『FF』楽曲の吹奏楽コンサートツアー"BRA★BRA"が5年ぶりに開催! 『ビッグブリッヂの死闘』も『ザナルカンドにて』も「ブラボー!」なツアー最終日をリポート

by村田征二郎

『FF』楽曲の吹奏楽コンサートツアー"BRA★BRA"が5年ぶりに開催! 『ビッグブリッヂの死闘』も『ザナルカンドにて』も「ブラボー!」なツアー最終日をリポート
 『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズの楽曲を吹奏楽アレンジで演奏するコンサート“BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2024 with Siena Wind Orchestra”の全国ツアー最終公演が2024年8月12日に東京のBunkamuraオーチャードホールにて開催された。

 本記事では5年ぶりの開催となった“BRA★BRA FINAL FANTASY”ツアー最終日の昼公演の模様をリポートする。
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東京公演(8月12日 昼)セットリスト

<第一部>
01. FF バトル2メドレー 編曲:佐藤泰将
02. Eyes On Me (FFVIII) 編曲:小林洋平
03. ビッグブリッヂの死闘(FFV) 編曲:佐藤泰将
04. FINAL FANTASY メインテーマ(FFシリーズ) 編曲:石毛里佳
05. シーモアバトル(FFX) 編曲:佐藤泰将
06. ルーファウス歓迎式典(FFVII) 編曲:石毛里佳
07. The Man with the Machine Gun(FFVIII) 編曲:樫原伸彦、補編曲:石毛里佳

<第二部>
08. Fragments of Memories(FFVIII) 編曲:佐藤泰将、浜口史郎
09. Vamo'alla Flamenco(FFIX) 編曲:小林洋平 スーパーバイザー:岩﨑英則
10. Blue Fields (FFVIII) 編曲:三浦秀秋
11. 街角の子供達(FFVI) 編曲:星出尚志
12. 素敵だね(FFX) 編曲:佐藤泰将 Vocal:暁-Xiao-(植松伸夫 conTIKI)
13. ザナルカンドにて(FFX) 編曲:小林洋平
14. 片翼の天使(FFVII) 編曲:佐藤泰将

<アンコール>
01. No Promises to Keep (FFVII REBIRTH) 編曲:石毛里香
スペシャルゲスト:植松伸夫 conTIKI(キーボード:植松伸夫/ボーカル:暁-Xiao-/ギター:岡宮道生/パーカッション:藤岡千尋/オートハープ/戸塚利絵)
02. マンボ de チョコボ(FFV) 編曲:佐藤泰将

5年ぶりの開催にブラボー係のアピールも白熱

 “BRA★BRA FINAL FANTASY”は『FF』サウンドの生みの親である植松伸夫氏が製作総指揮を務めるコンサートツアー。2015年から2019年にかけて毎年開催されていた。

 
『FF』シリーズの楽曲を吹奏楽演奏で聴けるだけではなく、手拍子や「ブラボー!」などの掛け声など、自由に、気楽に楽しめるスタイルのゲーム音楽コンサートとなっているのが特徴だ。

 本ツアーではシエナ・ウインド・オーケストラによる演奏に加え、来場者がリコーダーなどで演奏に参加する参加型企画も実施されるのが大きな魅力。さらに今回は植松伸夫氏がキーボード奏者を務める5人編成グループの植松伸夫conTIKIもスペシャルゲストとして出演するのも見どころのひとつだ。

 開演時間になると植松氏がステージに登壇。来場者への挨拶と本コンサートについて「演奏者たちと観客がいっしょになって大騒ぎするイベント」と紹介。続いて植松氏は“BRA★BRA”では恒例となっていた“ブラボー係”を選出するため観客席に。

 ブラボー係とは、その名の通り、すばらしい演奏に対し率先して「ブラボー!」と賛辞を贈る、いわゆる盛り上げ役だ。植松氏がブラボーバッジなるアイテムを手に場内を歩き回ると、我こそはと声を大にして「ブラボー!」の掛け声が飛ぶ。植松氏はその中から数人をブラボー係につぎつぎと任命していった。それだけで大いに盛り上がるのは“BRA★BRA”ならではの光景だ。
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来場者のリコーダーが会場に響き渡った『FINAL FANTASY メインテーマ』

 ブラボー係の選出が終わると、演奏者の方々と指揮者の栗田博文氏が登場し、いよいよコンサートがスタート。

 開幕を飾ったのは
『FF バトル2メドレー』。楽曲自体の盛り上がりもさることながら、50名近い奏者による重厚感あふれる生演奏が生む迫力は一発でこちらのテンションをブチ上げてくれる。

 1曲目で会場が温まったところでMCの山下まみさんと再び植松氏が登場。5年ぶりに開催されたツアーが最終日を迎えたことの感想を問われた植松氏は、「5年ぶりだからみんなに忘れられているかと思った」とジョークを飛ばしつつ、4月から全国6都道府県を巡ってきた今回のツアーもあっという間に最後を迎えたとし、「もっとやりたい」と名残惜しそうにコメントした。
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 MCトークの後は、
『Eyes On Me』と『ビッグブリッヂの死闘』が2曲連続で披露された。『Eyes On Me』が穏やかな音で心地よいメロディを紡ぎ、『ビッグブリッヂの死闘』では冒頭の印象的なメロディから奏者たちの技巧が全開。これでもかと迫力ある演奏が展開された。

 続く4曲目は、リコーダーで来場者も演奏に参加できた
『FINAL FANTASY メインテーマ』だ。

 本企画では事前に公式サイトで練習用動画が公開されており、リコーダーを持参した来場者は指揮者からの合図を受けて演奏に参加。ブラスバンドのサウンドにリコーダーのある種素朴な音色が重なる独特な感覚は、“BRA★BRA”ならではの味わいだ。演奏終了後には観客席から「ブラボー!」の声が飛ぶのはもちろん、指揮者の栗田さんからも客席に向けた大きな「ブラボー!」が届けられた。
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山下さんと植松氏もリコーダー演奏に参加。

 これまでの“BRA★BRA”ではサイコロの目でアンコール時に演奏する楽曲を選択したり、観客からの「ブラボー!」をデシベル計で計測し、その数値で演奏する曲を決めるなど、さまざまな企画が実施されてきた。

 今回の公演では、5曲目を
『FFIX』の『ハンターチャンス』か、『FFX』の『シーモアバトル』のどちらを演奏するかが、「ブラボー!」と拍手の大きさによって決定された。判定には音の大きさを計る騒音計を使わず、植松氏みずからの感覚でデシベル数を判定するという形式。そして(植松氏による)計測の結果、80000デシベル対82000デシベルの僅差で選ばれたのは『シーモアバトル』。力強い指揮とともにパワフルなサウンドが展開し、場内を沸かせた。

 第一部の最後を飾ったのは、
『FFVII リバース』の記憶も新しい『ルーファウス歓迎式典』と『FFVIII』から『The Man with the Machine Gun』。前者は原曲からして作中の式典用楽曲だったこともあり、ブラスバンドのサウンドによく馴染んでおり、演奏には植松氏も参加。さらに観客も手拍子で曲に加わるなど、ユニークなアレンジが展開した。

 
『The Man with the Machine Gun』は『FFVIII』におけるもうひとりの主人公と言えるラグナの通常戦闘BGM。軽快なリズムが疾走感を生み、事前のMCでも注目と太鼓判を押されたドラムソロでは楽曲が終わるのを待たず拍手が上がるほどの圧巻の演奏が披露された。

“BRA★BRA”では初のボーカル入りの演奏となった『素敵だね』

 約20分ほどの休憩を経て、第二部が開幕。1曲目からフルメンバーでの演奏が続いた第一部から一転し、第二部の幕開けとなった『Fragments of Memories』(『FFVIII』)は、4名での演奏。奏者にスポットライトを当てる照明もあり、牧歌的なサウンドとともに第一部とは異なる雰囲気が印象的だ。曲が終わった後にはスタッフが登場して椅子などの位置を調整していたのだが、そのスタッフにも「ブラボー!」の声が飛ぶなど、第二部開始から観客のボルテージはかなり高め。
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 続いて演奏されたのは、
『FFIX』の『Vamo'alla Flamenco』だ。8名の奏者が登場し、情熱的なサウンドで一気に会場の雰囲気を一変させる。演奏の中盤からは奏者のひとりがバラを咥え、手拍子と足拍子を響かせる様はまさにフラメンコ。さらには別の奏者が演奏をしている目の前にバラをチラつかせて笑わせにかかるなど、コミカルな演出も見られた。
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 少人数構成での2曲が終わるとMCの山下さんと植松氏が登場し、ロビーで行われたアンケートにあった“あなたの5年間を教えてください”という質問への回答が一部紹介された。「大喜利アビリティを習得しました」という回答から、「こんな
『FF』は嫌だ」と大喜利を振られた植松氏は「キャラクターデザインが植松伸夫」と回答して会場の爆笑を誘った(それはそれで見てみたい気もしますが)。

 アンケートをもとにしたトークで大いに笑った後の10曲目は
『Blue Fields』(『FFVIII』)、11曲目は『街角の子供達』。2曲ともブラスバンドならではのアレンジやハーモニーで穏やかながらも豪華さを感じさせる演奏となっていた。

 公演もいよいよ後半という12曲目で演奏されたのは、
『FFX』から『素敵だね』。こちらは“BRA★BRA”としては初のボーカル入りの演奏となり、歌い手は植松伸夫conTIKIのボーカリストである暁-Xiao-さんが登場し、優しくも力強い歌声を響かせた。
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 ボーカル入りの演奏は実験だったと植松氏は述べたが、「ブラボー!」の大きさを受け、「これなら(ほかの曲も)いけるかも!」と手応えを感じた様子。

 なお、今回ゲストとして登場した植松伸夫conTIKIは10月5日、6日に東京で“植松伸夫 con TIKI SHOW 2024”の開催を予定しているとのこと。
『FF』楽曲はもちろんオリジナル曲や物語の朗読なども行うそうだ。チケット詳細ページの予定曲目には今回披露された『素敵だね』も含まれるとのことで、気になる人はチェックしておこう。
 あっという間にコンサートも終盤となり、「最後はアレとアレです」と曲を伏せた状態で最後の演奏がスタート。13曲目に披露された曲は、『FFX』より『ザナルカンドにて』。ピアノを始めとした各パートが奏でるメロディは美しいのひと言に尽き、終盤の盛り上がりも含めて名曲の名曲たる所以を見せつける演奏が堪能できた。

 そして14曲目に演奏されたのは、コンサートでは鉄板の
『片翼の天使』(『FFVII』)。メロディアスな『ザナルカンドにて』から一転、力強いサウンドで始まり、「セフィロス!」のコーラスが聞こえるような演奏はまさに圧巻の迫力。セフィロスが持つ美しくも不穏な雰囲気が見事に音で表現された瞬間だった。

みんなで演奏する『マンボ de チョコボ』の楽しさは格別

 演奏が終わり、鳴りやまない拍手と「ブラボー!」の声に会場が包まれるなか、アンコール1曲目として演奏されたのは『FFVII リバース』のテーマソング『No Promises to Keep』。ここでは暁-Xiao-さんだけでなく、ギターの岡宮道生氏、パーカッションの藤岡千尋氏、オートハープの戸塚利絵氏、そしてもちろん植松氏もキーボード奏者として参加し、植松伸夫 conTIKIのフルメンバーが演奏に参加。
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 アンコールでよりいっそうの盛り上がりを見せた後、ステージには色鮮やかなアフロヘアーの山下さんと植松氏が登場。オーラスの曲は来場者が持ち寄った楽器や会場で配られたおもちゃの楽器を使って演奏された
『マンボ de チョコボ』。ステージを文字通り埋め尽くす演奏者たちと客席でいっせいに振られるマラカスによる大合奏は、冒頭に植松氏が述べた“演奏者たちと観客がいっしょになって大騒ぎするイベント”という表現をまさに体現するものとなった。
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 観客も演奏に参加して大いに楽しめた“BRA★BRA”コンサート。筆者は
『FF』シリーズを全作プレイしたわけではなく、今回初めて聴く楽曲もあったが、コンサート自体が非常にカジュアルな雰囲気だったこともあり、とても楽しめた。次回があればぜひ足を運びたいと思わせてくれる楽しいコンサートであり、あまりゲームコンサートなどに足を運んだことのない人にもぜひオススメしたい公演だった。

ツアーを終えた出演者の方々からのコメント

植松伸夫氏(制作総指揮)
 久々にやってみましたけど、本当に楽しいコンサートでした。終わってから僕のところにいろいろな方から連絡が来るんですけど、嘘偽りなくみんな楽しんで感動してくれた意見が多かったです。ぜひともまた開催したいです。いろんな策もありますので(笑)。

栗田博文氏(指揮)
 お疲れ様でした!
 5年ぶりの開催でしたが、始まってみたらその時間の経過を感じなかったですね。これまでの曲は5年前がすぐ蘇る感じの演奏をしてくれたし、新しく演奏する曲もあったので新鮮さもありました。シエナの皆さんは回数を重ねるごとに演奏に深みが増すというか、新しい発見をちゃんと自分たちで見つけていて……回数を重ねる良さというのはそういうことだと思います。今日の千秋楽も1回目と2回目両方とも違う良さがありました。それこそが生演奏のすばらしさであり、お客さまと一緒にコンサートを作ってる感覚があったので、本当に楽しいツアーとなりました。
 音楽ってすてきだよね、音楽家でいてよかったな、と回数を重ねるたびに思えてきます。シエナの皆さんも生き生きしているし、毎回新鮮な演奏を一緒にやらしてもらってるので、これからもBRA★BRAでいろいろできたら良いなと思っています。

佐藤拓馬氏(コンサートマスター)
 初めてツアーに全部参加したのですが、昨日の夜から「あ、終わっちゃう……」と思って今日を迎えました(笑)。
 僕は、ファイナルファンタジーをずっとプレイしてたので、特に「ザナルカンドにて」はほんとに鳥肌、鳥肌って感じで……やばかったです……。
 会場の皆さんと一緒に作ってきたBRA★BRAの空気感というものができていて、すごいなと思いながら演奏していました。自分が楽しくなりすぎないようにだけは気を付けて(笑)、冷静さは1%いれて99%は興奮。本当に楽しかったので、また是非やりたいです。またやらないわけにはいかない!(笑)

山下まみ氏(MC)
 5年ぶりの復活ということで、5年前に来てくれた人はいるのかな?
 5年前と同じような感じで盛り上がってくれるのかな?
 そんな不安もありましたが、初日の大阪公演のバトル2メドレーから「ブラボー!」の歓声が巻き起こり、「ああ、帰ってきたんだ……」と安堵と共にあの時の興奮と記憶がパッと蘇りました。
 こんな自由でいいの?というくらいみんなが楽しいを追求しているブラブラだからこそ、時が経っても色褪せず、楽しめるんだなと思います。
 あと10年は続けたいな〜笑。
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