Perfume・のっちさんが音楽ナタリーで連載中の記事“のっちはゲームがしたい!”。2020年1月1日から連載がスタートし、もうすぐ5年目を迎える人気企画だ。
ゲームが大好きなのっちさんが、ゲームに関わるさまざまな人物やメーカーを取材。開発方法や制作現場の裏側をテーマに対談を行っているのだが、ゲームライターや専門家とは異なる視点を持っているため、一般的なゲームメディアには載らない話題にも波及しているのがおもしろい。
そんな人気連載が2024年12月6日に書籍化! 『のっちはゲームがしたい!の本』は、これまでの連載記事に加え、『大乱闘スマッシュブラザーズ』などで知られる桜井政博さんとの特別対談も実施。ほかに、読者からの質問に答える企画や撮り下ろし写真など、盛りだくさんの内容となっている。全256ページで価格は2970円[税込]。
今回は書籍化を記念して、のっちさんにインタビューを実施。いままでの連載の想い出やふだんのゲームライフについて、たっぷり語っていただきました!
最近のイチオシは『学園アイドルマスター』
――書籍化おめでとうございます! 書籍のお話の前に、まずはのっちさんが最近プレイして楽しかったゲームをお聞かせください。
のっち
ありがとうございます! じつは……最近はアルバムのプロモーションを行っているのでなかなか時間がとれないんです。なので、スマホで遊べる『学園アイドルマスター』をちょこちょこやってます。
――連載第17回で取り上げていたゲームですね。
【関連リンク】「のっちはゲームがしたい!」第17回前編
のっち
はい。このゲームは取材に行くことが決まってから遊んだんですけど、取材が終わってからもずっと遊び続けています。
――取材をきっかけにハマってしまった?
のっち
はい。もう完全に趣味で遊んでいます! 『アイマス』シリーズはしっかり遊んだことがなかったんですよ。『学園アイドルマスター』が初めてです。ゲーム実況動画で『シャニマス』(アイドルマスター シャイニングカラーズ)とかを見ることはありましたけどね。
――『学園アイドルマスター』のどこに惹かれたのでしょうか?
のっち
すてきなアイドルたちを、あんなにもみずみずしく表現していることに魅力を感じました。私もプロデューサーの気持ちになって、しっかりプロデュースしてます!
――のっちさんのお気に入りのアイドルは?
のっち
それが……決められないんです! 推しを決められないのが悩みなんですよね。でも、プロデュースしている私からしたら、そのときプロデュースしている子がいちばん輝いています。なので、“推しを見つけられない幸せ”を噛み締めながら遊んでいます。なんて贅沢な悩みなんだ!(笑)
――それは幸せな時間ですね。スマホ以外のゲームで、今年プレイしたのは?
のっち
少し前のことになるんですが、数年前にハマっていた『マインクラフト』(Nintendo Switch)を久しぶりに遊びました。なぜか急に復帰したくなって始めたら再燃してしまったんです。やっぱり『マイクラ』は楽しいですね~! しかも新しい要素がいっぱい追加されていて、いつ遊んでも飽きないんですよ。今年、私がいちばんプレイしたゲームかもしれません。
ゲーム大好きになったきっかけは『テイルズ オブ ジ アビス』
――ゲームはどんなときに遊びますか?
のっち
心に余裕があるときにゲームを遊びたい人間なんです。なので、2~3日くらいお休みがあると最高。「よっしゃ、やるぞー!」って気合を入れます。RPGとかストーリーのあるゲームが好きなので、まとまった時間を作ってガッツリ遊びたいんですよね。昔からそういうプレイスタイルなので、私のなかでは“ゲームをしている”ということは“心に余裕がある状態”なんだと思います。
反対に、忙しいときに心を落ち着かせるためにゲームを遊ぶこともあります。『デッドバイデイライト』みたいなゲームだったら(1戦は15分程度だから)短時間でも楽しめるじゃないですか。そういうゲームを少し遊んで心を落ち着かせてから寝る、みたいなときもあります。
――心に余裕がないときに、現実逃避をするためにゲームを遊ぶことはありませんか?
のっち
たしかに、それもありますね~。でも、やっぱりRPGを真剣に遊びたいんですよ。そうなると時間が必要なので、余裕がないと本腰を入れられないじゃないですか。だって、1日のお休みだけだと洗濯して掃除して、明日の準備してで終わっちゃうから……。「じっくりゲームをやるぞ!」って気持ちにはならないんです。
――まとまったお休みをもらえたなら、どこかに出かけたくなりませんか?
のっち
う~ん、めちゃくちゃインドアなので、外には出ません(笑)。本当に外に出ていないので、最近は運動不足を気にしてます。
――いや、Perfumeであれだけパフォーマンスを行っていたら、運動不足にはならないのでは……。
のっち
あはは! 運動不足とは違うかな?(笑) でも、歩いていないのは事実なんです。歩数計アプリで調べたら本当に歩いていないことがわかっちゃって。何とかしなきゃと思うんですけど、外を歩くのは気が重い……。でも「ゲームだったら歩くだろう」と考えて、『信長の野望 出陣』を使って歩くようにしました。スマホの位置情報ゲームですね。時間をみつけては自分の陣地を広げてます!
――ゲームの力を借りて運動するのはいいですね。『信長の野望 出陣』は現地に移動することに意味があるゲームですから。
のっち
そうなんですよ~。これからツアーがあるので、ライブをしながら陣地も広げようと思います。
――そこまでゲームが好きなのっちさんが、ゲームをお好きになったきっかけは?
のっち
本当にハマったきっかけは、高校3年生のころに遊んだ『テイルズ オブ ジ アビス』。これでRPGが好きになったんですよ。それまでもPSPでピエール瀧さんが作ったゲームを遊んだりしていましたけど。
――『グルーヴ地獄V』とか『バイトヘル2000』!?
のっち
そうです! 『バイトヘル2000』が大好きで、一生ペンのフタをかぶせてました。あとはゲームキューブの『スーパーマリオサンシャイン』に『塊魂』に……そういうゲームも好きなんですけど、「ゲームってこんなにおもしろいんだ!」と気づかせてくれたのは『テイルズ オブ ジ アビス』でした。
もう、衝撃的だったんですよ。自分で物語を動かしながら、まるで実際に自分が体験しているような感覚になれる。辛い物語だったので、余計に衝撃が走ったのかもしれません。それからRPGが好きになりました。
――『バイトヘル2000』から『テイルズ オブ ジ アビス』。振れ幅がすごくてくらくらしますね。
2020年から連載中“のっちはゲームがしたい!”を振り返る
――音楽ナタリーで連載中の“のっちはゲームがしたい!”について伺います。いままでの連載で、印象に残っていることは?
のっち
いろんなクリエイターさんにお話を伺いに行くんですけど、みんなちょっと……変わっている人たちだなぁという印象です(笑)。きっと人とは違うところにこだわりを持っている方が多いんだろうなって。だから、人の心に引っかかる物語やギミックを作れるんだと思います。
――いままでたくさんのクリエイターさんを取材していますが、そもそも連載のネタはどうやって決めているのでしょうか?
のっち
ナタリーさんに提案していただくことが多いです。お話の前に私が最近遊んでいたり気になっているゲームをヒアリングしてもらって、それをもとに編集部で考えてくださっています。最終決定権は、僭越ながら私が……。
「最近はこのゲームが流行ってるけどどうですか?」と挙げていただいて、自分でも遊んでみるんですよ。難しすぎて「これは私には無理かも……」となることもあります。
――正直。記事を読んで驚きました。すごいですよ、深いと言うか。
のっち
(声にならない謙遜の様子)
――好きじゃないと、あの言葉のキャッチボールはできないと思います。
のっち
ありがとうございます! 物語があるゲームになると、キャラクターに感情移入した自分の感想を伝えたいですし、そのキャラクターが誕生した経緯はすごく興味深いです。
――直接お聞きできるのはインタビュアーの特権ですよね。ちなみに、どういうキャラクターがお好きですか?
のっち
あー! どういうキャラだろ? ……ヒロインがかわいいとうれしいです。主人公の隣りにいる女の子だったり。主人公より、周りで支えてくれる人が好きになりがちなので。(自分が主人公として)支えられると同時に、主人公を支えているヒロインの気持ちにも感情移入しちゃうんですよ。「絶対無事に帰ってきてね!!」みたいな。
――そこまで登場人物に感情移入しながら遊ぶと、疲れませんか?
のっち
すっごい疲れます!(笑) たぶん遊んでいるときは、めちゃくちゃ集中していると思います。
――それ、クリエイターさんからしたらめちゃくちゃうれしいと思います。連載記事のインタビューでは細かい質問をしているように感じました。記憶力はいいほうですか?
のっち
いや、よくないです! 自分が遊んだときから時間が経っているゲームは、取材の前にもう1回触ってみたりとか、ゲーム実況の動画を観たりしています。あと、遊びながら「ここは心に残ったぞ」という部分をメモに残したり。忘れっぽいので、書いておかないとすぐに忘れちゃう。
音楽ナタリー編集 僕らが想定するよりやり込んでいますし、斜め上の視点を持っているように感じます。
――ゲーム実況動画と言えば、連載第4回で月ノ美兎さんとゲーム配信にチャレンジしていました。テーマは『フォールガイズ』でしたが、『スクールデイズ』を遊ぶ可能性もあったそうですね。
【関連リンク】「のっちはゲームがしたい!」第4回
のっち
はい。月ノ美兎さんと恋愛ゲームをしながら女子トークをしたいなと思ったんです。一緒に遊べるゲームのリストを挙げていただいたら、いちばん上にあったのが『スクールデイズ』で。
――第一候補が『スクールデイズ』!?
のっち
すごくおすすめされるから『スクールデイズ』は名作恋愛ゲームなんだと思ってました。後で知ったんですけど、ふつうの恋愛ゲームじゃない……ですよね?(笑) それはそれで楽しそうなので、美兎ちゃんと遊びたかったなぁ~。『フォールガイズ』になった理由は、番組の尺が足りなさそうだったからです。「ゲームがおもしろくなる前に番組が終わっちゃいます」と言われて、泣く泣く断念しました。
――のっちさんと月ノ美兎さんの『スクールデイズ』実況……。実現したら界隈に激震が走りますよ。
書籍化で実現した桜井政博さんとの対談
――今回の書籍化で、桜井政博さんとの特別対談が実現しました。桜井さんを取材した感想はいかがですか? ものすごくお忙しい方ですよ。
のっち
ほんとに……ねぇ! 忙しいんだろうなって思いながらも、お会いしてみたら動画で見る桜井さんの口調そのままで、「わぁ、本物だ~」って感動しちゃいました。インタビューを受けてくださったことに感謝しかありません!
のっち
その日はまだYouTubeがまとめ撮りだと知らないときだったんですよ。そんなことあります? 「初めて社外の人に話します」ってお話を聞いて、本当に驚きました。内緒なので誰にも話せないし、ずっと黙っていました。「いまはゲームを作らずにYouTubeを撮っている人だ」と思っていたのに……(※)。
※YouTubeチャンネル“桜井政博のゲーム作るには”では、2022年8月24日~2024年10月22日にかけて260本(英語版も含めると倍数)の動画を公開。すべて事前に撮りためていたことが最終回で明かされ、業界を震撼させた。――世間がびっくりする数ヵ月前にびっくりされていたとは。桜井さんのいちばんの魅力は何だと思いますか?
のっち
“人を引き付ける力”を感じました。いっしょに(ゲームや音楽制作の)お仕事をしたわけではないんですけど。私の話していることを、否定はしないけど、桜井さんの言葉に変換して、思ったことを素直に語ってくださるんです。きっといっしょにお仕事しているスタッフのみなさんは気持ちよく作業ができているんだろうなと思いました。
――のっちさんも音楽やライブを作っているわけじゃないですか。勉強になることもあったのでは?
のっち
あるはずなんですけど、自分の活動に反映できるかどうかは……。いやもう、すごすぎて。
そう言えば、めちゃくちゃ運動するというのはちょっと意外でした。エアロバイクをこぎながらゲームを遊んでいるそうですよね。対談させていただいた日も「ここから歩いて帰ろうかな」と言ってました。ご自宅はけっこう遠いようなんですけど、歩いて!? すごすぎますよね。健康と若さの秘訣は運動なのかなあ。
のっち、インディーゲームに興味あり
――ところで、インディーゲームに興味はありますか? 数年前からかなりアツい状況になっているんですよ。
のっち
興味あります! ちょっと調べただけで、すぐにインディーゲームにたどり着く時代じゃないですか。いまはPCでしっかりゲームをする環境がなくて、ゲーム実況で見たインディーゲームに興味がわくんですけど、Switchとかに対応していないものも多くて。おひとりで(ゲームを)作っているような方も多いんですよね。ひとりで、どうやって……?
――たとえば、取材するならどんなジャンルのインディーゲームがいいですか?
のっち
“Chilla's Art(チラズアート)”さんは何であのペースでゲームを作れるんでしょう? しかも外れがない印象がありますよね。ゲーム実況で使われることが多くて、どれもバズってますし。何がインディーゲームなのか、あまりわかっていないんですけど
――便宜上“インディーゲーム”とカテゴライズしましたけど、あまり難しく考える必要はないと思います。大手ゲームメーカー以外にも目を向けてもらえるのは、ゲーム業界の人間としてうれしいです。
――チラズアートさんのゲームはゲーム実況でも人気です。のっちさんはゲーム実況動画を見る方ですか?
のっち
けっこう見ます。動画って、自分でゲームをする時間がないときでも見られますから。心の余裕がないときでもいけるのがうれしくて。朝起きて、顔を洗いながら。
――朝から?
のっち
(洗面台の横に)スマホを置いて。(書籍購入者限定の特典動画で)対談させていただいた蘭たんさん(ジャック・オ・蘭たん)の実況を見たりします。でも……蘭たんさんは朝っていうより夜に見るかなぁ。
――使い分けまで!?
のっち
朝は何となく女の子たちの声を聴きながら準備したいなって。朝に聴く音楽、夜に聴く音楽みたいな感覚で選んでいるのかも(笑)。
のっちさんの独特な視点
――のっちさんは長年音楽活動をしていますが、ふだんゲームを遊ぶとき、音楽や効果音などは気になりますか?
のっち
う~ん、あえて気にしようとは思ってないですね。気にならないのがすごいなって。もちろん、「ここのBGMかっこいいな」とか「この対戦の音楽は好きだな」とかは感じるんですけど、「足音が変」とか「ここのボタンを押した効果音がおかしい」と思ったことがない。これ、すごい技術だと思うんです。
すごく自然に作られていて、フィールドを移動しているときに、曲がいま変わったなと気付かないとか。BGM以外でもあると思うんですよ。気になるところがないことのすごさを取材で教えてもらいました。プレイヤーにノイズが入らないように考えてくださっているんですよね。ストーリーから頭が離れないように考えられているんだなと。
――気付かせないことがすごいというのは、言われてみたらたしかにと納得せざるを得ないですね。音関連で言うと、のっちさんの「『FF16』の召喚獣同士の戦いで“正義感が強い音”が気になる」という言葉選びがおもしろいと思ったんですよ。独特な言語感覚。
【関連リンク】「のっちはゲームがしたい!」第16回後編
のっち
あははは! 勝てそうになったときに主人公の曲に切り替わる、みたいなことだと思うんですけど、表現が難しくて……(笑)。
――クリエイターのみなさんも、相手がのっちさんだから話しやすいのかなと感じました。『ペルソナ』の話題で“ザコ戦のBGMの尺”について話していましたよね、ああいうのを聞き出しているのは素直にすごい。
【関連リンク】「のっちはゲームがしたい!」第7回
のっち
きっと、私がゲーム業界のことを本当にわかっていないから、イチから教えてくださったんだと思います。どのクリエイターさんも私と共通言語がないからかな、すっごく説明が丁寧なんです。みなさんお話が上手だから、聞いているだけでもおもしろくて。
――この本の題材はいわゆるコンピューターゲームだけじゃないですよね。のっちさんはリアル脱出ゲームがお好きで、SCRAPの加藤隆生さんとも話されていて。コンピューターゲームはキャラに感情移入するとおっしゃいましたが、この回では「物語の“脇役”にもなれるのが好き」と語っていました。感覚的に違うのでしょうか?
【関連リンク】「のっちはゲームがしたい!」第3回
のっち
うーん……似ていると思います。ゲームの場合は画面のなかに主人公がいて、私はその主人公を動かしています。主人公に感情移入しているのもあるけど、同時に外側からストーリーを見ている感覚もある。ふたつの視点がおもしろいというか。
――主人公でありつつ、視聴者でもある?
のっち
はい。謎解きゲームは自分の身体を使って遊びますから、(お話の中に登場する)キャラクターといっしょに困難に立ち向かうわけですよね。たぶんプレイヤー個人として没入させる作り方をされていると思うんですよ。プレイヤーが冷めていると楽しめないので、私は全力で乗っかって遊びます。これは、いっしょにプレイしている仲間たちへのアプローチでもあると思います。
――ゲームの世界に入ることが楽しい……ということでしょうか。コンピューターゲームと違って、リアル謎解きゲームはのっちという個人として入れるわけですから。
のっち
そう考えると、(コンピューターゲームとリアル謎解きゲームで)違いがあるのはおもしろいですね。ゲームに感情移入するということは、その体験をするのは私じゃない。自分がそのキャラクターと同じ境遇になったときにどう思うかを想像しているんだと思います。どれだけ楽しいだろうとか、どれだけ辛いとか。やっぱり、コンピューターゲームの場合は“視聴者”に近いのかもしれないです。
――無意識のうちに、自分の想像とキャラの境遇を照らし合わせているわけですね。だから、自分自身として参加するリアル脱出ゲームとは受け取り方が違う、と。対談を読んで、あまり意識してこなかった“ゲームとの向き合い方”に気付けた気がします。では最後にファンに向けて、メッセージをお願いします。
のっち
ありがたいことに、連載企画が書籍化されました! ゲームが好きな人はもちろん、働き方だったり趣味を仕事にすることだったり、ヒントが見つかる書籍だと思います。みんな買って読んでね!