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『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』キービジュアルでまどかの背後に○○が描かれていた! ビジュアル・コンセプトデザインの川田和樹氏インタビュー【ネタバレあり】

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』キービジュアルでまどかの背後に○○が描かれていた! ビジュアル・コンセプトデザインの川田和樹氏インタビュー【ネタバレあり】
 2026年8月28日に公開を迎えた『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』。2011年に放送されたテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどか☆マギカ』)の続きを描いた『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』(2013年公開)から約13年ぶりとなる続編作品だ。
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 本稿では、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』で原画やビジュアル・コンセプトデザインを手掛けた川田和樹氏へのインタビューをお届けする。

 「言われれば何でも描く」ほど広い範囲で腕を振るった川田氏の仕事内容をはじめ、冒頭のアクションシーンを描くうえでのポイント、映画のキービジュアルのコンセプト、その中に描かれているモチーフに関する話などを伺うことができた。
※本インタビューは『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』のネタバレを含みます。

アクションシーンの原画から小物の設定作り、キービジュアル制作まで、何でも描いた川田氏

――前作映画から13年ぶりとなる最新作が公開されました。いまのお気持ちはいかがですか?

川田
 どう言語化していいかわからない状態ではあるんですけど、“仕事としては一段落ついた”といった感じです。

――ご自身が参加された作品を観るときに、ついこういう見かたをしてしまう、といった職業病のようなものはありますか?

川田
 自分が担当した範囲に関しては、ちゃんとできているかは見ますね。ただ、話が進んで担当範囲から外れたら、ふつうにストーリーを見ちゃいます。

――本作で川田さんは“ビジュアル・コンセプトデザイン”としてクレジットされています。少し聞きなじみがない肩書かなと思いますので、まずは川田さんが本作でどのようなことをされていたか教えてください。

川田
 もともとビジュアル・コンセプトデザインというお仕事でお話をいただいたわけではなく、当初は冒頭の少女Aのアクションシーンの原画マンとして呼ばれました。どう動かしてどういう風に戦わせるか、そういった部分の開発ですね。

 その仕事が落ち着いてから原画をやるつもりだったのですが、その時点でまだ揃っていない設定がいくつかありました。そこで冒頭のアクションシーン以外も手伝ってほしいと言われて、絵コンテの古川さんに頼まれたものをたくさん描いていくうちに、新房さんからの要望にも応えるようになりました。

――新房総監督からはどのような要望があったのでしょうか。

川田
 たとえば、こういう雰囲気の絵がほしいとか、このシーンはこういう風にしたい、とリクエストをもらって、それに対して何パターンかの絵を並べて、選んでもらったものを形にしていました。細かな部分だと、雨だったり路地裏の見た目だったりですね。

 その後、細かな設定の進んでいなかった部分も引き受けて、冒頭のアクションシーンの原画に戻りました。さまざまな仕事をやったことで、ビジュアル・コンセプトデザインという肩書にまとまったんだと思います。

――かなり広い範囲の仕事をされていたんですね。

川田
 言われれば何でも描きます、くらいの状態でした。宣伝用のキービジュアルをつくりたいと言われたときにもいくつか案を出して、最終的にはキービジュアルの原画も担当させていただきました。かなりの量を描けたので、僕的にはよかったなと感じています。
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』キービジュアルでまどかの背後に○○が描かれていた! ビジュアル・コンセプトデザインの川田和樹氏インタビュー
――古川知宏さんもビジュアル・コンセプトデザインとしてクレジットされていますが、川田さんと古川さんはどのような役割分担をされていたのですか?

川田
 そもそもは古川さんが先にビジュアル・コンセプトデザインと絵コンテのお仕事をされていて、僕はそこに合流する形でした。

 本作には絵のある原作がないので、最初は文字媒体のシナリオしか資料がないんですよね。その文字を映像化する際に力を貸してほしい、ということでいっしょに作業をするようになりました。

 指示系統としては、まず新房さんから古川さんにイメージが伝わって、それを今度は古川さんから僕に伝えていただき、つぎの会議までにイメージを描いておく、といった形です。さらに会議中にふたりで描いた部分を含めて並べ、よさそうなものを古川さんにピックアップしていただき、それを新房さんに提出して最終的に選んでもらう流れですね。

マミさんはできるだけ派手に。蒼樹うめ氏の絵柄をよりかわいく見せるポイントは“眉”

――本作では冒頭のアクションシーンにも関わられているということですが、川田さんが関わられた範囲で、力を入れたのはどのような部分でしょうか。

川田
 映画冒頭の少女Aの戦闘シーンに関しては、美しく、操られているように動かすことを意識しました。

 美しさと操られ感というところから、エアリアルシルクを使ったアクションにしよう、という話になったんですよ。ふだんのアクションは飛んで戦っているので、そういう違いが増えたぶん、苦労もありました。

――本作に参加するにあたって、監督から意識してほしいと言われたことはありますか?

川田
 バトルシーンに関して、速すぎる動きは控えてほしいとは言われました。後は、キャラクターが物理的に痛々しく見えるビジュアルもそうですね。基本的には作らない、やるとしてもパッと見せるだけ、とのことでした。

 ほかのところでいくと、マミの武器設定を作っていたときに、「マミはできるだけ派手にしてほしい」と指示されましたね。後は全体的に、キャラクターに変な加工は入れないように、といったことも言われていました。
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』キービジュアルでまどかの背後に○○が描かれていた! ビジュアル・コンセプトデザインの川田和樹氏インタビュー
 
――川田さんはアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』にも参加されていましたが、『まどか☆マギカ』の世界はアニメーションで表現するうえでも独特だと思われますか?

川田
 個性の強いアーティストが参加しているので、必然的に独特なものになっているかな、とは思います。ただ、アニメの作画をするという点で言えば、“すごく特別”ということでもないですね。

 原画として参加するうえで、特殊なことをしてください、みたいなお話はないので、あくまでやれる範囲でやれる動きを必要なだけ作るという形です。
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』キービジュアルでまどかの背後に○○が描かれていた! ビジュアル・コンセプトデザインの川田和樹氏インタビュー
 
――蒼樹うめさんのキャラクターも魅力的ですが、アニメーションとして表現するにあたり大事にされたことは何ですか?

川田
 “うめ先生の絵に寄せる”ではないですが、かわいさを表現するうえで、眉毛をちょっと離して描くとかわいくなるな、というのは自分のなかで見えている部分です。少し眉を離すと、上目遣いっぽく見えてかわいくなるんですよ。でも必ずそうしようというわけではなく、自由に描いていいときくらいはやろうかなくらいです。

 うめ先生の雰囲気が出せるように、というのはみんな意識していると思います。

――蒼樹うめさんの絵柄は特徴的ですが、そのあたりで苦労はありましたか?

川田
 そこに関しては総作画監督の谷口(淳一郎)さんや山村(洋貴)さんがたいへんな思いをされていると思いますが、僕らアニメーターは資料を見ながら描くだけなので、特別苦労した感覚はないですね。
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時代しか書かれていないシナリオから膨らませた回想シーンの小物

――小物などの設定も考えられたとのことでしたが、具体的にはどういったものを手掛けられたのでしょうか。

川田
 回想シーンに出てくるものは、古川さんと相談しながら考えました。回想シーンは、シナリオに“○○年”と書かれていて、それ以外の時代背景情報がなかったので、その時代に合った、かつ『まどか☆マギカ』の世界に合うものを考えていました。

 パンの色ひとつとっても、僕らの世界だとこの時代はこんな感じだから、じゃあ『まどか☆マギカ』の世界ならどうか、みたいなことを話し合っていましたね。

――『まどか☆マギカ』では劇団イヌカレー(泥犬)さんのビジュアルも印象的ですが、そのデザインをアニメーションにするにあたって、川田さんのほうでも何か対応をされているのでしょうか。

川田
 イヌカレーさん側でフィニッシュまで進める場合と、アニメーションに変換する工程をこちらで担当する場合があります。

 その中で、たとえばティロ・フィナーレのシーンは「パフェにしたい」とのお話があったので、そうなると「作画が必要だから設定を作らなきゃ」といった形で、イヌカレーさんのリクエストを受けながら作業を進めていました。

――イヌカレーさんからリクエストがあった場合、素材はどのような形で届くのですか?

川田
 基本的には、ざっくりとしたメモ書きですね。文字よりは絵のほうが多いのですが、メモの段階では本当にざっくりと、「こんな感じ」くらいのものです。

 後は、直接絵を持ってきていただいて、話し合いながらイメージを固めていくこともありました。ここは古川さんとも話し合いながら進めていましたね。

――『まどか☆マギカ』がテレビで放送されたのは2011年、15年ほど前になりますが、当時はご覧になられていましたか?

川田
 はい、見ていました。当時はまだアニメの仕事はしていなかったですね。

――当時、放送を見てどのような印象を受けましたか?

川田
 1話の冒頭からワルプルギスの夜が出てくるじゃないですか。あれはかなり怖かったですね。

 当時そこまで多くのアニメを見ていたわけではなくて、知識も浅かったんですけど、「アニメってこういうことをしていいんだ」と思いました。これは多分皆さん思われたかなと思うんですけど(笑)。

――いまこうして『まどか☆マギカ』に関わっていることに対して、感慨深さのようなものはありますか?

川田
 「まさか」みたいな感覚はまったくなく、現実は淡々と課題となって表れてそこから逃げないで考えることをやめなかっただけです。なので、自分に与えられた仕事をきちんと果たさなければ、といった気持ちのほうが強かったです。

 僕は絵を描くのが好きなので、何とか絵がうまくなろうといろいろとやっているうちに、いろいろなものが描けるようになって、結果として多くのものを描かせていただけた、というイメージです。

宗教画・天井画をコンセプトに描かれたキービジュアル

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』キービジュアルでまどかの背後に○○が描かれていた! ビジュアル・コンセプトデザインの川田和樹氏インタビュー
――ポスターにも使用されているキービジュアル第2弾について、こちらはどういったコンセプトで描かれたのでしょうか。

川田
 まずキービジュアル第1弾の制作のときにいくつか案を出していて、そのなかに、この第2弾に近い宗教画風の案があったんです。

 アイデア出しの段階では宗教画風のものだけでなく、前作をイメージしたものや本作をイメージしたものなど、ざっくりと何個かのパターンを提出していました。

 アニプレックスさんから、宗教画風の案を「これはつぎのキービジュアルにしたい」と言っていただいたので、ビジュアルで見せたいもののコンセプトを聞いて、具体的にどんなものにするかの話を進めていきました。

――そのコンセプトに対して、アイデアはどのように出されていったのでしょうか。

川田
 たくさんの宗教画を知っているので、そのなかから今回の映画に合いそうな構図やギミックがありそうな画家を引っ張ってきて、要素を組み替えたりまとめたりしています。

 今回はアイデア出しの段階で天井画風がいいとの話も出ていたので、そっち方面の好きな画家や合いそうな画家の要素を集めていきました。

――ふだんから絵をインプットする際に意識されていることはありますか?

川田
 個人的に、ただうまいだけの絵を見ても勉強にはならないと思うんです。たとえばその人の一生の記録が残っている歴史上の画家であれば、これは何歳のときに描いた絵、これは結婚してから描いたもの、あの絵は妻が亡くなった後に描いた作品だったなど、文脈がわかりますよね。

 どの画家から影響を受けているか、たとえば当時のフランスでは何が流行っていたか、そういった流れがあったうえで、その人がその瞬間に描いた絵、というのが好きなんです。だから、そういうところから勉強することが多いです。

――ご自身で絵を描かれる際も、意味のないものは描きたくないといった気持ちがあるのでしょうか。

川田
 そこまで強い意志があるわけではないですが、絵を求められたときには必要な要素があると思うので、それは必ず盛り込むようにしています。ただの落書きのようにはしたくないですね。かわいいものを描いてくれと言われたら、かわいいに全振りして考えを突き詰めます。

作中の鳥かごというモチーフをビジュアルで表現

――キービジュアルではまどかとほむらが軸になりつつ、周囲にさやかたちが描かれています。この構図について、どのような意図があるのかを教えてください。

川田
 18世紀や17世紀の天井画のような雰囲気をイメージしています。なので、キャラクターの配置についても、どの方向から見ても違和感がないようにしています。

――周囲に描かれているキャラクターの中では、さやかがいちばん前に来ているように見えます。こちらも何か意味が?

川田
 さやかは、今回けっこうメインとなる立ち位置なのかなと考えています。ほむらを何とかしたいと思いつつ、でも助けたいと思っている部分もある。だからほむらに近い者として、いちばん前に立っているという感じですね。

――中央に描かれている黄金の円も意味ありげに見えますが、こちらはどんな意味が込められているのでしょうか。

川田
 中央の輪は、鳥かごの天井をイメージしています。作中で鳥かごの中のモチーフが出てくるので、その鳥かごの中で天井を見上げたときにどう見えるか、みたいなことを意識しました。

 同様に、作中で半分になった月が出てくるので、円の中心には半分の月も描いています。モチーフという点で言えば、下のほうにある燃えている街は見滝原の街をイメージしています。

まどかの背後に描かれているのは、○○のシルエット

――考察要素の多い『まどか☆マギカ』とあって、このキービジュアルについても何か隠された要素があるのではと思うのですが、これは気付かないかも、という要素があればぜひ教えていただきたいです。

川田
 それで言うと、まどかと紫丁香の後ろに、でかいモチーフを仕込んでいます。これは本当に「気付かれなくてもいいけど」くらいの気持ちで、デザインに大きく影響しない範囲で入れたものですね。

――言われてみると、色の濃くなった雲の中に何かが描かれているようにも見えます。

川田
 これは、横向きになったワルプルギスの夜なんです。本当はワスを描きたかったんですけど、キービジュアルは早い段階で公開されるので、ネタバレ要素は入れられなかったんですよね。

 直接ワスを描けないならどうしようかと考えて、じゃあワルプルギスの夜のシルエットを入れよう、と。あくまで隠し味くらいになればと思い仕込んでいます。

――○○が描かれていたのですか! 自力で気付けた人はかなり脳汁が出そうな隠し味ですね。今回は貴重なお話をありがとうございました。
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』キービジュアルでまどかの背後に○○が描かれていた! ビジュアル・コンセプトデザインの川田和樹氏インタビュー