『OPUS: Prism Peak』人生に疲れたおっさんが“写真”で記憶を紡ぐ。中年にバチバチにぶっ刺さるほろ苦アドベンチャーをプレイしたら、少しだけ前向きになれた
 40歳、バツイチ、勤め先は倒産。心機一転して始めたカフェもあえなく閉店。そして数日後には大好きだった祖父の葬儀が待っている……。

 いきなり重苦しい身の上話から始まったが、これは2025年秋に発売予定の新作アドベンチャー『
OPUS: Prism Peak』(『オプス:プリズムピーク』)の主人公“ユージン(声:三木眞一郎)”の境遇だ。

 開発は心に響く物語で高い評価を得るインディーゲームデベロッパーのSIGONO(シゴノ)で、対応プラットフォームは、Nintendo Switch2、Nintendo Switch、PC(Steam)。製品版は2025年秋のリリースが予定されている。

 本作は2025年9月25日~28日開催の東京ゲームショウ2025(TGS2025/25~26日はビジネスデイ)でも試遊出展中。本稿では試遊バージョンをプレイした感想をお届けする。
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世話しているつもりが、救われている。“おっさんミーツガール”という関係性の妙

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 本作の物語は主人公・ユージンが、交通事故をきっかけに不思議な異世界で目を覚ますところから動き出す。

 そこは人間がおらず、言葉を話す動物たちだけが暮らす幻想的な場所。ユージンはそこで、自分の名前すら忘れてしまったひとりの少女(声:市ノ瀬加那)と出会う。
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 冒頭でもふれたユージンの背景を簡単に記すと、とにかく不幸。幼いころから願っていた写真家になるという夢は叶えたものの、所属している会社が倒産。さらに妻とは離婚し、心機一転とばかりに始めたカフェも破綻。そこに追い打ちをかけるように、慕っていた祖父の訃報が。ユージンはその費用を捻出するため、幼少期から大切にしていたカメラも売ることになる。
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祖父とともに写真に収められた、笑顔がまぶしい少年時代のユージン。
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40歳のユージン。いろいろありすぎて表情が死んでいる。
  そんな、とにかく不幸な境遇が重なってからの異世界行きだ。さらにそこで謎の少女と出会うと聞くと、うだつの上がらないおっさんが異世界転生して無双する、ラブコメ色もある“なろう系小説”のような作品にも思えるが、それは間違いだ。……たぶん。

 というのも、試遊版を少しプレイしてみたところ、どうもこの世界はユージンの記憶と深く結びついているように見える。謎に満ちたワードやミステリー要素も多くあるものの、この異世界はユージンの精神世界と捉えるほうが自然だろう。このあたりの真相はぜひ製品版で確かめてみたいところだ。

 ともあれユージンは謎の少女と出会い、彼女を家に帰すため、行動をともにすることに。個人的にはこのシチュエーション自体が本作の核と思えたのだが、“おっさん×少女”、言うなれば“おっさんミーツガール”って、とくにおっさん目線だとものすごく惹かれる。

 すべてを失い、諦めることに慣れてしまった大人が、自分にはない純粋さや真っ直ぐさにふれることで、忘れていた何かを少しずつ取り戻していく。
 
 世話を焼いているつもりが、いつの間にか自分自身が成長させられているというか……疲れた中年にぶっ刺さる要素がとにかく満載なんだよな……。ゲームの内容以前に、このシチュエーションが気になったなら、ぜひTGS2025での試遊をオススメしたい。
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無邪気な少女&疲れたおっさんによる微笑ましいワンシーン。最高か?

“写真”を撮る。それは失われた記憶を繋ぐための儀式

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 この謎に満ちた世界でいったい何をするのかというと、それは“写真撮影”だ。

 異世界の動物たちは、少女と同じように記憶を失っている。彼らの記憶を取り戻す鍵が、ユージンが持つカメラというわけだ。
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 ただ、写真はただ撮ればいいというわけではない。たとえば駅にいる犬のキャラクターは実体が朧気で透けている状態だが、そのまま撮影しても意味はない。
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 犬を実体化させるためには、目を開いているタイミングでシャッターを切る必要がある。
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 「目をちゃんと見る」。このあたり、ユージンの過去とリンクしている雰囲気が濃厚で、ここではかつて故郷に置いてきた女性を彷彿とさせるシーンも差し込まれる。
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 相手ときちんと向き合うこと……人として当たり前のような所作だが、本当の意味で相手と向き合うというのは難しいものだ。ふと自分の人生を思い返してみても、相手のことや現実を直視できなかった自分もいる。

 本作にはこうした暗喩ともとれる表現が多く、ほろ苦い仕掛けも多い。ここもおっさんに刺さるポイントだろう。もちろん、自分には見事にぶっ刺さった。

 そうして撮影した写真を“神の火鉢”というスポットにかざすことで、ストーリーを進める鍵が手に入る。写真を撮る→“神の火鉢”でヒントを得ていくという流れが、本作の大まかなサイクルだ。
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 探索してヒントを見つけ、カメラで記憶を捉え、それを新たな道を開く鍵に変える。人生というフィルムを使い果たしかけていた男が、ふたたびファインダーを覗き、世界と向き合い始める。やさしいBGMも相まって、エモさがぎゅっと濃縮された作風と言えるだろう。

この切ない旅路の一端にふれてほしい

 今回プレイできたのは30分ほどだったが、ノスタルジーが凝縮された世界観の一端は十分に感じられた。木々や花、山といった自然も丁寧に作り込まれており、世界観とも非常にマッチしている。

 ユージンの人生は折り返し地点だが、近年は限りなく低空飛行で「そりゃあ死んだ顔になるよね……」と妙なシンパシーも感じた。彼がどうやって自分の人生を取り戻すのかも気になるところだ。

 また本作をプレイしての所感だが、恥ずかしくも自分自身と改めて向き合うきっかけになってくれそうな気がする。物語の真相には至れていないが、本作はユージンを通して、プレイヤーにやさしく問いかけてくれている気がするのだ。「諦めていないか?」「あのときの記憶から逃げていないか?」と。

 それは苦しくもきびしくもある問いだが、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろネガティブな気持ちよりも、プレイ後には少しだけポジティブになれた気さえする。その理由は不明だが、本作の前ではなぜだか素直になれたのだ。

 今回の短い試遊版ではそうした感覚を得られたが、製品版ではプレイ後、クリアー後にどのような感覚をもたらしてくれるのだろうか。清涼感とともにエンディングを迎えることになるのか、感動で胸がいっぱいになるのか、自分を見つめ直して再スタートを切る勇気がもらえるのか。

 そこに何が待っているのかわからないが、きっと、いや絶対に後悔することはない感覚をもたらしてくれるだろう。製品版のリリースが楽しみだ。
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なお、謎の少女はユージンのカメラに映らない。これが示すものはいったい……?
 くり返しになるが、本作はTGS2025で試遊出展が予定されている。もし「最近ちょっと疲れたな」と感じているなら、ぜひプレイしてみてほしい。人によっては主人公ユージンの境遇に、どこか自分を重ねてしまうかもしれない。
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