1993年に設立された老舗ゲームメーカー・ユークス。『新日本プロレスリング 闘魂烈伝』、『THE プロレス』、『エキサイティングプロレス』、『WWE』シリーズなど、プロレスのゲームを開発・販売している会社、という認識の往年のゲームファンも多いかもしれない。
じつは『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』、『ま~るい地球が四角くなった!? デジボク地球防衛軍 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHERS』、『テイルズ オブ アライズ ビヨンド ザ ドーン』、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』、『グランブルーファンタジー リリンク』などの家庭用ゲームの開発及び開発協力や、AR、XR事業を手掛けているのはご存じだろうか?
XR事業では、『あんさんぶるスターズ!!DREAM LIVE』(-BRAND NEW STARS!!-以降)、『ポラポリポスポ』、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 3DCG LIVE』のライブCG制作などで、多くのファンがよろこぶ良質なCGを提供している。
近年は開発に注力しているため、会社としての名前が表に出る機会は少ないが、その技術力・開発力には相当の自信があるという。本記事では、ユークスがどのような志とビジョンのもとに今後の事業を推進していこうと考えているのか、開発の中核を担う6名のクリエイターにインタビューを実施した。
聞き手:ファミ通グループ代表 林克彦※本記事はユークスの提供でお送りします。
原 典史 氏
横浜CS事業部 執行役員横浜CS事業部長。(文中は原)
橋本 治 氏
横浜CS事業部 ゲームデザイン シニアディレクター 代表作:『WWE2Kシリーズ』、『ARP ライブアプリ ふれフレ」』など 。(文中は橋本)
上野 尚澄 氏
横浜CS事業部 プロデューサー 兼 ゲームデザイン シニアディレクター
代表作:『リアル・スティール』、『パシフィック・リム THE VIDEO GAME』、『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』、『デジボク地球防衛軍シリーズ』、『WWE2Kシリーズ』など。(文中は上野)
渋谷 知広 氏
横浜CS事業部 ゲームデザインシニア ディレクター
代表作:『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』、『デジボク地球防衛軍シリーズ』など。(文中は渋谷)
宮本 伸一
大阪CS事業部 プロジェクトディレクター
代表作:『テイルズ オブ アライズ ビヨンド ザ ドーン』※開発協力、『マリオ&ソニック AT東京2020オリンピック TM』※開発協力、『UFC Undisputed』シリーズ。(文中は宮本)
英 俊介 氏
大阪CS事業部 次長 兼 プロデューサー
代表作:『テイルズ オブ アライズ ビヨンド ザ ドーン ※開発協力』、『ARP』、『WWE2Kシリーズ』、『UFC Undisputedシリーズ』など。(文中は英)
30年プロレスゲームを作り続ける老舗デベロッパーが、ライブにXR、メタバースなど幅広く事業を展開しているらしい
――まずはユークスとはどういった会社なのか、ご説明をお願いします。
原
ユークスは1993年2月26日に設立されました。そのきっかけは、社長の谷口行規がデジタル技術を使って“人”を表現したいという想いでした。当時のゲームで人を表現する手段はドットが主流でしたが、谷口はポリゴンを使って人を表現したいと考えていたのです。ポリゴンというのは直訳すると“多角形”ですけど、あの無機質な図形を使ってどうやって人を表現し、そして人を感動させられるのか。それを突き詰めたいというのがユークスの最初の命題でした。
――原さんは途中からユークスに合流されたんですよね。何がきっかけだったのですか?
原
僕は前職で『テトリス』を作っていたのですが、谷口は『ぷよぷよ』を作っていたんです。のちに『ぷよテト』なんてものが出るとは当時の僕らは思ってもいないんですけど(笑)、同じパズルゲームということで話が盛り上がりまして。その中でいまの谷口の想いを聞きました。僕もそれまでずっと2Dでやってきましたから、3Dで人を感動させるという谷口の想いに共感したんです。それでユークスに合流することになりました。
――それがユークスの代表作『新日本プロレスリング 闘魂烈伝』シリーズにつながっていくと。
原
ええ。ポリゴンを使って人を表現するということの原点ですね。それ以来なんと30年ものあいだ我々はプロレスを愛し続け、プロレスに関わり続けてこられました。
――やはりユークスと言えばプロレスというイメージは揺るぎないものだと思うのですが、それだけじゃないんですよね。近年は本当に多角的に事業を展開されていて。
原
そうなんです。プロレスは我々の原点で、得意ジャンルではありますが、それがすべてではありません。ゲームだけをとってもさまざまなジャンルがありますし、それ以外にもパチンコやライブ、XR、メタバースなどさまざまなビジネスにチャレンジをしてきました。
それらすべて、根底にはやはり“人を表現する”という社の命題が関係しているんです。人と人のコミュニケーションを通してエンターテインメントを楽しんでいただく場所を提供する。現在はこれを基本方針として、各方面で新しいビジネスを展開しようとしています。
――新しいものにどんどん挑戦するエネルギーが本当にすごいなと感じるのですが、一方でこれまでの旗印的存在だったプロレスゲームの展開がいったん落ち着いてしまうのではないかと、不安になるファンもいらっしゃるのではないでしょうか。
原
いえいえ、そんな心配はご無用です! 近々でも昨年に『AEW: Fight Forever』を開発していますし(発売元はTHQ Nordic)、我々はこれからもプロレスを愛し続けます。今日はユークスが誇る優秀なクリエイターたちに集まってもらっていますが、彼らは率先して新しいことに挑戦してくれている人たちであると同時に、ほぼ全員がプロレスゲームの開発を経験してきたメンバーなのです。ユークスにとってプロレスは会社を支える大黒柱のようなもので、プロレスというベースを経験しながら新しいものにも挑戦する。その同時進行でやらせてもらっています。
画像は『WWE 2K19』。
――それなら安心ですね。ところで、ユークスは大阪と横浜にそれぞれ事業部がありますが、開発の皆さんは総勢何名ぐらいですか?
原
開発だけで、約180名ですね。つねに複数のラインが走っており、さまざまなタイトル開発が同時に行われています。
オフィスの中には、プロレスで使用する金網を模したスペースがあり、フリースペースとなっていてこの中で仕事ができてしまう。実際にライトなども配置されており、ゲーム開発中のライティングの参考にもしていたのだとか。
『デジボク地球防衛軍』に『テイルズ オブ アライズ ビヨンド ザ ドーン』、『グランブルーファンタジー リリンク』の開発にも携わる
――さて、ここからはクリエイターの皆様にもご参加いただき、ユークスという会社についてたくさん語っていただきたいと思います。まずはユークスの魅力や特徴について教えていただけますか?
宮本
現在たくさんの事業を展開しているという話がありましたが、まったく前例のない黎明期から先頭に立って走ってきたものも多いです。それこそポリゴンで作るプロレスゲームは前例がなく、ゼロから作りあげたものでした。
原
プレイステーション(以下、PS)が出たばかりのころのお話で、まさにそういうハードのローンチタイミングにお声掛けいただけるのは、すごくありがたい機会でしたね。
宮本
オンライン対戦に関しても、PS2やドリームキャストのころからずっと取り組んできています。まだメジャーではない技術に対しても、率先して挑戦できるチャレンジ精神というのは、弊社の魅力だと思っています。
上野
間口の広さも魅力のひとつかなと思います。アニメ原作のものも、ハリウッド映画をもとにしたものも、スポーツものも、なんでも作ります。スタジオによっては明確に得意ジャンルが定まっているところもあると思いますが、逆に弊社は何にでも挑戦できる土壌がありますね。
――御社のこれまでの実績を拝見していると、プロレスゲーム以外にも『デジボク地球防衛軍』シリーズ、『グランブルーファンタジー リリンク』、『テイルズ オブ アライズ ビヨンド ザ ドーン』のほか、XR事業の方では“『あんさんぶるスターズ!!』や『ポラポリポスポ』、『ヒプノシスマイク』のライブCG作成など、本当に何でもやるのだなということがわかります。「これもやっていたんだ」と思うものも多いですね。
原
そう言っていただけるのが楽しみでやっているところもあります(笑)。
――これらは先方からお声が掛かって担当することになったのですか?
原
もちろんお声掛けいただいた案件もありますが、自分たちのほうから「ご興味ありませんか」とお話をさせていただくことも多いです。3Dで人を表現するのがこの会社の目的だという話をしましたが、じつはその技術はプロレスラーを動かすためだけに存在するのではなく(笑)、幅広くいろいろなものに使えるんです。それをご説明すると納得していただけることが多いので、新しいことにどんどん挑戦できています。
――昔に比べてキャラクターを3Dで動かす機会が圧倒的に増えていますから、ユークスさんの持つ技術の需要も高まっているということなんですね。
原
最初は“ポリゴンをいかに人っぽく見せるか”から始まり、筋肉の動かしかたや表情の作りかたなど、みんながひとつひとつこだわって積み重ねてきたものがあるからこそ、いまにつながっているのだと思います。
上野
そうかと思えば、ボクセルのキャラを作ってみたり……。
原
たまにはデフォルメちっくなかわいいのも作りたいよね(笑)。『デジボク地球防衛軍』シリーズは上野が新しいチャレンジをたくさんしてくれました。
上野
『デジボク地球防衛軍』では、本当に幸運なことにオールインワンの開発を担当することができました。“ボクセルアート”で作り上げるというテーマはディースリー・パブリッシャーからいただいたものですが、具体的なキャラクターデザインからゲームコンセプト、シナリオに至るまですべてユークスから提案させていただきました。本家の『地球防衛軍』シリーズが大好きなスタッフが集まって自由に作らせてもらったので、公式なのになんだか同人ゲームを作っているような感覚でした(笑)。
原
ディースリー・パブリッシャーのプロデューサーさんにも、それを受け入れていただいてね。
上野
おかげでのびのびとやらせてもらいました。
――さすが、ディースリー・パブリッシャーさんは懐が深いですね。『地球防衛軍』シリーズが大好きなスタッフが集まったということでしたが、ゲーム開発を行う際、社内のチーム編成はどのように行われているのでしょうか。
上野
決まったチームはほとんどなく、プロジェクト単位でクライアントの要望に合わせた形で作られます。
原
もちろん好きな人がいるなら積極的に担当してもらいたいし、必要な技術を持っている人はなるべく入れられるようにしています。
英
私も心当たりがありますね。以前、ユークスに所属していた“ARP”(※)というパフォーマーユニットがいたのですが、彼らのARライブを観るのが好きで。自分は大阪の事業部に所属しているので、毎回車で横浜まで見に行っていまして。
※現実世界で会えるARダンスボーカルグループ。2016年から2022年まで活動。舞台にCGを映し出し、リアルタイムで生のパフォーマンスを行っていた。
原
「そんなに好きならやればいいじゃん」と、チームに入ってもらいました(笑)。
英
本当にそのひと声で運営を任されるようになり、その期間はずっと横浜に滞在していました。
原
大阪と横浜で何かが違うわけでもないですからね。横浜の人でも、関わっているタイトルによっては大阪にいたりします。
――事業所はわりと自由に動けるのですね。ところで、昔だとユークスさんがRPGを開発するイメージはなかったのですが、『テイルズ オブ アライズ ビヨンド ザ ドーン』ではどんな関わりかたをされたんですか?
宮本
もともとは『テイルズ オブ アライズ』本編のPS5版とXSX|S版の移植に関わる作業を担当させていただいたのです。そこで我々の技術力を信頼していただけるようになり、DLC(ダウンロードコンテンツ)の開発では全面的に任せていただけるようになりました。レベルデザインやバトル実装のプログラム、カットシーン作成などの部分を担わせていただきました。
――新しいチャレンジや発見も多かったのではないでしょうか。
宮本
実際にやってみると、我々のノウハウが活かせる部分も多いなと感じました。たとえばアクションゲームにおける気持ちよさの表現だとか、ゲームを楽しんでもらうための感覚は、ふだんのゲーム開発と同じようなところがある気がしました。もちろん、バンダイナムコスタジオさんといっしょに開発できることにより、勉強になった部分も非常に多いです。
原
かっこよく言っていますが、当時はやっぱりかなりプレッシャーを感じていたよね(笑)。終わってみれば「こんなに力強いこと言ってくれて、頼りになるな~」と、感心しています。
宮本
実際、試行錯誤の連続ではありました。終わったからこそ言えるっていうのはまさにその通り(笑)。
『レディ・プレイヤー1』の世界は、現在の技術ですでに再現可能!?
――続いて、今後ユークスがチャレンジすべきだと思っていることについて聞かせてください。
宮本
家庭用ゲームでもまだまだ挑戦していないジャンルがたくさんあるので、もっと手を広げていきたいですね。RPGの開発を経験できたので、たとえばつぎは3D技術を活用できるオープンワールドとか。
上野
各ディレクターがまったく別のジャンルにどんどん挑戦していくのもいいですが、『WWE』シリーズを作っていたときのように全員が一丸となってやるようなビッグプロジェクトにもまた挑戦したいですね。
英
本当にいろいろなことができる人が揃ってきましたから、ゲームだけでなくライブやXRなども含めたメディアミックスもいいですね。
上野
それで言うとメタバース的な、リアルとバーチャルの境がなく、みんながいっしょにコミュニケーションしたり遊んだりできる空間を提供できるようになりたいという話はよく原としています。
――メタバースも技術がどれだけ優れていてもおもしろくないと定着しませんから、皆さんのエンタメ力が必要とされている気がします。
原
そうなんですよ! エンターテインメントとの親和性がとても高い世界だと思います。
上野
『レディ・プレイヤー1』(※)の話はしなくていいんですか?
※2018年に公開されたハリウッド映画。監督はスティーブン・スピルバーグ氏。巨大なVRオンラインゲーム空間に隠された宝を巡る大冒険が描かれる。原
していいですか!?
――ぜひ聞きたいです(笑)。
原
社員らに、今後この会社はどういう方向に行くのか、ということを聞かれたときに、僕はひと言、「『レディ・プレイヤー1』を現実にしたい」と言っているんです。もうあの世界の再現が不可能ではない時代に入って来ていると思うんですよ。
――非常にワクワクしますが、実現させるのは相当たいへんではありますよね。
原
モーションキャプチャーの技術もずっと勉強しており、弊社が開発した“ALiS ZERO”(※)というリアルタイムレンダリングエンジンを使うと、人のリアルな動きを裏でキャプチャーして、それをリアルタイムで画面に表示することができるのです。先述の“ARP”もそうですが、近年だと裏で演者さんが演じている動きを、そのままCGに反映できる2次元IPのライブや、Vtuberさんのライブなどでよく使用している技術です。『レディ・プレイヤー1』にあった、自分の動きをそのまま映像に反映させる技術は、すでに持っているのです。
※撮影したモーションキャプチャーデータを、リアルタイムかつ高精度にCGデータとしてアウトプットする技術。リアルタイムレンダリング、多人数キャラクターの同時表示、リアルタイムでの実写との合成などが可能。――自社開発のエンジンがあるのですね。取り組みが幅広く、ひとつひとつの本気度もちゃんと高いのがすごいと思います。
原
これも、根っこにあるのは“人を表現する”ということ。その中で大事にしているのはリアルタイム性です。ユークスはゲーム開発会社ですから、CGだけではなく、インタラクティブな遊びにこだわりたいと思っています。そのためにはリアルタイム性が必要なんですよね。
橋本
僕は社内でも珍しい仕事を任されることが多いのですが、リアルタイム性といえば、キャラクターのライブ中にリズムゲームができる『ふれフレ』というアプリを作ったことがあります。タイミングよくスマホを振って、そのスコアが応援しているキャラクターの得点になるという遊びです。先述の“ARP”のライブ中にリアルタイムで遊べるものでした。
リズムゲームというからには60分の1秒単位の遅延も許されないので、実装にはかなり苦労した覚えがあります。何が言いたいかというと、そうしたハードウェアやデバイスを使った遊びを考えるのも得意なので、ハードを作られている会社さんはぜひいっしょにお仕事させてください、ということです(笑)。
――ストレートなアピール、いいですね(笑)。でも先ほども話しましたが、最新のテクノロジーを流行らせるためには、おもしろくすることが重要ですよね。それはテクノロジー系の企業ではなく、ゲーム会社だからこそ目指せることだと思います。
原
まったくその通りだと思います。
渋谷
この会社にいると本当にやりたいことが尽きないわけですが、つねに新しいチャレンジをやるためにこそ、開発速度を上げる必要があるということは念頭に置いておきたいと、自分は考えています。新しいチャレンジには人もお金もたくさん必要です。若い子たちにチャレンジをさせてあげるためにも、ベースとなる開発業務の効率を上げていくことが重要です。
――いまやゲーム開発もかなり長期にわたりますからね。
渋谷
ファミリーコンピュータの時代は1年に2本の新作を出せたのに、いまは3年や5年で1本などという開発期間になっています。本数だけが経験のすべてではないにしろ、新しいチャレンジをする順番が各々になかなか回ってこないというのは、業界においての問題だなと思っています。
宮本
その点で言うと、Unreal Engineを使っている会社さんが多い中、うちは自社製のエンジンでずっと開発をしてきた蓄積があるぶん、そのノウハウがUnreal Engineのカスタマイズに活かされていて、開発スピードが速いのではないかと思います。
人を喜ばせられるようなお仕事を募集しています!
――皆さんが思う、ここは他社には負けないというユークスの強みを教えてください。
宮本
先ほど少し触れられていましたが、固定のチームをつねに維持していないところがひとつあるかと思います。都度最適な人を集めてチームを組成するので、『デジボク地球防衛軍』のようにクリエイティブをがっつり任せてもらえることもありますし、先方の開発部隊と協業という形も取れます。こうした体制の柔軟さというのは弊社の強みなのではないかと思います。
上野
うちはローカライズも強いと思います。
原
プロレスの関係で、かなり昔から海外との取引があったので、ローカライズには慣れています。言語対応についても、30言語以上のバージョン作ったこともあります(笑)。
橋本
最初からローカライズがある前提でデザインしているため、UI(ユーザーインターフェイス)関連と紐付けて開発できる勘どころを心得ているのかなと。言語によっては文字数が膨れ上がって、UIを別で考えていると収まらない、などの問題も生じますので。
――ローカライズだけを請け負うこともあるんですか?
原
あることはありますね。移植系という言いかたになりますが、お引き受けすることは可能です。
――ちなみに、近年アプリゲームも数多くありますが、請け負う開発は家庭用ゲーム機が中心になるのでしょうか。
原
いまインタビューを受けているメンバーの得意分野がそうなので、その話ばかりになってしまったのですが、アプリゲームでも、PCゲームでも、ライブでも、XRでも、我々は何だってやります!
――昨今は家庭用ゲームでもSteamを始めとしたPCプラットフォームへの対応が必須になってきつつありますよね。そういったニーズの変化やそれにともなう開発側の変化について思うところはありますか?
宮本
PCは家庭用ゲーム機と違って、人によってハードの構成が異なるため、デバッグなどの対応はやはりかなり大変です。
英
PCもスマホも、使用ハードやスペックは人によってバラバラですからね。
橋本
どうしても高スペックできれいな画面のゲームを作りたくはなるのですが、要求スペックを抑えて作るということがメリットになるケースが意外と多いなと最近感じています。「うちのPCでも遊べるんだ」と言って喜んでくれる人もいるので、デバッグはたいへんですが、それをやるだけの価値はあると思っています。
渋谷
海外のユーザーは、とくにお持ちのハードの性能の差が顕著なので、低スペックへの対応をしたときに喜びの声がよく届きます。
原
やっぱりそういった需要にも応えていきたいよね。なるべく多くの人に遊んでもらいたいし、できる限り対応してあげたい。でも……フレームレートは少しでも上げたい。
一同 (笑)。
上野
そこのせめぎ合いはどうしたってありますよね。極端なことを言うと、開発スタッフのPC環境もそういう意味ではばらけさせたほうがいい。でもそんなことをしたら会社のシステム担当者が泣きますよ。
原
いまでも「2Kのモニターと4Kのモニターどっちも欲しい」とか言って、結構泣かせているかも(笑)。
上野
もっといえばWindows 7の環境でテストしたいとか、遅いWi-Fiを用意してほしいとか、希望はいくらでもありますからね。いま用意しようと思ってもなかなかできるものじゃない。
原
スマホも同じだよね。お客様が「このスマホがどうしてもお気に入りで替えたくないから何とかしてください」みたいな。たくさんの種類の端末をかき集めないと……。
――かなりマニアックな開発裏話でおもしろいですね(笑)。もっと聞いていたいところなのですが、最後におひとりずつメッセージをいただけますでしょうか。
英
ゲーム業界にもこれまでに積み重なった固定観念がたくさんあると思います。それらをいい意味で裏切って、新しいものや楽しいものを作って発信していきたいと考えています。ユークスのことを前から知ってくれている方も、今回初めて知ったという方も、今後ともよろしくお願いいたします。そして業界の皆様、我々に興味を持ってくださいましたら、ぜひいっしょにお仕事をできるとうれしいです!
宮本
ほかの開発会社さんといっしょに仕事をすることで大きく成長できたと感じています。またこういった機会があればと思っておりますので、パートナーとしての選択肢にユークスを入れていただけるとうれしいです。よろしくお願いします。
渋谷
個人的にはゲームファンの方ともっとコミュニケーションを取れるようなものを発表していきたいと考えています。いい評価をいただくことも悪い評価をいただくこともあるかと思いますが、そうした話題を提供できる何かをユークスのみんなで開発していきたいと思います。
上野
ゲームはもはや若い人たちだけのものではなくなってきています。我々はいくつになってもゲーム好きであり続けるので、そうなると人口におけるゲーム好きの割合がどんどん増えていくのだと思います。だからこそこれまで以上に幅広いユーザーさんに楽しんでいただけるようなコンテンツを提供し続けたいと思っていますし、また私自身も長く開発の現場にいられるように、そのための環境をユークスで作っていこうと考えております。
橋本
ユークスがこれだけ幅広い事業を展開していることは、まだまだご存じなかった方が多いだろうと思います。僕がユークスに入社して初めて担当したゲームは、プレイステーションの北米向けのソフトでした。学生のころは海外のゲームを遊んだことがなくて、よく知りもしなかったので、同じように日本のゲームを遊んだことがないという人は地球上にはたくさんいると思います。ゲームに限らず、ユークスが作ったエンタメを、世界中の人に知ってもらえるようになりたいと考えています。そして、ユークスと言えばあの会社だよね、と言ってもらえるくらい有名な会社にしたいです!
原
こんなものを作ってほしいとか、こういう遊びが欲しい、そんな刺激が欲しい、こういったライブが見たい、そしてこんな出会いが欲しい、など。さまざまなご意見ご要望をユーザー様からお声として頂戴したいと願っています。それに我々なりのエンタメで応えることこそが、いちばんのやりがいなんです。人を笑顔にする、人を感動させるものを、自分たちも楽しみながら作り上げていく所存です。これからもユークスをなにとぞよろしくお願いいたします。そして業界関係者の皆様、お仕事お待ちしております!