『ソニックレーシング クロスワールド』初音ミクコラボはコンセプト段階から「ソニックらしく速い曲にしましょうよ」との提案が。実現までの舞台裏や、遊びを飽きさせないこだわりを開発陣に訊いた

byジャイアント黒田

『ソニックレーシング クロスワールド』初音ミクコラボはコンセプト段階から「ソニックらしく速い曲にしましょうよ」との提案が。実現までの舞台裏や、遊びを飽きさせないこだわりを開発陣に訊いた
 ソニックシリーズから参戦する23人のキャラクターに加え、人気タイトルのキャラクターたちがハイスピードレースをくり広げる、セガの新作レースゲーム『ソニックレーシング クロスワールド』が好評発売中。対応ハードはNintendo Switch 2(※)、Nintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam/Epic Games Store)と幅広く、世界中の異なるプラットフォーム間でネットワーク対戦(クロスプレイ)を楽しめる。
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※Nintendo Switch 2版は後日発売予定。[IMAGE]

 本作では、2025年10月3日~6日にかけて初音ミクとのコラボを記念した特別イベントを開催。イベント期間中にフェスタポイントをためることで、ここでしか手に入らない限定ゲーム内アイテムを入手できる。
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 アイテムは称号“バーチャルシンガー”やガジェット“ダッシュタイプキャラカスタム”を始め、ステッカーやクラクションなど多彩。ステッカーには初音ミクのほか、鏡音リン・レンや巡音ルカのイラストを用いたものも用意されている。ボーカロイドファン必見のイベントなので、この機会をお見逃しなく。コンプリートを目指して挑戦してみよう。
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 今回は、本作のキーマンであるプロデューサー・瀧隆一氏と、クリエイティブディレクター・小早川賢氏へのインタビューを公開。開発でとくに苦労した点や、コラボキャラクター&マシンへのこだわりを中心に話を訊いた。なお、回答は9月上旬にいただいたものだ。

瀧隆一氏たき りゅういち

『ソニックレーシング クロスワールド』プロデューサー。 (文中は瀧)

小早川賢氏こはやかわ まさる

『ソニックレーシング クロスワールド』クリエイティブディレクター。 (文中は小早川)

たくさんの苦労を乗り越えて自信作としてゲームが完成

――いよいよ発売を迎えますが、現在の率直な感想はいかがでしょう。

 本作の原案を考え始めたのが2021年の初頭だったので、やっとここまで来たというのが率直な感想です。本作はこれまでのレースゲームと異なる、“ワクワクする驚き”がたくさんある体験を創ることを目指して開発を続けてきました。ここまでを振り返ると、いろいろなことがあって、たいへんなこともたくさんありましたが、少なくとも自分たちが満足できるゲームに仕上げることができたと思っています。

小早川
 月並ですが「ついに始まる」と思っています。ディレクターとしてプレイヤーの皆さんに遊んでもらう光景は、頭の中で何百回、何千回、何万回とくり返し想像してきましたが、“本当の1回”が始まるんだな、と思っています。ワクワクでもあり、ドキドキでもあり、遠足に行く前日のような童心に返った心境です。
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――開発を進める中でとくに苦労したところを、プロデューサー、クリエイティブディレクターそれぞれの立場から教えてください。
 トラベルリングによる異世界移動での“驚き”と“飽きないゲーム性”の両立、ガジェットシステムによるゲーム性の深化、マルチプラットフォーム・オンラインクロスプレイのワールドワイドでの実現、他社様IPをも巻き込んだ多くのコラボレーションなど、それぞれにたくさんの苦労がありました。

 それらを最初にやろうと決めたときから、「絶対実現したい!」と思って進めてきましたが、実現できて本当によかったと思うと同時に、仮にいまあのときに戻ったら、その苦労を知っているので同じ気持ちで「やろう!」と言えるかどうか自信がないです(笑)。ひとつを選ぶにはいろいろたいへんだったなと思います。

小早川
 このジャンルは、非常に強い競合製品が存在します。異世界トラベルリング、クロスプレイ、ガジェットなど、さまざまな工夫をさせていただきましたが、それらはすべて、我々の強みでもある“このジャンルでもっとも優れた競技性を持つゲーム”を生み出して真っ向勝負するためでした。「どんな競合製品にも負けない」と自信を持って言えるようになるまで品質を高める工程こそが、クリエイティブディレクターとして私がもっとも苦労した点です。
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コラボキャラクターやマシンへのこだわり


――本作には数多くのコラボキャラクターが登場します。コラボキャラクターの選定はどのように行っているのでしょうか?

 ソニックの世界に登場いただいたときに、「驚きが演出できるか?」、「ゲーム内で互いのファンが喜ぶような魅力的な表現ができるか?」などを考え、各版元様に我々のほうからご提案をさせていただき、選定させていただいています。

 ソニックは、幅広い年齢層の方々に世界中で愛されているキャラクターですが、たとえば日本ではその魅力が多くの方々には伝わりきっていない側面もあるのかなと思っています。ですので、こういったコラボレーションをきっかけに本作を通して、ソニックやその仲間たちの魅力や世界観を知っていただき、参加いただいたIPの魅力も伝える、「WIN-WIN」の実現を意識しています。
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小早川
 「これを入れたらプレイヤーが絶対喜ぶだろう」と確信できるかが私の選定基準でした。ただし、本作は世界各国のプレイヤーに向けた商品でもあるので、私が詳しくない地域については、その地域に在籍するスタッフの目を見ながら、本気で喜ぶかを見極めながら選んだつもりです。

 サマーゲームフェストで公開した初音ミク、春日一番、ジョーカー、『
マインクラフト』の4つのIPは、私自身もプレイヤーが喜ぶ顔がイメージできたコラボレーションでしたので、公開時に実際に喜んでもらえる姿を見たときはうれしさもひとしおでした。

――本作への参戦をお願いしたときのコラボ相手の反応や、やり取りの中で印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

 皆様には前向きに話を聞いていただき、多くのご助力をいただきました。たくさんのお願いをさせていただいたので、正直いろいろご迷惑をおかけしたと思います。ご協力いただいた皆様には感謝しかないです。

 通常、開発中の段階でお話しさせていただくときは、ゲームのイメージがしにくいということがありますが、『
ソニック&セガ オールスターレーシング』などの過去作があったこと、ソニック自体がセガを代表するIPでしたので、そのことに随分助けられたと思います。初音ミクでは、楽曲・オリジナルアートなどを新たに作って実装させていただいたりで、たいへんお世話になりました。

小早川
 ソニックはグローバルで子どもたちに人気のキャラクターということもあり、『龍が如く』チームさんからは、最初の提案の際に「(作品のテーマ的に)本当にいいの?」と確認されたのをよく覚えています(笑)。我々としては「絶対に喜ぶから大丈夫です!」となんの根拠もなく説明しましたので、実際にコラボレーションを発表してソニックファンから喜んでもらえたときは、うれしさよりも安堵のほうが上回りましたね(笑)。
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 また、初音ミクについては、クリプトンさんからデザインの方向性からカラーイメージまで、さまざまなアイデアをいただきながら制作したため、いちばん印象に残っています。PJ ONSOKU(※)という音楽企画でもご協力いただいたのですが、コンセプト段階から「ソニックらしく速い曲にしましょうよ」とご提案いただいたり、ほかの企画にはない音楽性や作家さんをご紹介いただいたりと、セガとクリプトンさんの2社で協力して作り上げられたのではないかと思います。
※“Project ONSOKU”は、 ソニックと初音ミクが音楽を通してコラボレーションするスペシャルプロジェクト。5人の豪華アーティストによる5つのオリジナル楽曲とミュージックビデオが公開されており、これらの楽曲はすべてゲーム内のジュークボックスに追加される。[IMAGE]
――コラボキャラクターやコラボマシンを表現するにあたって、とくに注力したことや、たいへんだったことなどを教えてください。
小早川
 初音ミクについては、当初はレーシングマシンというアイデアもあったものの、すでに他社さんでも使われている題材でもあり、本作ならではというデザインに収まらず、本作から登場するホバーボードのモチーフで再考し、マシンもですが衣装にもこだわって“人馬一体”で魅力が伝わるように意識しました。

 春日一番のマシンについて、当初は作品に登場するリアルな車なども候補にあったのですが、『
ソニックレーシング』シリーズの中に交じってしまうとどうしてもマシンの魅力が損なわれてしまうため、車単体で作品性を出すために多くのデザイン案を検討しました。最終的には、マシン単体でも『龍が如く』を連想できる、印象的なデザインにできたのではないかと思います。

 『
ペルソナ5 ザ・ロイヤル』のジョーカーについては、専用ペルソナである“アルセーヌ”との組み合わせがすぐに思いつき、このコラボの中ではもっともスムーズに決まりました。専用ペルソナだけあって、デザイン性が非常にジョーカーと相性がよく、乗っている姿もかっこいいですよね。
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――キャラクター選択時やレースが終わった後、初音ミクの歌声を聞けるなど、こだわりを感じました。初音ミクの歌声はわかりやすいですが、ユーザーが気づきにくいこだわりポイントがあれば教えてください。
小早川
 レースリザルトのBGMでは、コラボキャラクターは専用BGMが流れることに加え、通常キャラクターの場合、コースのもととなった作品のBGMが流れるようになっています。グランプリモードでのキャラクターどうしのかけあいも、出会うコースによってセリフが変わったりと、できるだけシンプルな設計を崩さないようにしつつも、毎回変化が起きて、“なんとなく飽きない”設計を目指しました。コース背景にもデザイナーがこっそりしかけたイースターエッグがたくさん仕込んでありますので、見つけたらSNSなどでシェアしながら盛り上げてもらえたらうれしいです。

――発売後のアップデート情報に関して、公開可能な範囲で教えてください。

 まずは、リリースから12ヵ月間、毎月無償でセガと関連のあるIPのキャラクターとマシンを追加する計画です。こちらは、初音ミク、ジョーカー、春日一番などの情報を公開させていただいていますが、これからの続報をご期待ください。

 さらに、同時に6つのIPのコース、キャラクター、マシンをセットにして、シーズンパスなどの形態で有償販売させていただきます。こちらは、『マインクラフト』、『
スポンジ・ボブ』、『パックマン』など、多くのIPにご参加いただく予定です。また、関連したオンラインイベントをゲーム内でも計画していますので、リリース後もパワーアップしていく本作を、長く遊んでいただければうれしいです。
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――ファンや読者に向けてメッセージをお願いします。
 本作は、ソニックチームとアーケードの『頭文字D』チームがいっしょに開発をした、新しいアクションレースゲームです。これまでの『ソニックレーシング』シリーズの人気の要素を取り込みつつ、本作独自の新たな要素も追加し、“飽きない驚き”を意識して開発しました。

 ひとりでも、マルチでも、オンラインでも、オフラインでも、いろいろなシチュエーションで楽しめるゲームになっていると思います。ですので、いろいろな遊びかたで楽しんでいただければと思います。リリース後もまだ公開していないアップデートも計画しておりますので、長く遊んでいただければうれしいです。

小早川
 長年、アーケードゲームに携わってきた者として、世界的にも珍しいガラパゴス的な進化を遂げた“日本のアーケードゲーム”の実力を世界に向けて試すいい機会だと考えています。我々がどの業界よりも先駆けて積み上げてきた“誰もがネットワークを通して本気で競い合う楽しさ”を世界中の皆さんにぜひ、楽しんでもらいたいと思っています。

 また、ここまでインタビューを読んでいただけたらならぜひ、SNSで『ソニックレーシング』と検索してみてください。きっとそこには、我々が説明する以上に説得力のあるプレイヤーの声が見つかると思います(いい声であることを祈ります)。
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