『スターサンドアイランド』はNPCが“本当に生きている”と感じられるゲームにしたい。開発者が語るこだわり、スローライフの根底に中国道教“詩と酒の暮らし”の教えがあった

『スターサンドアイランド』はNPCが“本当に生きている”と感じられるゲームにしたい。開発者が語るこだわり、スローライフの根底に中国道教“詩と酒の暮らし”の教えがあった
 SNSやKickstarterを中心にスローライフシミュレーションゲーム『Starsand Island』(スターサンドアイランド)が注目を集めている。
 2025年5月31日まで実施されたKickstarterでのクラウドファンディングでは、目標額10万ドル(約1456万円)に対して、最終的に300%超の支援を達成。ウォーターパークやペット、ホバーボードといった追加コンテンツの実装も決定した。

 舞台は“星砂島”と呼ばれる神秘的な南国の島。都会の喧騒を離れ、作物を育て、動物たちと触れ合ったりしながら、自由気ままな島暮らしを楽しめる。発売は2025年第4四半期で、対応プラットフォームはNintendo Switch、プレイステーション5(PS5)、Xbox、PC(Steam)。

 本作がなぜここまで日本のゲームファンの心を掴んでいるのか――その理由は、日本アニメなどに影響を受けた温かみのあるグラフィック、そして“本当に生きている”と感じられるNPCや動物たちの存在にある。SNSでも「アニメ調のデザインがかわいい」、「建築の自由度がすごい」、「NPCとの交流が気になる」といった声が多く寄せられている。

 今回は、そんな『Starsand Island』を手がける開発陣に直接コンタクト。企画の背景や制作に込めたこだわりについて、じっくりと話をうかがった。
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畑を耕し、魚を釣り、動物と暮らす。星砂島のスローライフ

 まずは、星砂島での穏やかな時間の流れを紹介したい。この島での暮らしは、自然の恵みとともに在る。広大な土地を耕して自分だけの畑を作り、季節の野菜や果物を育てて生計を立てる。たまには海へ出て、のんびりと釣り糸を垂らすのもいいだろう。釣った魚は食卓を彩るごちそうに。島での生活は、プレイヤーの働きかけひとつで豊かになっていく。
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 また、島には個性豊かな住民たちが暮らしており、彼らとの交流も生活の醍醐味だ。プレゼントを渡して友情を深めていくと、やがて住民たちのほうからプレイヤーに心を開き、特別な想いを垣間見せる場面が増えていく。さらに、特定の天候や時間帯にしか発生しない特別なエピソードも用意されており、何気なく立ち寄った場所で思いがけない出会いが待っているかもしれない。

 愛らしい動物たちとのふれあいも満載で、ときには畑の作物をこっそりつまみ食いするなんて、微笑ましいハプニングも起こるだろう。
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細部までこだわれる、自由な建築と暮らしのデザイン

 本作最大の魅力と言えるのが、圧倒的な自由度を誇る建築システムだ。壁の立てかたや床の素材選びはもちろん、家具や家電、日々の暮らしを彩る小物ひとつにいたるまで細やかに配置できるそうだ。家の外壁に取り付ける室外機や冷蔵庫の扉に貼るメモの位置すらプレイヤーが自由に決められるのだ。シンプルな小屋からデザインに凝った大邸宅まで、まさに“理想の我が家”をとことん追求できる仕組みとなっている。
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 また、住まいだけでなく庭に畑を広げたり、動物のためのスペースを設けたりと、生活環境のすべてを自分の手で形作れる。暮らしの土台をスムーズに整えたうえで、自分らしい空間を丁寧に築いていけることこそ、このシステムならではの醍醐味と言えるだろう。
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動物好きの住民は熱心に世話を焼き、カピバラは小鳥とご飯を分け合う。プレイヤーが“NPCとともに暮らす世界”の仕掛け

 ここからは、本作の企画背景や制作におけるこだわりについて、開発陣に直接話をうかがったインタビューの模様をお届けする。
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――本作はどのようなコンセプトで企画されたのでしょうか? “星砂島”という舞台設定や、スローライフシミュレーションという方向性にいたった経緯もあわせて教えてください。

開発 本作の出発点は、“心の桃源郷”をゲームの中に作りたいという思いでした。現代社会では経済的な豊かさを重視する一方で、心の余裕や癒しが見過ごされがちです。私たち自身も“ほっとできる場所や時間が足りていない”と感じていたことから、プレイヤーが現実の疲れや不安から解放され、心からくつろげる空間を作ろうと考えました。

 開発にあたっては、日本で90年代ごろから親しまれている癒し系の文化にも注目しましたし、中国古来の道教思想にもヒントを得ています。

 舞台となる“星砂島”は、じつは私たちのスタジオがある珠海の風景がモデルなんです。夜空の星が旅人の道を照らすように、「現代を生きる人々にとって心の道しるべのような場所にしたい」という願いを込めました。

 ジャンルについては、いわゆる農場運営シミュレーションではなく、田舎暮らしそのものを描くスローライフ体験を重視しています。プレイヤーが自分のペースで、自分らしい暮らしを見つけていける――そんな構成にしたいと考えました。
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――栽培や建築、釣り、住民との交流など、さまざまな要素が盛り込まれていますが、開発においてこだわったポイントはどこですか?

開発 とくに意識していたのは、プレイヤーが“自分だけの田舎暮らし”を自由に思い描けることです。道教の静けさや内面の豊かさを大事にする――そんな思想に影響を受けつつ、穏やかで奥行きのある体験を形にしています。

 ゲーム内では栽培や釣り、畜産、クラフト、建築、冒険など、多彩な活動を楽しめるようになっていて、それぞれの要素にしっかりとした手応えと深みを持たせました。

 さらに、料理を楽しんだり、島の風景を写真に収めたりといった、日常を彩るような遊びの要素にも力を入れました。「今日はのんびり釣りでもしようかな」といった具合に、その日の気分で自由に過ごせるようなプレイ体験を大切にしています。

――住民との関係性やロマンス要素も本作の特徴ですが、キャラクター作りや会話システムの設計で意識した点はありますか?

開発 NPCが“本当に生きている”ように感じられることを意識して作りました。ひとりひとりのキャラクターに、それぞれの価値観や生活感を持たせるよう工夫しています。

 また、キャラクターどうしの関係性が深まっていくことで、プレイヤー自身も感情移入できるような対話の演出を心がけました。

 たとえば、動物が好きなNPCは自発的に島の動物たちを世話したり、写真好きのNPCはプレイヤーに撮影のコツを教えてくれたりと、性格や趣味がそのまま行動や会話に反映されるようになっています。
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――建築パートでは、冷蔵庫に貼るメモまで自由にレイアウトできますが、ここまで自由度の高い設計にした理由や、開発における工夫についてお聞かせください。

開発 本作は、癒しの旅と中国道教の“詩と酒の暮らし”をテーマに設計しています。

 このテーマをしっかりと体験として届けるために、まずは栽培や畜産などの努力が実を結ぶ要素を通じて、達成感や充足感を味わってもらえるようにしました。

 つぎに、NPCとの交流を経てコミュニティの一員としての一体感を持ってもらえるよう工夫しています。最終的には、自由度の高いDIYでプレイヤー自身が理想の暮らしを形にし、自己実現へとつなげていく――。こうした段階的な流れを意識して、全体の構成を組み立てました。

 理想の田舎暮らしは本当に人それぞれです。だからこそ建築の自由度にはとことんこだわり、プレイヤーの創造性や個性が存分に発揮できるような仕組みを用意しました。

 開発にあたって『
シムズ』の構造的な建築システムと、『Minecraft』の創造的な構築要素、双方の利点を取り入れ試行錯誤を重ねながら最適化を図っていきました。その結果、生活シミュレーションゲームとしては業界トップクラスの自由建築システムを実現できたと自負しています。

 操作が難しくなりすぎないよう操作予測などのUI/UXにも細かな工夫を施しました。コントローラーにももちろん対応していて、誰でも快適に楽しめる環境を整えています。

――日本のアニメ文化に影響を受けたとのことですが、それはグラフィックや演出の面で、どのように表現されていますか?

開発 私たちは子どものころから、中国の道教に親しみつつ、ジブリ作品をはじめとする日本の“癒し系アニメ”にも大きな影響を受けてきました。

 だからこそ、本作のテーマを“ロマンチックで癒される世界観”と定めたとき、改めて日本の癒し系文化についても深く分析し、研究を重ねたのです。

 まずグラフィック面では、日本のアニメに見られるような柔らかさや温かみを意識し、アニメ調のビジュアルを採用しました。

 また、たとえばゲーム内に点在する自動販売機なども、日本のアニメによく登場するモチーフを参考に、細部までこだわってデザインしています。
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――Kickstarterでのクラウドファンディングでは、多くの日本人が支援しているとお聞きしました。こちらについての率直な感想などを教えてください。

開発 本当にありがたい経験でした。Steamでストアページを公開した直後から、日本のメディアで取り上げていただく機会が多く、日本のプレイヤーの皆さんに強い関心を持ってもらえたことがとても印象に残っています。

 かなり長いあいだ日本からのウィッシュリスト登録数が全体でもっとも多い状態が続いていて、それが大きな励みになりました。それを踏まえて、Kickstarterのクラウドファンディングでは、日本語の紹介ページやリワードも用意させていただきました。

 結果として、日本の皆さんからの支援者数・支援額ともに非常に高く、ほかの多くのプロジェクトと比べてもとても力強い成果を得られたと感じています。その熱いご声援に応えたいという気持ちから、現在は携帯機対応や日本語音声の実装といったご要望にも、優先的に取り組んでいます。

 また、BitSummitや東京ゲームショウなど、日本国内のイベントにも出展予定です。現地で直接お会いできるのを、開発チーム一同とても楽しみにしています。

――本作では動物たちの仕草や表情がとても生き生きとしている印象です。リアルな存在感を持たせるうえで、どのようなことを意識されたのでしょうか?

開発 動物たちをただの演出ではなく、本当にその世界で暮らしている存在として描くことは、本作において欠かせない要素のひとつでした。

 私たちは、日常生活の中からたくさんのインスピレーションを得て、動きや感情の表現をできる限りリアルに再現するよう心がけています。たとえば、犬が仲間といっしょに草むらに骨を隠したり、猫が屋根の上でのんびり日向ぼっこしていたり、カピバラと小鳥が並んでご飯を分け合うような微笑ましい光景も見られます。こうした自然な振る舞いひとつひとつが、動物たちの個性や日々の暮らしを感じさせてくれるはずです。

 また、野良動物を保護して、時間をかけて信頼関係を築いてうえで家に迎える――そんなプロセスも丁寧に描いています。プレイヤーがちゃんと愛情を注いで、心地よい関係を築こうとしなければ、動物たちはなかなか心を開いてくれません。ペットに限らず、島で暮らすすべての生き物たちがそれぞれの時間を生きている。そんな“ともに暮らす”感覚を、何より大切にしています。
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――スケートボードや船など多彩な移動手段が用意されていますが、それらの体験にはどのような工夫を込めたのでしょうか?<br />
開発 私たちのスタジオがある中国・珠海は、海に面した自然豊かな場所です。毎日、窓から広がる風景や海をぼんやり眺める時間が、気持ちを穏やかにしてくれるんですよね。そんな日々の体験から着想を得て、海に囲まれた島での生活をテーマにしようと決めました。

 そこで本作では、船での移動やウォーターパークのような船屋など、“海のある暮らし”を楽しめる要素を取り入れています。さらに、スケートボードなどの気軽な手段も用意し、移動そのものがちょっとした発見や癒しにつながるよう意識しました。
将来的には、離島で植物や食材を採集できる要素も追加し、探索の幅をもっと広げていきたいと考えています。
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スタッフさんからご提供いただいた美しい海の風景。
――ゲーム内にはモンスターとの遭遇など、非日常的な要素もあるみたいですね。

開発 現実8割+幻想2割というバランスを意識して、全体の世界観を設計しました。ベースはあくまで現実に根ざしたスローライフ体験ですが、そこにほんの少しのファンタジーを加えることで、日々の暮らしの中に新鮮さや驚きを感じてもらえるようにしています。

 たとえば、乗り物には神話や童話に着想を得たカボチャの馬車や虹色の鹿、幻想的な月光茸などを取り入れています。ファンタジー要素は、島にある神秘的な遺跡エリアに配置されていて、リアルな暮らしの中にさりげなく非日常が溶け込むような演出を意識しました。

 プレイヤーが、何気ない日常の中でふと神秘的な雰囲気を感じられる――そんな、ちょっとした驚きや彩りになればいいなと思って工夫しています。

――最後に、プレイヤーの皆さんには『Starsand Island』でどのような時間を過ごしてほしいと考えていますか? 開発者として伝えたい“このゲームならではの体験”を教えてください。

開発 『Starsand Island』では、プレイヤーが気持ちを落ち着けて、ゆっくりひと息つけるような場所になれたらと願っています。現実でうまくいかないことがあっても、このゲームの中で温かな田舎生活に触れることで心を休め、また一歩を踏み出すきっかけになればうれしいです。

 こうした体験を支えているのが、本作ならではのふたつの特徴です。ひとつは、東洋的な思想を土台にしたロマンチックで心に響く癒しの世界観。もうひとつは、サンドボックス的な自由度と創造性を組み合わせた、田舎での穏やかな暮らしを自分らしく描けるシミュレーションです。小さな幸せが積み重なるような時間を、ぜひ『Starsand Island』で見つけていただけたらと思います。
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