ユービーアイソフトより2025年3月20日にプレイステーション5、Xbox Series X|S、PCで発売予定のシリーズ最新作『アサシン クリード シャドウズ』。
物語の舞台は1579年、天下統一を目指す織田信長が名をはせた安土桃山時代の日本。伊賀の忍・奈緒江と信長に仕える侍・弥助のふたりの主人公それぞれの物語が描かれる。奈緒江と弥助のストーリーは一部は共通しているが、各々個別の物語やクエストが用意されている。
大坂(当時の表記)や京都など関西地方を中心に、当時の風土や景色がリアルに再現されており、広大なオープンワールドを探索できる。特筆すべきは、シリーズ初の完全最新世代向けの作品であり、季節や天候の変化、光と影など多彩な表現が可能になったことだ。これらがシリーズの醍醐味である隠密行動や暗殺にさまざまな影響を与える。
ここでは、本作のクリエイティブディレクターを務めるジョナサン・デュモン氏と、『アサシン クリード』エグゼクティブ・プロデューサーのマーク・アレクシ・コテ氏へのインタビューを掲載。新たな『アサシン クリード』の出発点だと語る本作について、気になる事柄を伺った。
マーク・アレクシ・コテ氏
『アサシン クリード』エグゼクティブ・プロデューサー
――『シャドウズ』は太古の時代から長く続く“アサシン”の歴史の中で、どのような立ち位置の作品でしょうか? あるいはどのような役割を持つのでしょうか?
マーク
とても興味深い質問です。前作では、”隠れし者”についての探求がテーマのひとつとなっていましたが、今作は再びアサシン教団とテンプル騎士団に回帰するゲームだと思います。そして、より現代的なタイプの『アサシン クリード』となります。西洋世界の外側を探求し、アサシン教団とテンプル騎士団の対立が、世界的な紛争であることを示すゲームのひとつでもあると言えるでしょう。
――本作がシリーズから継承している点と、革新的であるポイントを教えてください。
ジョナサン
『シャドウズ』では、『ブラザーフッド』や『2』のような古いスタイルのアサシンと、『オデッセイ』を起源とする新しいスタイルのアサシンを継承して、それぞれのあいだを橋渡ししています。また、戦闘システムやステルス性に磨きをかけ、より深く掘り下げている点に注目してほしいです。ステルスでは光と影の影響が反映されており、さらに洗練されています。
そして、世界は本当に“生きて”います。プレイヤーは、さまざまな季節や時間、非常にきびしい天候を目の当たりにし、それらに適応する必要があります。そのため、初期の『アサシン クリード』の古い要素や、ステルス、パルクールを取り入れて、垂直方向への動きがより強調されています。これらが新しく広大なオープンワールドのそこかしこに盛り込まれているのです。 <br />
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/34257/afac4ef5554f69012fe38d2f1d4e245a6.jpg?x=767)
――これまで本作の歴史観やアート表現について、いくつかの物議を醸す問題がありました。現在は一連の出来事をどのように捉えていますか?
マーク
そのおかげで私たちは学びを深くし、より丁寧にゲームを改善するようになりました。フィードバックに耳を傾け、改善に向けて真摯に取り組んでいます。私たちにはまだやるべきことがたくさんあると思いますし、これからも続けていきたいと思っています。ファンの皆さんやプレイヤーの皆さんが、『シャドウズ』の世界へのすばらしい旅に出てくれることを心から願っています。
――日本版音声と英語版の日本語音声では違いがあるとアナウンスされましたが、どのような観点から変更したのでしょうか?
ジョナサン
日本版の日本語音声は歴史ドラマに見られるような、その時代を感じさせる言い回しなどが用いられる場合があります。ただ、その中には日本語話者以外にはなじみがなく、ひと言では理解しづらい複雑なニュアンスを持つ言葉もあります。たとえば、挨拶のような。英語版の日本語音声では、プレイヤーのゲームプレイ体験を重視してもう少しわかりやすい現代的な言葉を使うなど、ローカライズのプロセスにおいて変更することもあります。
――開発していて、とくに難しかった点はどこでしたか?
マーク
本作は初めての完全次世代ゲーム機に合わせた『アサシン クリード』だと思います。日本の美しさを捉えるためには、ゲームエンジンを全面的に改修する必要がありました。同時に、そのための投資が必要であり、多くのイノベーションが必要でした。この点が、とくに苦労した部分でしたね。
――本作にはふたりの主人公がいます。それぞれの観点からストーリーを描くのには、どのような意図があったのでしょうか? また、ふたりの主人公を用意した理由は何でしょうか?
ジョナサン
最初は暗殺者に近い側面を持つ忍のファンタジーを中心に考えていました。そのキャラクターを主人公に据えて開発を始め、その後に侍のファンタジーの要素も取り入れたいと考えました。そこで、それぞれ長所と短所のあるふたりのキャラクターを登場させたいと思うようになったわけです。
ゲームプレイの観点からストーリーを練ったことで、彼らが非常に異なるプレイを見せるだけでなく、彼らの背景となる物語が語られるようになりました。それぞれのストーリーが、『シャドウズ』の世界観に融合することで、ふたりの異なる主人公が誕生したのです。視点だけでなく、バトルとステルスの2方向の遊びかたが生まれ、それぞれにダイナミックさを持たせようとしたのも非常におもしろかったです。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/34257/a2de40e0d504f583cda7465979f958a98.jpg?x=767)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/34257/a135007e7085979a7d5b41ce54c0e54d7.jpg?x=767)
――主人公の片方が現代編におけるプレイヤーの先祖(DNAを継承している)なのでしょうか?
マーク
本作では、過去のアニムス(※)とは仕組みが少し異なります。ネタバレするつもりはありませんが、少しだけ……。彼らは全体像の中でつながっているようなものです。ですから、プレイしているキャラクターがプレイヤー自身の先祖であるとは限りません。つまり、弥助や奈緒江をプレイしているからといって、彼らがあなたの先祖だということにはなりません。彼らは誰かの先祖なのです。彼らの記憶とDNAが発見され、その記憶には幅広い人々がアクセスすることができます。 新しいアニムスを通じて。
※アニムスとは、被験者のDNA内の暗号化された遺伝的な記憶を解除する装置のこと。これによって、祖先の記憶が3次元のバーチャルリアリティーに投影され、被験者はその中を探索できる。
――アニムスのお話がありましたが、本作には“Animus Hub”と呼ばれるシステムが実装されています。これはどのようなものでしょうか?
マーク
私たちは新規プレイヤーにとって、ゲームがより身近なものになるようにしたいと考えました。Animus Hubというシステムを通じて、『アサシン クリード』シリーズにとって非常に重要となる、現代のストーリーラインに新しいファンタジー要素を組み込みました。『シャドウズ』は、Animus Hubの出発点としての役割を持つタイトルです。
どのような系譜で『アサシン クリード』の歴史は動いてきたのか。それぞれの時代で何が起こったのか。Animus Hubでは、それらのタイムラインを知ることができますし、ゆくゆくはAnimus Hubから『オリジンズ』や『オデッセイ』、『ヴァルハラ』、『ミラージュ』などの各タイトルを購入したり、ゲームをスタートさせたりすることもできるようになる予定です。
アサシンたちが過去に行なってきたこと、そして未来(現代)に何をしてきたかを包含するもので、シリーズを通じたストーリーをつなぐ根幹として機能します。そして、今後のシリーズにも続いていくものです。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/34257/1058abae0dc372f4432cbea7fa123512.jpg?x=767)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/34257/e4bde0eb46b8f32ef4b4207f5344b4d4.jpg?x=767)
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/34257/86c3cbc8cde622a8c725d89a88bdcb96.jpg?x=767)
――ネタバレは避けますが、ゲームのオープニング時の映像はちょっとびっくりするような、怪しげな感じでした。本作をクリアーするころには、その謎は解決するのか、あるいは謎に近づくことができるのでしょうか?
ジョナサン
これは現代編の新しい出発点です。時間とともに発展するストーリー部分があるため、今後の複数のシリーズでも続きのストーリーが語られることでしょう。ここで目にするのは、長年のファンにとってすばらしく感じられる部分であり、新しい物語を予感できるはずです。また同時に、新しいプレイヤーにとっても非常に期待を持ってもらえるようなコンセプトになっていると思います。
――日本のプレイヤーのひとりとして、この世界を探索することは非常に楽しみです。本作には“観察”と呼ばれるシステムがありますが、これは探索部分でどのように機能しますか?
ジョナサン
本作を開発するにあたり、プレイヤーを機械的につぎの目的地へと誘導するようなシステムは避けたいと考えました。プレイヤーが自然と自分の冒険に導かれるようにしたかったのです。そのために“観察”という、周囲の様子がなんとなくわかるような、ナビゲートしすぎないシステムを導入しました。
世界は広いので苦労することもありますが、密偵から情報を得たり、旅を導くさまざまなツールがあります。道中では、いくつかのクエスの標的を発見するでしょう。同様にたくさんのアクティビティーがあり、あなたが倒すべき新しい小さな組織があり、あちこちにたくさんの小さな驚きがあります。
また、地理的な観点から見て本当に興味深かったのは、山々が神秘的で、背後に何かを隠しているような雰囲気があることでした。そこで、その裏側を見たくなる好奇心や、プレイヤーが世界のすべての面を認識できているわけではないことを示唆したかったのです。山の裏側に何があるのか? 森の中に何があるのか……? 興味深い旅になることでしょう。
マーク
私たちが実現したかったことのひとつは、日本の風景の美しさを知ってもらうために、プレイヤーに高い場所に登ることを奨励することでした。これは、『アサシン クリード』シリーズを通じて非常に重要なことなので、あらためて強調するのは奇妙に聞こえるかもしれませんが、近年のシリーズ作品では、この高さを感じるポイントが足りなかったと感じています。ですから、到達可能な場所を見つけ、観察を使って周囲の環境を確認し、興味を持って探索できるようにしたいと考えました。ゲーム側から語るのではなく、あくまで示唆にとどめることに重点を置いています。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/34257/a9a11768d2c2eea7c331011b06a7d4eb2.png?x=767)
――たしかに、姫路城の屋根から見下ろす風景は圧巻でした。これまでのシリーズに登場した敵の拠点や建物とくらべて、今作の城は大きく複雑だと感じました。城の規模は、ゲームの難度やプレイ方法へどのように影響しますか?
ジョナサン
ゲーム内には小さな城と大きな城があります。私たちは実際に日本を訪れて、城の大きさを見て非常に感銘を受けました。そして、私たちはこれらが本当に大きな要塞であることをゲーム内で表現したかったのです。
日本の城は非常に美しいですが、防御面でも非常に実用的です。城の中に潜入することは大きなスリルを伴う冒険であるという体験を感じてほしかったのです。城は遠くからでも視認できます。それは、プレイヤーが攻略すべき課題として、文字通り壁のある大きな要塞として際立っています。その感動をプレイヤーに感じてもらいたかったのです。
――日本のファンにとくに楽しんでもらいたいのはどんなところでしょうか?
ジョナサン
広大なオープンワールドに没頭し、季節を過ごしながら、つねに発見があると感じてほしいですね。ゲームエンジンを始めとし、私たちは技術に多くの改善を加えました。最新のゲーム機ならではのダイナミズム、生きた世界を見てほしいです。そこには開発チームのたくさんの情熱が込められています。
マーク
日本のファンの皆さんに、私たちが日本からどれだけ影響を受けたかを感じてもらえれば幸いです。『シャドウズ』の作中で、日本の歴史を細部にわたって完全に描き切ることはできないとわかっていますが、日本とその美しさを少しでも伝えられたらと思います。
『アサシン クリード』のファンや、『シャドウズ』でシリーズに初めて触れる新規プレイヤーの皆さんには、ゲーム内の探索の自由度や本作ならではの雰囲気を楽しんでいただき、すばらしい世界で語られる物語や、フィクションを楽しんでいただけることを願っています。