『NTE: Neverness to Everness』で「給水タンクの夢」を叶えてしまった話。現代都市オープンワールドと現実の街を行き来する楽しさ

『NTE: Neverness to Everness』で「給水タンクの夢」を叶えてしまった話。現代都市オープンワールドと現実の街を行き来する楽しさ
 屋上にある給水タンクが好きだ。だって、かわいいし。
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『NTE: Neverness to Everness』で「給水タンクの夢」を叶えてしまった話。現代都市オープンワールドと現実の街を行き来する楽しさ
2015年撮影。
 好き、よりも“気になる存在”の方が正しいかもしれない。

 だって私は給水タンクのことを何も知らないのだから。
※ここでいう給水タンクとは、正しくは“高架水槽”や“受水槽”と呼ばれるものですが、街歩き界隈での呼び慣わしに倣い、本稿では“給水タンク”で統一します。

街中の深窓の令嬢こと、給水タンク

 街を歩けば、必ずと言っていいほど目にする給水タンク(受水槽)。

 ビルやマンション、学校や病院など、一度に多くの水を使う建物で、水道管から送られてきた水をいったん蓄えておくための容器で、敷地内のタンクに水を溜め、ポンプで各所へ送り届ける仕組みになっている。
『NTE: Neverness to Everness』で「給水タンクの夢」を叶えてしまった話。現代都市オープンワールドと現実の街を行き来する楽しさ
2026年撮影。
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2016年撮影。
 給水タンクはマンションなどの屋上に設置されているので、そのビルに用のない者は近づくことすらできない。そして自分が住む建物でも、屋上は立入禁止だったりする。

 つまり給水タンクとは、
いつも視界の中にいるのに、決して手の届かない“深窓の令嬢”のような存在なのだ。
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こんなに近くに見えているのに触れられない存在(2019年撮影)。
 近代的なビルの上にもある給水タンクだが、その佇まい自体がどこかエモを帯びている気がする。風景の中に給水タンクを見つけると、途端に懐かしいような、ノスタルジーが胸いっぱいに広がるのだ(私だけだろうか)。
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ノスタルジーを感じる給水タンク群(2015年撮影)。
 そんな思いを抱えていた私には、かつてひとつの夢があった。それは“古めのビルを所有し、給水タンクの上で日がな過ごす”というものだ。

 自分が所有する味のある古いビルで、給水タンクを眺めながらのんびりしたり、本を読んだりしたら最高では?
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丸っこかったり四角かったりといろんな形のがあるけど、私はいつも「T4ファージ(超小さいロボットみたいなウイルス)みたいでかわいいな~」と思っている。
 とはいえ、実際に給水タンクのことを深く知ったり、内部を見たいのかというと、そういうわけではない。むしろ内部を見てしまって万が一汚かったらこの気持ちが覚めてしまいそう……。給水タンクとは、ほどほどの距離を保っていたいのである(ワガママ~!!)。

 私にとって給水タンクは、夢と幻想を与えるアイドルでもあるのかもしれない。

転機は今年新たにリリースされたゲーム『NTE』

 そして、そんな夢を持っていたことも忘れたまま過ごしていた私に転機が訪れた。2026年4月29日に、新作RPG『NTE: Neverness to Everness』(以下、 NTE)のサービスが開始されたのだ。

 『
NTE』の世界には超常現象や怪異の類が日常的に存在している。それらは“異象(アノマリー)”と呼ばれ、人々に恐れられたり、個体によっては人間と共存したり、ふしぎな風情が漂う。

 現代都市風のオープンワールドで描かれる街・ヘテロシティ。建物が密集した区画、再開発後のようにきれいに整備された公園、古い面影を残す大通り、近代的な高層ビル群などがぎゅっと詰め込まれており、エリアごとにいろいろな風景が楽しめる。
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プレイヤーは異象を調査する“鑑定士”として、この町で生活を送る。
 『NTE』はストーリー、異象討伐、キャラとの交流やシティライフなど多彩な要素を持つゲームだが、中でも際立っているのが街探索の自由度だ。目の前に壁がそびえていたら登ればいいし、建物の上を伝って移動することもできる。
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高い建物に登って、そこから滑空して別の建物へ。
 ゲームを起動すると、どこかで見たことがありそうなアニメ調の風景が目に飛び込んでくる。驚いたのは、人の家の敷地内にも入れること、そして街を構成するお店がはりぼてではないということ。実際に食べ物やアイテムを購入できるのが何だかうれしい。

 グラフィックがリアルだとしてもお店としては利用できず、店内に入ることもできないゲームは多いのに、街がちゃんと“生きている”感じがする。
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写真スタジオも中に入れるし、左側のアイス屋は購入できるし、目の前の踏切は電車が通る。
 『NTE』については、以前に先行でレビュー記事も書かせていただいた。この記事ではなんかひたすら給水タンクのことばかり話しているので、ゲーム性についてなどはこちらをぜひ。
 さて。どこかで見たことのあるような町が広がり、高いところにも行き放題。つまり、給水タンクにも近づけるのだ。
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夢にまで見た給水タンク。
 ヘテロシティを歩いて、何気なく上空を見上げたとき、目を疑った。日本の街で見かけるような給水タンクがそこにあったからだ。そもそも給水タンクなんてゲームシステム的にはなくてもいいはずなのに、わざわざ建物の屋上に設置されている。

 この光景を目にすると、感覚が日常で感じたエモに引き寄せられていくようだ。
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『NTE』のいい給水タンク。この迫力をどどんと縦型画像でご覧ください。
 『NTE』は世界中でリリースされているゲームだ。他国のプレイヤーは、この給水タンクからどんな気持ちを受け取るのだろうか。もしかして給水タンクの佇まいって、いろんな国で共通していたりする……?

 そして驚くのはそれだけではない。給水タンクに近づけるどころか登れるし、上に座ることもできる。すると、もちろんこのようなことになる。
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叶っちゃった、給水タンクの夢……。
 これで、かつて抱いた“古めのビルを所有し、給水タンクのそばで日がな過ごす”という夢が疑似的に叶っちゃうわけなのである。“給水タンクの夢”、ゲーム内のサイドストーリーっぽい。

 しかも、現実の屋上と違って刺すような日差しを気にしなくていい。「そろそろ清掃時期かも? 業者を手配しなきゃ」みたいな心配も無用。ゲームだからね。
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夢じゃん! こんなの!!
 まさか上にも登れるとは……こんな形で夢が叶っていいのか。このゲーム、私が夢で作ったのかもしれない。もちろんそんなことはないのだけど、漠然と抱いていた感覚とリンクしているのがおもしろい。
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給水タンクからの夕焼け。
 はぁ~~~、給水タンクからのヘテロシティの夕焼け、最高だ……。

 こぢんまりとした建物の屋上でひときわ存在感を放つ一方、ビル群の中にも、ふと視線を向ければ給水タンクの姿がある。
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 遠目に見て近代的なビル群も……。
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 ドローンを使って屋上を見てみると給水タンクがしっかりある。
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 人工衛星が刺さっているビルにも……。
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 屋上を覗くと給水タンクが設置してあるのだ。エル・プサイ・コングルゥ。

 ちなみに、実際の都市を想起する要素は給水タンクだけではない。こちらは車道と歩道を隔てるガードパイプ。東京都内で見かけるイチョウ型の都道ガードパイプみたいだ。
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『NTE』内のガードパイプ。
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都内で撮影したガードパイプ。
 そしてこれは……室外機の上に誰かが鉢植えを置いている……。
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 おもに道路などに接する私有地に置かれ、街中を彩るちょっとした植物。一部界隈では“路上園芸”と呼ばれており、鑑賞愛好家もいるカルチャーだ。こんなものまでゲーム内で楽しめるだなんて。なんなんだこのゲーム(これは私にとって最大級の褒め言葉である)。
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 こういうガードパイプ付近に植木鉢が置かれている光景も、すごく現実で見覚えがある……。

現実の街とゲームの街を行き来する楽しさ

 ストーリーや戦闘も楽しみつつも、街を歩いて景色を楽しんで写真を撮って。そんなゲーム内散策を『NTE』は存分に楽しませてくれる。
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現代的な街だけじゃなくて、自然の風景もたくさんある。
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住宅地の奥に広がるビル群はただの飾りではなく、実際に足を踏み入れることもできる。
 私はもともと街歩きが好きだ。昼間は現実の街を歩き、夜はゲームの街を歩いて違いを比べるという楽しみ方まで生まれた。
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桜や藤、紫陽花などがつねに見頃なのもいい。
 私はふだんはあまりPCゲームを遊ぶ方ではない。スマホやPS5でもリリースされているが、スクリーンショットや動画を撮りやすいということで、担当編集者からも勧められ、今回はPC版をメインに遊んでいる。PC版はやや高めのスペックが要求され、同系統のゲームに慣れていないと操作のハードルが高く感じるかもしれない(いまだに車を運転するたびに街路の設備)をなぎ倒している)。

 上記の理由から万人向けとは言いにくい部分もあるけれど、刺さる人にはとことん刺さるゲームだと思う。ゲームが好きでよかった! 街歩きが好きでよかった! と心から思える、そんな作品だ。
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 今日もまた、ヘテロシティのビルの屋上で現実の給水タンクを夢見ている。

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