京都・みやこめっせにて開催中の“BitSummit the 13th”に出展中のタイトルで、とくに“登場人物の台詞回し”に惹き付けられ、強く印象に残ったのがこの『吾輩は寮生である』です。
なお、本作は無料で配信予定。デモ版はネット上でもunityroomでプレイ可能となっています。
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ゲームの舞台は京都大学の敷地内にある112年の歴史を持つ日本最古の学生寮・吉田寮。いまも120人ほどの学生が暮らしており、寮費はたったの2500円という、実在する寮です。本作の開発チームは、現役の寮生、元寮生、寮外生で構成されているとのこと。
主人公は、そんな寮で愛されている猫の“ぼん”。ある日、目が覚めると“あなた”はぼんになっていた……というところから物語はスタート。急にぼんが人語を喋るようになったので、ほかの寮生たちも驚きます。
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自分が吉田寮で暮らしていたこと以外、ぼんとして目覚める前の記憶が曖昧なあなたは、“寮生の誰かがぼんに乗り移ってしまったのか?”、それとも“ぼん自体が突然喋れるようになったのか?”さえも謎のまま。寮を探索して、自分の記憶にまつわる謎を解き明かして行くことになるのです。
探索は横スクロールで進行。寮はいくつかの区画に分かれており、寮生たちに話しかけていくとストーリーが進行します。特定の時間帯にしか姿を見せない寮生には、クッションの上で眠ることで時間を操作すれば出会える場合も。
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今回プレイしたバージョンでのクリアー条件は、“ぼんの入寮に反対している3人の寮生を説得すること”。
基本的には猫を入寮扱いにする必要はありませんが、いまのぼんは人語でコミュニケーションが取れる、しかももとは人間かもしれない存在。寮の一員として、部屋を与えられて“健康で文化的な最低限度の生活”を営む権利があるはずだ、ということのようです。
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寮に住むのは一癖も二癖もある人ばかり。親切な人も居れば、話がほとんど通じない人も居て、ぼんの入寮に反対している3人は、とくにヤバい! ぼんだけでは対話不能な相手は、ほかの寮生の力を借りて説得することになります。このキャラ立ちしまくった寮生同士のやりとりが個人的にはとにかく最高でした。
反対派の3人は、ぼんの入寮に反対する理由も三者三様。ワニヅカは「ワニの飼育は認められなかったのに、猫が住めるのは不公平だ!」と言い、ミナミは「そもそも住める部屋が空いていないはずだ」と言い出します。
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ワニヅカ「この寮はずっと恒温動物による絶対王政が敷かれているんだ!」
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ぼん「僕が部屋を一つ掃除するから、そしたら僕の入寮に賛成してもらえる?」
そして一見して愛猫家であるカシワは……。
“ぼんはペットとして飼ってくれる寮生を探している”と思い込み、ぼんの言い分を一向に聞き入れてくれません。
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カシワ「大丈夫。僕はバイトもしてるから美味しい餌をあげれるよ」
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カシワ「ペットなんだから、ちゃんと言うことを聞かないと」
このことを相談した留学生の寮生・リュウの台詞がとても印象的でした。
それはカシワの言葉が「ぼんを無意識に見下した」物言いであり、そこに「悪気があるかないかは関係ない」ということ。リュウの意見にぼんは「大袈裟だなぁ」と思いつつも、「でも確かにすごく嫌な感じではあった」と振り返ります。
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リュウ「いや、ボンはもっと怒ったほうがいいよ。悪気があるかないかは関係ない」
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リュウ「だって、カシワの言い方は、まるでボンの尊厳を認めてないから」
このやりとりが強く印象に残ったことを、ブースに居た本作のシナリオを担当している方に話してみると、こうしたやりとりを取り入れたのには、吉田寮が伝統的に寮生たちによる“自治”で成り立っている場所であることが関係しているようです。
いわく、寮生たちはともに学業に励む仲間・友人であると同時に、ひとつの集団をみんなの意見で運用していくという意味では、会社組織のようなものでもあるとのこと。出自が違い、価値観も大きく異なる者同士が納得のいく自治を行うためには、“話が通じない”と感じる相手ともなんとかして対話する必要があるのだと言います。カシワの優しげに見えてぼんを無自覚に見下し、傷付ける物言いは、こうした側面の象徴と言えそうです。
また、猫を主人公にした理由のひとつには、さまざまな性別や国籍の寮生がともに暮らす吉田寮を舞台にするにあたり、なるべくなんらかの属性に寄ることのない、フラットな視点から描きたかったという意図があったとのこと。なお、シナリオ担当の方は、実のところ猫も含めて動物は嫌いなのだとか。
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吉田寮の自治の難しさを綺麗事で済まさず描きつつ、クセのある寮生たちとのやりとりをおもしろおかしく描くバランス感も含め、寮の自治に関わってきた当事者たちならではのゲームに仕上がりそうな『吾輩は寮生である』は、まさに商業作品では決して世に出ない作品になりそうです。
デモ版の範囲で描かれるカシワの顛末もまた、クスリと笑えるものになっているので、ぜひ多くの方に見届けてほしいところ。
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ちなみに、現在のバージョンは吉田寮の内観を忠実に再現することを優先した結果、“移動に時間が掛かる”という批判が少なくないとのことで、このあたりは今後の開発での改善を検討しているとのことでした。