
2025年7月17日に発売された、任天堂のNintendo Switch 2用ソフト『ドンキーコング バナンザ』。本作は、『ドンキーコング』シリーズの3Dアクションとしては、ニンテンドウ64で発売された『ドンキーコング64』以来、26年ぶりの新作となる。
ドンキーコングのアクションであらゆる地形が破壊できるほか、ドンキーコングがいろいろな動物の姿にパワーアップする“バナンザ変身”、『スーパーマリオ オデッセイ』などにも登場したポリーンが13歳の少女の姿で登場するといった特徴を持つ。
ドンキーコングのアクションであらゆる地形が破壊できるほか、ドンキーコングがいろいろな動物の姿にパワーアップする“バナンザ変身”、『スーパーマリオ オデッセイ』などにも登場したポリーンが13歳の少女の姿で登場するといった特徴を持つ。
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本作の開発を手掛けるのは、『スーパーマリオ オデッセイ』などの“3Dマリオ”を手掛けてきた、任天堂の東京開発のチーム。『ドンキーコング』の新作を作ることになった経緯から、Nintendo Switch 2での開発の印象、そして、本作の細かな設定も含めた開発秘話をうかがった。
なお、本作の大きなネタバレには触れていないが、作中の展開などには触れているので、未プレイの方はご注意いただきたい。
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元倉健太氏(もとくら けんた)
『スーパーマリオ 3Dワールド』、『スーパーマリオ オデッセイ』でディレクターを担当。本作ではプロデューサーを務めている。文中は元倉
田中航氏(たなか わたる)
『スーパーマリオ ギャラクシー2』以降のいくつかの“3Dマリオ”に関わり、『スーパーマリオ オデッセイ』ではリードプログラマーを担当。本作ではディレクターを務めている。文中は田中
渡辺大介氏(わたなべ だいすけ)
『スーパーマリオギャラクシー』シリーズのキャラクターデザイン、『スーパーマリオ 3Dワールド』でデザインリードを担当。本作ではアートディレクターを務めている。文中は渡辺
新しい『ドンキーコング』のデザインを作るために
――皆さんは、これまで3Dの『スーパーマリオ』シリーズの開発を担当されてきましたが、今回『ドンキーコング』の新作を作ることになった経緯と、どのように『ドンキーコング』らしさを考えたのかをお聞きできますか?
元倉
もともと私の上司である小泉さん(小泉歓晃氏。3Dの『スーパーマリオ』シリーズや『ゼルダの伝説』でディレクターを歴任)から「このチームで3Dの『ドンキーコング』を作らないか」という話があったところから始まっています。
以前、『ドンキーコング ジャングルビート』(2004年に発売された、ニンテンドーゲームキューブ用ソフト)を開発したのですが、『ドンキーコング』に携わるのはそれ以来で長いこと時間も空いていたので、まずは『ドンキーコング』の生みの親である宮本さん(宮本茂氏。『スーパーマリオ』、『ゼルダの伝説』、『ピクミン』シリーズを手掛けた)と小泉さんに、それぞれが思う『ドンキーコング』らしさやイメージを聞きにいきました。
宮本さんは、ドンキーコング(キャラクターとしてのドンキーコング。以下、DK)にワイルドさだけでなく、ちょっと間抜けな雰囲気やひょうきんなイメージを持っていて、ハンドスラップなど動物らしいアクションをとても大事にしていました。小泉さんは『ドンキーコング ジャングルビート』のディレクションをしていたので、力の強さなどマリオより腕っぷしが強いイメージを持っていて。そういったヒアリングを通してチームでDKのイメージを固めていきました。
以前、『ドンキーコング ジャングルビート』(2004年に発売された、ニンテンドーゲームキューブ用ソフト)を開発したのですが、『ドンキーコング』に携わるのはそれ以来で長いこと時間も空いていたので、まずは『ドンキーコング』の生みの親である宮本さん(宮本茂氏。『スーパーマリオ』、『ゼルダの伝説』、『ピクミン』シリーズを手掛けた)と小泉さんに、それぞれが思う『ドンキーコング』らしさやイメージを聞きにいきました。
宮本さんは、ドンキーコング(キャラクターとしてのドンキーコング。以下、DK)にワイルドさだけでなく、ちょっと間抜けな雰囲気やひょうきんなイメージを持っていて、ハンドスラップなど動物らしいアクションをとても大事にしていました。小泉さんは『ドンキーコング ジャングルビート』のディレクションをしていたので、力の強さなどマリオより腕っぷしが強いイメージを持っていて。そういったヒアリングを通してチームでDKのイメージを固めていきました。
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――アーケードで稼動した初代『ドンキーコング』に始まり、レア社と開発したスーパーファミコンの『スーパードンキーコング』など、いろいろなシリーズ作品があったので、皆さんの中でもけっこうイメージが違ったのではないかと思うのですが?
元倉
まさしくチーム内でもいろいろなイメージがあって、まとめるのは本当に大変でした。ビルなどの都市を舞台にしたキャラクターのイメージを持っている人もいましたし、ジャングルなどを舞台にしたワイルドなイメージを持っている人もいて。ですので、チームの中でとても熱心に『ドンキーコング』シリーズを遊んできたスタッフを集めて、熱く語ってもらったりして特徴を抽出していきました。
――遊んでみると初代『ドンキーコング』らしい部分も感じますし、『スーパードンキーコング』ファンがニヤリとするような要素も多く感じますが、そういったヒアリングでファンの気持も汲み取っていったんですね。
――遊んでみると初代『ドンキーコング』らしい部分も感じますし、『スーパードンキーコング』ファンがニヤリとするような要素も多く感じますが、そういったヒアリングでファンの気持も汲み取っていったんですね。
田中
ちょうど私が『スーパードンキーコング』に夢中になって遊んでいた世代で、私より後輩になると、『スーパードンキーコング2』や『3』、『ドンキーコング64』のプレイヤーがいて、そういったシリーズ作に馴染みを持つスタッフが多くいましたね。
渡辺
私たちの世代はファミコンの『ドンキーコング』を遊んでいましたし、いろいろな『ドンキーコング』を遊んだ幅広い世代のスタッフが集まっていました。
――そのバラバラな印象を、最終的に「これが新しい共通のイメージだ」とまとめるのは、どのようにされたんでしょうか?
――そのバラバラな印象を、最終的に「これが新しい共通のイメージだ」とまとめるのは、どのようにされたんでしょうか?
元倉
まずは新しいDKをまとめていく過程で、スタッフから聞いたイメージや特徴をいろいろな側面から取り入れてみようと考えました。
渡辺
DKは、初代『ドンキーコング』では悪役ですが、ジャングルの王者のようなイメージのときもありましたし、そういった幅広い遍歴を持っていることが特徴のひとつだと考えまして。性格も含めて表情の幅をもっと広げることで、DKらしさが際立つのではないかと考えて、そういった部分を大切にデザインを作っていきました。
その中で、これまでにDKのイラストを担当してきたスタッフにも話を聞いて、「このパーツを大きくするとDKっぽくなるよ」とか、表情や体格なども含めてポイントを確認して。それを参考に今作らしさも加えつつ幅広いイメージになるように作っていきました。
――なるほど。そもそも今回DKのデザインが一新されているわけですが、それはまったく新しい『ドンキーコング』のゲームに合うキャラクターのイメージを作るために、デザインを変える必要があった、ということでしょうか?
その中で、これまでにDKのイラストを担当してきたスタッフにも話を聞いて、「このパーツを大きくするとDKっぽくなるよ」とか、表情や体格なども含めてポイントを確認して。それを参考に今作らしさも加えつつ幅広いイメージになるように作っていきました。
――なるほど。そもそも今回DKのデザインが一新されているわけですが、それはまったく新しい『ドンキーコング』のゲームに合うキャラクターのイメージを作るために、デザインを変える必要があった、ということでしょうか?
元倉
その通りでデザインを変えようというのがもともとの目的ではなく、新作を作っていくうえで必然のものでした。
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――先ほどDKの表情のお話がありましたが、今回のDKは非常に表情が豊かで、コミカルなものも多くありました。ドンキー=間抜けという部分をフィーチャーしたのかと思っていたのですが、それよりは幅の広さということなのでしょうか?
渡辺
そうですね。多彩な一面を見せたいという意図になります。
デザインのお話をすると、開発の初期段階で仮の3Dモデルを作って動かしていたんですが、その動いている姿が画面内でとても大きく見えたので、「これは表情変化が映えるキャラクターだな」という印象を持ったんです。このゲームの特徴にもなり得ますから、表情の幅も含めて、今回表情変化にはとくに力を入れて作るぞ、という流れになりました。
あとは、アクションが非常に多彩になることがわかっていたので、そのアクションと表情が連動することで操作しているだけで楽しくて気持ちのいいデザインにしようと考えました。
――たしかに破壊アクションも相まって、動かしていて楽しいキャラクターです。カットシーンではだいぶコミカルな表情が目立ちますし、幅というかギャップが大きいですよね。
デザインのお話をすると、開発の初期段階で仮の3Dモデルを作って動かしていたんですが、その動いている姿が画面内でとても大きく見えたので、「これは表情変化が映えるキャラクターだな」という印象を持ったんです。このゲームの特徴にもなり得ますから、表情の幅も含めて、今回表情変化にはとくに力を入れて作るぞ、という流れになりました。
あとは、アクションが非常に多彩になることがわかっていたので、そのアクションと表情が連動することで操作しているだけで楽しくて気持ちのいいデザインにしようと考えました。
――たしかに破壊アクションも相まって、動かしていて楽しいキャラクターです。カットシーンではだいぶコミカルな表情が目立ちますし、幅というかギャップが大きいですよね。
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渡辺
『スーパードンキーコング』以降のカッコよくワイルドなイメージが強い人にとってはギャップが大きいので、コミカルな部分が際立ったと感じるかもしれません(笑)。
元倉
真剣なシーンではそういうワイルドなイメージを表情で吸収して。バナンザ変身をしたときには、もともとが悪役として初登場したキャラクターなので、ちょっと悪役っぽさも出しています。
――ああ、なるほど。ダークヒーローのような。
――ああ、なるほど。ダークヒーローのような。
元倉
そうですね。そういう部分でもワイルドさを強調したりして。
渡辺
バナンザ変身のデザイン時に出していたキーワードのひとつには“ダークヒーロー”もあって、目指していたもののひとつでした。
――コングバナンザはだいぶ悪そうにも見えますね(笑)。
――コングバナンザはだいぶ悪そうにも見えますね(笑)。
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元倉
そういうところも少しマリオと違うところだと思いますね。
渡辺
優等生ではないイメージになっていると思います。
――DKが大きく変わった一方で、ディディーコングやディクシーコング、クランキーコングなどのデザインは大きく変える話は出なかったのでしょうか?
――DKが大きく変わった一方で、ディディーコングやディクシーコング、クランキーコングなどのデザインは大きく変える話は出なかったのでしょうか?
渡辺
じつはディディーやディクシーたちも若干変わっていて、顔つきなどを調整しています。
クランキーも含めて過去作から本作に登場しているキャラクターは『ドンキーコングバナンザ』風のアレンジをしていて、たとえばクランキーはふだんは杖を持っているんですが、今回はスコップを持っているんです。
DKみたいにパワフルに壁は壊せないけれど、スコップで掘ってきたのかな、といった想像をしていただけるようなアレンジをそれぞれに加えています。
クランキーも含めて過去作から本作に登場しているキャラクターは『ドンキーコングバナンザ』風のアレンジをしていて、たとえばクランキーはふだんは杖を持っているんですが、今回はスコップを持っているんです。
DKみたいにパワフルに壁は壊せないけれど、スコップで掘ってきたのかな、といった想像をしていただけるようなアレンジをそれぞれに加えています。
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地形だけでなく、中身の素材まで作るボクセルのレベルデザイン
――なるほど。大きく変えるほどではないけれど、作品に合わせたアレンジになったんですね。ゲームの基本的な流れとしては、『スーパーマリオ オデッセイ』などのいわゆる“3Dマリオ”を彷彿とさせるようなものになっていると思いますが、今回のコンセプトである破壊や探索の相性から、こういった形にしようとなったのでしょうか?
元倉
破壊の楽しさを考える中で、まずとにかく壊すことを楽しんでもらってその先の報酬としてプレイヤーが何を得ることができるという、探索と報酬という考えかたが基本にあります。
『スーパーマリオ オデッセイ』のときは、その報酬をすべてオデッセイ号に入れていたんですけど(編注:『スーパーマリオ オデッセイ』では入手したパワームーンや見つけたステッカーなどが、マリオが乗るオデッセイ号の拡張、装飾などにつながっていた)、今回は入手したバナモンドをDKのスキルにすべて還元するようにしました。
そうすると、パワーアップしたDKでまた新たなバナモンドが手に入りやすくなるというサイクルにつながっていくので、『スーパーマリオ オデッセイ』と違う体験にできるかなと。
『スーパーマリオ オデッセイ』のときは、その報酬をすべてオデッセイ号に入れていたんですけど(編注:『スーパーマリオ オデッセイ』では入手したパワームーンや見つけたステッカーなどが、マリオが乗るオデッセイ号の拡張、装飾などにつながっていた)、今回は入手したバナモンドをDKのスキルにすべて還元するようにしました。
そうすると、パワーアップしたDKでまた新たなバナモンドが手に入りやすくなるというサイクルにつながっていくので、『スーパーマリオ オデッセイ』と違う体験にできるかなと。
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――今回の舞台となるフィールドですが、世界の広がりに上下の高さ、深さもあって、破壊もあいまってほかのゲームではなかなか体験できない立体的な広大さがあると思います。それだけ作るのも大変というか、どういう順序で作っていったのか想像がつかないのですが……。
元倉
プログラマーはとくに大変だったと思います(苦笑)。ゲームデザインとしては、寄り道をしたり、自由な破壊ができたりする楽しさを生み出すために、まずちゃんと破壊をテーマにした正規のルートを作るのが前提でした。そのうえで、そのルールを壊していくからおもしろくなる、というイメージで寄り道などを作っています。
ただ今回は地面の中などの、通常では見えないところも作る必要があって、そもそも地面の中を作るようなツールがないので手探りでした。
ただ今回は地面の中などの、通常では見えないところも作る必要があって、そもそも地面の中を作るようなツールがないので手探りでした。
田中
“開発者に訊きました”でもお話しましたが、今回はボクセル(編注:立体的なドット、または箱のようなイメージ)を使って早い段階から作り始めました。ただ、そもそも一般的な3Dのゲームはポリゴン(編注:三角形などの多角形で構成されている平面の板)でできていて、ポリゴンの場合は表面しか作らなくていいんですが、ボクセルで掘ったり破壊したりできるようにすると考えた場合、あらゆる物体の中身まで作らなくてはいけないんですね。
どうやれば中身まで考えたものが作れるのか、レベルデザインを組めるのか、みたいなことを最初にずーっと長いこと検討して試行錯誤していまして、このボクセルをゲーム内でどう扱っていくかということが最初の課題でした。
その試行錯誤の中で「どんどん下に掘っていきましょう」とか、ひとつのステージの中に複数の階層を用意して、場所によっては階層ごとに景色が変わったり、上下に何らかの影響があったり……といったバリエーションを出すアイデアが集まってきて徐々に進んでいきました。
――こうやって整理してお話を聞くと「なるほど」と思うんですが、それをゼロから作るのは途方もない試行錯誤ですよね……?
どうやれば中身まで考えたものが作れるのか、レベルデザインを組めるのか、みたいなことを最初にずーっと長いこと検討して試行錯誤していまして、このボクセルをゲーム内でどう扱っていくかということが最初の課題でした。
その試行錯誤の中で「どんどん下に掘っていきましょう」とか、ひとつのステージの中に複数の階層を用意して、場所によっては階層ごとに景色が変わったり、上下に何らかの影響があったり……といったバリエーションを出すアイデアが集まってきて徐々に進んでいきました。
――こうやって整理してお話を聞くと「なるほど」と思うんですが、それをゼロから作るのは途方もない試行錯誤ですよね……?
田中
そうですね。我々もわからないからやってみるしかなくて(笑)。最初のころはみんなで「どうやって作ったらいいかわかりません」、「とりあえずやってみましょう」ってしょっちゅう言っていましたね。
――そうなりますよね……。考えかたとしては、たとえばオープンワールドのような横に広い世界を作るという選択肢もあったと思うんですが、それをあえて地下に潜る形にしたのは、そのほうが新しいゲームになるという発想なのでしょうか?
――そうなりますよね……。考えかたとしては、たとえばオープンワールドのような横に広い世界を作るという選択肢もあったと思うんですが、それをあえて地下に潜る形にしたのは、そのほうが新しいゲームになるという発想なのでしょうか?
元倉
はい。ボクセルを使った掘るゲームにしたかったので、下のほうに向かっていくというゲームの進行はわりと素直な考えかたかなと思います。上に向かっていくようなゲームとも差別化できますし。
田中
たとえば壁の向こうに何かがあるとか、床の下に何かが見えたりして、それを目指して壊していくというのは、破壊の要素があるからこそ考えやすいし作りやすくて、最初のほうからそういった発想がありました。
そうすると、隠す対象を上のほうに設置するより下にあるほうが隠しやすく見つけやすいということもあって、下に掘っていく流れになっていきました。
――一方で地中に潜るとカメラの位置が難しくなると思うんですよね。本作ではある程度潜ると、地中のカメラと言いますか地底が透けて見えるような仕様になっていて、あの切り替えのタイミングも自然に感じますが、相応の苦労があったのではないかと。
そうすると、隠す対象を上のほうに設置するより下にあるほうが隠しやすく見つけやすいということもあって、下に掘っていく流れになっていきました。
――一方で地中に潜るとカメラの位置が難しくなると思うんですよね。本作ではある程度潜ると、地中のカメラと言いますか地底が透けて見えるような仕様になっていて、あの切り替えのタイミングも自然に感じますが、相応の苦労があったのではないかと。
田中
我々も地中カメラと呼んでいたんですが、3Dアクションゲームでカメラがとても大事だということは経験から理解していたので、対策をだいぶ初期から考えていました。
地面を掘っていったらあっという間にカメラの行き場所がなくなりますから、深い地中にもぐっていると判別できたら地形を突き抜けてでもカメラを回せるようにしようと考えていました。ただそこまでは簡単にできても、実際には地形の中に入り込むと見せたくないものが見えちゃったりするので、それを自然に見せる表現や制御は本当に苦労しました。
地面を掘っていったらあっという間にカメラの行き場所がなくなりますから、深い地中にもぐっていると判別できたら地形を突き抜けてでもカメラを回せるようにしようと考えていました。ただそこまでは簡単にできても、実際には地形の中に入り込むと見せたくないものが見えちゃったりするので、それを自然に見せる表現や制御は本当に苦労しました。
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元倉
あとは、プレイヤーが地形を自由に変えられるのも難しかったポイントで。決まったように壊せる、変化するのであればプログラミングとしても対処のしかたがいろいろあったと思うんですが、それがプレイヤーの動きしだいで大きく変わっていくので。
――今回、壁があってその上下にある天井や地面に面している部分を壊したら、壁が浮いたまま存在するという仕様になっています。重力を無視したゲームならではの表現ですが、たとえば浮かせずに地面に落ちるといった設定にしようということにはならなかったのでしょうか?
――今回、壁があってその上下にある天井や地面に面している部分を壊したら、壁が浮いたまま存在するという仕様になっています。重力を無視したゲームならではの表現ですが、たとえば浮かせずに地面に落ちるといった設定にしようということにはならなかったのでしょうか?
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田中
それも、実際に試したことがあるんです。建物みたいな場所で一部を壊したら連動して別のところが崩れるとか、地形を掘っていって浮いた部分ができたら地形といっしょに落ちていく……といったことを試したんですが、やってみると意外とその建物や地形がいつ崩れるのかが遊ばれている方にはわからないんですよね。
自分が壊したものに対して予期せぬことが起こりすぎるというのは、遊びとしてはうれしくないことが起きるケースもあって。それを考えると、重力を無視して浮いていてもむしろそれを足場に戻りやすい場面もあって、浮いているほうが遊びやすい、ということになりました。
そもそも『スーパーマリオ』でもハテナブロックが浮いていますし。
――たしかに!!!
自分が壊したものに対して予期せぬことが起こりすぎるというのは、遊びとしてはうれしくないことが起きるケースもあって。それを考えると、重力を無視して浮いていてもむしろそれを足場に戻りやすい場面もあって、浮いているほうが遊びやすい、ということになりました。
そもそも『スーパーマリオ』でもハテナブロックが浮いていますし。
――たしかに!!!
田中
「ブロックが浮いているのはおかしい」と言い出すと、おかしなことしかないような世界なので(笑)。けっこうあっさりと割り切って浮くことを活かしましょうとなりました。
元倉
一方で落下してくるキューブなどもあるので、遊びによって重力の使い分けをしています。
――なんでも自由に破壊ができるようになると、壊しすぎて行きたい場所に行けなくなってしまうとか、道筋が難しくなってしまうといった、レベルデザインとして想定外のことも発生すると思うんですが、その難しさはなかったのでしょうか?
――なんでも自由に破壊ができるようになると、壊しすぎて行きたい場所に行けなくなってしまうとか、道筋が難しくなってしまうといった、レベルデザインとして想定外のことも発生すると思うんですが、その難しさはなかったのでしょうか?
元倉
はい、ありました。地形がいろいろ変わってしまうので、まずはどんな状況でも乗り越えられるようなDKの挙動、アクションを作るということに注力しました。たとえば“3Dマリオ”だったらこのコリジョン(編注:地形の当たり判定)はNGにしましょう、といった制限をかけるんですが、本作はプレイヤーの破壊しだいでさまざまなコリジョンを作ることができてしまうのでNGをなかなか設定できません。でも、プレイヤー担当のプログラマーが「その仕様でOKです」と言ってくれて(笑)。
――許可が出たと(笑)。
――許可が出たと(笑)。
元倉
また、開発中には地形を破壊しすぎて目的地がわかりづらくなる、といったような意見がテストプレイで出ました。このようなことには、ポリーンが鼻歌を歌うと目的地へのガイドが出るようにしたり、目的地のアイコンを表示したりといった方法で対応しています。
田中
あと進行がまったくできないような状況にはならないように、壊せない鉄骨や鉄板をある程度設置しているので、それこそすべて壊したとしてもどこにも行けないということは、そうそうないと思います。もし壊しすぎてしまったということがあれば、地形リセットも用意していますので。
元倉
もし迷っても、マップも地形の変形をリアルタイムに反映するものになっていますので、マップを見てもらえるとわかりやすいと思います。
あとは、特定の場所で行ったり来たりをくり返すと同じ場所の地形が壊れすぎてどっちを向いているかわかりづらくなってしまうので、バナモンドを散らしたり、ちょっと意図的に別のエリアへ行くようにしたりといった構造にしています。
――ああ、なるほど。階層を広く回るように誘導されているような。
あとは、特定の場所で行ったり来たりをくり返すと同じ場所の地形が壊れすぎてどっちを向いているかわかりづらくなってしまうので、バナモンドを散らしたり、ちょっと意図的に別のエリアへ行くようにしたりといった構造にしています。
――ああ、なるほど。階層を広く回るように誘導されているような。
元倉
はい。ここである程度の目的を果たしたら、つぎのエリアへ行くという感じで。“3Dマリオ”でもやっているような大きな視点でのレベルデザインと、そういった小さな視点でのレベルデザインを組み合わせたものにしています。
――ではテストプレイ中は地形をすべて壊してみよう、といったことをくり返されているんですよね?
――ではテストプレイ中は地形をすべて壊してみよう、といったことをくり返されているんですよね?
元倉
はい、もちろん。それで地形を調整したりもしています。
――毎回壊して試してというテストプレイは、ちょっと考えるだけでも壮絶な……。
――毎回壊して試してというテストプレイは、ちょっと考えるだけでも壮絶な……。
田中
開発中は、地形をすべて吹き飛ばすボタンを用意していまして……。
――ああー! それは爽快なボタンですね(笑)。
――ああー! それは爽快なボタンですね(笑)。
元倉
でもテストプレイは、想定しないことがたくさんありましたね。
田中
難しかったですね。たぶん空っぽになった地形とふだんの地形で、地形を2倍作っているようなものでした。
――その地形も岩や砂、コンクリートとか、材質なども設定されているわけですから、時間がかかりますね……。
――その地形も岩や砂、コンクリートとか、材質なども設定されているわけですから、時間がかかりますね……。
人間世界とは常識が違う、破壊されて喜ぶワレルヤの民
――破壊がコンセプトの本作ですが、住民のワレルヤも破壊できることに衝撃を覚えました。しかも壊すと、ワレルヤがむしろ喜ぶというか歓迎するようなポジティブな反応が返ってきて。そういったリアクションも含めて、住民を破壊できるようにした経緯を教えてください。
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田中
最初のきっかけは、ボクセル技術と破壊をこのゲームの技術的なテーマに設定したこともあって、「とにかくなんでもボクセルにしてみよう」という時期がありました。その一環としてNPCがボクセルだったら何ができるだろうと考えてやってみたところ、NPCを素材として使えたり、お金を背負わせてお金稼ぎに利用できたり、いろいろな形にモーフィングさせて標識代わりにしたりと、ただ破壊できるだけでなくNPCに新たな機能を付加しておもしろいものができるな、と思ったんです。
さらに各キャラクターのテキストを書いているスタッフが、そういった破壊をすべてポジティブに変えてくれるような、破壊することがこのゲームとして正しいと思えるようにセリフを用意してくれて。
結果的に壊したのに感謝されるような特徴的なセリフも生まれて、お腹が痛いと言っているワレルヤを壊したらお金が出てきて「スッキリした」って言ってくれるような。僕らも初めて見たとき笑っちゃったんですけど(笑)。
――(笑)。衝撃ですよね。けっこう奇想天外な世界観だなと思いました。
さらに各キャラクターのテキストを書いているスタッフが、そういった破壊をすべてポジティブに変えてくれるような、破壊することがこのゲームとして正しいと思えるようにセリフを用意してくれて。
結果的に壊したのに感謝されるような特徴的なセリフも生まれて、お腹が痛いと言っているワレルヤを壊したらお金が出てきて「スッキリした」って言ってくれるような。僕らも初めて見たとき笑っちゃったんですけど(笑)。
――(笑)。衝撃ですよね。けっこう奇想天外な世界観だなと思いました。
渡辺
ワレルヤには人間世界の我々が考える「暴力を振るうのはよくない」という常識が通じないんでしょうね。なので、この世のものとはまた違うイメージになるようにデザインを心掛けました。
あとワレルヤたちはボクセルの組み合わせでできているので、身体の形状もさまざまなパターンがあって、同じ形が存在しないようなランダム形状になっています。無限大とは言いませんが、かなりのバリエーションがあって、そういう意味でもかなり特殊なNPCになっていると思います。
――土を投げつけてくっつけたりもできますし。
あとワレルヤたちはボクセルの組み合わせでできているので、身体の形状もさまざまなパターンがあって、同じ形が存在しないようなランダム形状になっています。無限大とは言いませんが、かなりのバリエーションがあって、そういう意味でもかなり特殊なNPCになっていると思います。
――土を投げつけてくっつけたりもできますし。
渡辺
そうなんです。それもできることを加えれば、バリエーションは無限大かもしれません(笑)。
元倉
ワレルヤ以外のNPCは、攻撃しようとするとハイタッチするようにしています。
渡辺
殴れると暴力っぽくなってしまうのでハイタッチになっていて。でも服がバンと破れたり、乗っている船が壊れたりするんですが、それでもポジティブな反応しかしないのは地下世界の住人の気質なのかもしれませんね。
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――お店とかも壊せますが、まったくネガティブなことを言わないのですごいなと。
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元倉
壊すことってふだんの生活ではやってはいけない分類のもので、だからこそやってみたい、楽しいということもあると思うんです。なので、その衝動をポジティブにお伝えできるようにしたいと思っていました。
――ワレルヤは形状も特徴的ですが、目だけがすごくキラキラしていたりするのもポイントだと思うんですが、あのデザインはどのように作られたのでしょうか?
――ワレルヤは形状も特徴的ですが、目だけがすごくキラキラしていたりするのもポイントだと思うんですが、あのデザインはどのように作られたのでしょうか?
渡辺
先ほどもお伝えしたように、我々の常識とはまた別のルールで生きているヘンな生き物にしたかったというのがベースにあります。ボクセルでできていて壊せることと鉱石っぽい表現の相性がよかったこともあり、鉱石の身体とキレイな目だけのシンプルだけど気になってしまうデザインにしています。
――道具屋にいる“ヨロズヤの民”など、名前と見た目が異なるものがいますが身体の素材が違うものがいますが、違うと別の人種みたいなイメージなんですか?
――道具屋にいる“ヨロズヤの民”など、名前と見た目が異なるものがいますが身体の素材が違うものがいますが、違うと別の人種みたいなイメージなんですか?
渡辺
すべてワレルヤの民ではありますね。同じ民族だけど役割や趣向で見た目が変化します。なかにはキリンになりたくて、キリンを模して背が高くなっているワレルヤもいます。
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『スーパードンキーコング』世代ならダチョウは飛ぶもの
――これまでの任天堂のアクションゲームだと、ボス戦で敵の攻撃を見切ってプレイヤー側が攻撃するというターンを3回くり返すようなパターンがあったと思うんですが、今回はゲージをある程度減らす、もしくは1回の攻撃などでつぎの階層へ飛んでいったりすることが多く、3回のパターンがほとんどなかった気がします。これはパターンを新しくする意図などがあったのでしょうか?
田中
これもボクセルの影響のひとつです。ボスもボクセルで作ってみようといろいろ試していたんですが、その中でやはりこれまでの“3Dマリオ”と違うボスのパターンがいくつも出せそうだなとなりまして。
ボスにつながる長いボクセルの道をたどるものや、大きな体積のボスを破壊しつくすタイプのものがある中、そのうえで3回繰り返すというパターンにこだわる必要はないなという印象が強くなっていました。
さらにボクセルの遊びは、いつでもどこでも地形破壊ができて破片を取ったり壊したりできるので、ボスもいつでも壊せていつでもダメージが与えられるようにしたほうが新しい遊びになるんじゃないかと思って。そう考えると、これまでのような敵のターンがあって、それを避けて攻撃のチャンスタイムを待つようなものに縛られなくてもいいんじゃないか、という考えが出てきた結果、いままでの形とはちょっと違うパターンにしようとなりました。
ボスにつながる長いボクセルの道をたどるものや、大きな体積のボスを破壊しつくすタイプのものがある中、そのうえで3回繰り返すというパターンにこだわる必要はないなという印象が強くなっていました。
さらにボクセルの遊びは、いつでもどこでも地形破壊ができて破片を取ったり壊したりできるので、ボスもいつでも壊せていつでもダメージが与えられるようにしたほうが新しい遊びになるんじゃないかと思って。そう考えると、これまでのような敵のターンがあって、それを避けて攻撃のチャンスタイムを待つようなものに縛られなくてもいいんじゃないか、という考えが出てきた結果、いままでの形とはちょっと違うパターンにしようとなりました。
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――なるほど。たしかにバナンザ変身などもあって、いつでも攻撃できるチャンスがありますね。そのバナンザ変身のお話もうかがいたいのですが、そもそも“バナンザ”という言葉はどういった由来で生まれたんでしょうか?
元倉
オープニングでDKが採掘をしていたりするんですが、もともとゴールドラッシュのようなイメージで作っていました。そのようなゲームを表現する言葉を探す中で、“大当たり”などの意味を持つ“ボナンザ”というワードがこのゲームに合っている、という話をしていたんです。さらにその“ボナンザ”にバナナをかけたらいいんじゃないかというアイデアが出てきて、“バナンザ”という言葉が生まれました。ゲームをうまく表現していることに加え、日本だけでなくほかの地域でも「響きがいい」という話や、初めて聞くけど覚えやすいとか、いろいろいい反応があって、「これでいこう!」となりました。
田中
“ボナンザ”には鉱脈みたいな意味もあるのでゴールドラッシュの掘り当てるというものに合っていて、このゲームの場合はバナナを掘り当てるゲームなので、まさしく。
――なるほど。ゲーム内でも長老たちが「バナンザー!」と言っていますよね。
――なるほど。ゲーム内でも長老たちが「バナンザー!」と言っていますよね。
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元倉
あの世界では共通のワードになっています。
――そのバナンザ変身では、複数のさまざまな変身があるわけですが、そもそもDKを変身させることになった経緯や変身する動物の選定の意図などをお聞きできますか?
――そのバナンザ変身では、複数のさまざまな変身があるわけですが、そもそもDKを変身させることになった経緯や変身する動物の選定の意図などをお聞きできますか?
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元倉
私の場合、アクションゲームを作る際に主人公の能力を一時的にパワーアップさせる必要があるか、というところから考えます。今回はプレイヤーがいつでも自由に使える能力にすることが破壊というアクションに適しているだろうと考えました 。
ですが、なかなか決定的なアイデアが出ない中で、デザイナーがマッチョなシマウマに変身したDKのアートを描いてきたんです。それまではエレメント系というか、火を使うものはどうかといった話も出ていましたが、マッチョなシマウマDKを見たときに動物由来のDKらしさをとても感じて。試作を経て、わりとすぐ「これでいこう」と決まりました。
ですが、なかなか決定的なアイデアが出ない中で、デザイナーがマッチョなシマウマに変身したDKのアートを描いてきたんです。それまではエレメント系というか、火を使うものはどうかといった話も出ていましたが、マッチョなシマウマDKを見たときに動物由来のDKらしさをとても感じて。試作を経て、わりとすぐ「これでいこう」と決まりました。
渡辺
このくらい振り切ったほうがおもしろいだろうとなりましたね。
田中
動物でいこうとなってからは、たとえば一時的に滑空させたいとか、プレイしてもらいたいパワーアップの案はある程度揃っていたので、そこにうまく当てはまる動物を選んでいったイメージですね。過去のアニマルフレンドも登場させられますし。
――なるほど。滑空をするのにダチョウバナンザへの変身があって、ゲーム内でも「ダチョウは走るほうが速い」といったツッコミがありましたけど、あえてダチョウを選んだのは……。
――なるほど。滑空をするのにダチョウバナンザへの変身があって、ゲーム内でも「ダチョウは走るほうが速い」といったツッコミがありましたけど、あえてダチョウを選んだのは……。
田中
『スーパードンキーコング』世代としてはダチョウは飛ぶものですから(笑)。(※編注:『スーパードンキーコング』では、アニマルフレンドとしてダチョウのエクスプレッソが滑空をする)
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――ですよね(笑)。
元倉
あとはデザインを全部筋肉質にしてもらっていまして。ダチョウもあれだったら飛べるかなと。
渡辺
ただのダチョウではないですからね。
元倉
そうですね、筋肉で解決していく(笑)。
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――(笑)。DKのアイデンティティというか、DKを超越するのは違和感なかったんでしょうか?
元倉
はい。そこはもう気にせず。
渡辺
おもしろければOKという感じですね。
――最近はマリオもゾウになる時代ですからね(笑)。きっかけはデザイナーさんのシマウマのアートだったとのことですが、この発想はどこから来たんでしょうか?
――最近はマリオもゾウになる時代ですからね(笑)。きっかけはデザイナーさんのシマウマのアートだったとのことですが、この発想はどこから来たんでしょうか?
渡辺
デザイナー陣がいろいろパワーアップができるアイデアを探しているタイミングだったんですが、枠にとらわれないで自由におもしろいものを出していこう、という柔軟なムードがあった時期だったんです。そういった状況でもあったので、枠を取っ払ってでもマッチョな動物に変身ができるみたいな、おもしろいアイデアが出やすかったんだと思います。
――バナンザ変身のデザインとしては、先ほどダークヒーローというイメージがありましたが、どれもみんなマッチョで強そうな雰囲気になっていますよね。
――バナンザ変身のデザインとしては、先ほどダークヒーローというイメージがありましたが、どれもみんなマッチョで強そうな雰囲気になっていますよね。
渡辺
パワーアップしたイメージをわかりやすく伝えたいと思っていましたし、DKがベースになっていることもあって、筋骨隆々のパワフル系というのは共通のイメージでした。
――バナンザ変身後の顔などを見ればDKらしさを感じるのですが、変身した姿のDKらしさはどのように作っていったのでしょうか?
――バナンザ変身後の顔などを見ればDKらしさを感じるのですが、変身した姿のDKらしさはどのように作っていったのでしょうか?
渡辺
顔つきにDKらしさを残すようにしているのと、DKのトレードマークのネクタイは変身後も着用しています。バナンザのデザインの特徴としては、バナナという共通のモチーフを設けています。DK自体にバナナのデザインがあるわけではないのですが、バナナの力で変身しているというところで、髪型などいろいろなところにバナナを使っています。
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バナナの影響を大きく受けた地下世界
――アートのイメージとしては、今回これまでの任天堂タイトルではあまり見ない色合いになっているように感じましたが、どのようなイメージで色味を選んでいったのでしょうか?
渡辺
本作は地下世界が舞台で、地上の文明とは明らかに違うヘンテコな世界に迷い込んだというおもしろさを表現したいという意識がありました。そのうえで各階層を下へ下へと進んでいくんですが、新しい階層に着くたびに新しい驚きを感じてほしかったので、階層ごとに色や要素をバラけさせています。なので扱う色味が多く、これまでと異なる印象になったのかもしれません。
あとは要所要所で、ピンク色と水色のネオンカラーを差し色として使っています。この色は初代『ドンキーコング』に登場するピンクの鉄骨や水色のハシゴをモチーフにしていて、そういった色合いも含めて多彩な色合いになっているんだと思います。
冒頭にもお話しましたが、初代『ドンキーコング』の生みの親である宮本さんから、ニューヨークのネオン街の色をモチーフにしているという話を聞いたので、それをヒントに今作らしさとしてアーバンな雰囲気を入れつつも、なんとなく初代『ドンキーコング』を感じるような効果を狙っています。
あとは要所要所で、ピンク色と水色のネオンカラーを差し色として使っています。この色は初代『ドンキーコング』に登場するピンクの鉄骨や水色のハシゴをモチーフにしていて、そういった色合いも含めて多彩な色合いになっているんだと思います。
冒頭にもお話しましたが、初代『ドンキーコング』の生みの親である宮本さんから、ニューヨークのネオン街の色をモチーフにしているという話を聞いたので、それをヒントに今作らしさとしてアーバンな雰囲気を入れつつも、なんとなく初代『ドンキーコング』を感じるような効果を狙っています。
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――なるほど。各階層の世界も、これまでの『ドンキーコング』らしさを感じる部分もあれば、これまでのイメージと異なるものもありましたが、そのあたりは意識して新しいものにしているのでしょうか?
渡辺
そうですね。3Dの『ドンキーコング』としては26年ぶりの新作ということもあって、過去作のファンの方の気持ちは大事にしつつ、ゲーム性はもちろん、アートでも新しい『ドンキーコング』を作っていきたいという想いがありましたので、それは主題として考えていきました。
元倉
階層は動物などがテーマになっているんです。キリンの形をした煙突とか。そういうのも一風変わった印象になっていると思います。
渡辺
これは裏設定みたいなものなんですが、バナルートの力が地下世界全体にだいぶ影響を与えているであろうということをヒントにしてあらゆるものがバナナっぽい形状をしていたり、各階層の住民である動物の意匠を汲んだようなモチーフになっていたりとか、そういったイメージを混ぜて独自の世界を作っていきました。
――ああー、地形にバナナの模様みたいなものが刻印されていますが、あれもバナルートの影響なんですね。
――ああー、地形にバナナの模様みたいなものが刻印されていますが、あれもバナルートの影響なんですね。
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渡辺
そうですね。あとは地面に生えている草や木や岩の形状などもバナナっぽくなっていたりして、それもバナルートの影響です。よく見るといろんなところにバナナがある。
――ちなみに、バナルートがどういった存在なのかハッキリとはわからないのですが……。何か超越した存在なのかなと。
――ちなみに、バナルートがどういった存在なのかハッキリとはわからないのですが……。何か超越した存在なのかなと。
元倉
そうですよね(笑)。あの地下世界はさまざまなものがバナナで構成されているんですが、その源泉となっているもので、まさにバナナを超越したバナナだと思っていただければ。
――なるほど。バナモンドもダイヤモンドのような鉱石のイメージがあるんですが、DKはあれを食べている、という認識でいいんですか? 硬くないのかなと思いながら見ているんですが(笑)。
――なるほど。バナモンドもダイヤモンドのような鉱石のイメージがあるんですが、DKはあれを食べている、という認識でいいんですか? 硬くないのかなと思いながら見ているんですが(笑)。
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渡辺
食べてます(笑)。DK以外は食べていませんが、DKはあれを食べてスキルが使えるようになるという、パワーの源になっています。
田中
バナナ味らしいですね。
――ちゃんとバナナ味!
――ちゃんとバナナ味!
元倉
これまでもDKはバナナ好きという設定はあったんですが、ちゃんとバナナを食べているシーンは少なかったので、それをちゃんと見せたいよね、という話をしていました。
渡辺
どんどん口に運んでいきますから。
――あのテンポがいいですよね。だんだん早くなって、そのリズムに合わせて「Oh バナ~ナ」という掛け声が入って。とても覚えやすい。
――あのテンポがいいですよね。だんだん早くなって、そのリズムに合わせて「Oh バナ~ナ」という掛け声が入って。とても覚えやすい。
渡辺
当初はもう少しゆっくり味わって食べていた時期もあったんですが、それこそ何百回と見る演出になるので、もっとコンパクトにしていく中で現在のスピード感、テンポになりました。
――あの「Oh バナ~ナ」の掛け声も当初から入っていたんですか?
――あの「Oh バナ~ナ」の掛け声も当初から入っていたんですか?
渡辺
演出をコンパクトにしたりといろいろ変えている中で、サウンドチームのスタッフが入れてくれました。
元倉
あの掛け声は、ゲーム内の誰が言っているかよくわかりませんからね(笑)。
――みんなの脳内で鳴っている謎の声でしょうか(笑)。各階層の世界は、ジャングルのようなところもあれば氷の世界もあったりと、いろいろなバリエーションがありましたが、どのように作成していったのでしょうか?
――みんなの脳内で鳴っている謎の声でしょうか(笑)。各階層の世界は、ジャングルのようなところもあれば氷の世界もあったりと、いろいろなバリエーションがありましたが、どのように作成していったのでしょうか?
渡辺
アートの前に遊びありきで作っていますので、まずはディレクターとその階層でやりたい遊びはどういったものなのか、どんな設定や要素があるか、といったことをすり合わせして階層ごとの大枠のイメージを決めます。その後、デザイナーのほうでそのイメージを参考に、先ほどのお話にもあったバナナや動物のモチーフも考慮しながらコンセプトアートを描いていく、という流れです。
――地下世界なのに、急に青空が広がる世界があったりして驚きました。
――地下世界なのに、急に青空が広がる世界があったりして驚きました。
渡辺
開発初期はいわゆる地下世界らしい雰囲気を重視して考えていた時期もあったんですが、それだとどうしても驚きやメリハリがなくなってしまうので、“地下らしさ”よりも“地下なのに”という驚きを重視しようということになり、地下世界の縛りというものは用意せずに、なんでもありのヘンテコな世界にしています。
――リゾートの階層の巨大スイカは、スイカの中に入って掘っていったりとめちゃくちゃ夢がありました。
――リゾートの階層の巨大スイカは、スイカの中に入って掘っていったりとめちゃくちゃ夢がありました。
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渡辺
巨大な果物っていいですよね。あれは試作の時期にデザイナーがとあるスイッチを押すと巨大なスイカがバカッと割れるという、スイカ割りができるみたいなギミックを作っていて、それがおもしろかったのでヒントにして世界を作っていきました。
元倉
掘ってるときの音はスイカを食べているときの音なんですが、あれはサウンドのスタッフが実際にスイカを買ってきて収録したんですよね。
田中
失敗もそうそうできないので収録は緊張感があったみたいです。
――おかげでシャクシャクしたいい音が録れたんですね(笑)。
――おかげでシャクシャクしたいい音が録れたんですね(笑)。
13歳のポリーンとこれまでのポリーンの関係性は……
――世界観や設定まわりもお聞きしたいと思います。今回、初代『ドンキーコング』から登場してきたポリーンが13歳の少女となって登場しました。ポリーンは最近では『スーパーマリオ オデッセイ』でニュードンク・シティの市長として登場していましたが、ポリーンを登場させた意図と13歳に設定した意図をお聞きできますか?
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元倉
ポリーンは、バナンザ変身やプレイヤーのガイド役など、DKだけではできないような機能を担う役柄として登場させています。また、DKといっしょに行動してくれるので、僕ら人間に近いキャラクターのほうが共感が得られやすいだろうという観点もありました。
DKといっしょに行動するので、彼に乗ってもらう際のサイズ感をいろいろ試しました。もっと身長が高い年齢なども試したんですが、現在のものがちょうどいいなと。
あと13歳という年齢は、自分のやりたいことが見つかり始めるころとか、まだしっかり認識はできていないけれど「こういうことをやりたい気がする」といった感覚が芽生える、小学生ともまた違った年代というイメージで13歳にしています。
――大人になり始める世代ですね。で、気になるのは『スーパーマリオ オデッセイ』との関係性と言いますか、大人だったポリーンと今回のポリーンは同一人物なのか、といった部分なのですが……?
DKといっしょに行動するので、彼に乗ってもらう際のサイズ感をいろいろ試しました。もっと身長が高い年齢なども試したんですが、現在のものがちょうどいいなと。
あと13歳という年齢は、自分のやりたいことが見つかり始めるころとか、まだしっかり認識はできていないけれど「こういうことをやりたい気がする」といった感覚が芽生える、小学生ともまた違った年代というイメージで13歳にしています。
――大人になり始める世代ですね。で、気になるのは『スーパーマリオ オデッセイ』との関係性と言いますか、大人だったポリーンと今回のポリーンは同一人物なのか、といった部分なのですが……?
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元倉
それは……。もちろん開発側には設定があるんですが、そこはすみません。ぜひご想像いただければ。
――なるほど。何かしらの設定があるんですね。想像してみます……! あとキャラクターとしては、敵としてヴォイドカンパニーが登場しました。『スーパーマリオ』で言えばクッパ軍団、『ドンキーコング』で言えばクレムリン軍団といった、軍団、一味などのくくりはあったと思うんですが、会社というくくりは珍しいなと思いました。実際にゲーム中では会社員らしいセリフも出てきたりしますが、このような設定になった意図をお聞かせください。
――なるほど。何かしらの設定があるんですね。想像してみます……! あとキャラクターとしては、敵としてヴォイドカンパニーが登場しました。『スーパーマリオ』で言えばクッパ軍団、『ドンキーコング』で言えばクレムリン軍団といった、軍団、一味などのくくりはあったと思うんですが、会社というくくりは珍しいなと思いました。実際にゲーム中では会社員らしいセリフも出てきたりしますが、このような設定になった意図をお聞かせください。
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渡辺
会社という設定になる前にいろいろな設定のアイデアを出していて、最初のころはヴォイド一味は地下世界の素材を使って敵を作るので、その“作る”という部分からアーティスト集団という設定で考えていた時期もありました。そこから紆余曲折あって、下へ下へ掘って進んでいくというゲーム性から、採掘をする集団、採掘会社となっていきました。威勢のいい社長がいて、それを支える部下がいて、といった会社ならではの関係性やおもしろさが作れることもあって、これでいこうとなりました。
――とあるキャラクターが急に「辞める」と言い出したり、会社ならではのセリフはおもしろかったです。
――とあるキャラクターが急に「辞める」と言い出したり、会社ならではのセリフはおもしろかったです。
元倉
ひとりひとりのキャラクターがそのときに何を考えて行動しているかということを考えて作っていました。物語の最初から最後まで、そのシーンで何を思っているか、行動の動機というのを書き出したりして。そのキャラクターにはきっと「もう辞めよう」と思うタイミングが来たんです。
――会社員としてはいろいろ身に詰まる言葉です(笑)。みんなもっと社長のヴォイドコングに従順なキャラクターなのかなと思っていたんですが、グランピーコングは職人気質なこだわりを見せたりと、意外な内面を感じました。
――会社員としてはいろいろ身に詰まる言葉です(笑)。みんなもっと社長のヴォイドコングに従順なキャラクターなのかなと思っていたんですが、グランピーコングは職人気質なこだわりを見せたりと、意外な内面を感じました。
渡辺
本作のロード画面でいろいろなイラストを表示していまして、あれはひとりのデザイナーが描いているんですが、本編では描かれていないキャラクター性が見えるものになっているので、ぜひ注目して見てほしいですね。
――ポッピーコングがお化粧していたり、ヴォイドコングがポスター貼っていたり。
――ポッピーコングがお化粧していたり、ヴォイドコングがポスター貼っていたり。
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元倉
ヴォイドコングは仕事を部下に任せずに自分でポスターを貼ったりしてしまう、ドンと構えている社長ではない雰囲気が伝わるかなと。そういったゲーム内では描けないところも、イラストで表現しています。
――ゲーム内のあちこちにヴォイドカンパニーのポスターが貼られていますが、あれを全部ヴォイドコングが貼っていると思うと大変ですね(笑)。
――ゲーム内のあちこちにヴォイドカンパニーのポスターが貼られていますが、あれを全部ヴォイドコングが貼っていると思うと大変ですね(笑)。
元倉
せっかちなので自分でやっちゃうんですよね。さらに部下からは「おマヌケ」と言われたりもしてしまう(笑)
――悲しい……。ヴォイドコングたちはポリーンが持つ歌声の力を知っていて、彼女を狙っているように見えましたが、もともとポリーンのことを知っていたということなのでしょうか?
――悲しい……。ヴォイドコングたちはポリーンが持つ歌声の力を知っていて、彼女を狙っているように見えましたが、もともとポリーンのことを知っていたということなのでしょうか?
元倉
これも開発側では設定がありまして。バナルートは地下世界のあちこちに伸びてきていますが、じつは地上にも少し影響が出ているんです。それがヴォイドコングがポリーンを知るきっかけとなります。
――ああ、なるほど。それでポリーンが追いかけられているうちに石になっちゃって……というところからゲームが始まるんですね。
――ああ、なるほど。それでポリーンが追いかけられているうちに石になっちゃって……というところからゲームが始まるんですね。
元倉
はい、そのようなイメージです。ただ、これ以上の詳しい話はご想像に……。
――わかりました。そのポリーンなんですが、別荘の中で寝るといろいろなお話をしてくれますが、よくおばあちゃんのお話が出てきます。このおばあちゃんとは……。
――わかりました。そのポリーンなんですが、別荘の中で寝るといろいろなお話をしてくれますが、よくおばあちゃんのお話が出てきます。このおばあちゃんとは……。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/50508/ade54d13f08efe11ba6199206bb45fcf1.jpg?x=767)
元倉
すみません。これも……。
――ご想像に(笑)。
――ご想像に(笑)。
元倉
もちろん設定はあって、ポリーンとおばあちゃんはこういう関係性で……というのを決めてそれをもとに作っています。
――なるほど。それは本作用に作られた設定なんでしょうか? たとえば『スーパーマリオ オデッセイ』などでポリーンに関する詳しい設定を作っていて……とか。
――なるほど。それは本作用に作られた設定なんでしょうか? たとえば『スーパーマリオ オデッセイ』などでポリーンに関する詳しい設定を作っていて……とか。
元倉
設定や遊びはさまざまなタイミングでアイデアを出しています。その時々の状況に合わせて過去のものを参照したり、新たに作ったり、というイメージですね。その当時には実現できなかったけど今回のゲームには合うね、といって実装したりもしますし。遊びで言いますと、本作の破壊もそんなアイデアのひとつです。
田中
『スーパーマリオ オデッセイ』でもボクセル技術は使っていて、今回の前身のような遊びがあるんですが、それをすべてに適用したらどうなるのか、といった遊びの仕組みから作っています。
Switch 2だからこそ実現できた新たな『ドンキーコング』の遊び
――今回Nintendo Switch 2用ソフトになりまして、各地形の破片が大量に散らばったりと、Nintendo Switchからのスペックアップを大きく感じたのですが、そのぶん開発はより大変な面もあったのでしょうか?
田中
Nintendo Switch 2が大変だったというよりは、当初想定していたNintendo Switchで作りきれたかどうか、という印象ですね。プログラマー視点ですと、メモリ容量が相当にきびしくて、いま製品としてお届けしているステージの広さは、Nintendo Switchでの実現は難しかっただろうなと思っています。
Nintendo Switch 2の変更にあたっては、「フレームレートが60fpsにできるね」、「壊せるオブジェクトを大量に配置できてインタラクション(編注:プレイヤーの操作によって反応すること)が増やせるね」、「レベルデザインとしても破壊の連鎖が表現しやすくなるね」といったことをスタッフ間で話していて、総じてできることが増えて全般的にポジティブな印象でした。
その中で、Nintendo Switch 2の特性を活かすためにマウス機能やおすそわけ通信なども加えることになったのですが、DKアーティストやもともとあったふたりプレイの遊びをおすそわけ通信に拡張したりといったことで、うまく取り込めたんじゃないかと思っています。
――“開発者に訊きました”のインタビューでは、Nintendo Switchで開発していたころのゲーム画面も掲載していましたが、けっこうできているように見えました。あのころは、いまと同じようなゲームとして動いていたんでしょうか?
Nintendo Switch 2の変更にあたっては、「フレームレートが60fpsにできるね」、「壊せるオブジェクトを大量に配置できてインタラクション(編注:プレイヤーの操作によって反応すること)が増やせるね」、「レベルデザインとしても破壊の連鎖が表現しやすくなるね」といったことをスタッフ間で話していて、総じてできることが増えて全般的にポジティブな印象でした。
その中で、Nintendo Switch 2の特性を活かすためにマウス機能やおすそわけ通信なども加えることになったのですが、DKアーティストやもともとあったふたりプレイの遊びをおすそわけ通信に拡張したりといったことで、うまく取り込めたんじゃないかと思っています。
――“開発者に訊きました”のインタビューでは、Nintendo Switchで開発していたころのゲーム画面も掲載していましたが、けっこうできているように見えました。あのころは、いまと同じようなゲームとして動いていたんでしょうか?
田中
ゲーム自体は同じだったんですが、まだまだ開発中だったので、下のほうのフロアとかがないんですよね。あのまま下まで作り込んでいくと無理かもしれない、と言っていたくらいの時期です。
渡辺
当時の挙動は30fpsを行ったり来たりという状況だったので、手応えや感触はだいぶ違いますし、いまと同じような遊び心地にはならなかったんじゃないかと思います。
元倉
実現したい陰影の表現とかも、まだ入れられるかどうか、というものでしたし。
――すでに大量の金塊などが出てくると処理が追いつかなくなるような場面もあって、もうマシンパワーを使い切るくらいのことをしているのかと驚きました。
――すでに大量の金塊などが出てくると処理が追いつかなくなるような場面もあって、もうマシンパワーを使い切るくらいのことをしているのかと驚きました。
田中
金塊の数よりはボクセルの変化の激しさなどで処理が大変になるんですが、まだ技術的に僕らが手を付け始めたくらいの段階なので、今後の開発ではもっといろいろ変わってくると思います。
――地形の見た目以上に、地形の素材ごとにボクセル内部の処理が変わるとか、そういうイメージでしょうか。
――地形の見た目以上に、地形の素材ごとにボクセル内部の処理が変わるとか、そういうイメージでしょうか。
田中
そうですね。地形を殴ったり掘ったりしていると、破片がごろんって出てくると思うんですが、あの破片も裏ではいい感じの形や散らばりかたになるように工夫をしていて、そういった一瞬で激しいことをしています。
――Nintendo Switch 2のマウス操作を使ったもののひとつに、DKアーティストがあります。これはマウス操作に合わせて生まれたものなのでしょうか?
――Nintendo Switch 2のマウス操作を使ったもののひとつに、DKアーティストがあります。これはマウス操作に合わせて生まれたものなのでしょうか?
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元倉
これも、本作を作る過程でプログラマーが作っていたものを応用したものですね。
田中
本作を作るうえでボクセルを操作する必要があって、開発中にマウスで操作して地形などを操作するデバッグ機能がありました。そのあと、Nintendo Switch 2ではマウス操作ができるという話があったので、それならいわゆるスカルプトツール(編注:3DCGでオブジェクトの形状を作成、変形させられるツール)のように操作するエディターができるんじゃないかというところから始まりました。
元倉
Nintendo Switch 2を買ってすぐに、マウスを使っていただきたいなというのもあって、ゲーム内に組み込むのではなくタイトルから入れる別モードとして入れています。
――なるほど。私が作るとセンスのなさを実感する非常に前衛的なものばっかりになってしまいまして……。何かいいアドバイスがあればいただけないでしょうか。
――なるほど。私が作るとセンスのなさを実感する非常に前衛的なものばっかりになってしまいまして……。何かいいアドバイスがあればいただけないでしょうか。
渡辺
DKの顔やワレルヤの民の素体がありますので、それに色を塗るだけでもおもしろいものができますし、素体にワンポイントで飾りを付けていくようなところから始めていくとやりやすいのかなと思います。あと、前衛的でいいと思います。粘土で遊ぶように自由に造形してもらえれば。
元倉
あといろいろな素材があって、たとえば溶岩を使うと湯気が出たりするんですが、それをほかのものに見立てて使ったりといった工夫ができると、もっと幅が広がりますし、ふつうのツールと違うことができるところもおもしろいです。
田中
開発チームでもいろいろなものが生まれていましたね。“Nintendo Today!”でも、もとの素体からさまざまなものに変化する過程が掲載されているので、見ているだけでも楽しいですよ。
――ああ、それは見たい……! アドバイスありがとうございます。ちなみに、DKアーティストを見ると、『スーパーマリオ64』のマリオの顔を引っ張る遊びを思い出すんですが、あれを意識された部分はあるのでしょうか?
――ああ、それは見たい……! アドバイスありがとうございます。ちなみに、DKアーティストを見ると、『スーパーマリオ64』のマリオの顔を引っ張る遊びを思い出すんですが、あれを意識された部分はあるのでしょうか?
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元倉
そうですね。『スーパーマリオ64』のマリオの顔も3D技術デモに近いもので、そういった意味ではDKアーティストと成り立ちが近いんじゃないかと思います。
――そろそろインタビューの締めになるのですが、今日お話をうかがっていて、すべてのベースにボクセル技術の採用があって、でもやりかたもわからないスタートだったというところが衝撃で。ボクセル技術の実現のメドと言いますか、「全部ボクセルでいけるぞ」となったのは実際にどれくらいのタイミングだったんですか?
――そろそろインタビューの締めになるのですが、今日お話をうかがっていて、すべてのベースにボクセル技術の採用があって、でもやりかたもわからないスタートだったというところが衝撃で。ボクセル技術の実現のメドと言いますか、「全部ボクセルでいけるぞ」となったのは実際にどれくらいのタイミングだったんですか?
田中
いやー、いまでもよくできたな、と。最後の最後までできるのかなあと思っていました(笑)。最後というのは冗談にしても、“開発者に訊きました”にクリボーに手をつけて地形を壊したり投げたりできる動画がありましたが、あれができたときにとても新しい遊びができた手応えがあって、さらに固いものはなかなか壊せないし、別の素材だったらこういうことができるといった遊びの広がりもどんどん見え始めて、これは特徴的なもの作れるという予感がありました。
そこで、やりたい、作りたいものは見えたので、あとはそれを作りきるためにがんばるという感じでした。初めてのことがいっぱいだったので大変だったんですが、作りたいものに向けてみんなが本当にがんばった結果かなと思います。
そこで、やりたい、作りたいものは見えたので、あとはそれを作りきるためにがんばるという感じでした。初めてのことがいっぱいだったので大変だったんですが、作りたいものに向けてみんなが本当にがんばった結果かなと思います。
渡辺
まさに手探りでやっている状態で、アートに関して言うとわりと終盤のほうでも、最後の一手でクオリティーが1段階上がるようなプログラマーからの提案があったりと、本当に最後の最後まで検証しながら進めていましたね。
――本当に終盤まで手探りだったんですね。では、プロデューサーとしてはけっこうハラハラしたのでは……?
――本当に終盤まで手探りだったんですね。では、プロデューサーとしてはけっこうハラハラしたのでは……?
元倉
そうですね(笑)。いや、ハラハラは言い過ぎかもしれませんが、つねに何かを改善しながら進めている状態ではありました。
田中
ちょっとしたアイデアが入ったり、何かの歯車が噛み合ったりすることで、新たな解決方法が生まれるといった瞬間が本当にいっぱいありました。先ほどの地中カメラの話もそうですし、地形の表現方法もそうですし、都度都度「これだ!」というものが生まれて、それを積み重ねることで、ゴールとしていたもののレベルが上がっていって、最終的にいいものになったんではないか、という印象です。
元倉
ボクセル担当のプログラマーが日々更新してくれていたので、それがとても大きかったですね。
渡辺
フォーマットが完全に決まっていて「こう作れば、こういうものができる」というイメージが見えていたものではなく、日々検証しながらいいものを目指していくような作りかただったので、大変ではありましたがとてもおもしろい開発だったなと思います。
――お話を聞いていると、非常にいいチームに感じます。“開発者に訊きました”の中で、『ドンキーコング』に“再び大きな革新を起こすことを目標に”というお言葉があったのですが、その手応えはいかがでしたか?
――お話を聞いていると、非常にいいチームに感じます。“開発者に訊きました”の中で、『ドンキーコング』に“再び大きな革新を起こすことを目標に”というお言葉があったのですが、その手応えはいかがでしたか?
元倉
ゲームってたくさんインタラクションが起こせるのが本当におもしろいところだと思っています。インタラクションの部分を中心に、チーム全体でこれまでの“3Dマリオ”とも『ドンキーコング』シリーズとも違う新しいものを目指すことができましたし、実際にその目標に向かって作りきったと言えるものになりました。あとはお客様に楽しんでいただければ、うれしいです。
――ありがとうございました!
――ありがとうございました!