「言われれば何でも描く」ほど広い範囲で腕を振るった川田氏の仕事内容をはじめ、冒頭のアクションシーンを描くうえでのポイント、映画のキービジュアルのコンセプト、その中に描かれているモチーフに関する話などを伺うことができた。
- アクションシーンの原画から小物の設定作り、キービジュアル制作まで、何でも描いた川田氏
- マミさんはできるだけ派手に。蒼樹うめ氏の絵柄をよりかわいく見せるポイントは“眉”
- 時代しか書かれていないシナリオから膨らませた回想シーンの小物
- 宗教画・天井画をコンセプトに描かれたキービジュアル
- 作中の鳥かごというモチーフをビジュアルで表現
- まどかの背後に描かれているのは、○○のシルエット
アクションシーンの原画から小物の設定作り、キービジュアル制作まで、何でも描いた川田氏
――ご自身が参加された作品を観るときに、ついこういう見かたをしてしまう、といった職業病のようなものはありますか?
――本作で川田さんは“ビジュアル・コンセプトデザイン”としてクレジットされています。少し聞きなじみがない肩書かなと思いますので、まずは川田さんが本作でどのようなことをされていたか教えてください。
その仕事が落ち着いてから原画をやるつもりだったのですが、その時点でまだ揃っていない設定がいくつかありました。そこで冒頭のアクションシーン以外も手伝ってほしいと言われて、絵コンテの古川さんに頼まれたものをたくさん描いていくうちに、新房さんからの要望にも応えるようになりました。
――新房総監督からはどのような要望があったのでしょうか。
その後、細かな設定の進んでいなかった部分も引き受けて、冒頭のアクションシーンの原画に戻りました。さまざまな仕事をやったことで、ビジュアル・コンセプトデザインという肩書にまとまったんだと思います。
――かなり広い範囲の仕事をされていたんですね。

本作には絵のある原作がないので、最初は文字媒体のシナリオしか資料がないんですよね。その文字を映像化する際に力を貸してほしい、ということでいっしょに作業をするようになりました。
指示系統としては、まず新房さんから古川さんにイメージが伝わって、それを今度は古川さんから僕に伝えていただき、つぎの会議までにイメージを描いておく、といった形です。さらに会議中にふたりで描いた部分を含めて並べ、よさそうなものを古川さんにピックアップしていただき、それを新房さんに提出して最終的に選んでもらう流れですね。
マミさんはできるだけ派手に。蒼樹うめ氏の絵柄をよりかわいく見せるポイントは“眉”
美しさと操られ感というところから、エアリアルシルクを使ったアクションにしよう、という話になったんですよ。ふだんのアクションは飛んで戦っているので、そういう違いが増えたぶん、苦労もありました。
――本作に参加するにあたって、監督から意識してほしいと言われたことはありますか?
ほかのところでいくと、マミの武器設定を作っていたときに、「マミはできるだけ派手にしてほしい」と指示されましたね。後は全体的に、キャラクターに変な加工は入れないように、といったことも言われていました。

原画として参加するうえで、特殊なことをしてください、みたいなお話はないので、あくまでやれる範囲でやれる動きを必要なだけ作るという形です。

うめ先生の雰囲気が出せるように、というのはみんな意識していると思います。
――蒼樹うめさんの絵柄は特徴的ですが、そのあたりで苦労はありましたか?

時代しか書かれていないシナリオから膨らませた回想シーンの小物
パンの色ひとつとっても、僕らの世界だとこの時代はこんな感じだから、じゃあ『まどか☆マギカ』の世界ならどうか、みたいなことを話し合っていましたね。
――『まどか☆マギカ』では劇団イヌカレー(泥犬)さんのビジュアルも印象的ですが、そのデザインをアニメーションにするにあたって、川田さんのほうでも何か対応をされているのでしょうか。
その中で、たとえばティロ・フィナーレのシーンは「パフェにしたい」とのお話があったので、そうなると「作画が必要だから設定を作らなきゃ」といった形で、イヌカレーさんのリクエストを受けながら作業を進めていました。
――イヌカレーさんからリクエストがあった場合、素材はどのような形で届くのですか?
後は、直接絵を持ってきていただいて、話し合いながらイメージを固めていくこともありました。ここは古川さんとも話し合いながら進めていましたね。
――『まどか☆マギカ』がテレビで放送されたのは2011年、15年ほど前になりますが、当時はご覧になられていましたか?
――当時、放送を見てどのような印象を受けましたか?
当時そこまで多くのアニメを見ていたわけではなくて、知識も浅かったんですけど、「アニメってこういうことをしていいんだ」と思いました。これは多分皆さん思われたかなと思うんですけど(笑)。
――いまこうして『まどか☆マギカ』に関わっていることに対して、感慨深さのようなものはありますか?
僕は絵を描くのが好きなので、何とか絵がうまくなろうといろいろとやっているうちに、いろいろなものが描けるようになって、結果として多くのものを描かせていただけた、というイメージです。
宗教画・天井画をコンセプトに描かれたキービジュアル

アイデア出しの段階では宗教画風のものだけでなく、前作をイメージしたものや本作をイメージしたものなど、ざっくりと何個かのパターンを提出していました。
アニプレックスさんから、宗教画風の案を「これはつぎのキービジュアルにしたい」と言っていただいたので、ビジュアルで見せたいもののコンセプトを聞いて、具体的にどんなものにするかの話を進めていきました。
――そのコンセプトに対して、アイデアはどのように出されていったのでしょうか。
今回はアイデア出しの段階で天井画風がいいとの話も出ていたので、そっち方面の好きな画家や合いそうな画家の要素を集めていきました。
――ふだんから絵をインプットする際に意識されていることはありますか?
どの画家から影響を受けているか、たとえば当時のフランスでは何が流行っていたか、そういった流れがあったうえで、その人がその瞬間に描いた絵、というのが好きなんです。だから、そういうところから勉強することが多いです。
――ご自身で絵を描かれる際も、意味のないものは描きたくないといった気持ちがあるのでしょうか。
作中の鳥かごというモチーフをビジュアルで表現
――周囲に描かれているキャラクターの中では、さやかがいちばん前に来ているように見えます。こちらも何か意味が?
――中央に描かれている黄金の円も意味ありげに見えますが、こちらはどんな意味が込められているのでしょうか。
同様に、作中で半分になった月が出てくるので、円の中心には半分の月も描いています。モチーフという点で言えば、下のほうにある燃えている街は見滝原の街をイメージしています。
まどかの背後に描かれているのは、○○のシルエット
――言われてみると、色の濃くなった雲の中に何かが描かれているようにも見えます。
直接ワスを描けないならどうしようかと考えて、じゃあワルプルギスの夜のシルエットを入れよう、と。あくまで隠し味くらいになればと思い仕込んでいます。
――○○が描かれていたのですか! 自力で気付けた人はかなり脳汁が出そうな隠し味ですね。今回は貴重なお話をありがとうございました。
















