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『モービッド メタル』「ゲームの歴史は点ではなく線でつながっている」開発者Felix Schade氏×神谷英樹氏のアクションゲームクリエイター対談

by河合ログ

『モービッド メタル』「ゲームの歴史は点ではなく線でつながっている」開発者Felix Schade氏×神谷英樹氏のアクションゲームクリエイター対談
 ユービーアイソフトから発売予定の新作ローグライト・アクションゲーム『モービッド メタル』。本作は現在開発スタジオ・Screen Juiceを率いるFelix Schade氏が大学生のころにひとりで開発を始めたタイトルだ。

 本記事では、Felix氏が尊敬しているという、数々の名作タイトルを生み出してきたゲームクリエイター・神谷英樹氏との対談をお届け。期待の新星とベテラン、ふたりのクリエイターにアクションゲームの作りかたについて語ってもらった。


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『モービッド メタル』はハイテンポでスタイリッシュなアクションが特徴。リアルタイムでキャラクターを切り換えてコンボをつなぎながら戦う、ユニークなシステムを採用している。
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取材当日はFelix氏による解説を受けながら神谷氏が『モービッド メタル』をプレイ。

 なお、対談の様子はユービーアイソフトのYouTubeチャンネルでもアップされているのでこちらも要チェックだ。

Felix Schade氏フェリックス・シャーデ

『モービッド メタル』の開発スタジオ・Screen Juiceの設立者。大学在学中に個人ゲーム開発者として本作の開発を始め、現在はプロデューサー・ディレクターという立場で開発スタジオの指揮を執る。

神谷英樹氏かみやひでき

ディレクターとして『バイオハザード2』、『デビル メイ クライ』、『ビューティフル ジョー』、『大神』、『ベヨネッタ』、『The Wonderful 101(ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン)』を開発。『ベヨネッタ2』、『ベヨネッタ3』、『ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔』、および『ソルクレスタ』ではエグゼクティブディレクターとして、全体監修や原案、シナリオなどを担当。カプコン、クローバースタジオ、プラチナゲームズを経て、2024年10月にクローバーズのスタジオヘッド兼チーフ・ゲームデザイナーに就任。現在はディレクターとして『大神』シリーズの完全新作プロジェクトの開発に取り組んでいる。

先人たちの偉大な作品が最高のレシピ

――おふたりがゲームクリエイターを志したきっかけを教えてください。

Felix 
もともとゲームが大好きでよく遊んでいたんですが、学生時代にUnity(※)と出会ったんですよ。友だちといっしょに触り始めて、どんどんゲームを作る楽しさにのめり込んでいきました。
※ユニティ・テクノロジーズが提供するゲームエンジンで、世界で広くゲーム開発に用いられている。
神谷 
すごい……。僕はBASIC(※)を1日で諦めたので、自分の話をするのは恥ずかしいですね。
※プログラミング言語のひとつ。比較的習得は容易でプログラミング入門者向けとされている。
――(笑)。ぜひお聞かせください。

神谷 
僕もゲームを遊ぶのは好きだったんですけど、ゲームクリエイターになる前は、自分で何か作るようなクリエイティブなことはしていませんでした。

 4年間遊べたらいいなという気持ちで、ゲーム作りとは関係のない大学に進みましたが、就職活動をするにあたっていろいろな企業の資料を見ていたら有名ゲーム企業の求人もあって。そこでゲームを作ることを真剣に考え始めて、カプコンに入りました。

――おふたりともクリエイターを志す前からゲームをよく遊んでいたとのことでしたが、とくに思い出に残っているタイトルを教えてください。

神谷 
僕がゲームに夢中になったのは1980年代の2D全盛期でした。その質問をされたら僕が必ず挙げる作品が4つあります。

 まずはスーパーファミコンの『
ゼルダの伝説 神々のトライフォース』。これは僕がゲームを作るうえでの教科書になっている作品です。それから『スペースハリアー』、『グラディウス』、『悪魔城ドラキュラ』。この4本ですね。Felixさんとは時代がぜんぜん違うので、どんな作品を挙げられるのか興味深いです。

Felix 
学生時代にプレイステーション3の『バトルフィールド』シリーズに感動してすごく遊んだので、『バトルフィールド』みたいなゲームを作りたいと考えていた時期もありました。それから、『Dota 2』もよくプレイしていましたね。

神谷 
当然、3Dの世代ですよね。

Felix 
そうですね。初めて遊んだゲームは『マリオカート ダブルダッシュ!!』でした。

神谷 
ゲームキューブか~ ……。僕の時代だと、3Dのゲームといったら初代の『DOOM』とか『ウルフェンシュタイン3D』でしたよ。
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――ジェネレーションギャップですね(笑)。Felixさんが挙げられたゲームは対戦がメインのタイトルが多いですが、なぜシングルプレイ専用のアクションゲームを開発することにしたのですか?

Felix 
デビル メイ クライ』をプレイして「なんだこれは!」と衝撃を受けたんです。それから、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』や、『メタルギア ライジング リベンジェンス』などもプレイして影響を受け、吸収したものを反映して『モービッド メタル』を作っています。

神谷 
最初にプレイした『デビル メイ クライ』はどれですか?

Felix 
『5』でした。SNSでかっこいいコンボを見かけたのがきっかけです。

神谷 
『5』というとかなり近代ですよね。

――2019年のタイトルですからね。ちなみに、最近おふたりがプレイして魅力を感じたアクションゲームはありますか?

Felix 
僕は『Stellar Blade』と『Lost Soul Aside』ですね。とくに、後者は個人開発で作られたタイトルで、ひとりで開発を始めたころの『モービッド メタル』と重なるところもあり、いまも心の支えになっているタイトルです。

神谷 
Felixさんが挙げられたタイトルは当然目にしていますが、僕は毎日『テトリス99』ばかり遊んでいるので、これといったタイトルを挙げるのは難しいです。

 少し前まで3Dのアクションゲームはあまりありませんでしたが、最近はかっこいいコンボのアクションゲームがたくさん出てきていますよね。それはニーズの高まりを受けてのことだと思うんですけど、僕もいずれそういうアクションゲームを作りたいと考えているので自分にとってもうれしいことですし、『モービッド メタル』も含めて、ライバルになるような作品がたくさん出てきていて頼もしいなとも思いますね。

――ライバル、いい言葉ですね。

神谷 
僕はカプコン、そしてプラチナゲームズで同じようなジャンルのゲームを継続して作ってノウハウを貯め、さらに洗練させていったんですが、『モービッド メタル』を始め、先ほどFelixさんが挙げられたタイトルなど、突然ハイクオリティーな作品が世に出てくることも増えましたよね。いきなり作ってこのクオリティーのものができるのはすごいなと。

Felix 
やっぱり、神谷さんが『デビル メイ クライ』を作ってくれていなければ、いまの3Dアクションゲーム人気は存在しないと思います。神谷さんたちが洗練させていった作品の数々は、僕にとって最高のレシピなんです。

――直接会ったことはなくても、神谷さんの作品が『モービッド メタル』の間接的な師匠だったわけですか。“技は見て盗め”ですね。
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神谷 
ただマネするだけではおもしろいものはできないですからね。本当にすごいですよ。

 もともと『デビル メイ クライ』も“『
バイオハザード』の続編を作る”というのがスタート地点だったんですよ。三上さん(※)の手本がなければ『デビル メイ クライ』が世に出ることはなかったでしょうし、先ほど話したように、プレイヤーとして遊んでいたゲームの数々はいまもゲーム作りの教科書になっています。
※三上真司氏。カプコン時代の神谷氏の上司であり、『バイオハザード』などの名作を手掛けたことで知られる。
 だから、ゲームの歴史って点がいくつもあるんじゃなくて、作品どうしが線でつながっていると思うんです。この線を大事につなげていきたいですね。

 Felixさんのように、僕が作ったゲームがきっかけになってこの業界を目指してくれる人がいるのはとてもありがたいことですし、ゲームを作ることに対しての責任感も強く感じます。

プレイヤーが楽しいと感じるかどうかが最優先

――おふたりがアクションゲームを作るうえで重視するポイントを教えてください。

Felix 
プレイヤーに楽しんでもらえるものをつくること、それがいちばん大事です。本作ではとくに戦闘要素にこだわっていて、アクションやスピード感、多彩なコンボ、そしてキャラクター切り換えの要素は譲れないポイントでした。

 それから、アクションやキャラクター、ストーリーなど、ゲームに入れ込むものはすべて“カッコいいかどうか”を最重要視しています。
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神谷 
わかります。僕もカプコン在籍時に『バイオハザード』を作っていたとき、初代プレイステーションのスペックの都合上、別の部屋に移動するときにはどうしても6秒間ロードが入ってしまうという問題に直面したんです。

 そのまま作ると、部屋を移動するたびにプレイヤーは6秒間黒い画面を見つめることになるんですが、これではゲームが台無しになってしまう。そこで、いろいろと知恵を絞ってロード中にドアのモデルだけ表示させて、ガチャッと開くようにしたんです。

 やっぱり、ユーザー体験はいちばん大事で、それを台無しにしないようにするためにどうするか考えるのはゲーム作りの基本になると思います。

――ユーザー体験のためにマイナスな要素を演出に昇華したわけですね。

神谷 
あとは、新しいゲームを作るときは、そのゲームでしか遊べない仕組みを発明して入れ込むことを心がけています。たとえば、『ベヨネッタ』では敵の攻撃を避けるとスローになる“ウィッチタイム”、『大神』では筆で絵を描くとそれが世界に影響をおよぼす“筆しらべ”という遊びを入れ込んでいます。

Felix 
感動しました。最近のゲームにはユニークでおもしろい、発明的なものが少なくなってきていると思うので。

神谷 
グラフィックがきれいなだけだと、あまり惹かれないんですよね。やっぱり、ひとりのプレイヤーとして、そのゲームでしか味わえない体験で心をときめかせたいなと思います。

ゲーム作りで大事なのは仲間たちの存在

――おふたりはユニークなアイデアをどのようにして生み出しているのですか?

神谷 
「こういう風に考えたらアイデアが出てくる」なんていう都合のいい話はないですよ。ほかのゲームでは体験できないものを作らなければいけないという気持ちを持って、「どんなことがこのゲームにとってユニークでおもしろいことなんだろう?」とひたすら考える。

 ずっと考えていると、どこかでゲームの神様が降りてきて、アイデアをくれるんですよ。毎回そのくり返しです。

Felix 
『モービッド メタル』のキャラクター切り換えのシステムは、もともと折り紙をモチーフにした2Dのゲームを作ろうとしていたときに考えていた“紙が変わった形によって違うスキルを使える”というアイデアでした。

 それをもとに、3Dアクションゲームという土台に合わせて、当時考えていたものよりもハイテンポなアクションに洗練していきました。
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神谷 
僕もいままで作ってきたゲームの中で使われなかったアイデアはあるんですけど、そういうアイデアをしつこく心の中に持っておくことは大切です。実際にカプコン入社時に提出した企画書からアイデアを引っ張り出したことがあります。

 Felixさんもこれからゲーム作りを続けていく中でアイデアの出しかたで苦労することがあるかもしれませんが、そういう小さな兆しを見逃さないようにする意識は大事だと思います。

―― 神谷さんからのアドバイスがありましたが、Felixさんから聞いておきたいことはありますか?

Felix 
自分に自信が持てず、「本当にこれでいいの?」と悩むことがあるんですが、どう向き合えばいいですか?

神谷 
僕もいまだに同じようなことで悩むので、大丈夫だと思います。これは一生続きますね。経験を積んでゲーム作りが楽になることはないです。

 でも、僕がいままでゲームを作り続けてきて強く思うのは、仲間の存在のありがたさですね。僕はプログラミングもできないし、アニメーションを作ることもできないんですけど、いつも仲間たちが助けてくれます。

 いま僕はクローバーズという小さなスタジオを立ち上げてゲームを作っているので、立場としてはFelixさんと同じなんですよ。会社作り、仲間作り、クリエイティブな環境作りは本当に大事だと思うので、これからがんばってください。

Felix 
いまはチームで開発を進めているので、もしひとりで作り続けていたらいま僕はここにいないと思います。これからもいまの仲間を大事にしていきます!

神谷 
じゃあ、何も心配ないと思いますよ!

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