2026年で35周年を迎える『ソニック』シリーズ。誰もが一度は見たことがあるであろう看板キャラクター“ソニック・ザ・ヘッジホッグ”を主人公とした作品群だ。 ゲームはもちろん、映画・アニメ・グッズなどさまざまな展開も特徴のひとつ。直近ではプロeスポーツチーム“ZETA DIVISION”のクリエイター部門に一時加入するなど、そのスピード感と意外性はいつまでもファンを楽しませている。
そんな『ソニック』シリーズに長年携わる飯塚隆氏にインタビューを実施。これまでの出来事や施策の狙い、今後の展開などについて聞いた。

飯塚隆(いいづか たかし)
『ソニック』シリーズ総合プロデューサー。1992年にセガへ入社以降、数々の『ソニック』タイトルに携わる。
「これ以上(新作は)いらないんじゃないか」悪い波も乗り越え、迎えた35周年
――シリーズ35周年を迎えた、今のお気持ちをお聞かせください。
飯塚
「もう35年も経ったのか」というのが率直な感想ですね。いいときもありましたが、悪いときには「これ以上『ソニック』タイトルはいらないんじゃないか」と言われたときもありました。
そういう波を乗り越え、ずっと支え続けた『ソニック』がやっと飛び立っていくという感覚です。本当にいい35周年を迎えられたと思いますね。
――その中で、とくに印象に残った出来事を挙げるとしたら何でしょうか?
飯塚
何せ35年なので本当にいろいろありましたが、強いて言うなら映画化は大きな感動でしたし、達成感もありました。ハリウッド俳優といっしょにレッドカーペットを歩いたときは「ついにここまで来たか」と感じましたね。
ハリウッド映画で成功を収められるIPは一握りだと思いますが、『ソニック』シリーズは現在第3作まで制作され、2027年には第4作も公開されます。またスピンオフドラマ『ナックルズ』も制作されました。このような多彩な展開ができている点は、誇れる部分だと思います。
――映画も含め、積極的にメディア展開を行っていますが、その手ごたえは感じられていますか?
飯塚
映画やアニメをはじめ、グッズ展開やイベント施策、ロケーションビジネスなど、本当に多岐に渡って展開していて、『ソニック』というブランドが広く浸透してきているのは実感してますね。私自身の関わる仕事も、当然ゲーム制作がメインではあるのですが、時間的にはゲーム以外に関わる時間の方が多くなってきていまして。
ただ近年は人気が本当に上向きで、コラボ施策でも大手のメーカーさんと話がしやすくなっている、とてもいい環境にあるのかなと思います。

――なるほど。ちなみに、海外展開に関してはいかがでしょうか?
飯塚
『ソニック』はほかの日本のIPとは違い、グローバル市場を初めから意識したIPでした。セガの中でいち早くローカライズや多国言語に対応したタイトルも『ソニック』ですし、昨今展開しているのも欧米がいちばんの主力です。
これからは欧米以外でも、日本を中心に韓国、中国、東南アジアといった地域にまで『ソニック』を広めようという努力をしているところです。
――スタートラインが海外で、そこから逆輸入するという形ですね。
飯塚
そうです。まず1991年に発売された『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』は、メガドライブ(海外ではGENESIS)というハードウェアをいかに売るか、それを牽引するタイトルとして誕生しました。
その際、当時の開発チームが意識したのが欧米なんです。たとえば“グリーンヒル”というステージは、ヤシの木や青い空といった、アメリカ・カリフォルニアの印象を取り入れて作っています。
――ソニックの性格もアメリカンな感じですよね。
飯塚
日本のヒーローはいわゆるお利口さんが多いのですが、ソニックはそうではなく、善悪よりも自分でやりたいことをとにかくやってしまう性格です。そういったヒーロー像の違いも意識して作られたキャラクターですね。
ゲームを遊ぶだけでなく“見る層”へのアプローチ
――さまざまな施策のなかでも、ZETA DIVISIONへの加入はさすがに驚きました。どういった経緯でそんなことに?
飯塚
先ほども触れた、日本を含めたアジア地域へ『ソニック』を浸透させる取り組みのひとつとして、セガ側から「ソニックと何かおもしろい企画ができないか」と提案させていただきました。
いままで正攻法ではあまり成功していないので、多彩な方向からさまざまな層に知っていただける取り組みを試行錯誤しています。ZETA DIVISIONさんへの加入もしかり、YouTuberさん、VTuberさんとのコラボもそうですね。

2026年7月8日にZETA DIVISION加入を発表。9月20日にk4sen氏とTGS2026のステージに立った後に退団発表となった。
――そういったコラボは、ゲームをプレイする層以外にも“見る層”へアプローチする意図もあるのでしょうか?
飯塚
そうですね。日本やアジア地域でなかなか浸透していない要因のひとつとして、そもそもゲームを知られていない、見たことがないというところも大きいと思うんです。
買ってプレイするのはハードルが少し高いですが、見るだけであれば簡単なので。ゲームプレイ以外のコンテンツから存在を知ってもらうのはいい入口になると考えています。
――ゲームを“見て楽しませる”ことは、開発する際にも意識されているのでしょうか?
飯塚
近年は意識するようになりましたね。“遊んでおもしろいゲーム”というのは昔から取り組んでいますが、かっこいいカットシーンを入れるなどして、見て「このゲーム、おもしろそう」と思わせられる要素を取り入れています。
ハードウェアの性能が上がったことも大きいですが、“映像としてインパクトのあるもの”という点は、昔の開発時にはあまり意識していなかったと思います。
アニメ新作やゲーム展開……今後の施策について
――今後の『ソニック』シリーズの展開や、次に狙っている施策などをお聞かせください。
飯塚
まず『ソニックレーシング クロスワールド』に関してですが、シーズン2として『ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』とのコラボを発表しています。もちろん、1年間継続してシーズン2(全6弾)を展開していくので、そちらを楽しみしていただければと思います。
――『ソニックレーシング クロスワールド』の発表は毎回驚かされているのですが、どのような狙いでコラボ先を決めているのでしょうか?
飯塚
各作品のファンの方に遊んでもらいたい気持ちはもちろんありますが、すでにゲームを購入されている方にとっても「つぎは何が来るんだろう」と思っていただきたい。
当たり前に予想できるものではなく、意外性や驚きをお届けすることで、継続して皆さんに遊んでいただきたいという思いからコラボを決めていますね。IPをお借りしている立場上、ファンの方々に納得いただけるコラボを実現することはつねに心がけています。

――そのほかのゲーム展開に関してはいかがでしょうか?
飯塚
『ソニック ピコパーク』も2026年11月12日の発売が近づいていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
それ以外に関してはまだ公式にアナウンスはできていないですが、我々としては常に1年後・2年後という形での作品作りを行っているので、ぜひ期待してお待ちください。
――先日、Netflixでの新たなアニメシリーズの制作が発表されましたが、こちらはどのような作品になるのでしょうか?
飯塚
現状、公式発表に書かれていること以外は我々の口からはお話しできないのですが、唯一言えるのは“キッズアニメーション”という部分ですね。
以前Netflixさんと制作した『ソニックプライム』や映画とは異なる層へのアプローチというか、小学校低学年や未就学児といった小さい子どもたちに楽しんでもらえる作品にしたいと考えています。
――最後に、今後の展開を楽しみにしている人たちに向けてメッセージをいただければと思います。
飯塚
35周年ということで、長くソニックを支えてくれた方々に心から感謝しています。これからも『ソニック』はずっと作り続けていきますし、2027年には第4作目の映画が公開されます。皆さんに喜んでもらえるものを常に提供し続けようと思っていますので、ぜひこれからも『ソニック』の応援をよろしくお願いします!