ワールド・ディレクター、デュモン氏が語る “19世紀のロンドンを構築する”ということ

そろそろ、ロンドン巡りを満喫されているプレイヤーのかたも、多くなってきた頃では? ということで、今回はロンドンの街作りをディレクションした、ユービーアイソフト、ケベック・スタジオのワールド・ディレクター、ジョナサン・デュモン氏のインタビューをお届けします。19世紀ロンドンのマップに込められた、遊びのコンセプトとは。

公開日時:2015-11-18 12:00:00

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▲ワールド・ディレクター ジョナサン・デュモン氏:本作のマップに関わる部分のゲームデザインを担当。

地区のアクティビティ

−−『アサシン クリード シンジケート』では、新たにロンドンの各地区を解放する、という要素が楽しめるようになりました。これが非常になんというか……やめられなくなる楽しさでした。

ジョナサン ありがとうございます。今回、わたしはワールド・ディレクターとして街を舞台とした遊びをディレクションしたのですが、その大きな要素のひとつが、プレイヤー自身がギャングを制して、ロンドンを手中に収めていくというものでした。

−−4種類の“制圧アクティビティ”をこなしていき、最終的に“ギャング・ウォー”に挑んで地区を制圧する遊びですね。

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ジョナサン そうです。“児童解放”では、その名の通り、その地区を所有する工場長を排除して、強制的に働かされている子どもたちを助けて解放しています。19世紀のロンドンでは、子どもも労働力だった時代なのです。これは自由を貴ぶ“アサシン教団”らしいアクティビティです。ですが、今度は“賞金稼ぎ”では、今度はアサシンは、ちょっと怪しげな探偵になります。ターゲットを生け捕りにするために頭をひねるのです。

−−生け捕りにするためには、かなり綿密な計画を立てないといけないシチュエーションも多くて、まさに“観察”するさまは探偵のようです。

ジョナサン そうですね。でも、“ギャングの拠点”や“テンプル騎士狩り”では、有名なテンプル騎士たちを色々な場所で排除していったり、ギャングのアジトを襲撃するなど、一転して行動的なアクティビティもあります。これらは、ダイナマイトで爆破したりできますから。

−−探偵のような遊びから、ギャングらしい派手な抗争まで。

ジョナサン そうです。『アサシン クリード シンジケート』では、プレイヤーはアサシンでもあり、ギャングのボスでもありますから。なので、こうしたアクティビティの最後には、“ギャング・ウォー”で大きなステージでギャング同士が戦い、暗黒街のボスと対決するのです。

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地区のコントラスト

−−こうした制圧アクティビティをこなしていくことで、だんだんと19世紀当時のロンドンの街を身近に感じられてくるように感じました。

ジョナサン “ホワイトチャペル”地区のような、スラムに代表されるギャングのアジトというのは、実際に現実のロンドンでも、古い中世の建物が残っている場所なんです。これらの場所は歴史的に正確であり、すべての地区に存在したのです。同様に、ゲーム中のロンドンでも、アジトは地区を支配して手にいれるために用意されています。

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−−そうだったのですか! 19世紀のロンドンについて、歴史や地理を徹底的に考証されたと伺っていましたが、アジトの位置には中世の建物が……。

ジョナサン 実際に取材でロンドンの街を、あちこち比較しながら歩いて検討したんです。ロンドンには多くのランドマークがあり、なおかつ象徴的な都市なので、ゲームに落とし込むためには、様々な決断をしなくてはなりませんでした。ゲームプレイをスムーズにしなくてはならないので、実際のロンドンからリサイズを行って調整を施すのですが、これがとても楽しかったが、取捨選択の決断は大変でした。例えば、“建築”の様式についても考慮しなくてはならないんです。“ウェストミンスター”地区を歩いてみると、異なる時代を代表する建物が10も15もあるのです。今回は、各地区で建物を3~4種類選んでフォーカスするようにしたのですが、やはり、地区によるコントラストが際立つようにするのが困難でした。

−−地区によるコントラストですか。

ジョナサン ええ。取材で初めてロンドンを訪ねて見学したときに、こうしたコントラストを感じて感激したんです。参考資料を見ているだけではわからない。実際にテムズ川に掛かる橋の上に来てみて、「ああ、こういう感覚なんだ」とわかる。ビッグ・ベンの鐘の音も、思っていたほど大きな音ではなかったし、全体に落ち着いた印象だったり。また、地区がコンパートメントのように分かれている。例えば“サザーク”のようなサウスショア(川の南側)は産業地区であることは知っていたのですが、実際に見てみると、北エリアの象徴的な“シティ・オブ・ロンドン”との、機能的な南エリアという明確なコントラストを見ることができた。こうした感覚を表現しなくてはならないと。

−−ロンドンを取材して感じたこの街ならではのコントラストを、ゲームで表現する。

ジョナサン はい。なので、ゲームでこの街を歩いていく中で、そうしたコントラストを感じてもらえたらうれしいです。やはりロンドンという街の歴史の重さを感じました。“セントジェームス・パーク”は“バッキンガム宮殿”近くという、ロンドンの中心部にありながらも、とても静かで落ち着いた場所だったりして。資料を見ていただけでは、想像もつきませんでした。……ああ、もちろん、パブでビールを飲むのも、楽しかったですよ(笑)。

“近代”の街を作りあげた手ごたえ

−−ロンドンと言えば“パブ”ですから。それは楽しそうですね(笑)。

ジョナサン ええ。しかし、やはり街を作るのはたいへんでした。広大なロンドンを構築するために、メモリやフレームレートは常に改善しなくてはならなかったのです。ですが、前作『アサシン クリード ユニティ』のベンチマークがあったので、最初からある程度のめどを付けたうえで、制作に臨むことが出来たのはとても助かりました。

−−『ユニティ』はフランス革命期のパリが舞台でした。

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▲前作にあたる『アサシン クリード ユニティ』は、1789年、フランス革命期のパリを、アサシン“アルノ・ドリアン”の視点で体験する。

ジョナサン ですが『シンジケート』では、シリーズで初めて近代が舞台となるので、馬車や機関車などの乗物の操作が気持ち良く出来るようにすることも難しかったです。そもそも、きちんとプレイヤーが乗りこなせて使えるものになっているのか、そして、ゲームプレイに繋がっているかなど、考慮すべき点が多くて。ですが、最初は難しかったのですが、めどがついてからはむしろ「これだ!」という感じでピタリとハマった感覚でした。こうした新しい要素を街中に配置したうえで、その楽しさを自分たちが求めるレベルに到達させるのは、かなりのチャレンジだったんです。

−−シリーズ初の近代が舞台ですから、新しいことだらけだったのですね。

ジョナサン ええ。街の作り方もこれまでとは異なりました。今までのシリーズでは、群衆は道の真ん中を歩いていましたよね。ですが『シンジケート』では、街は近代化されて整備が進んでおり、道路の真ん中には馬車が走っている。だから、人々は歩道を歩きます。こうした一見何気ない部分も、開発の初期にはうまく表現できなかったのです。ですが改善を続けていく中で、街の印象はかなり変わっていきました。デザイン・プロセスは難しかったが、成功したと思っています。

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『アサシン クリード シンジケート』特設サイト “Inside Syndicate 1868”

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