舞台は、15世紀のボヘミア。鍛冶屋の息子であるヘンリーが、殺害された両親の仇を討つために故郷を出立し、復讐、裏切り、新たな人生を探す冒険をくり広げる物語が展開される。
2024年9月26日~9月29日に開催された東京ゲームショウ2024では、開発スタッフが来日。開発中の本作のプレゼンテーションと試遊、スタッフによるインタビューの機会を得た。
プレゼンとインタビューを担当したのは、Warhorse Studios PRマネージャーのTobias Stolz-Zwilling(トビアス・シュトルツ=ツウィリング)氏と、日本人コンセプトアーティストの川谷久海氏。本稿では、プレゼンと試遊、インタビューの様子を紹介しながら、本作の魅力に迫っていく。
なお、『キングダムカム・デリバランス II』はPLAIONより、2025年2月12日発売予定。対応プラットフォームはプレイステーション5、Xbox シリーズ X|S、PCとなっている。
プレゼンテーション:歴史を追体験できる没入感のある作品を目指した続編。総プレイ時間は80~100時間を想定
本作の柱となるのは、“中世の世界を完全再現”、“壮大な歴史ドラマ”、“没入型アクションRPG”の3点。中世の世界を再現するため、歴史家の監修のもと、当時のお城や騎士の姿、戦闘方法などを丁寧に表現。没入感のあるアクションRPGを作るべく、リアリズムを追求しているが、ゲームとしてのおもしろさは損なっていないとトビー氏は語る。社内に時代考証を担当する専任のスタッフがおり、適宜歴史家の監修を受けているというこだわりぶりは驚きだ。
没入感は、本作を制作する上でつねに大切にしていた要素であるとのこと。メインストーリーは、実際の歴史で発生した出来事がベースとなっており、歴史の追体験によってゲームの世界にとことん没入できるようになっている。なお、当時の様子を再現すべく、開発チームで物語の舞台となる地へ実際に足を運んで調査も行ったそうだ。
また、サイドクエストの進行状況はメインストーリーに影響を与えることもあり、自身の行動で物語が変化するという意味でも、没入感のある体験が味わえるという。サイドクエストでは、当時の人々の暮らしぶりが楽しめる内容とのこと。
自身の選択が物語に影響するという要素は、本作の重要な要素。エンディングの内容は変わらないものの、そこにいたるまでの過程はプレイヤーの選択で変化。ヘンリーの旅路はプレイヤー次第。総プレイ時間は80~100時間を想定しており、決断する場面が多々存在する中で、各々のプレイヤーの信念に沿ってヘンリーと旅をするのが本作の醍醐味だ。
戦闘については、中世の時代に主流となっていた戦闘方法をゲームの中に再現。剣を使う際には複数の戦闘スタイルで立ち回ることができ、奥深いバトルが楽しめる。一方で、剣の扱いが複雑だと感じれば、斧を振り回して攻撃する豪快な戦闘を行うことも可能。プレイヤーの好みに合った戦いかたを選ぶことができるのは魅力的だ。
そのほか、ハンス・カポン役を務めた俳優からもテープが送られてきたが、彼は当初ヘンリーを演じたかったそう。しかしながら、ヘンリーよりもハンス・カポンのほうが適しているということで、同キャラクターをお願いしたそうだ。
建物のデザインについては、現像する当時の壁画などを手描きでタブレット上でデザインし、それをゲーム内に使用。ほかには、本の挿絵なども川谷氏自らデザインしているものが使われている。
ちなみに、本作で登場するトロスキー城は、17世紀前半に焼き落ちて資料が残っていなかったが、開発チーム内の歴史家や外部の建築家から意見をもらいつつ、美術館で資料を集めて再現したそうだ。
このコデックス機能も、川谷氏が担当。コンセプトデザインチーム内の歴史家が監修した文章に、川谷氏たちコンセプトデザイナーたちが挿絵を加えて構成。挿絵は、現地に足を運んだり、同僚からも意見をもらいながら作成し、説得力のあるものを心掛けたそう。コデックス機能を活用することで、一層作品の世界に浸れると思うので、ぜひ注目してほしいと川谷氏は語った。
試遊リポート:敵対組織の拠点から剣を盗むサブクエストを体験。行動次第で変化する奥深い物語が魅力
ボヘミアには、剣を教える組織“剣術同盟”があり、メンハルトはボヘミア王の命を受け、街に“剣術同盟”を立ち上げるべく、ドイツのフランクフルトからはるばるやってきた。しかし、クッテンバークではすでに別の集団によって“剣術同盟”が結成されている、というのが背景となる。
クエストは、街を訪れたヘンリーとメンハルトが出会うところから始まる。剣術の達人を自称するメンハルトは、その腕前を誇示すべく、稽古という形でヘンリーに決闘を挑んでくる。
ここでも選択が問われるが、筆者は交渉により、罰金を支払いつつも追放は避けることができた。メンハルトからも感謝されたが、罰金については不満が残っていたようなので、交渉次第では罰金を支払うことなくやり過ごすこともできそうだ。
この1件でメンハルトと仲よくなった結果、彼からあることを依頼される。剣術同盟の拠点に忍び込んでシンボルである剣を盗み、それを教会の壁に飾ってきてほしいというもの。そうすることで、剣術同盟に決闘を受けさせること可能なようで、メンハルトは決闘によって誰が剣術指南役にふさわしいかを決めることが目的のようだ
拠点にはピッキングを駆使して侵入する必要があるが、その様子を目撃されると衛兵に取り囲まれてしまうため、夜中に行動することに。しかしながら、ピッキングの難易度が高くて時間がかかるのと、夜中でも巡回する衛兵はいるので、筆者はなかなかスムーズに侵入できず、衛兵に見つかることもしばしば。
衛兵の追跡もかなりしつこいので、武力で鎮圧しながら強引に盗もうかとも考えたが、試遊前にトビー氏から「ステルスの際には衛兵を殺さないでください」と言われていたので、追跡を振り切り、慎重に身を隠しながら時間をかけて剣を奪取。教会へも忍び足で侵入し、無事剣を飾ることができた。
メンハルトとの出会いや剣術同盟との交渉、拠点への進入方法など、プレイヤーの決断次第でその後の物語が変化していくのが本作の魅力。会話中のテキストやボイスもしっかりと日本語に対応していたので、違和感なく自分だけの物語に没頭できることだろう。
開発インタビュー:本作は、ヨーロッパに舞台を移した侍の物語とも呼べる作品
Tobias Stolz-Zwilling氏(トビアス・シュトルツ=ツウィリング)
Warhorse Studios PRマネージャー
川谷久海氏(かわたに くみ)
Warhorse Studios 『キングダムカム・デリバランス II』コンセプトアーティスト
ただ、『キングダムカム・デリバランス』は我々のスタジオの初となる作品でしたので、1作目が商業的な成功を収めるか否かで、2作目を作れるかが左右されていました。もし、1作目があまり売れていなかったら、今回のセッションは存在していません。
――もともと、前作と『II』、2作品を作りたかったとのことでしたが、そうすると、今作の『II』では、皆さんがやりたいことを全部表現した完結作という立ち位置となるのでしょうか?
しかし、そうした制約があった中で前作が商業的な成功を収めたことで、『II』では自由に制作することができました。そのおかげで、作品の規模も大きくなりました。たとえば、前作では大規模な都市を作りたかったですが、それは叶いませんでした。ですが、『II』では実現できました。
ですので、『II』では私たちが表現したいことを詰め込んだ作品となっており、思い描いていたエンディングを迎えることができていると感じています。
――わかりました。先ほど、前作で実現できなかったことを『II』では詰め込んでいるとお話がありましたが、改めて、『II』ではどういった新要素が登場しているのか伺えますか?
装備できる武器については、クロスボウや中世の初期で使われていた銃火器など、前作よりも数多くの武器を登場させています。
ほかにも、『II』では鍛冶屋が登場して、ミニゲームを通じて主人公のヘンリーは自分で武器を作ることができます。これは、前作から登場させたかった要素で、念願叶って実装することができました。
――『II』を開発する際には、やはり大前提として、前作でできなかったことを表現するということがテーマとして存在していたのでしょうか? また、『II』を開発していく中で新たに実装を決めた要素などは生まれたりしましたか?
それゆえ、開発者が増えていき、スキルも継承していくことで、実現可能なことも増えましたし、予算も大きくなりました。
開発者全体のスキルが向上したことに加え、前作からの学びを新しい開発者に共有したこと、そして予算が増大したことで、前作からやりたかったことを実現しつつ、開発者が増えたことで新しく取り組める事柄にも挑戦しました。
ほかにも、構想上はよい要素だと思っていたけれど、ゲーム内に登場させたときにはそうでもなかった要素がありましたが、『II』ではブラッシュアップして魅力的な要素に仕上げました。もちろん、プレイヤーさんのフィードバックも反映しています。
プレイヤーさんの中には、戦闘にあまり時間をかけたくないという人もいらっしゃったので、そういった人たちも楽しめるように、『II』では楽しく快適に戦えるようにしました。戦闘でのかっこよさは担保しつつ、わかりやすく遊べるように工夫しています。
そのほかには、セーブのシステムがあります。セーブをする際にポーションを少し飲む必要があるのですが、ストーリーの序盤ではまだヘンリーはポーションへの耐性があまりなく、値段が高くて買うのが難しい、作るのにも材料を手に入れる手間があって錬金術をマスターする必要もあったりと、プレイヤーさんに負担がかかっていました。
そこで今回は、セーブ時にポーションを飲むという仕様は変えずに、それを実行するための手順を簡単にしました。
いつでもフリーでセーブやロードを行う仕様を採用せず、ポーションを使う方法を取った理由としては、つねにこのゲームの目的として、プレイヤーに本当にこの判断でいいのか、いま本当にセーブしてもいいのか、休んでもいいのかということを考えるモチベーションにしたい、ということがテーマとしてあったからです。
――安易に決定していいのか、ということを考えさせることが、作品のテーマにも通じていると。歴史を取り扱った作品だから、そうした決断も大切にしてほしいという思いがあるのですね。
――ここで川谷さんにもお話を伺えればと思いますが、コンセプトアーティストとして本作の開発に参加してみて、いかがでしたか?
また、開発を通じて、日本の制作現場とは少し違うなと感じた部分もありました。日本ですと、プレッシャーを受けることで最大限の能力を発揮する、という側面があると感じていまして。私はもともと、日本の映画業界で働いていたこともありましたので、とくにその点を強く感じていました。
一方で、本作の開発現場では、リラックスをして取り組むことを大事にしていて、そこがすごく印象的でした。何かわからないことがある場合にも質問しやすい雰囲気が形成されていましたので、不安を抱えることなく、作業に集中することができました。
――クリエイティブにおいては、最適な環境だったのですね。
――キャリアの開始直後から、ご自身の能力を存分に発揮できたと。
日本のゲーム会社に所属している友人がいるのですが、最初からイラストを描くことができず、モデリングの仕事を依頼されたという話も耳にしていましたので、私は恵まれているなとも感じました。
もちろん、モデリングを担当して、その経験を活かしてイラストのお仕事をするということも理に適っているとは思いますが、私たちの職場では完全に業務、仕事がわかれていますので、好きな仕事にとことん熱中できる環境でした。ですので、本当に楽しい開発でしたね。
――川谷さんが本作のアートを手掛ける際に、もっとも心掛けている点を教えてください。
――最後に、本作を楽しみにしている日本のファンへメッセージをお願いします。
また本作は、ヨーロッパに舞台を移した侍の物語とも呼べる作品だと考えています。すべてを失ってしまった人が、さまざまな経験を経て、仇敵を撃破するという物語は、日本の皆さんにもなじみ深いストーリーラインだと思います。きっと感情移入して楽しんでいただけるはずです。本作では、600年前のヨーロッパを舞台に復讐劇を描いていきます。すごくかっこいい作品になっていますので、ぜひ遊んでいただけたらうれしいです!