そんな本作を手掛けるUbisoft Quebecを訪問し、国内では本誌独占となるスタジオ取材を行った。今回のスタジオツアーは、開発者によるプレゼンとデモプレイの披露という内容で、残念ながら実機プレイは叶わなかったものの、すでに公開したインタビューでは興味深いエピソードの数々も聞くことができた。
本稿ではプレゼンとデモプレイから判明した、ゲームの背景やシステムなど、さまざまな事柄をお届けする。
ストーリー
大名が台頭し、群雄割拠の様相を見せる中、渡来人や商人など海外からの圧力も増してきた混沌とした時代。一方で、城下町の形成や商業の発展など市民の活躍も見られ、さまざまな芸術が花開くなど華やかな面をあわせ持つ時代でもある。
そんな時代に生きる主人公ふたりの、それぞれの立場から見た日本が描かれる点が見どころ。複雑な時代や主人公ふたりの対比といった、多重で入り組んだ深みのある、本作ならではのストーリーが語られる。
ここで、奈緒江と弥助、ふたりの主人公を対比しつつ、あらためて紹介しよう。
奈緒江
- 父の藤林長門守正保は歴史上の人物。奈緒江は本作オリジナルのミステリアスなキャラクター
- 故郷(コミュニティー)やそこに暮らす人々に敬意を払い、大事にしている
- 伊賀の村に暮らす庶民
- 優しい性格ながら直情的に行動する面も
- 奈緒江の視点からは、信長の圧力や恐怖といった面が描かれる
弥助
- シリーズで初めて歴史上の人物が主人公となる
- 故郷を離れ日本にたどり着き、新しい名で歩んでいく
- 信長の従者で、侍という位の高い階級
- 冷静な性格の持ち主
- 弥助の視点からは、信長の野心が描かれる
このように、出自も立場も性格も、そして体格も真逆と言えるふたり。プレイヤーは、ゲーム中にキャラクターを切り換えながらストーリーを楽しめる。さまざまな物事が白か黒かはっきりしない、どちらの面もあわせ持つ時代。ときには、重要な選択をどちらのキャラクターで行うか、プレイヤーの判断が問われる場面もあるという。
また、ストーリーでは織田信長を始め、寧々やお市の方、千利休、狩野永徳といった人物と出会うことなる。どんな武将や偉人が登場するか、こちらも注目だ。
舞台(フィールド)
大坂(当時の表記)や京都など関西地方を中心に、当時の風土や景色がリアルに再現されており、広大なフィールドを探索できる。特筆すべきは、初の完全最新世代向けの作品となったことで、季節や天候の変化、光と影など多彩な表現が可能になったことだ。
春には桜、夏には虫の声、秋は美しい紅葉、冬には雪景色といった、四季折々の風景が見られる。季節や地域によって降雨率なども変わり、天候の変化は周囲の環境(物音や動物)にも影響を与える。さらに言えば、こうした変化や環境はステルスにも影響する(後述)ので、プレイにもダイレクトに響いてくる要素だ。
探索可能な舞台は近畿地方の諸国となる。これは過去作と比べ、一見すると狭く感じるかもしれない(たとえば『アサシン クリード オデッセイ』では地中海の広域が舞台)。しかし実際は、縮尺比率によって現実に近いサイズ感や距離感を感じられ、城の大きさや、山の高さ、森の深さに驚くことだろう。なお、本作の全体的なマップの規模は、『アサシン クリードオリジンズ』のマップのサイズに近いとのことだ。
安土城や姫路城、竹田城、そして大坂城などの城に加え、各地の神社仏閣や名勝の数々が登場する。無数の文献を参照して専門家と照合し、現地(日本)でのリサーチを行うといった徹底した調査を実施。当時の建築技法や材質、色の表現などにこだわり抜いて、リアルな日本を再現しているという。過去のシリーズと同様に、建築物は概ねどこまでも登頂可能で、その細部まで眺められる。
商人の町・堺では港町で、沖には南蛮船の姿もあり、町ごとに特産品が存在するとのこと。そして、侍で位の高い弥助を操作していると、町人がおじぎをしてくるなど、細部にわたってリアルに再現されており、当時の町人の暮らしも感じられる。
また、フィールドでは密偵のネットワークを構築することで、新しいエリアを発見したり、迫ってくる敵などのさまざまな情報が得られたりする。高度な専門スキルを持った密偵を仲間に引き入れて、クエストに協力してもらうこともでき、隠れ家のカスタマイズや味方の訓練なども可能。
以上を箇条書きでまとめると下記のとおり。
- 四季と天候、昼夜の変化
- 光と影の表現の強化
- 上記によるステルスへの影響
- 近畿地方の諸国が探索可能
- 有名な城や神社仏閣、名所が多数登場
- より現実のサイズに近い縮尺比率に
- 仲間を密偵として派遣、隠れ家での訓練も可能
戦闘
奈緒江と弥助は戦闘スタイルも大きく異なる。奈緒江はステルスが得意で、近接戦では短刀や鎖鎌を駆使したスピーディーなアクションが持ち味。短刀は隠し刃(ヒドゥンブレード)と組み合わせて効率よく戦える。
一方、ステルスよりも立ち合いでの戦闘が得意な弥助は、日本刀や金棒、弓、火縄銃など、多彩な武器を使いこなしてパワフルなアクションが可能。戦闘でもそれぞれの能力の特徴を体感できる作りになっている。
奈緒江と弥助は経験値を共有しており、両者とも同タイミングでレベルアップする。獲得したポイントを消費してスキルツリーを強化していくのは、近年のシリーズと同様だ。スキルには両者ともに戦闘寄りのものとステルス寄りのものも用意されているが、奈緒江がステルスに、弥助が立ち合いに向いているという特徴は変わらない。
武器や防具はアップグレードが可能で、装備には戦闘時に有利になる効果が付属しているものも。また一部は製作もできるとのことだ。
ステルス
季節や天候の変化は、シリーズおなじみのステルスにも大きな影響を与える。たとえば、冬になると見張りが焚き火で暖を取るなど敵兵の行動が変化し、隙を狙いやすくなる。春や夏には身を隠せる茂みが多く存在し、冬は雪に埋もれて攻略ルートが変化することも。
また、敵がこちらの影に気づいたり、暗い場所では敵兵に見つかりにくくなるなど、光と影がステルスに与える影響も大きい。
なお、忍の奈緒江のほうがステルスは得意で、鉤縄を使って振り子のように移動したり、建物の上に鉤を引っ掛けて縄を登ったりも可能。パルクールにおいても彼女の小柄さは有利に働き、奈緒江のみが通れる通路があったり煙幕などの道具を使えたり、さまざまな場面で隠密に行動できる。
体格の大きい弥助はステルスが苦手で、多少の物音を発してしまうものの、敵兵の背後から近づき暗殺することは可能。大振りに刀で斬ったりするため、敵に気づかれやすい点に注意が必要だ。ただし、弥助にも探索の利点はあり、強力な体当たりで扉を壊して強引に進んでショートカットや正面突破が可能。
戦闘とステルスでの奈緒江と弥助の比較は下記のとおりだ。
奈緒江
- ステルスが得意
- 武器は短刀と広範囲をカバーする鎖鎌
- 戦闘寄りのスキルツリーもある
- 手裏剣、苦無、煙幕などの道具を使用できる
- 鉤縄を使った効率のいい移動が可能
弥助
- 立ち合いでの戦闘が得意
- 刀、金棒、弓、火縄銃など扱える武器が多い
- 隠密寄りのスキルツリーもある
- 体格を活かした体当たりなどのアクションが可能
デモプレイを見て
今回のスタジオツアーでは、開発スタッフによる実際のゲームプレイデモを見ることができた。そこでわかったことについても記載しよう。
奈緒江のステルス
城の中腹では、今度は鉤縄を真上の屋根に引っ掛けて固定し、縄を登っていく。このように鉤縄にはふたつの使用方法があるようだ。天守閣に近い場所には小さな窓があり、ここから屋内へと移動する。この窓は奈緒江しか抜けられないとのこと。ここまで城の外を移動してきたが、もちろん屋内から進むことも可能だという(ただし敵には見つかりやすいだろう)。
移動の合い間には、敵の位置をマーク(ハイライト表示)するスキルも使用していた。
屋内へ入ると、より近い位置を敵が徘徊している。曲がり角で待ち伏せて敵を拘束し、縄で首を締めつつそのままいっしょに移動して、目立たない場所で暗殺。また別のシーンでは、障子越しに映った敵の影に向けて刀をひと突き。そのまま仕留めるといった、日本人にはおなじみ(?)の方法での暗殺も見られた。
光と影の表現も美麗で、蝋燭の明かりが壁に反射したり影が揺らいだりする様子はすごい。これらは“グローバル・イルミネーション”(透過、反射、映り込みなどをリアルに表現する)という技術が使われているとのこと。
弥助の戦闘
鎧を着た侍の敵にはアーマー値(?)があり、それを減らさないと本体へのダメージが通らない様子で、刀や金棒などの武器によってアーマー値を減らしやすいなどの違いがありそう(予想)。また、奈緒江の場合はアーマー値を減らしにくそう(予想2)。
敵を全滅させるときに、派手な演出とともにフィニッシュムーブが発生。確認できた数パターンの中には、敵の首をはねるものも存在していた。
また弥助が大立ち回りをくり広げると、周囲のオブジェクトが破壊されていく。本作では、あらゆるものが破壊できるとのことで、いろいろな物を壊して回るのもおもしろそう。隠れる場所もなくなってしまうかもしれないが……!
次世代の『アサクリ』を目の当たりに
最後にもうひとつ、印象的だったことがあったので書き加えよう。
デモプレイでは、フィールドの様子も見られた。とくに驚いたのは、木々の表現。風の方向によって枝のひとつひとつが揺れ、バサバサと葉の音が立体的に聞こえ、生き生きとした林や森が描かれている。周囲には風や草、虫や動物などの環境音が溢れ、天候とともに変化していく。
季節が変われば足音も変化し、鳴いている虫の種類も変わる。さまざまな事象が相互に作用し、渾然一体となってシームレスに流れていく。
これらは、次世代向けにパワーアップした自社製“Anvil”エンジンと、最新コンソールのパワーがなせるものだという。完全に最新機種向けに振り切って開発されている、次世代の『アサシン クリード』だとこの目で、肌で実感できた。
ぜひ今後の続報にも注目したい。