
「本作をPvPvEというのは、最初の情報発信としてはあまり正確ではなかったかもしれません」
「自分で言うのもなんですが『ダスクブラッド』は新しいというか、変なゲームだと思います」
フロム・ソフトウェアの完全新作である『ダスクブラッド』はどのような意図で設計されているのか。宮崎氏のインタビューと体験会のリポート記事で想像を広げてほしい。なお、当記事の言及内容や掲載画像は開発段階のもの。製品版では仕様が異なる場合がある点はご了承いただきたい。

血族は吸血鬼を超え、時をも越える存在
私としては、PvPの要素もあれば、PvEの要素もある、ただそれだけの事実として使った言葉なのですが、現状で“PvPvE”と言うと、もっと特定のフォーマット、たとえば脱出シューターのようなゲームを想像してしまうのかなと。ネットワークテスト版を触っていただければ、ご理解いただけると思いますが、本作はそれらとはまた違ったゲームですから。
ともあれ、本作がオンラインゲームであることは間違いありません。なぜそれを作ったのか、という話であれば、我々の過去作と同様の答えになります。つまり「自分たちがおもしろそうだ、作りたいと思ったから作った」ですね。
タイミングが『ELDEN RING NIGHTREIGN』と被っているので、そのことについていろいろと聞かれることもあるのですが、両者のタイミングが被ったのは、ただの偶然です(笑)。我々の戦略が変化し、これからはオンラインゲームを中心に作っていく、といったことではありません。そもそもの話として、本作のはじまりは『ELDEN RING NIGHTREIGN』よりも前ですしね。
以前、“Creator’s Voice”でお答えした通り、たまたま任天堂さんに本作の原案をお話しする機会があり、興味を持っていただいた、というのがはじまりなのですが、そのときは、単に自分がおもしろそうだと思うことをしゃべっていただけで、会社としての戦略とか、そんなことはまったく考えていなかったと思います。
ただ、もう少し深掘りすると、私自身が『デモンズソウル』や『ダークソウル』を作る過程で、蓄積されたものはあった気がします。
『ダークソウル』の誓約がわかりやすいですが、ああしたオンライン要素は私の好みでして、過去いろいろなアイデアを考えたのですが、シングルメインのゲームが前提だと採用しにくいものも多かったのです。
そうしたアイデア、あるいは思考の蓄積を、どこかで活かしたかったのかなと。
――世界観について教えてください。近代的なゴシック調という点で、本作は『Bloodborne』(ブラッドボーン)を彷彿させるものがあると感じました。こういった世界設定を選ばれたのはなぜでしょうか。
ただ、今作の世界観はそれだけではありません。ネットワークテスト版では、マップはひとつだけですが、製品版ではほかにもマップがふたつ用意され、それぞれ“ゴシック・ヴィクトリアン”とは、また違った世界観を持っています。
本作では、血族たちはいろいろな時代、場所の“黄昏”に呼ばれ、血授をめぐり戦います。戦いの舞台の共通点は、それが“黄昏”、つまり“人類の滅び、衰退、落日の時”であることです。
――マップは広大ですが、ワープもできるので思っていたよりも周りやすい印象があります。ほかにもマップがふたつあるとおっしゃっていましたが、広さや移動の感覚は今回のものと同じくらいでしょうか。

――いわゆる“吸血鬼もの”にはいろいろな神話伝承の影響や作家の世界観が強く、とくに欧米ではキリスト教の裏の歴史に紐づけるなど、皆が自由に作っている人気ジャンルだと思います。ファン的には、本作を宮崎版の吸血鬼ものとして、その世界設定を立てるにあたって、どのように考えを巡らせたのでしょうか。
また、これはある意味で私の癖なのですが、拡大解釈主義というか、「我々が血族であると言えば、それは血族なのだ」といった感じで、トラディショナルなイメージは大事にしつつ、キャラクターデザインの幅を広めに取っていることも挙げられると思います。
ネットワークテスト版では、ゾークがわかりやすいと思いますが(笑)。
さまざまな遊びを提示する“美徳”と“烙印”
また、本作のマップでは、過去作ほど強い導線を引いていません。これは、本作のゲーム性を、くり返しプレイと自由な立ち回りを意識した結果ですね。
――試遊の前に行われたプレゼンテーションでは「上手でなくても楽しめる」という説明がありました。この点について、どのような目的意識や手法で取り組んでいるのでしょうか。
ひとつ目は“美徳”のシステムです。美徳とは、いわゆる勝利点なのですが、最終戦を除いて、戦いの勝敗はこれの多寡により決まります。PvPなりPvEなりは、この美徳を得るための一手段でしかありません。
こうすることで、純粋なアクションスキルだけでなく、立ち回りや戦略で勝利を目指すことが可能になっています。美徳システムにより、純粋なアクションスキルの比重を下げているのです。
ふたつ目は、ロールプレイ的な楽しみです。本作は、純粋に勝ちを目指すのも、もちろん楽しいゲームだと思いますが、それとは別に、キャラクターを演じたり、戦いの最中に突発的に起こるドラマを楽しんだり、といった側面も重視しています。
イベントや烙印、とくに後者にその色が濃いでしょうか。期せずして割り当てられる“受動烙印”には、時にドラマがあるものと思いますし、たまたま特定の組み合わせで烙印が成立した場合などに、専用のセリフが再生され、新しい物語の断片が手に入る、といった要素もあります。
3つ目は、ネットワークテスト版では体験していただけないのですが、ストーリーの進行とキャラクタービルドです。本作の拠点である“夜の館”には2階があり、そこには何人かのNPCがいて、彼らと話すことでストーリーが進行します。
また、オンラインプレイを通じてアイテムを入手し、それを使って血族キャラクターをカスタマイズできますし、アイテムテキストなどによる断片的なストーリーテリングも行われます。
こうした要素は、必ずしもオンラインプレイにおける勝利を前提とするものではありませんので、まずは勝利にこだわらず、ストーリー進行とキャラクタービルドを楽しむ、といったことが可能です。


本作には、美徳を得る手段のひとつとして“称賛”という要素もあるのですが、開発中には“ロンゲスト・ロード”(※)と呼ばれていましたからね(笑)。
個人的には、この美徳のシステムが、ゲームの幅を大きく広げてくれたと思います。勝利を目指すための選択肢、立ち回りの幅という点でもそうですし、イベントや、血族の特殊能力を考えるという点でもそうだと思います。
PvPが苦手でも楽しめる要素とは
ただ、ネットワークテスト版では体験していただけないのですが、最終戦がPvPではなく、ボス敵とのPvEになるパターンも用意しています。キャラクタービルドにより、そうした最終戦を希望する、ということもできるようにしています。
また我々としては「最終戦を戦う最後の3人に残った」ということに、しっかりとした達成感を感じてほしいです。率直に申し上げれば、そのために、演出面ではネットワークテスト版にはまだ不足があると感じています。

もともとから特定のユーザー層を想定し、そこに向けて作る、ということが得意ではないこともあり、「まずは自分が楽しいと思えるもの、作りたいものを作る」ということを大事にしています。
ただ、本作はシステムとルールで遊ぶ比重が大きく、また新しい要素も多いので、それらをしっかりとユーザーさんに伝えることは、過去作よりも重視しています。
そして、その点では、任天堂さんの手厚いサポートにとても感謝しています。我々が勝手に「当たり前だ」と思っている事柄についても、そうではないよ、と指摘してくださったり。このあたりは、もともと我々が不得手であることもあり、とても助けられていますね。
――「フロム・ソフトウェアのゲームは好きだけど対戦ゲームは苦手」みたいな意見もあったのではないかと思うのですが、その辺りについてはどうお考えですか。
ストーリー進行について言えば、いわゆるエンディングも複数用意しておりますので、そういった意味でシングルプレイ的な楽しみかたもできるのかなと。

もちろんストーリー進行においては、オンラインプレイの勝利は必ずしも前提にされませんので、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れが理想ですね。
――シングルモードもあるということですが、キャラクターごとに用意されているということでしょうか。
具体的には、キャラクターカスタマイズや、中庭での練習、8人対戦の模擬戦などですね。
『ダスクブラッド』の方針と展望
キャラクターベースは、おそらく10体を大きく超える数を用意できると思います。各キャラクターで武器は固有ですが、血族技や、“権能”と呼ばれる特殊能力などをカスタマイズできます。
また、仮面や入れ墨など、見た目に特徴をつけることも可能ですし、“烙印”と呼ばれるロール要素や、特定のイベントの発生確率を上げる、といったカスタマイズも可能です。
本作のキャラクターカスタマイズは、能力や見た目だけでなく、そのキャラクターの運命、宿命といったものまで対象とするイメージなんです。
そして、それらのカスタマイズ要素が、あるいはその収集が、断片的ストーリーテリングも担っているわけです。
――プレイヤーのモチベーションのひとつにランキングがあるかと思います。『ダスクブラッド』でも『アーマード・コアVI』のようなシーズン制のマッチングはお考えでしょうか。
戦いに勝利し、ランクを上げる。当然ですが、そうしたことも、本作の楽しみのひとつと考えています。
――マルチプレイ前提となると、ゲームリリースから半年くらい時間が経つと最適化が進み、プレイヤー層が分かれていって新規が入りにくくなるという現象は、別タイトルでも見られます。こうした部分の対策はどうお考えですか?
ひとつ目は、これまでお話ししてきたように、本作にはさまざな楽しみ方があること。そのため、初心者が楽しみながら、熟練者になっていくことが可能なこと。
たとえば、これもくり返しになってしまうのですが、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れですね。
ふたつ目は、これはアップデートでの話になりますが、熟練者が、むしろ初心者のメリットになるような要素を考えています。
たとえば、熟練者が特別な血盟相手になってくれたり、特別な強敵になってくれたり、あるいはレアなイベントをもたらしてくれたり、といったような。熟練者が感謝され、尊敬されるようになれば、と思っています。
ただ、これはまだ構想の段階です。現状は、まず製品版の完成に全力を注いでおり、アップデートの内容、タイミングなどは、まだ未定の部分も多くなっていますので。

――ゲーム全体のバランス調整についてはいかがでしょうか。細かにやっていくのか、シーズンリセットのタイミングで一気にやっていくのか、現段階ではどのように計画されていますか。
そういう意味では、今回のネットワークテスト版の結果も重視しています。テストのフィードバックを受けて、できるだけ調整したいと考えています。
――ルールに関して、とくに調整に苦労した点、決断に迷った点などありましたら教えてください。
この点については、ネットワークテストでも引き続き重視しており、いただいたフィードバックを踏まえて、製品版に向けた調整を行うつもりです。
――いずれの調整にも、根底にはさまざまなスタイルのプレイヤーに楽しんでほしいという点があるということでしょうか。
烙印などのロールプレイ、あるいはドラマ的な要素や、断片的ストーリーテリングやキャラビルドなど、勝利を目指すこと以外にも、楽しめる側面もさまざまに用意しているつもりです。
自分で言うのもなんですが、本作は新しいというか、変なゲームだと思います。その変さも含めて、楽しんでもらえたらうれしいですね。
おまけ:どうしても気になった点も訊く
ただ本作は、我々としては比較的、顔が見えるキャラクターが多いと思いますし、キャラクターをデザインし、モデルを制作する過程で、キャラクターの背景や人格などを丁寧に表現しようとしています。過去作で言えば『SEKIRO』とか『Déraciné』(デラシネ)とかに近いでしょうか。
なのですが、まあ隠したくはなってしまいます。おそらく、単に好きなんだと思います、隠されたものが(笑)。『エルデンリング』などでもそうだったのですが、顔データをしっかり作っているのにフルフェイスみたいな。

でも、それがなぜかは、あまり掘り下げないようにしています。あんまりよろしくないものが出てきたら、辛いですからね(笑)。まあ、これはもう受け容れるしかないのかなと。なので、本作でもおっしゃるような少年は登場します。大変申し訳ございません。
――宮崎さんのロマンティシズムは、烙印の“儚い恋の烙印”にも出ていると思っています。
でも、烙印システム自体は作っていてとても楽しいですね。いまは、このシステム自体が新しいこともあり、比較的シンプルなものに留めていますが、製品版ではもう少し複雑なものも用意しておりますし、後々このシステムに慣れ、複雑なルールもある程度許容されるようになったら、さらにいろいろと遊べそうに思います。けっこう拡張性のあるシステムなのかなと。










