『鬼武者 Way of the Sword』開発者インタビュー。開発進捗は80%で現在アクションや難度をブラッシュアップ中。試遊で一度も発動できなかった幻の“一閃”についても訊いた【gamescom 2025】
 2025年8月20日よりドイツで開催中のgamescomのカプコンブースにて、2026年発売予定の『鬼武者』シリーズ最新作『鬼武者 Way of the Sword』が初のプレイアブル出展を実施。試遊版の体験とともに開発者インタビューの場が設けられた。

 本稿では本作のプロデューサーを務める門脇章人氏と、同じくディレクターを務める二瓶 賢氏へのインタビューをお届けする。初プレイアブル出展の手応えや開発進捗、試遊したゲームの中身について訊いた。
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門脇 章人氏(かどわき あきひと)

『鬼武者 Way of the Sword』プロデューサー

二瓶 賢氏(にへい さとる)

『鬼武者 Way of the Sword』ディレクター

初のプレイアブル出展の反応は?

――初のプレイアブル出展となりますが、gamescomの会場の皆さんの雰囲気はご覧になりましたか?

門脇
 はい。たくさんのお客さんに実際にゲーム触っていただいて、体験いただいている様子を見ております。今回は清水寺で佐々木巌流で戦うところまで遊べますが、道に迷いつつも楽しんでいただけているかなと思っています。

二瓶
 ゲームプレイも楽しんでいただけているかなと思っていますが、今回ブースでは魂が動いてる展示物を用意しておりまして、その前で写真を撮っている様子を見ていると、喜んでもらえているのかなと思っています。
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『鬼武者 Way of the Sword』ブースには魂が飛んでいる。
――日本のプレイヤーとの反応の違いは感じたりしますか?

門脇
 リアクションの違いのようなものはとくに感じないんですが、日本のゲームイベントだったら整理券があるんですよね。gamescomには整理券がない中、何時間でも並んで待っていただけるのは、高い熱量を持ったお客さんが多いんだなと感じます。

――今回の新版のプレイできる範囲って、製品版だとどのくらいのところの部分に当たるものなんでしょうか。

二瓶
 製品版でいうと序盤のあたりで体験できますね。開始2時間とかぐらい。

――プレイして、ちょっと手応えを掴んできたあたりですかね。

二瓶
 はい。ただ今回は試遊ロム用にチュートリアルの内容を変えてみたり、動いてる要素も結構変えているので、製品版をやった時は違った印象になるかなと思います。

――今回の作品では“死にゲーにしない”というお話をおうかがいしているんですけれども、難度的にはどういう感じでご調整されましたか。

門脇
 やっぱりひとつのゲームソフトを購入いただくのってすごくハードルが高いんですよね。作品によっては1万円する中で、買っていただいたからには最大限楽しんでいただきたいという思いがあったので、“途中でゲームをリタイアすることがないようにする”という思いをもって開発しました。

 最初やさしいモード“活劇(かつげき)”で始めて、もっとやり応えがほしいと思ったら標準モード“剣戟(けんげき)”でやる。つまずいてどうしても先に行けなくなったら難度を下げていただくという、自分のスタイルでフレキシブルに遊べる方向性で調整しているので、できることならエンディングまで皆さんに楽しんでいただきたいと思っています。

 社内でチェックする際にも、「心が折れてしまうようなやられかたはしないようにしてくれ」と伝えました。コントローラーを投げてしまうような、「もう二度とやるか!」って思ってしまうようなやられかたは買っていただいた方に申し訳ないです。「悔しい! もう1回チャレンジしよう」って思っていただけるようなバランスを目指しました。

――手応えとしてはいかがでしょうか。

門脇
 いい感じに調整できているかなと思います、まだ完全ではないんですが、いい方向性になってきてるかなという手応えを感じています。

気になる“一閃”について

――従来の一閃は攻撃を受ける前にボタンを押すことで繰り出されていたのですが、試遊では発動が確認できませんでした。存在はするのですよね?

二瓶
 はい。じつは試遊版でも一閃を出すことができるんですよ。敵が攻撃をする直前に攻撃ボタンを押すことで通常の一閃が出せます。

――活劇(かつげき)モードでもできますか?

二瓶
 はい。できます。

――確認できなかったです……! 一閃を出すコツはありますか?

二瓶
 「食らいそう!」って思ったら押すみたいな感じでしょうか(笑)。引き付けて……。失敗すると攻撃を食らうので、リスクとリターンが大きい代わりに、当てた時はズバッと切れるというのが体験できます。

――まだ体験できていない未知の領域です……。矢を打ち返すときはどんなアクションが用意されていますか?

二瓶
 今回の試遊版では弾きができるようになっています。矢を流すことで地面に落としたり周りの敵にあてたりすることもできますし、放ってきた敵に弾き返すこともできます。矢を放ってきた敵に対する一閃は今回の試遊版には入れておりませんが、できるようにしていきたいなと考えてはいます。
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敵の攻撃を弾いて、体勢を維持する力動ゲージを大きく削ることができる“弾き”は遠距離攻撃にも有効で、向かってくる矢などを弾き返すことができる。
――このあたりのアクションについて今後改善していく可能性はありますか?

二瓶
 改善といいますか、成長要素などで攻撃手段を解放していくような形を考えております。
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一閃をくり出すのはかなり難しいと思われる。そのぶんカジュアルに気持ちよさを感じられる“崩し一閃”などもあるので、さまざまな攻撃手段でバトルを楽しみたい。
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宮本武蔵とは対照的な佐々木巌流というキャラクターについて

――佐々木巌流は宮本武蔵の方とは対照的なキャラクターのイメージを受けました。キャラ作りで意識されたことはありますか?

二瓶
 今回は巌流も鬼の篭手をつけているので、鬼武者VS鬼武者の対比を描いていますが、まさにおっしゃる通りで、巌流は武蔵と対照的に描いています。

 巌流はふつうの武士道を学んできた侍ではなく独学でやってきた天才肌なので、篭手の振り回しかたもけっこう癖があるかと思うんですけど、そういう特徴付けをしています。武蔵は武術を学びながらも自分でアレンジをし、周りのものをなんでも使ってるっていう性格です。

――巌流はずっと敵のポジションなのでしょうか。共闘したりとかは……。

二瓶
 共闘はどうでしょうね(笑)。ただ今回、清水寺の舞台で戦ったんですけど、そこで倒して終わりではなくて、ストーリーの中でも色濃くこのふたりの関係性は描いています。

――ストーリーのほうでは鬼の篭手とのコミカルなやり取りも見ることができました。

二瓶
 コミカルにしたいっていうのが主ではないんですけど、武蔵の人間性を描くときに「こんなのいらねえよ!」みたいな感覚の性格なので、自然とああいうやり取りが生まれましたね。

――キャラクター声優さんは宮本武蔵が細谷さんで、佐々木巌流が岡本さんですが、キャスティングの理由をおうかがいできますか。

二瓶
 宮本武蔵の声を誰にするかは、けっこうすぐ決まりましたね。このキャラクターの人物に合う人は誰だろうというところで議論したときに、細谷さんの名前が挙がりました。その対比として、巌流に関しては狂気的なキャラクターを描きたかったので、同じようにキャラクター性を考え、狂気的な役柄を過去に演じられた岡本さんにお願いしました。

――宮本武蔵は三船敏郎さんをフェイスモデルにされていらっしゃいますが、佐々木巌流にもフェイスモデルはいらっしゃるのでしょうか。

二瓶
 います。お名前は出していないのですが、実際にいる方をスキャンしてモデリングしました。
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余談すぎるが、筆者の友達にも似ている。
――だから顔立ちがとてもリアルだったのですね。約20年ぶりの新作ということで、当時とはハードのスペックとか、取り巻く環境などもいろいろ変わっているかと思いますが、『鬼武者』シリーズとして大事にしたことはありますか。

二瓶
 キャラクター、ストーリー、バトルの3要素はすごく大事にしています。まずキャラクター性でいえば、“侍”っていうと表情を動かずに硬いやり取りするっていうイメージもあるのですが、今回は人間性溢れる主人公にしたいと思って作りました。

 先ほどお話があったようにコミカルな一面もあれば、かっこいい一面もあったりと、キャラクターを深く描くというところを意識しました。技術も発展してるのもあるので、表情も豊かにできる分キャラクターを深く描ける。敵も同じように、表情を豊かにすることにこだわりを持って作りました。

 アクションに関しては、“一閃”の気持ちよさはやっぱり大事にしたいと思っているので、前作と同じような入力の仕方で、技術面で新しいバッサリ感を表現しました。

開発進捗は80%

――2026年発売予定ですが、進捗はいかがですか。

門脇
 順調です。なんとか26年の早いうちには出したいという思いはあります。進捗度合いでいうと80%ぐらいでしょうか。いまは細かなアクションのブラッシュアップや難易度の調整を行いながら完成を目指しています。

――やはり大変なのはバトルの部分でしょうか。

門脇
 はい。やっぱりどうしても死ぬゲームにはなるんですよね。死なずに最後まで行けたら何のおもしろみもないので、どっかでつまずくポイントはどのお客さんにもあるのではないかと思います。そんな中でも「もう1回!」とチャレンジしたくなるような作りを目指してます。

――活劇がいわゆるイージーモードに当たるかと思うのですが、最近のアクションのイージーモードは全てオートで進むようなゲームもあると思うんですが、活劇でも歯ごたえを感じました。

門脇
 はい。ただ単にストーリーを追いかけるだけのものになってしまうと、アクションゲームのおもしろさが伝わらないので、苦手なお客さんに対しても、死んで、チャレンジして、成功した時の達成感を味わってもらいたいと思っています。

――皆さんからの改善要望などは出ていますか?

門脇
 はい。確認はしています。お声はしっかり受け止めたいとは思ってるんですけど、やっぱりお客さんの中でももともと『鬼武者』シリーズをやったことがある方々のご意見とやったことがない方々もご意見が相反するんです。それに対してどう応えるかというのは課題になっています。

 ゲームの内容をガラッと大きく変えることはしないのですが、「俺が知ってる『鬼武者』じゃない」って言いたくなる気持ちもすごくわかるんです。

 ただ他社さんのシリーズ作品と違って、20数年前の作品です。それを今の時代に新しくよみがえらせるというのは難しいのも当たり前なんですよね。過去の『鬼武者』シリーズは過去の『鬼武者』シリーズとしていいものですし、今回提供する『
『鬼武者 Way of the Sword』も触っていただいて「想像していたものとは違っていたけど新しい『鬼武者』としておもしろい」と言ってもらえるような作品にしたいです。

――新規のプレイヤーも入ってきてほしいという思いを以前のインタビューでも語られていたと思いますが、そのために調整した部分はありますか。

二瓶
 シンプルにお話の部分ですね。過去の登場キャラクターの深い関係などを描くと新規の方がついてこれなくなるので、キャラクターや世界を一新し、わかりやすく世界観、仕組み、ルールを整理しました。初めて遊ぶ人がすんなり遊べるように、そしてこれまで触ったことのあるユーザーも「こんなお話なんだ」と新しい刺激として受け入れられるように、意識して作りました。

門脇
 すごくわかりやすいヒーローモノなので入りやすいかなと思っています。ナンバリングにしなかったのもそういった思いがあっての理由です。

――ありがとうございます。最後に読者へメッセージをお願いします。

門脇
 もともと『鬼武者』を知ってくださっているお客さんもそうだし、新しいお客さんにもそうなんですけど、カプコンブランドで出すアクションゲームですので最大限おもしろいものにしたいです。ぜひ気に入っていただけたらなと思ってます。ウィッシュリストにも追加いただければ嬉しいです。

二瓶
 今回ドイツで体験できるようになったんですが、なるべくいろいろな方に遊んでもらいたいと思っていて、近くで遊べる機会があったらぜひ触ってもらいたいと考えています。TGS2025への出展も決まっておりますので楽しみにしていてください。
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