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任天堂・宮本茂氏が語るゲームデザイン。「ゲームデザインとは設計」。前に遊んだゲームをより豪華にするのではなく、身の回りの何をテレビゲームにしたらおもしろいかを組み立てる

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任天堂・宮本茂氏が語るゲームデザイン。「ゲームデザインとは設計」。前に遊んだゲームをより豪華にするのではなく、身の回りの何をテレビゲームにしたらおもしろいかを組み立てる
 2024年11月6日、任天堂は公式サイトにて“「2025年3月期 第2四半期決算説明会/ 経営方針説明会(オンライン) 質疑応答」”を掲載。その中で、『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』の生みの親である、任天堂 代表取締役 フェローの宮本茂氏がゲームデザインについて触れている箇所がある。本稿では、そのやり取りを紹介しよう。
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 これは、2024年10月にオープンしたニンテンドーミュージアムの内覧会で行われた、宮本茂氏のインタビュー(記事は下記を参照)から「宮本さんが毎年新入社員向けに講義を行っているという話を拝見したが、その講義は具体的にどういう内容なのか。また、クリエイティブ面でのサクセッションプラン(後継者育成の計画)についても教えてほしい」という質問に対し、宮本茂氏が回答したものになる。

 まず、質問の中にもあった新入社員への講義について、講義は三部構成になっており、第一部は花札から始まって、玩具を経て現在のエンターテインメントの会社につながるという任天堂の歴史についての話。第二部は、任天堂がゲーム作りで何を大事にしてきて、何を強みにしているのかについて。その中では、ニンテンドーミュージアムにも展示がある、アーケードゲームのころから続くインターフェースの進化、コントローラーの変遷についての説明があるという。

 そして、第三部が“ゲームデザインとは何なのか”。

 この説明の中で、宮本茂氏は、“新しく入った開発者でよくゲームを遊んできた人は、前に遊んだゲームをより豪華にしたものをつくろうとする”と例に出しつつ、“そうではなく、いろいろな身の回りのことから何をテレビゲームにしたらおもしろいかを組み立てていくのがゲームデザインだと説明している”と回答。また、“どんなハードウェアや開発環境でゲームをつくるのか。自分がつくりたいものが本当に実現できるのかを考え、実現するために試行錯誤をするといったように、ゲームデザインとは設計だと説明している”と語っている。

 ちなみに、こういった説明に対する反応としては、「自分が思っていたゲームデザインとは違う」とおもしろがったり、ものづくりの考えかたに対して共感するといったものがあるという。

 なお、この宮本茂氏の回答には、質問者に「天才」と呼ばれた宮本茂氏のそれに対する回答や、ふだんから考えていることなども含まれているので、ぜひ下記に引用した全文を読んでほしい。また、こういった宮本茂氏の考えかたが好きな方は、ニンテンドーミュージアムのインタビューと合わせて、過去のインタビューもチェックしてほしい。

 質問と回答の全文は下記の通り。

Q4 ニンテンドーミュージアムに関するメディア記事の中で、宮本さんが毎年新入社員向けに講義を行っているという話を拝見したが、その講義は具体的にどういう内容なのか。また、クリエイティブ面でのサクセッションプランについても教えてほしい。外から見た印象では、宮本さんは天才だからヒットを生み出し続けているように感じる。ゲームづくりの本質的な部分は伝えていくのが難しいと思うが、どのような工夫をしているのか。宮本さんのクリエイティブな考え方のエッセンスが社内でうまく継承されているのか教えてほしい。

A4 宮本: 質問の中で「天才」という言葉を使っていただきましたが、100~200名程度の新入社員や中途入社の社員に向けた毎年の講義の後で、「宮本さんはどんな人かと思っていたら、意外と普通の人で安心しました。」という感想をよく聞きますので、私は結構普通な人なのだと思います。できれば仕事をせずに済む方が楽しく過ごせるのにと思うので、仕事をするならいかに効率よく仕事をするか、同じ仕事をするならヒットさせた方が次の仕事がしやすくなるので、どうすればもっとヒットさせられるのだろう、といったことを普段から考えています。毎年の講義では、そうしたクリエイティブの悩みについても話をしています。

 講義は三部構成になっていて、第一部は花札から始まり、玩具を経て現在のエンターテインメントの会社に繋がるという任天堂の歴史についての話をします。第二部では、任天堂がゲームづくりにおいて何を大事にしてきて、何を強みにしているのかについて話します。例えば、アーケードゲームの頃から続くインターフェースの進化について、コントローラーの変遷をたどりながら説明します。第三部ではゲームデザインとは何なのかという話をします。新しく入った開発者で、よくゲームを遊んできた人は、前に遊んだゲームをより豪華にしたものをつくりたいという思いを持つ方が多いですが、そうではなく、いろいろな身の回りのことから何をテレビゲームにしたら面白いかを組み立てていくのがゲームデザインだと説明しています。同時に、どんなハードウェアや開発環境でゲームをつくるのか、その処理能力を踏まえた上で、自分がつくりたいものが本当に実現できるのかを考え、実現するために試行錯誤をするといったように、ゲームデザインとは設計だと説明しています。これを聞くと、多くの方が「自分が思っていたゲームデザインとは違う」と面白がったり、ものづくりの考え方に対して共感したといった感想をもらったりします。

 講義は毎年2時間程度なので、社員たちにそうした講義の内容を後で思い出してもらうために、ニンテンドーミュージアムで過去のチャレンジの歴史を見ることも役に立つのではと考えています。

高橋: 任天堂ではさまざまなゲームソフトを開発しているプロデューサーが、各自の特色を生かしながらユニークなものをつくっています。それぞれのプロデューサーが、宮本からいろいろな話を聞いたり、一緒にゲームをつくったりする中で、その考えをどう自分の得意な分野に活かすかを考えながら開発に取り組んでくれているのだと思います。ですから宮本の考え方のもとに、聞いた言葉や考え方を自分の中で咀嚼(そしゃく)しながら、それぞれ特徴のあるゲームをつくり、またそのプロデューサーと一緒に開発している人たちにも同じようなかたちで受け継がれています。
出典:出典:2025年3月期 第2四半期決算説明会/ 経営方針説明会(オンライン) 質疑応答

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