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『エルデンリング ナイトレイン』発売記念インタビュー。2日間の旅路は3日目の決戦の“前半戦”。協力要素は“連携”よりも“便乗”。設計の狙いをを石崎Dに聞いた

by西川くん

更新
『エルデンリング ナイトレイン』発売記念インタビュー。2日間の旅路は3日目の決戦の“前半戦”。協力要素は“連携”よりも“便乗”。設計の狙いをを石崎Dに聞いた
石崎
 2025年5月30日に全世界同時発売を迎えた、フロム・ソフトウェアの『ELDEN RING NIGHTREIGN』(エルデンリング ナイトレイン)。
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 本作は、新たな舞台となる“リムベルド”で、8人の戦士“夜渡り”たちを操って3日間を生き抜き、“夜の王”たちに挑む協力型のサバイバルアクションだ。本編となる『ELDEN RING』(エルデンリング)をベースにしながら、新しいゲーム体験を実現した本作をいま、世界中の“夜渡り”が楽しんでいる。
 本誌でも3人のライターが、それぞれの視点から『エルデンリング ナイトレイン』の冒険をレビューしているので、ぜひチェックしてほしい。
 広大なフィールドを舞台にした自由な冒険と探索、そして死闘……世界を魅了した『エルデンリング』を、大胆にもマルチプレイしかもサバイバルアクションにアレンジするだけでなく、本編の魅力を損なわず本作ならではの体験を成立させる。

 この困難ともいえる挑戦で開発陣が目指したのは“ショートRPG”だったことは、2024年12月の発表時に行ったディレクター・石崎淳也氏(フロム・ソフトウェア)へのインタビューで明言されていた。
 それから約半年を経て、ついに発売を迎えた『エルデンリング ナイトレイン』。その開発経緯とさまざまな挑戦を、石崎氏にお聞きした。
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石崎淳也氏いしざき・じゅんや

『DARK SOULS』ではレベルデザインを、『Bloodborne』、『DARK SOULS III』、『エルデンリング』ではバトルを中心に開発に携わる。本作では初めてディレクターを担当。

2日目までの旅路が3日目の“夜の王”戦に集約する

――本作の発表時にもお話を聞かせていただきましたが、あらためて『エルデンリング ナイトレイン』を制作することになった経緯をお聞かせください。また、本作で理想としていた形は実現できたのでしょうか?

石崎
 もともと『エルデンリング』の開発の中で、本作のアイデアを挙げていたことと、ディレクターをやることへのオファーがあったためです。

 理想は際限がないので、なかなか理想通りと言うことは難しいですが、このタイトルを価値ある形に着地させることは実現できたと、自信を持って言えます。

――当初にゲームデザインをお聞きした際には、本作は『エルデンリング』とローグライクの要素を組み合わせた作品という印象を受けましたが、実際にプレイすると、既存の作品にはあまりないゲームデザインになっています。レベルアップと武器の収集による強化、セッションごとに変わるフィールドのレイアウト、個性的なプレイヤーキャラクターといった要素がハイスピードかつハイテンションで展開します。そこにフロム・ソフトウェアらしい探索と死闘が加わったことで、独自のゲームが生まれたと思いますが、どのようなプレイフィールを目指していたのでしょうか?

石崎
 感じられた通りです、では説明になってないでしょうか(笑)。プレイフィールとしては、濃密な1プレイの満足感と「つぎはもっとうまくやれるはずだ」といった意欲の実感を得られることを目指していました。

 何かに似ているようで未知のゲームになることはイメージしていたので、なかなか周囲に「こういうゲームです」と説明するのは難しかったですが、おもしろくなると確信していたこともあり、その狙いは変えずにいました。
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――ネットワークテスト版からブラッシュアップされたポイント、たとえば“疾走”のスタミナ消費や敵の強さなどについてお聞かせください。

石崎
 疾走のスタミナ消費は再整理しています。移動の制限にならないようにしつつ、バトルの選択肢に収まるようにしました。

 敵の強さは、より順当な手応えになるよう整えています。お伝えしておきたいのは、ネットワークテスト版からいたずらにすべてを難しくしているわけではありません。ユーザーさん自身のレベルアップにともなって手応えがある形にしていますので、ご安心ください。

 敵の状態異常についても見直しをしています。それぞれ状況や相手に対して強みや弱みがあるように調整しており、何かひとつに頼りきりになることがないようにしました。

 ゲームバランス面以外では、ゲームの理解を深められるようにメニューなどを強化しています。受け身で知らされる重要な情報であったり、能動的に確認できる性能やルール、ゲームプレイの振り返りなど、“円卓”内で落ち着いてできること、セッション中に簡易で見られるものを配しています。
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――『エルデンリング』の死闘は観察とリトライがキモでしたが、時間制限のある本作でそのポイントを成立させるために注意されたことはありますか? 個人的には通常のザコ戦も各種ボス戦もすべてが地続きになっている感覚を受けました。

石崎
 はい、最後のボス戦である“夜の王”との戦いは、それまでの行動がすべてつながっている点を意識しました。本作最大の駆け引きはそこに集約されている、と言ってもいいぐらいです。

 『エルデンリング』と異なり、ランダム要素のある本作ではプレイヤーキャラの状態が安定しません。時に心細いほどに弱々しく、また他に類を見ないほど強くなることもあります。しかしそれは、単にランダムで運がよかったとか悪かっただけでなくプレイヤー自身が何を選び、何をしてきたのか、その道のりで積み上げてきた成果です。

 旅路そのものがボス戦の前半戦とも言える、『エルデンリング ナイトレイン』における決戦のスケール感を感じてもらえると思います。

――ゲームの基本的な流れとして3日間のうち、2日間は育成と強化、3日目に大ボスと対峙するという設計にした狙いをお聞かせください。

石崎
 まずひとつは、先ほど申し上げたボス戦のスケール感を大きくしたかった点があります。もうひとつは、過去シリーズのゲーム進行の形を、要素を保ちながら組み替えることで、おもしろさを担保しながら新しい体験に変えられると考えていたためです。

 ダンジョンを探索し、敵と戦いながら成長し、強力な武器やアイテムを獲得して、その先に待ち受けるボスに挑む……この原則を守れているのなら、少なくともボスを克服するという点における達成感は必ず得られる、ということです。ステージが進むべき道に誘導してくれているか、自分でどこを道と定義するのか、それだけの違いです。

 本作はゲームデザインを大きく変えていますが、我々らしい達成感は、また新鮮な形でしっかりと味わっていただけると思います。
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――『エルデンリング』本編と通ずる世界観でありながら、異なるゲーム性でも本編の魅力を楽しめるマルチプレイゲームというのは、非常に大きな挑戦だったかと思います。この挑戦にあたって、キャラクターや敵デザイン、フィールドのデザインも含めて注意された点はありますか?

石崎
 「全部です」と言ってしまうと身も蓋もないので……。全体的に、理解のしやすさをより意識したデザインにしています。キャラクターの外見やフィールド構造もそうですし、ゲームプレイやメカニクスもそうです。

 時間が主導権を持つゲーム進行において、少しかじるだけでもおいしいと感じられるのであれば、たくさんの要素がつぎつぎと降りかかってきたとしても、ちゃんとそれらを適切に受け止めて処理することができ、納得感を持ってつぎのことに取り組めるだろう、と考えたからです。

――物語や舞台は本編とは別モノとなりますが、世界観のバランスはどのように考慮されたのでしょうか?

石崎
 『エルデンリング』自体は、すでにユーザーの皆さんの物語になっていると思うので、それらに水を差すようなことはしないように注意を払いました。

 そのうえで『エルデンリング』本編とは別の世界線だったり、ボタンの掛け違いの可能性だったりで「そういう“狭間の地”もあったのかもね」という、ある種の妄想を盛り込んでいます。最終的には私自身がいちユーザーとして見たときに、受け入れられるかどうかで判断しています。

――各キャラクターのバックボーンとなるストーリーは、どのように設定していったのでしょうか?

石崎
 まず、キャラクターを作る際には、外見やゲーム上のデザインを先行しています。それから、彼らにどのような過去や目的があれば、共感や憧れを持っていただけるような魅力的なキャラクターになるか、という点を軸にして設定を作っていきました。

 短い展開の中で物事の見えかたが変わったり、意外な出来事が起きたりするので、そのあたりも楽しんでいただけたらうれしいですね。
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――実際にプレイすると、プレイヤーは3人というのは絶妙なバランスに感じました。3人でのマルチプレイというアイデアが先にあって、各キャラクターのバランスを整えていったのでしょうか? いまのバランスだと、4人参加では味方の手数が多すぎて少し簡単になりすぎるかとも思いました。

石崎
 はい、もともと3人の構想があり、そのうえで各バランスを整えていきました。

 『エルデンリング』における探索や戦闘の駆け引きやおもしろさを活かすには、人数を抑えつつ、しかしマルチプレイとしての醍醐味が生まれてくるのに最低限の人数は必要、という考えのもとで3人に設定しています。

――各プレイヤーキャラクターの性能は、どのような方向性で構築されたのでしょうか?

石崎
 各キャラクターにおけるビルドとロール、有利不利の差別化と“ごっこ遊び”の両側面で積み上げたものですが、また別の観点として、ゲームプレイの手触りを意識しています。

 たとえば“鉄の目”はシューティングゲーム的ですし、“隠者”はパズルゲーム的です。そういったさまざまなゲームジャンルが持つエッセンスを採り入れることで、ひとつのゲームの中で別のゲームプレイが楽しめるような幅を持たせることができました。

 これは、昔から自分の中でやりたかったことのひとつなので、実現できてよかったと思います。

――プレイヤーキャラクターそれぞれに得意武器がありますが、性能の差はそこまで大きくありません。デフォルトの武器は早々に捨ててしまうこともあると思うのですが、得意武器を設定したのはロールプレイをより楽しめるようにしたかったからでしょうか?

石崎
 その側面は、もちろんあります。いちばんの理由は、得意武器がそのキャラクターの“ガイド線”の役割を担うことでした。

 最初から弓を持っていれば、弓を中心とした戦いかたをしたほうが有利ということを直感で理解いただけると思いますし、その武器に触れる機会が増えるので、どう使うべきか、自然と身に付きやすくなります。

 各キャラクターに対して、その得意武器はアクション的に有利な調整をされており、またステータスとしても適したものになっています。
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石崎
 一方で、本作ではどんな種類の武器も最初から使えるようになっているので、攻撃力や戦技が魅力的な武器を見つけたら、得意武器じゃなくてもそれを選ぶ、という自由度もあります。

 まずは得意武器でキャラクターの感触を確かめて、慣れてきたら状況に応じて選ぶものを変えていく。そうすることで有利な展開を作りやすくしたり、窮地を脱する判断につなげていったりしてもらえればと思います。

本作における協力要素の定義は“連携”ではなく“便乗”

――マルチプレイゲームでありながらも、基本は御社の作品らしい“緩いつながり”を維持していますが、この理由をお聞かせください。それでいながら、遊んでいるうちに3人の役割分担が自然とできあがっていくのは、意図的にデザインされたことなのでしょうか?

石崎
 『エルデンリング』の名を冠している以上、根源的なよさは継承すべきだという考えと、私自身が“緩いつながり”を心地よく気持ちのいいネットワークコンセプトであると捉えているためです。

 各々が好きにプレイをしていても、ふいに噛み合った瞬間が発生するのは、意図したものです。このタイトルのマルチプレイにおける協力要素は、“連携”ではなく“便乗”と定義しています。味方を活用して有利な展開を作れば、お互いにおいしいですし、気を遣い合う必要もありません。ほかのプレイヤーに期待したりされたりというのはプレッシャーになってしまうと思いますし、それぐらいのほうが気楽でいいですよね。

 なので、ユーザーの皆さんには気兼ねなくお互いを踏み台にしてほしいと思います(笑)。

――蘇生が攻撃スタイルになっているのは本作のゲーム性にとても合っています。しかも、攻撃の威力や速度、範囲射程なども蘇生に影響する点はすばらしいアイデアです。このアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?
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石崎
 「プレイヤーが取れるもっとも豊富な手段は何だろうか」という点から考え、本作でたくさん用意されている攻撃アクションを採用しました。

 戦闘中に突然発生するアクションなので、煩わしくない操作が望ましかった点もあります。

――装備品に関して、武器がメインで、タリスマンは貴重なレアアイテムといった印象を受けました。本作で防具を削除した狙いをお聞かせください。

石崎
 ゲームデザインを再構築するにあたり、本作における優先度で取捨選択をしています。防具はその一環で廃しました。

 『エルデンリング』本編では、武器ひとつをとっても多くのパラメータを持っていましたが、本作では攻撃力と属性、戦技と付帯効果がどうであるか、程度に厳選しています。スピーディーに状況が変化していく本作では、プレイ中に考えたい点は、ある程度まで絞り込んだほうが適していると考えたためです。
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――パッシブスキルとなる“潜在する力”の性能は、どのように設計されたのでしょうか?

石崎
 3日目のボスである“夜の王”との決戦に対して手札の一枚になることや、現在進行中の経路計画を変更する動機付けとして機能するようにしています。

 基本は強くなりたいと考えて選ぶものですが、「それがあるなら、こういうビルドもありなのか?」と迷うことは、キャラクターを強化していく中で楽しい悩みになると思います。

――アイテムは本編と比較して、使う価値や使うべきタイミングがより明確になった印象を受けました。これも、本作のゲーム性に合わせて変化させたということでよろしいでしょうか?

石崎
 はい。出現するアイテムもランダムとなる本作では、どんな要素も可能性を持っていることが重要だと考えています。それぞれの有効性を高めたり、明確にしたりすることで、それを活かせるかどうか、状況によって取捨選択が問われる形になっています。

――“遺物”はさまざまな効果を発揮するものが用意されていますが、どれくらいの数や組み合わせが用意されているのでしょうか? また、各キャラクターのストーリー進行によって遺物の性能も上がっていくのでしょうか?

石崎
 効果そのものは、バリエーションを含めて300を超えます。組み合わせは自由度を高めにしてあるので、数え切れないほどになっています。

 キャラクターのストーリーでは特定の遺物を得る場合がありますが、その性能は「安定感がある」とお伝えしておきます。なので、遺物を目当てにストーリーを進めていただいてもいいと思います。
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――発売前に行われたフロム・ソフトウェアのユーザーイベントでも、『DARK SOULS』の“貪食ドラゴン”やアルトリウス装備の登場が話題となりました。過去作のキャラクターを登場させようと思った理由やきっかけをお聞かせください。また、貪食ドラゴン戦では『DARK SOULS』のBGMが使用されていましたが、こんな驚きの仕掛けはほかにもあるのでしょうか?
石崎
 おもしろそうだったから、という理由につきます……(笑)。

 そもそも『エルデンリング』のアセットをベースにしつつ『エルデンリング』とは別の世界観を採り入れる時点で、無茶が利く舞台を用意する必要があったので、それなら
『DARK SOULS』を引用してもいいのではないか、というところから始まりました。関係者の皆さんには快諾いただき、感謝しています。

 『DARK SOULS』からの出典は、いずれも敬意を払って引用していますので、BGMをはじめ取り巻く要素は原作に忠実であるよう努めています。

――『エルデンリング』のバトルディレクターを経て、本作で石崎さんはディレクターを担当されました。いわばゲーム全体を統括されることになったと思いますが、本作が発売されたいま、振り返ってみて開発は楽しかったでしょうか?

石崎
 はい、楽しみました。『エルデンリング』のどのボスたちよりも手強かったです。
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――ちなみに、石崎さんがお気に入りの“夜渡り”や敵を教えていただけますか?

石崎
 どれも初めて最初から最後まで指揮したので、全部です! ……では回答にならないので、強いてひとつ挙げますと、“夜渡り”では“守護者”かなと思います。盾を主体としたキャラクターは、がっちりとしていて全身鎧の重厚なイメージに引っ張られますが、その点をおさえつつ外連味ある雰囲気をしっかり採り入れることができました。

 敵は、最後に戦うことになるボスです。ネタバレになるので何も言えないですね。平易ですが、格好よくて美しくて強い、とだけお伝えしておきます。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

石崎
 『エルデンリング ナイトレイン』は、『エルデンリング』の系譜でありながら、しかしまったく別のゲームです。『エルデンリング』を経験しているからこそ得られる体験がありますし、逆に『エルデンリング』の世界に踏み入りたくなる入口でもあります。

 別の観点として、ゲームプレイがおもしろいものであることを目指して開発してきました。ここには、刺激に満ちたゲーム体験が待ち受けています。手応えや達成感、未知なる戦いにぜひ挑んでみてください。
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