『紅の砂漠』血なまぐさい戦場を駆ける高揚感の後には虚しさが残る。自ら築いた屍を越えていけ。グラフィック以外から響く“リアル”
 上のサムネイル画像は戦闘後の1シーンだ。日光に照らされる丘はとても牧歌的なのに、敵味方の死骸がごろごろ転がっている。その意味を考えると言葉が詰まってしまう。

 東京ゲームショウ2025では『
紅の砂漠』を50分も体験できた。正直50分では足りない。ことアクションに関してはいちど遊ぶだけでは多くを試しきれなかった。しかしながら、序盤から中盤にかけてのクエストとストーリーの一部を体験して、本作が持つ魅力はしっかりと感じ取ることができた。

 本作はプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、Steam、Apple Macにて、2026年3月19日に発売予定のオープンワールドアクション・アドベンチャー。MMORPG『
黒い砂漠』の制作陣が手掛ける新作は、TGS2025で日本初となるプレイアブル出展された。試遊時間は約50分と、かなり長めだ。ブースには試遊台が100台ほど設置され、来場者はファイウェル大陸の戦場を存分に体験したことだろう。
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プレイヤーの“こう戦いたい!”に応えてくれる戦闘

 過去のレポートでも評されているように、『紅の砂漠』はアクションの多彩さが特徴。基本の操作は以下の通りで、ボタンの長押しや同時押しでさらに(L1とL2同時押しで武器のスイッチ攻撃など)多くの攻撃を出せる。

  • 左スティック:移動
  • 右スティック:カメラ操作
  • ○ボタン:回避
  • ×ボタン:ダッシュ(2回押し)
  • □ボタン:ジャンプ
  • △ボタン:パンチ
  • L1ボタン:ガード、ロックオン(2回押し)
  • L2ボタン:弓攻撃
  • R1ボタン:攻撃
  • R2ボタン:ヘビィアタック
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槍に武器を切り替えると、棒高跳びのような挙動で敵に蹴りを見舞える。
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L1とR1の同時押しで、敵の目をくらませる光反射。追加入力でスタミナの続く限り連撃をくり出せる。刃に光を反射させる超絶技巧である。
 アクションの多彩さがもたらすものは何か。それは“主人公クリフとして生きるプレイヤーのプレイング幅”である。

 その多彩“すぎる”と言ってもいい戦法やアクションは、プレイするうちに自分の戦い方を先鋭化させる。お気に入りの戦い方が見つかって、プレイヤーごとに“自分だけのクリフ”ができ上がっていく。

 操作方法が複雑なため、てきとうなボタン連打だけですべてのアクションを楽しむことはできない。かといってボタンを順番に押していくようなスキル回し感覚はなく、多彩なアクションをすべて使う必要性もない。

 それはつまり、プレイヤー自身が出したいアクションを選択する自由があるということだ。MMORPGで好きなジョブを選ぶように、対戦格闘ゲームでスタンダードキャラや投げキャラの好みがあるように、プレイスタイルに合わせたアクションがある。
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 ゲーム開始当初は初心者向けの動線としてアクション数は抑えられており、徐々に慣れていくことが可能。アクションが増えていく過程で、定番の連携が身に染み込んでいく。

 剣を槍を、倒れている敵すら武器として使う(投げつけたりジャイアントスイングで敵にぶつけたりできる)。両の手足を振るう。弓矢で離れたところから戦う。魔法を駆使する。仲間の支援を受ける。パリィやジャスト回避なんかもある。もちろん全部極めようとしてもいいし、どれかを多用してもいい。プレイしてみると、煩雑というより、自由度が高いというポジティブな印象だ。

 たとえば、筆者は『
龍が如く』シリーズの桐生一馬が使える“フィニッシュホールド”(打撃から流れるように投げ技を決める)が大好き。そのためか、「剣も槍も関係ねぇ!」とばかりに敵めがけて一目散に走ってラリアット(投げ攻撃の操作でくり出せる)をかましたり、連撃の締めを投げにしたりと、喧嘩っぽい投げアクションがとても手になじむ。自分流、グラップラークリフの誕生といったところだろうか。
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投げの衝撃派で周囲を吹き飛ばすことも。リアルさと外連味が共存している。
 なお、投げは状況に応じてさまざまなバリエーションがあり、全体的にプロレス技モチーフが多い模様。とくにプロレス技に明るいわけではないが、豪快な投げモーションが楽しく、アドレナリンが出まくり。ファンタジーの世界観でこんな動きをしていいの? という驚きもあった。
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ラリアットの躍動感がすごい。
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打撃には中国拳法のようなモーションも多数。これは肩口からの体当たり“鉄山靠”だろうか。
 投げを多用していると、「火に投げ入れれば環境キルも可能なのでは?」といった発想も湧いてくる。戦いの場を見渡したとき、かがり火が倒れ、周りの樽に燃え移る様子を目撃したからだ。

 試してみると本当に敵のひとりへ火が燃え移り、倒すことができた……これは、狂戦士にも策士にもなれるゲームのようだ。なお、取材時は担当編集者といっしょに「燃えるか……? 燃えるか……? 燃えたーーー!!!!!!」と盛り上がった。
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 全体を俯瞰的に見ても、『紅の砂漠』は「お前はどうやってこの戦場を生き延びる?」と語りかけにように、自由な攻略を楽しませてくれる。試遊で用意された戦場は広大で、クエストラインとして目標はあるものの、たどり着き方には多様性がありそうだった。

 迫りくる敵をひとり残らずせん滅していくもよし、馬を操り一騎駆けしてもよし。鏑矢を合図とした支援砲撃で敵陣を焼き尽くしたっていい。プレイヤーの「こう戦いたい!」に応えてくれる寛容さを感じ、その自由度に期待が膨らむ。
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 “戦い方の広さ”は、試遊版の最後に待ち受けるボスバトルでも健在だった。パリィを駆使して真っ向から打ち破る戦い方や、突き攻撃(×と〇同時押し)からの切り抜けや回避で背後を取る戦い方、そしてダウン中の相手に巨大な柱を叩きつける環境活用法など、複数のアプローチが用意されている。
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パリィで攻撃を弾き返すと、態勢を崩すことができる。
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突き攻撃を溜め、ボスの攻撃の間に差し込み、追加入力で切り抜けて背後を切る。大きな盾で前方の防御が堅い分、回り込めば一気に攻撃のチャンスだ。
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攻め続けることで発生する大きな隙には、巨大な柱を持ち上げて叩きつける、パワフルな一撃をお見舞い。
 数多くの要素によってプレイングに幅の出る本作は、他人が遊んでいるのを覗くのも楽しそう。クリフがどのように戦場を生き延びるのか、十人十色のプレイが生まれそうな予感だ。

激しい戦の後の静けさ

 Pearl Abyss独自の“BlackSpace Engine”で描かれる世界は色彩鮮やかだ。その美しさは同時に、ファイウェル大陸の過酷さ・残酷さをハッキリと筆者の目に焼き付けた。

 砲弾が飛び交い、武器と武器がぶつかり合う金属音が鳴り響き、辺り一面は煙と炎に包まれる。激しい戦場を駆け抜けたクリフを待つのは、終戦後の静けさ。

 勝利を知らせる狼煙を上げに行く道中は、木々や草花を鮮明に描写しているからこそ、人が残した破壊の跡がコントラストとなって映り込む。その“静”の一瞬はいまだに記憶の片隅から離れない。本作が追求する“リアル”は、なにもグラフィックだけの話ではないらしい。

 晴れやかな勝利の余韻には浸らせてくれない。死屍累々、屍山血河。その悲惨な有様こそが真の“戦争の跡”であると、静かに物語る。
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敵将の亡骸を背にすると、敵味方ともにボロボロの光景が広がっていた。
 征服感よりもどこか虚しさを感じるその道程は、『紅の砂漠』が描こうとしている“リアル”の一端なのだろう。賑やかなTGS会場だというのに、一瞬シンと静まり返ったように錯覚。「敵を倒した! 勝鬨だ!」と、テンションの上がる瞬間だけを切り取るのではない演出に、先ほどまで興奮しっぱなしだった脳みそが途端に冷えた。
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 “ゲームの雑魚敵”と記号的に捉えていた相手も、この世界では命ある人間として必死に戦っていたことを思い出す。乱戦を体験している最中に感じた敵の手強さが、この世界で生きる厳しさを表現している。
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 そして、慣れない操作で必死に戦っていたのは、クリフ(プレイヤー)も同じだ。ゲームとしての遊び応えと、世界を構築する“重さ”が相乗効果となって、50分にわたる激闘の間にかなり没入してしまった。実際、それほど時間が経っているとは気付かず、時計を見て驚いたほど。
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 今回の試遊で、アクションゲームとしての魅力だけでなく、世界観が大切なオープンワールドゲームにおける魅力の一端も十分に感じることができた。ファイウェル大陸での冒険は徐々に近づいている。2026年3月19日の発売日まで、楽しみに待ちたい。
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