
7月4日に行われた特別パネルの反響や、大きな話題を呼んだアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下、『ジークアクス』)から受けた衝撃、そして9月30日(Steam版は10月1日)に発売を控える『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』(以下、FFT)について、クリエイティブスタジオIIIのヘッドとして、そしてひとりのクリエイターとしての視点から深く語ってもらった。
吉田直樹 氏(よしだ なおき)
『ファイナルファンタジーXIV』(FF14)プロデューサー兼ディレクター。『ファイナルファンタジーXVI』 のプロデューサーも務めた。スクウェア・エニックス執行役員兼第三開発事業本部事業本部長。
初参加でしたし、何よりアニメエキスポという場ですから、ゲームの話よりもアニメ・マンガ寄りの内容で楽しんでもらう方がいいだろうと考えました。
ご存知のとおり、アメリカでは昔から日本のサブカルチャーが盛んだったわけではありません。だからこそ、「名前は知っているしおもしろいと聞くけれど、観る機会がなかった」という方や、最後の一歩を踏み出せずにいた方々も多いはずです。そうした方々へ向けて、「日本にはまだまだすばらしい名作がたくさんある」ということを伝えたくて、あのパネルを企画しました。
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――パネルでは会場の方々とどの作品を観たか語り合ったり、アニメの名前当てクイズを行ったりと、非常に場慣れしている印象を受けました。この10年間、海外のイベントを渡り歩いてきた成果でしょうか?
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さらに、アメリカのチームからは「アニメエキスポのお客様は熱心なファンが多いので、一方的に話すより巻き込む形の方が絶対に喜ばれる」という的確なアドバイスをもらいました。そういったチーム全員のアイデアを結集させた結果が、あの形につながったのだと思います。
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じつは、パネルで使ったパワポでは40代以降の作品は意図的にほぼ入れていません。今回はクラシックな名作を紹介することが目的でしたし、それ以降は結局「ゲームの仕事しかしていない」というオチにしたかったからです。
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そんな中で、直近にリアルタイムで夢中になって追いかけたのが、まさに『ジークアクス』なんです。それ以外の作品は、完結してから配信で一気に観るというパターンがほとんどですね。リアルタイムであれだけ熱中できたのは、本当に久しぶりの体験でした。
これまでの展開や描きかた、鶴巻和哉監督や脚本の榎戸洋司さんのインタビュー、さらには庵野秀明さんの初期脚本まで読み込んで、自分なりの推測を立てていました。そして毎週、その答え合わせをするように12話まで追いかけてきたので、何よりもそのプロセスがめちゃくちゃ楽しかったです。
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この前、PLLのテスト放送でも少し話しましたが、観終わった瞬間に感想のLINEを送ってくるのはやめてほしい、と(笑)。それくらい久しぶりにハマりました。個人的な予想ではもっととんでもない結末を迎えるかと思っていたのですが、そこまでではなかったので、少し安心もしました。
――先日の『ジークアクス』特別イベント会場にて、『ジークアクス』を通じて旧来のファンと新規のファンを結びつける手腕は『FFXIV』としても見習いたいと仰っていました。改めてその点についてお聞かせください。
インタビューでは「この企画は通らないだろうと思って提案した」と語られていましたが、それを受け入れたサンライズさんやバンダイナムコグループの方々も本当にすごい。まず、その決断自体がとんでもないことだと感じています。
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しかし、物語はそこに留まらなかった。『ジークアクス』本編を通じて、これまでガンダムに触れてこなかった若い世代が、そのあまりの盛り上がりに興味を持ち、つぎつぎとガンダム沼に引きずり込まれていく様を日本中で目の当たりにしたわけです。
結果として、おじさん世代と若い世代がいっしょになってガンダムの話をしている。その光景を実際に見て、自分もその渦中にいられたことはすばらしい体験でした。
この現象を、わずか12話という短い期間で駆け抜けながら生み出した。その胆力には本当に驚かされました。これは、あらゆる角度からさまざまな意見を言われることを覚悟の上で、「それでいいんだ!」と突き進んだからこそ成し得たことでしょう。
私自身、『FFXIV』を担当する上で、この作品を「FFのテーマパーク」にしたいと考えてきました。
さまざまな世代のFFファンが、性別や国籍、年齢を超えて集える場所にしたいと。そのために、どこまでをオマージュとし、どこからを『FFXIV』のオリジナルとするか、この10年以上ずっとせめぎ合ってきました。 もちろん、これに絶対的な正解はないでしょう。しかし、『ジークアクス』のあの突き抜けかたを見て、「ああ、ここまで突き抜けるという方法もあるのか」と、まざまざと感じさせられました。先輩方の偉大さを、改めて痛感しましたね。
――吉田さんはつねづね、これからゲーム業界を目指す若者には『タクティクスオウガ』をプレイしてほしいと仰っていますが、『ジークアクス』から受けた衝撃は、それに近いものでしょうか。
酸いも甘いも噛み分けたベテランが、「いっちょやってやるぞ」という気概で臨んだからこそあの形になったのだと思います。だからこそ、あれはベテラン、つまりおじさんになったからこそできる“突き抜けかた”だと感じています。なので、これから物作りを志す若い方々の直接的な参考には、逆にならないかもしれません(笑)。
それはおそらく『FFXIV』も同じです。『FF』というフランチャイズ全体の状況を分析し、1.0という大きな失敗からの立て直しという特殊な状況が複合的に絡み合って、いまの形につながっています。だから、あれをゼロから作ろうとは、なかなかならないはずです。ふつうは自分のオリジナリティを最大限に発揮したいと思うべきですし、私もそう思います。
そういう意味で、『ジークアクス』は、むしろ私たちのような「おじさん世代」に対する勇気づけとしての側面が強いのかもしれませんね。
――最近プレイされたゲームの中で、とくに「これはすごい」と感じた作品はありますか?
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しかし、バランスを取るために、あえてオリジナルリソースは使わない。この発想は一朝一夕では生まれません。誰がどう考えてあの形に行き着いたのか、非常に興味深いです。
コストをセーブしてリソースを共有化し、システムのフレームワークに投資するという手法は、若手の発想からはなかなか出てこないと思います。ベテランの知見と若手の感性が、チームとして非常によく噛み合っているからこそ、あの作品が生まれたのでしょう。
これからゲーム開発者を目指す方やキャリアをスタートさせたばかりの方には、ぜひそうした視点であの作品をプレイしてみてほしいですね。私にとって極めて注目すべき一作です。
――少年時代の吉田さんはロボットやアニメがお好きだったと伺いました。いわば『ジークアクス』風に言うと「キラキラ」した子供時代だったわけですが、現在は「ジャラジャラ」されていますよね(笑)。
――その変遷と、ゲーム開発者を志すきっかけになった作品について教えてください。
とくに『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』をプレイしたときの衝撃は忘れられません。「ゲームのストーリーでこんな体験ができるのか」と。アレフガルドに落ちたときのどんでん返し、そしてラストで自分こそがロトの物語を紡いでいたと知る衝撃。あの体験が、私が物語をゲームで表現したいと思う原点です。
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ただ、ここまでの話だと真面目なゲームオタクに聞こえるかもしれませんが、時代も時代なので、中学に入ってからは少しやんちゃもしていまして(笑)。ジャラジャラしたアクセサリーを身につける方向にも同時に進んでいました。なので、学校では友人とあれこれジャラジャラしつつ、夜は隠れて『ロード・オブ・ザ・リング』を読んでいる、そんな学生時代でしたね。
――やはり吉田さんの根底には、パネルでも仰っていた“冒険”というテーマが流れているのですね。
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ラピュタに着いてからなんて、パズーはいったい何回死に掛けたんだろう、というくらい危険の連続です。いやあれはもう、危険なんてレベルじゃない。もしかしたら、あれはフロム・ソフトウェアさんのフロムゲーをパズーが奇跡的に一発でクリアーした物語なんじゃないか、と思うほどです(笑)
夢も冒険も、いい大人も悪い大人も、すべてが詰まっている。あれこそが極限の冒険だといまでも思うので、いつかあのようなゲームを作ってみたいですね。
――クリエイティブスタジオIIIの最新作『FFT』について、現在の開発状況と、スタジオヘッドの立場から期待してほしい部分を教えてください。
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そのため、“クラシック”バージョンではいっさいいじらない、という方針を貫いています。よかれと思ってユニット数を増やすようなこともしません。
もちろん、「そこだけはいじってくれてもいいぞ」というお声があることは承知していますが、いじってしまうと「これはオリジナルじゃない」というお声もあがります。
なので、今回はまず、バランスも何もかもオリジナルのままの決定版として、あらゆるハードで遊べるようにすることが重要だと考えました。そうすることで、『FFT』という名作を、いつでも誰の手にも届けられるようになります。
その上で、いまのタクティカルRPG市場を考えると、UI(ユーザーインターフェイス)や非常に複雑な人物相関図については、さすがに手を入れる必要がありました。
戦記物は謀略が裏で走っているため、『FFXVI』を制作した経験も活かし、年代別にわかりやすくしたうえで、もっと徹底的に『FFT』という名作を今の人達にも120%、150%楽しめるように作ったものが、今回の“エンハンスド”バージョンです。
その想いをオリジナルメンバーが一生懸命作るという、なかなかない機会でした。そこを真っ直ぐに表現したタイトルなので、簡単に言ってしまえば一粒で二度おいしい作品になっています。どちらのバージョンから遊んでも楽しんでいただけると自信を持って言えるので、どっぷり浸れること間違いなしです。
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昔ながらの即リセットをぜひ楽しんでいただけると(笑)。もしダメでも難易度はいつでも変更可能なので、色々な形で挑戦していただければうれしいです。よろしくお願いします。
ファンとの絆
『ジークアクス』の第12話でゾックは報われ、そして今回のアニメエキスポでグフも報われた。非常に良い思い出になりました(笑)。
#FFXIV I gifted Yoshi-P his Gouf (even tho he probably has one already lmao) and got my autograph :3 mission accomplished 🙏✨ pic.twitter.com/AkjFwSGup4
— Nakasa ♥♪ (@suinasei) July 5, 2025
余談
同パネルで吉田氏は前日に開催されたロサンゼルス・ドジャースの試合での『ONE PIECE』のコラボに参加できず、コラボ麦わら帽子を入手できなかったことを悔やみパネルでねだったところ、実際に心やさしいファンから差し入れされていた。長年ファンとの関係を築いてきた氏の功徳がなせる業だろう。
And that's a wrap on #AX2025!
— FINAL FANTASY XIV (@FF_XIV_EN) July 6, 2025
Thank you to all the Warriors of Light who stopped by over the weekend and said hi! If you're attending the FFXIV DTLA Fan Gathering, we'll see you there! pic.twitter.com/NNVTIWTYeh
アニメエキスポから帰ってきたら力尽きてソファで意識失ってた💤
— いーさん / Ethan (@asacre45) July 6, 2025
最終日の今日親切な人が余ったドジャースとワンピースコラボの麦わら帽子をくれて超嬉しい! 今度からドジャース観に行くときはこれ被るぜ pic.twitter.com/EOUat3tKqU