ゲームやショート動画も楽しいけれど、じっくり作品に向き合う読書っておもしろい!
ゲームクリエイターに、これまで影響を受けた漫画や小説、愛読書について語ってもらう。"ファミ通図書委員会"という企画。
連載初回は『都市伝説解体センター』の開発チーム・墓場文庫からハフハフ・おでーん氏ときっきゃわー氏のふたりに、それぞれおすすめの作品を紹介してもらいました。

『都市伝説解体センター』は日本ゲーム大賞2025 優秀賞を受賞するなど多くの話題を呼んだミステリーアドベンチャーゲーム。2026年3月19日にはiOS版とAndroid版も配信されました。
ハフハフ・おでーん
墓場文庫に所属。チームではおもにドット絵などのグラフィックを担当。Webデザインの経験を持ち、2016年ごろ、ビットサミットをきっかけにインディーゲーム制作を始めた。
きっきゃわー
墓場文庫に所属。おもにシナリオ、キャラクター会話部分とキャラクターデザインを担当。小規模な自主制作ゲームや舞台制作に携わり、少人数で作品を完走させる経験を積んできた。
読むほどにハマるアメコミの世界(ハフハフ・おでーん)
――まずは、ハフハフ・おでーんさんのお話をうかがえればと思います。アメコミが結構お好きと聞きましたが。
おでーん
はい、海外コミックスのおもしろさを伝えたくて今回の取材を受けました(笑)。
――漫画は好きでもアメコミには詳しくない方が多いかなとは思いますが、どんな入りかたがおすすめですか?
おでーん
アメコミに触れたことがない人には絵柄や言い回しなどが結構独特なので、ハードルが高く感じるかもしれません。翻訳版だったとして、ちょっと理解しにくい箇所もあると思います。あんまり神経質にならずに大体の理解でも楽しく読むことを優先していただければなと。映画化された作品や表紙が気になったみたいな、きっかけで、とにかく気軽に触れてほしいですね。
――そんな、おでーんさんのおすすめの一冊を教えてください!
おでーん
『ヘルボーイ』です。ざっくり言うと、超常現象調査防衛局で働く悪魔のヘルボーイが、オカルトや怪異に立ち向かう物語です。人間に育てられた悪魔が、人間のために奮闘する姿がすごく魅力的で、僕たちの『都市伝説解体センター』の話にも通じるところがありますね。

映画化も4回されていますが、原作コミックスでは珍しく、ストーリーと作画をほぼマイク・ミニョーラさんひとりで手がけています。
アメコミだと出版社がストーリーを管理して、作画はシリーズごとに違う人が担当することが多いんです。でも『ヘルボーイ』はその例外。もちろん、話によってほかの作家が関わることもありますが、基本はミニョーラさんが全部担当しています。その分、世界観やキャラクターの雰囲気にブレがなく、独特の世界にどっぷり浸かれるんです。
物語はナチス・ドイツが悪魔を呼び出す儀式を行う場面から始まるんですけど。怪僧ラスプーチンや、ガスマスクをかぶったナチス将校クロエネンなど、個性的なキャラクターがつぎつぎ登場し、ビジュアルも印象的で第1巻からぐっと引き込まれるんですよね。
――ホラー・オカルト好きには気になる設定ですね。
おでーん
ゲームで言うと『女神転生』が好きな人には刺さる内容だと思います!
ストーリーが進んでいくと、民話や神話に出てくる妖精や妖怪、魔人、魔物、神様、悪魔など、さまざまな存在が登場。さらに、クトゥルフ神話の要素も取り入れられていて、旧き神のような存在が登場する話もあります。
――クトゥルフ神話も!? まさにオカルト満漢全席ですね。主人公のヘルボーイは悪魔なんだけどおじさん、という哀愁に僕はすごく惹かれました。
おでーん
渋いですよね、ヘルボーイ。悪魔として生まれたけれど人間のために戦う悪魔っていう、『ゲゲゲの鬼太郎』や『デビルマン』のように、日本でも昔からなじみがあるので親しみやすい設定です。
人間のために戦うことへの葛藤は、おじさんの悪魔が抱えているほうがより深いというか。しかも、戦いかたも泥臭いんです。血ヘドを吐きながら、諦めずに戦って勝つ話が多くて。
見た目が悪魔なので周囲から煙たがられながらも、ヘルボーイは悪魔の王になれる能力を捨ててまで、人間のために戦うんですよ!
――健気すぎる、ヘルボーイ。
おでーん
ストーリーはアメコミっぽい世界の命運を分かつ大きな事件だけじゃないのもいいんです。田舎で起きた呪いを解決したり、吸血鬼に噛まれた老婆を助けたりする小さなエピソードも魅力です。そういう細かい話も丁寧に描かれているので、まったり延々と読み続けたくなりますね。

Hellboy Volume 1: Seed of Destruction (English Edition) より引用。
――暗闇の中でヘルボーイが立っているときの影や陰影の描きかたなど、ビジュアルの美しさやコントラストも印象的ですよね。『都市伝説解体センター』のドット絵の雰囲気とも通じるように感じます。
おでーん
ありがとうございます。光と闇のコントラストはオカルトやホラー作品に共通する要素で、マイク・ミニョーラさんの作品から影響を受けた部分も多いです。『都市伝説解体センター』でも、気づかないうちに同じような表現が取り入れられているかもしれません。
謎と怪奇渦巻く、おすすめ作品
――せっかくなので、おでーんさんのおすすめのアメコミや漫画をもう少し教えてください!
おでーん
まずは『フロム・ヘル』ですね。切り裂きジャックを題材にした作品で、『ウォッチメン』を手掛けたアラン・ムーアさんの傑作です。
白黒の地味なビジュアルですが、陰謀やフリーメイソンが絡む壮大な物語が描かれています。探偵視点ではなく、切り裂きジャック側の視点で物語が進むのもおもしろい。最初は重苦しいですが、最後には綺麗にまとまってスッキリ終わるのでおすすめです。

ここから日本の漫画で、『エリア51』を紹介させてください。アメリカの秘密施設を舞台に、神話の神やUMA、宇宙人が隔離されて暮らす街で、主人公は探偵として事件を追います。『ヘルボーイ』に近い雰囲気もあって、都市伝説やオカルトが混ざっているところがおもしろいです。絵の陰影がはっきりしていて、こちらも『女神転生』のファンに読んでほしいです。

最後に『探偵儀式』!探偵がたくさんいる世界で、探偵がつぎつぎ殺されていくという話です。儀式めいた仕組みや探偵の階級みたいなシステムもあって、独特の世界観が魅力ですね。『多重人格探偵サイコ』の大塚英志さんが原案・脚本なので、共通キャラクターも登場します。ミステリー好きなら、探偵どうしのやり取りや頭脳戦はたまらないと思います。

『ダ・ヴィンチ・コード』の狂信的な修道僧・シラスがスゴかった
――続いて、きっきゃわーさんのおすすめ作品を教えてください。
きっきゃわー
おすすめはロバート・ラングドンシリーズの『ダ・ヴィンチ・コード』です。主人公も周りのキャラクターも個性がはっきりしていて、とても読みやすい作品でした。

じつは僕、文字を追うのが苦手で、堅苦しい文章だとすぐ諦めちゃうんです。そんな僕が初めて小説を読み切れたのは、父親にすすめられた夢枕獏さんの作品でした。父が大ファンで、当時ハマっていた『陰陽師』シリーズを「このキャラがおもしろいぞ」って教えてもらいながら読んだんです。登場人物の掛け合いもテンポがよくて、最後まで読み切ったときは「自分でも小説読めるんだ!」っていう達成感がありましたね。その成功体験があったからこそ、『ダ・ヴィンチ・コード』にもすっと入っていけたんだと思います。
――漫画は直感的に情報が入ってきますけど、小説は人物が多いと混乱しますもんね。
きっきゃわー
そうなんです。主人公が立っていてイメージしやすいと、内容も自然に入ってくるんですよね。
――触れたきっかけは映画でしたか?
きっきゃわー
まず本を手に取って読んで、そのあと時間が経ってから映画も見た感じです。謎解きの仕組みや答えへの着地の仕方がすごくおもしろくて。
謎を解き進めていく主人公・ラングドン教授を追走する狂信的な修道僧・シラスがスゴいんです。正直世に出すのは難しいんじゃないかってくらいパンチがある(笑)。殺し屋としての行動力は恐ろしいのですが、彼自身を罰する苦行のシーンも印象的で……。
――ただの悪役には収まらない存在感がありましたよね。
きっきゃわー
シラスは独特で、特定の宗教観で育まれたピュアさが極端に尖ると、ここまで危険になるんだっていう強敵感があって、めちゃくちゃワクワクしました。悪いことをしているから敵というわけではなく、ただ純粋に「言われたことをやってる」だけなんですよ。その独特な発想やキャラクターの作りかたが本当におもしろいですね。
会話もポツポツしゃべる独特な感じで、自分の考えを少しずつ相手に開示していくんですよね。あの温度感や距離感が絶妙で、自然に引き込まれます。
創作だけど実在感
――ロバート・ラングドンシリーズって、史実などの情報と創作が絡まりあってるおもしろさがありますよね。
きっきゃわー
史実や情報があるおかげで、フィクションなのにリアルに感じるんですよ。味付けもされてるんですが、ギリギリ「マジなのかな?」って思っちゃう瞬間があって、その絶妙なラインがすごく好きです。
『都市伝説解体センター』でも同じで、実際に触れたことのあるものが出てくると、入り込みかたが全然違うんですよ。テレビで見たガラスのピラミッドも「謎があるんだ」って思っちゃったりします。実在するものの見せかたって大事だなと感じますね。
『ダ・ヴィンチ・コード』では、絵の中の謎がマグダラのマリアの血族につながっていたり、身近な存在にオチが収束していくのがおもしろい。壮大に話が広がっているのに、最終的には自分が把握できる範囲で終わるので、文字を追うのが苦手でも最後までついていけました。こういう作りかたは本当に勉強になりますね。
文字を追いながら頭の中では映画のようなシーンが浮かんでくるので、実在する建物や絵も出てくることで、文字を追うのが苦手でも自然に引き込まれます。退屈にならず、新しい情報に触れる感覚がつねにあってワクワクするんです。
――最後に、おすすめポイントをお願いします!
きっきゃわー
私でも読めたので、文字を追うのが苦手な人でも世界に入り込めると思います。映画で先にキャラクターや話の流れを把握してから読むのもいいですし、逆に小説から入って映画を見るのでも十分楽しめます。
それこそ、天眼錠のようにダイヤルを回して謎を解くシーンなど、映像的にわかりやすい描写も多くて、物語の展開や謎解きのおもしろさを直感的に味わえます。謎解きやサスペンスが好きな人には、王道ながらしっかりおすすめできる作品です!