、筆者がとくに魅了された育成要素“融合”やアーセナルのパーツを集めるハクスラ要素に焦点を当てたプレイレビューをお届けする。
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最新ハードに対応したことで前作から大きく進化した『デモエクTS』

 『デモエク』は2019年9月13日に発売された。プレイヤーは、特殊な能力を持つ人間“アウター”となり、オーダー(ミッション)をこなしてパーツを集め、アーセナルを強化しながら新たなオーダーに挑戦する、王道感溢れるメカアクションゲームとして登場。

 アニメ調のグラフィックや人気声優が演じるメインキャラクターの存在、さらにみんなで楽しめるマルチプレイなど、メカ好き以外の層も意識した多彩な要素が盛り込まれている。そのため、メカものにあまり興味がないユーザーのあいだでも一定の人気を集めた。

 そんな『デモエク』の続編となる本作は、対応プラットフォームがNintendo Switch 2をはじめとした最新ハード専用になったことでグラフィックやゲーム性が大幅な進化を遂げている。
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 オーダー制だったゲームシステムが刷新。シームレスで広大なフィールドを自由に探索し、好きなタイミングでメインオーダー(ストーリー)やサイドオーダーを進められるシステムに変更された。アーセナルを構成するパーツも300種類以上に増え、アセンブルを追求する楽しさがさらに高まっている。

 オンライン要素も強化された。前作ではメインオーダーのマルチプレイが非対応だったが、本作ではゲーム開始直後からオンライン機能が解放され、フレンドといっしょにストーリーを進めることができる。また、ソロプレイでもオンライン状態にしておくことで、さまざまな恩恵を受けられる非同期オンライン要素が導入されており、ひとりでも、みんなでも楽しめる点も大きな魅力だ。
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 このように、前作から圧倒的な進化を遂げた『デモエクTS』。その中でも、筆者がとくにおもしろいと感じたのが、新育成システムの“融合”と、アーセナルを構成するパーツ集めだ。次項ではこれらの要素を深掘りしていきたいと思う。

理想的な見た目の主人公が化け物に浸蝕されて異形に……(これはこれでアリかも)

 融合の話に入る前に、密接に関係するキャラクターメイキング機能について紹介しよう。本作の主人公は名前、体型、髪型、服装、装飾品(メガネやタトゥー)などを自由に選べる。キャラクタークリエイトだけで1~2時間潰れそうなぐらいパーツが用意されていて、自分が理想とする主人公を作り上げることが可能。
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ゲーム側が用意した見た目のテンプレートもあり、ここから自分好みに主人公をクリエイトしてもオーケー。気に入った見た目は登録しておいて、あとで呼び出すことも可能だ。

 唐突だが、筆者は褐色銀髪美女が好きだ。キャラクタークリエイトがしっかりしているゲームでは必ずと言っていいほど、このデザインにしている。ということで、本作でも己の好きを貫きとおしたキャラクターを作成してみた。
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こちらが筆者の主人公。今回は毛先を赤色に染めてよりセクシーにしてみた。

 本作はムービーや会話のシーンが豊富で、主人公の顔がよく映る。キャラクタークリエイトで好きな見た目にしておくことで、世界観への没入度がさらに深まっていく。
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主人公の声は武内駿輔さん(タイプ1)、または甲斐田裕子さん(タイプ2)。聴覚への癒やし効果も絶大!

 さて、ここからが本題だ。本作には“イモータル”と呼ばれる自律進化型の敵兵器がおり、彼らは生物のようにAIや機械を汚染し、日々増殖を続けている。主人公も汚染されてしまうのだが、それと引き換えにイモータルの因子を身体に取り込むことで、新たな能力を得るという力に目覚める。この因子による能力習得が、本作の核となる育成要素の融合である。
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 因子はフィールドにいるイモータルを倒した際に得ることができ、スケルトン、マイト、シェルの3種類がある。この因子を身体に取り込んだ状態で拠点にあるラボで活性化を行うと、取り込んでいる因子の組み合わせに応じて、“融合スキル”を習得できるという仕組みだ。取り込んでおける因子の上限は決まっているので「●●の能力が欲しいから、スケルトン×2とマイト×2の組み合わせにしよう」といった取捨選択が生まれる。
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因子の組み合わせによって得られる能力は、因子の取り込み時にわかるため、いちいち覚えておく必要はない。

 融合スキルは、武器固有のアクションを追加する“武器アクション”、武器を使用しない特殊な技をくり出す“汎用アクション”、プレイヤーの能力を向上させる“パッシブ”の3つがあり、スキルを習得して装備することで主人公が強くなり、アクションの幅も広がっていく。
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 上空から敵を近距離武器でぶった切る“兜割り”や、分身を作って攻撃手数を増やす“ミラージュ”、回転しながら遠距離武器を連射する “スピンショット”など、派手かつ強力なアクションが多く、それを使って戦うのが『デモエクTS』の醍醐味でもある。

 アクション系のスキルは通常攻撃よりも攻撃性能が高く、パッシブによるステータス強化も非常に優れている。融合スキルの有無が攻略のしやすさにも大きな影響を与えるのが間違い。さらに、融合スキルに合わせてパーツを変更することで、より自由度の高いプレイスタイルを確立できる点も大きな魅力といえる。
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 戦闘がより楽しくなり、攻略もラクになる非常に魅力的なシステム、融合。しかし、この融合にはとんでもない落とし穴があったのだ。

 こちらの画像をご覧いただきたい。さっきも見た筆者の好きが詰まった褐色銀髪美女の主人公なのだが、融合を重ねていくと……。
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 おかしいね。何だかとっても禍々しくなったね……。
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 これこそ融合に隠された要素“異形化”である。融合を重ねるごとに、主人公の外見は徐々に人間とは異なる姿へと変化していく。最初は瞳の輝きが異様に増し、続いて身体にタトゥーのような汚染跡が現れ、その後は皮膚が外殻で覆われ始める。最終的には、下の画像のように本来の容姿がまったく分からない姿へと変わってしまう。
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『デモンエクスマキナ タイタニックサイオン』公式サイトより引用。

 これがイモータルの力を取り込んだ代償……。個人的に代償を体現したこのシステムには納得だし、見た目が強制的に変化していくのもおもしろいと感じた。好きな見た目にクリエイトした主人公が、融合によって強くなっていくうれしさ・ワクワクと、異形化していくことへの後ろめたさが絡み合って、ふつうのゲームプレイにはない背徳的な感情を体感できる。

 それに、序盤の異形化は悪堕ち味が強く、いろいろな人の癖(へき)に刺さるのではないだろうか。筆者は異形化し始めの主人公を見て「全然ありだな!」とモニターを眺めながら首を縦に振っていた。
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自慢の主人公をフォトモードで撮って遊ぶのも醍醐味のひとつ。

 ただし、融合を極めてしまうと、先ほどのように原型がわからない見た目となる。残念なことに、異形化部分の表示をオフにする機能はなく、ありのままの姿を受け入れるしかない。なお、融合の状態をリセットすれば、見た目はもとに戻るが、融合スキルも失われてしまう。

 まさに二者択一。だが、融合はおまけではなく、本作の核となるシステムのため、見た目のためにそれを捨ててプレイするのはなかなかにもったいない。恐らく、この点については多少なりとも賛否が分かれるだろう。しかし、開発陣もそれを理解したうえで導入しているため、譲れないこだわりが感じられる。

 融合スキルを使いたいけど、完全なる異形化を抑えたいという場合は、異形化が深刻にならない段階で融合を止めて、そこまでに習得した能力でやりくりするしかない。それはそれでおもしろそうだが、機能をフルに活かせないのはさすがにモヤモヤしそうだ。今後、異形化表示のオフ機能が実装されることに期待したい。
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 ちなみに本作は、アーセナルを構成するパーツが融合以上に重要なため、ストーリーが進むたびに強いパーツに更新すれば、融合スキルを使わなくても十分戦える。とはいえ、派手さにかけ、ビルドの幅も狭まるため、個人的には融合の活用をおすすめする。筆者のように、悪堕ち異形化した主人公を見て新たな扉を開いてみるのもいいだろう。

気づけばパーツ更新のために広大なフィールドをウロウロ。ほどよく熱中できるハクスラ性


 アーセナルは5つのアーマー(頭部、胴体、右腕、左腕、脚部)と6つのウェポン(右腕、左腕、右腕控え、左腕控え、肩、腰)で構成されており、それぞれにパラメーターとアタッチメントスロットが存在する。
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パーツごとにカラーリングを変えたり、デカールを貼ったりしてアーセナルをカスタマイズできるのも大きな魅力。
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アーマーの見た目をほかのアーマーのデザインに切り換える機能や、脚部以外のパーツの表示をオフにする機能もある。
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アタッチメントはアーマーやウェポンの空きスロットに装着して、その装備の性能を強化するためのパーツだ。

 同じアーマーやウェポンでも、パラメーターが異なり、アタッチメントスロットもあったり、なかったりする。これらの装備は敵が頻繁にドロップするため、敵を倒しまくって装備を更新していくというハックアンドスラッシュ(以下、ハクスラ)の遊びが楽しめる。

 とくに、パラメーターは同じ装備でも個体差が大きく、“装備を見つけるたびの一喜一憂”や“より強力な装備への更新”を高い頻度で体験できる。ハクスラ好きの筆者にとってはたまらない要素だった。
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 直接装備がドロップする以外にも、開発データという形で手に入ることもある。これは、素材を消費して装備を生産するためのレシピであり、この開発データ自体にもステータスの個体差が存在。また、ボスは固有の開発データをドロップする。ボス戦を周回して、より優れたステータスの開発データを集めることも可能だ。
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 本作において装備は、融合スキル以上に重要で、ステータスが上昇すると与ダメージが増え、攻撃の快適さも向上するため、強くなった実感をはっきりと得られる。その魅力に取り憑かれた筆者は、ストーリーそっちのけでフィールドを探索し、パーツ集めに夢中になるほど、本作のハクスラ要素を存分に楽しむことができた。
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 ただし、本作の装備更新要素は、ステータスとアタッチメントスロットのみであり、mod(追加効果)は存在しない。そのため、ハクスラの金字塔と言われるような作品が持つ底なしのディープさはない。

 それゆえに、ディープなハクスラにありがちな、沼りすぎてモヤモヤするという感覚も薄い。メカアクションを楽しみつつ、ほどよくパーツ集めに熱中できるいい塩梅に仕上がっており、ハクスラの入門ゲームとしてもおすすめだ。

メカものは苦手? とりあえず体験版を触って見るべし

 メカものは好き嫌いが分かれやすいジャンルだ。ユーザーの中には本作がメカアクションと聞いて、二の足を踏んでいる方も多いはず。しかし、本作に登場するアーセナルは、パワードスーツのため、ロボットのようなメカメカしさは薄く、操作性は生身のキャラクターを操っているのに近い。

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 アクションというジャンルが好きなら、だれもが楽しめる内容に仕上がっている。本編にセーブデータを引き継げる体験版が、各プラットフォームにて配信されているので、まずはそれをプレイして本作の魅力の一端を感じていただきたい。

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 そして、気に入ったら製品版を購入して、筆者がハマった融合による育成とパーツを更新していくハクスラ性をぜひ体感してほしい。

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