『マリオカート ワールド』すべてをゼロから作り直す。ウシもトコトコも設定から見直し、『マリカー』世界を再定義。「レインボーロードは開発チームの想いの結晶」開発秘話をインタビュー
 2025年6月5日、新ハードNintendo Switch 2 のローンチタイトルとして発売された『マリオカート ワールド』。広大なひとつの世界を舞台に、シリーズ最多の24台による大陸横断型レースがくり広げられることが特徴。

 新要素も豊富で、ノンストップの勝ち残りレース“サバイバル”をはじめ、“ウォールラン”や“レールスライド”といったアクション、ウシやガマネー、ガボンといったキャラクターも多数追加されている。

 プロデューサーである任天堂の矢吹光佑氏にインタビューを実施。フリーランやコース制作の裏側、サバイバルモードを実装した経緯、キャラクターたちの暮らしぶりなど気になる点を聞いてみた。
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矢吹光佑

『マリオカート ワールド』プロデューサー。これまで『マリオカート8 デラックス』や『ARMS』のプロデューサーを務めてきた。

自分たちのやりたい『マリオカート ワールド』がSwitch 2で実現できた

――“ワールド”というナンバリングから離れたオープンワールドでの挑戦となった本作ですが、発売されたことに対しての思いや発売後ではプレイヤーからどのような反響がありましたか?

矢吹
 開発期間がとても長かったので、そこからようやく抜け出して発売できてよかったです。そしてプレイヤーの皆さんが実際にプレイしている姿が眩しいというか……。楽しんでくださっているのが伝わってきて、本当にありがたいですね。

 “オープンワールド”という言葉を時々聞くんですが、じつは開発中あまりその言葉を使っていませんでした。人によってイメージがブレてしまうんですよね。

 なので、あくまで“マリオカート”であることを軸にしながら、これまでとはちょっと違う、地形や世界の仕組みを新しくしたタイトルを作るぞっていう意気込みで開発を進めていきました。いま振り返ると“大規模なゲームになったな”と改めて感じますね。
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フリーランではコースを飛び出して、広い世界の陸海空を自由に走り回れる。
――開発期間が長くなる中で「おそらくSwitch 2のローンチタイトルになるだろう」という話が見えてきたとき、開発チームとしての気合いが入ったり、チーム全体の雰囲気に変化はあったのでしょうか?

矢吹
 もちろん、雰囲気が変わりました。当初はNintendo Switch向けに開発を進めていたのですが、開発中にチームで作りたかったものがNintendo Switchの処理能力では収まりきらないことが徐々に見え始めていました。何かを削らなければならないという判断がかなりつらかったです。

 そんなタイミングで、新しいハードへの移行という話が出てきたのはうれしいことでした。ローンチタイトルになるかどうかは開発チームで決められることではありませんが、“新しいハードに向けて作る”というのは、いち開発者としてとてもワクワクしましたね。

――各地のランドマークがコースとともに内包されていますが、最初からコースありきで作られたのか、それともまず個々の世界観や地形があってそれをつなげていったのか。その順番や全体の構想をどのように展開していったのでしょうか。

矢吹
 両方のアプローチがありました。コースを先に作ってから周辺の地形やランドマークを作り込んでいくという流れもあります。逆に「ここに山があるから、そこに合わせたコースを作ろう」といった地形ありきの設計もあります。

 どちらの方法も取り入れつつ、状況に応じて柔軟に切り換えながら開発を進めていきました。

――地形やコースのつながり部分を調整するのはたいへんだったのでは?

矢吹
 つながっていることでの難しさはあります。「ここの道がちょっと走りづらいから直そうか」となった場合、その変更がほかのエリアにも影響してしまうんですよね。そのため「この修正、大丈夫かな?」と各所に確認しながら調整していく必要があり、そこは苦労しました。

――従来の1コース完結型とはまったく違う造りですよね。

矢吹
 そうですね。ただ、そのあたりの制約というのはプレイヤーの皆さんには関係のないことですから。できる限り“気持ちよく走れること”を大事にして、いろんな角度から突き詰めながら作っていく、そんな開発の進めかたでしたね。

――“DKうちゅうセンター”や“ハテナしんでん”などグランプリの後半コースって、全体的に“高く上っていく”構成のものが多い印象がありますよね。コースの盛り上がりのバランスはどのように調整していきましたか?

矢吹
 コース自体も、いろんなバリエーションを持たせたいという意識で作っていました。

 たとえば、高く上ってから一気に降りるコースだったり、水の上を走るコースだったり。そういう演出は、グランプリの構成を考えるうえでも意識しています。とくに後半は「挑戦しがいのあるコースにしようか」という感覚で配置を決めていきましたね。
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――個人的にはレインボーロードに向かうときの音楽の盛り上がりに鳥肌が立ちました。

矢吹
 “レインボーロード”はこだわりの中のこだわりというか、開発チームの想いの結晶のような場所です。

 最後にプレイヤーがそこに向かう中で、『マリオカート ワールド』という広い世界があったからこその特別感をしっかり感じてもらえるように意識していますね。

 言葉で説明しているわけでもありませんが、プレイヤーの皆さんが“何か”を感じ取ってもらえているようでありがたいです。
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空へと舞い上がってレインボーロードへ。高まります。本作のレインボーロードはスゴかった……。
――開発中に「やっぱりこのコースを最後に持っていきたい」など、コースの順番を入れ換えることはありましたか?

矢吹
 開発中盤あたりまでは、そういった調整も確かにありましたね。ただ、道を少し変えるだけでも全体に影響が出てしまいます。ある程度進んでからはコースの配置をどうするかというよりも、どうすればもっとよくできるかというフェーズに移っていきました。

――その“もっとよくしていく”ためのチューニングとは具体的にはどういった部分ですか?

矢吹
 実際にクルマを運転したり自転車に乗ったりするときって、先が見えにくいと、不安になるじゃないですか。

 それってゲームでも同じだと思うんです。つぎにどっちに曲がるのかわからないまま進むと気持ちよくない。逆に道が見えていたら「こんなラインを走りたい」とイメージできて、その通りに走れたときすごく気持ちいいんですよね。

 だから「ここ、コースの先が見えづらいんじゃない?」というのは、よくチーム内で話していましたし、そういう部分を改善していきました。何度も試行錯誤して、少しずつ磨いていく作業のくり返しでしたね。
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何気なく滑空しているが、その先のカーブがマップを見なくても直感的にわかる。
――レースしていてどこに進むかがわかりやすかったですし、印象的なシンボルが見えてくるとワクワクしました。この感覚はこれまでのシリーズにはなかった気がします。

矢吹
 『マリオカート』は忙しいゲームですから、初めて遊んだときにすべてを感じ取るのは難しいと思います。くり返し遊んでだんだんと地形や世界の構造がわかっていくような、そういう造りになっています。

――新要素として“サバイバル”モードが登場しました。遊んでみると、チェックポイントを通過ができないと即脱落のスリリングさ、アイテムで一発逆転な爽快感が楽しくてハマっています。このおもしろさはどのようにブラッシュアップしていきましたか?

矢吹
 広い世界を使った“大陸横断型”のレースは、今回の新しいフィールドを活かすうえで、真っ先にやってみたいことのひとつでした。ただ、長いだけのレースって、途中で「もう勝てないな」と諦めてしまう人も出てきてしまうんですよね。

 単に長距離を走るだけではなく“途中で脱落者が出る”というチェックポイントのルールを入れて、レースの中に段階的な盛り上がりを作ろうということになりました。

 そこからはチェックポイントは何個くらい用意すればいいのかといった、いろんなルールを検証していき、最終的にいまの形にまとまったという流れですね。

 『マリオカート』シリーズで、レースのルールをひとつ追加するというのは、前例がほぼありません。開発チーム内で「そこまでやる必要があるのか?」という議論を何度も重ねて、結果「これはやるべきだ」と判断しました。

 実際にやってみてわかったのは“チェックポイントで脱落しても盛り上がる”ということです。「これは開発チームだけがそう感じるんじゃないか?」と不安ではありましたが、世界各地で体験会をした際にチェックポイントの通過、脱落の場面で会場がいちばん盛り上がっていたんです。それを見て「やっぱり作ってよかったな」と感じました。
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アイテムはすべて一から作り直し。ハプニングや意外性が連続する体験へ

――『マリオカート ワールド』の混沌としたレースのなかでアイテムは重要な役割を担っていると思います。おなじみの“サンダー”や“キラー”に加えて、新アイテムの“アイスフラワー”なども登場しました。新アイテムはどういった基準で選んでいったのか、また既存アイテムはどのような調整をしたのでしょうか。

矢吹
 すべての要素をゼロから作り直しています。“こうら”ひとつとっても、大きさ、スピード、当たった挙動、当たってから何秒動けなくなるのかまで再設計しました。

 『マリオカート』は、いろんなことが起きるゲームにしたい、というのが根本にあります。今作でも、 「えっ、まさかこんな展開になるなんて」というようなハプニングや意外性が連続する体験を目指しました。

 たとえば、"カメック"の魔法で、ドライバーがガボンに変身させられたり、コース上に大量の鉄球(シューリンガン)が出現したりと、予測不能な出来事が起こります。また、“ハネ”のように大胆なショートカットが可能になるアイテムも用意しています。
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――“ハネ”の復活はうれしかったですね。『スーパーマリオカート』の“おばけぬま”でよくショートカットしていたことを思い出します。広い世界で自由に進めるようになったからこそ、採用されたのでしょうか?

矢吹
 いちばん大きかったのは「ハネを復活させたい」という熱意ですね。そして「ハネがあれば、こんなことが起きるんじゃないか」、「あんな遊びかたもできるんじゃないか」といったように、プレイ体験の幅がさらに広がると感じたのも理由のひとつです。

 とはいえ、ハネは使いどころが難しいアイテムでもあるんです。たとえば、うっかり使ってしまいゲートに激突して順位を落とす……なんてことも。そういった難しさも含めて、おもしろさを生み出すアイテムだと思っています。
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――“チャージジャンプ”という新システムもありますよね。ハネの採用とチャージジャンプの追加は密接な関係があったんでしょうか?

矢吹
 それぞれ独立して開発を進めていました。ただ結果的に、チャージジャンプは従来のドリフトなどで使っていたミニジャンプよりも少し高く、遠くまで飛べるようになっています。ハネはそれを上回るジャンプが可能なので、ちょっと“近い役割”を担っていますね。

――今回の“ウォールラン”や、復活したハネを使うことで多様な走りかたができるようになったと思います。「このショートカットは完全に予想外だった!」というような動きをするプレイヤーはいましたか?

矢吹
 壁やレールの位置などは、制作の段階でしっかり「ここからここへトリックをつなげよう」と考えて設計しています。

 ただ、皆さん本当にすごいですね。あっという間にコースの構造を見抜くので。テクニックを披露し合っていて、その様子を見るたびにありがたいなと思いつつ「早い!」と驚かされてばかりです(笑)。

――開発者目線で仕込んであるけど見つけられていないルートなどはまだまだありますか?

矢吹
 ステージ内のギミックなどは、かなり見つけられてきていると思います。ただ、コースとコースのあいだにもいろんな仕掛けを用意しています。コース数やバリエーションが多いこともあって、まだそこまでじっくり練習したり、遊び込んだりしている方は少ない印象ですね。
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キャラクターはルーツからしっかり見直し再調査。2D時代のイラストや設定資料も参考に

――カメックの魔法によって新キャラクターが増えます。ノンプレイアブルキャラクターだったウシを採用したことをきっかけに、そこから「じゃあ、カメックの魔法でもどんどん増やしてしまおう!」という流れだったのでしょうか?

矢吹
 その視点もありますし“おジャマキャラクターを生み出すアイテムを作ってみよう”という別の施策もあって、そのふたつがちょうど噛み合った感じですね。

 少し技術的な話になりますが、今回の広い世界を実現するために、プレイ中にデータ(遠くの地形)をつぎつぎと読み込んでいく仕組みを採用しています。

 つまり、ゲームの途中でも新しい衣装やキャラクターを読み込んで表示することが可能になったということでもあるんです。仕組みを根本から変えたことで、いままでできなかった仕掛けを実現できるようになりました。

――ウシやサンボが使えるようになったのが新鮮で『マリオカート ワールド』をきっかけに彼らのファンも増えたような気がします。もともと『スーパーマリオ』シリーズでは、マリオに襲いかかってくる敵キャラクターだったのが、プレイアブルになるだけでこんなに印象が変わるんだなと。

矢吹
 「ウシって、かわいいよなぁ」って自分たちの中でも思っていました。実際にドライバーとして作ってみると「本当に受け入れられるんだろうか……?」という不安も正直ありました。だからこそ、あれだけ大きな反響をいただいて、実際に皆さんに使っていただけているのは本当にうれしいです。
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――個人的にちょっと気になったことが……。カニやガマネーってカートに乗っていますが、ハンドルを握ってないじゃないですか(笑)。ああいったキャラクターたちはどういう仕組みで車体をコントロールしているんでしょうか?

矢吹
 制作チームの中で、一応それっぽい説明を付けてあるんですけど……。それを公にしてしまうと、なんだか夢が覚めちゃう気もしています。

 なので、きっと何かしらの仕組みがあるんだなくらいに、皆さんの想像におまかせできればなと。でも、手でハンドルを握っていないように見えますけど、プレイ中あまり違和感なくプレイしていただけているんじゃないかなとは思っています。
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――新たにプレイアブルになったキャラクターたちは、“ダッシュフード”を食べても外見が変わるわけではなくて基本的にそのままの姿で走っていますよね。たとえば帽子を被るとか、何か見た目にちょっとしたアップデートがあるとさらに愛着が湧くかなと思っていて。そういったビジュアル面の拡張について、今後検討していますか?

矢吹
 今後のアップデートに関しては、現時点で話せることはないのですが……。ウシやサンボについて、開発側としては「そのままの姿で広い世界を駆け回るのがいちばん魅力的だよね」と思ってます。

 一方で、ヘイホーに関しては長年『マリオカート』シリーズでプレイアブルキャラクターとして登場しています。ときにはスノーボードをしていたり、スキーをしていたりといろんな姿で活躍してきたキャラクターなんですよね。 開発チーム内でも「彼は装備や小道具を使いこなすのが得意なキャラクターなんだろうな」という共通認識があって、そういった個性の幅も楽しんでもらえたらと思っています。

――いろんな任天堂ネタが各所に散りばめられている印象もあります。たとえばロボットのバイクとか、懐かしいゲームボーイ時代のネタなんかを見つけて喜んでいる往年のファンの方も多いと思うのですが、そういった仕掛けも意図的に入れているのでしょうか?

矢吹
 すべての要素を“ゼロから作り直す”という話を先ほどしましたが、キャラクターについても、ルーツからしっかり見直しました。3Dモデルだけじゃなく、2Dのイラストや設定資料なども含めて再調査しています。

 その過程で、当然ながら当時いっしょに登場していたおジャマキャラクターや演出なども掘り返すことになります。開発チーム内にはいろんな世代のスタッフがいますので、ゲームボーイ世代のメンバーは「懐かしい!」と感じながら作業し、若い世代のスタッフは「えっ、こんなキャラいたんですか!?」と驚いたりなんかも。

 “トコトコ”なんて、ヨッシーよりも前に登場したキャラですからね。そういった発見や会話がチーム内でもいい刺激になっています。
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FCロボットバイク。
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トコトコの初登場は1989年発売のゲームボーイ用ソフト『スーパーマリオランド』。
――懐かしい作品からのアレンジした楽曲もたくさんありましたが、そういう理由だったのですね。

矢吹
 『マリオカート』に登場するキャラクターたちが過去に登場したシリーズの楽曲も収録しています。フリーランの楽しみかたのひとつに音楽をかけながらドライブをするというのがあるので、皆さんによろこんでいただけたら作った甲斐があります。

――メニュー画面をそのままにしているといろいろな音楽が流れますよね。ここでは全曲がランダムで流れているのでしょうか?

矢吹
 すべてではありませんが、たくさんの曲が流れます。ドライバーが走る地域や時間帯で曲も変わります。結果、置いておくだけでもいろんな音楽が楽しめて、うれしいメニュー画面になったかなと。

――メニュー画面から+ボタンひとつでそのままフリーランに行けます。このスッと遊びに行ける導線も開発者としてこだわったポイントだったんでしょうか?

矢吹
 グランプリやサバイバルを遊ぶときは「よし、やるぞ!」と、ちょっと気合が必要じゃないですか。でもフリーランは、もっと日常的にふらっと気分転換に走ってもらえる場所にしたかったのが狙いですね。
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メニュー画面ではキャラクターたちが各地をドライブ中。+ボタンを押すと。
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メニュー画面と地続きで遊べてしまう。

スケーター開発者がこだわったカートでのスケボー的体験

――『マリオカート ワールド』では自由に走り回れる世界が広がっています。任天堂ではすでに『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』など、いわゆる“オープンワールド”と呼ばれるゲームを手がけていますよね。そういった作品のノウハウが、開発にも活かされた部分はあったのでしょうか?

矢吹
 技術面ではプログラマーどうしで「どうすれば効率よくマップを読み込めるか」といった情報共有や、アート面でも「ここは気をつけたほうがいい」みたいな話はしていました。

 ただ、『マリオカート』は“カートに乗って走るスピード感のあるゲーム”なので、参考にしてもそのまま活かすことはできません。操作感もぜんぜん違いますし、細い路地裏を作ってもカートでは入れません。そのあたりの制限も含めて『マリオカート』の世界をどう作っていくのか突き詰めていきました。

――先日公開された“開発者に訊きました:マリオカート ワールド”にて、プランナーの軸丸さんが「スケートボードやスノーボード、BMXといったエクストリームスポーツを参考にした」とコメントをされていました。遊んでみて、スケートボード的な楽しさをすごく感じました。開発チーム内でもそういったカルチャーを共有したり、実際に体験したりするようなことがあったのでしょうか?

矢吹
 いろいろなスポーツを参考にしましたし、実際に遊んでいるメンバーも多かったですね。昼休みになると開発チームが入っている開発棟にある外の広場などでスケボーや自転車に乗ってるスタッフもいます。

 とくに今回、マシンの操作まわりを担当したプログラマーが、車はもちろん、スケートボード、スノーボード、サーフィンなどが大好きな人でして。操作感や気持ちよさの部分は、そういった体験をもとにどんどん作り込んでいけました。
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カートやバイクでスケートボード的な気持ちよさが味わえる。現実にあったら最高なスケートボードパーク的なスポットがたくさんある。

関連リンク:
開発者に訊きました:マリオカート ワールド

――フリーランを走っていると、ヘイホーやヨッシーの服装から「ここで暮らしてるんだな」とキャラクターたちの“生活感”を感じる瞬間が多くて驚かされます。ただ、うっかりぶつかってしまったとき、ちょっと申し訳ない気持ちにもなったりして……(笑)。ああいう場面でも平和な衝突になるよう、気をつけていたんでしょうか?

矢吹
 『マリオカート』の世界では、たとえ爆発に巻き込まれても、雷に打たれても、みんな無事というのが基本なんです(笑)。

 安心して遊んでいただきたいので、たとえば「クルマでキノピオにぶつかったらどうなる?」みたいなことも、ひとつひとつ実装して検証しています。その結果“ぽよん”と跳ねるくらいのリアクションが、見た目もかわいらしくて、ちょうどいい塩梅なんじゃないかということになりました。

 そうやって細かく検討を重ねていく中で、「じゃあ『マリオカート』の世界では何が起きて、どこまでOKなんだろう?」という、“この世界のルール”みたいなものが自然と見えてくるようになったんです。
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――フリーランやレース中、キノピオが小さなパトカーに乗っているのを見かけました。プレイヤーが危険な走りをしているとパトカーが追いかけてくるようなゲームもあります。本作では、ドライバーたちがけっこうやんちゃな走りをしているのに、この世界のパトカーのキノピオは寛容すぎるというか……。もしかして、彼らって交通の取り締まりとは別のお仕事をしているのでしょうか?

矢吹
 “『マリオカート』の世界はどんな世界なのか?”というところまで立ち戻ると、あれだけ毎日街中で大騒ぎのレースが行われているわけですから、そもそも交通ルールが私たちの世界とはぜんぜん違うんだと思います。

 キノピオたちにとっては、あの状況が“日常”なんですよね。パトカーに乗ってはいますけど、取り締まるっていうよりは……まあ、正直ちょっとヒマかもしれません。
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――パトカーがヒマな世界はいいですね(笑)。今作では大型トラックや船などに乗り込んで操作できますが、ほかの乗りものに乗れる仕組みはどのような発想から生まれたのでしょうか?

矢吹
 あれだけたくさんの乗り物があって、広い世界や海もあるわけですから「一時的に操作感を変えてみよう」っていうのは、自然な発想として出てきました。

 そこに「じゃあ、大きなトレーラーやクルーザーに乗れるようにしてみようか」といったアイデアが加わって「いっそヘリコプターにも乗っちゃう?」みたいなのをノリノリで試していった結果、いまのような形になりました。

 いくつかのレースでは、実際にその乗り物に乗り込んでライバルを蹴散らすこともできます。UFOはレースに出てきませんが、フリーランでは好きな場所に行くことができます。
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――ウシがUFOに吸い込まれるPスイッチのミッションがあります。あの“キャトルミューティレーション”的な演出、めちゃくちゃ笑いました。

矢吹
 もう、何も言わなくても、いつの間にかできあがっていました。やっぱりやりたくなっちゃうんですよね。どれだけ伝わるかは正直わからないんですけど、スタッフの中では人気のネタです。
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――Pスイッチのミッションについて、初見でも“青コインを集めろ”みたいなシンプルなものはクリアーできたりするのですが、逆に10回以上挑戦してもクリアーが難しいものもあったりして。こういった難度の幅や調整は、どんな方針で決められているのでしょうか?

矢吹
 開発チームの腕の立つメンバーが「これは少しミスしちゃうかも」っていうぐらい、難度の高いミッションもあえて混ぜています。

 ただ、それも含めて「いろんなバリエーションがあることが楽しい」と考えていて、全部が全部クリアーできる必要はないのかなと。

 いまの時代「これクリアーできたよ!」ってSNSで共有したり、友だちに見せたりできるじゃないですか。そういうコミュニケーションのきっかけになればうれしいです。一方で、ほとんどのミッションはそこまで難しくありませんので、気軽に挑戦してみてください!

膨大な看板やステッカーをデザイン。キャラクターや世界観をより深くする楽しい仕事

――フリーランやレース中に“ヨッシーズ”に寄ると、ドライブスルーのような感覚でワクワクします。フードの種類もパンケーキやハンバーガーなどラインアップが豊富でびっくりしました。いつか、コラボカフェとかやってくれないかなって期待してます!

矢吹
 つい寄りたくなっちゃいますよね。止まって買いものするみたいな形だと、ちょっとゲームのテンポ感に合わないので、ドライブスルー形式にしました。

 コラボカフェに関しては、あくまでゲーム制作側の立場なのでそこまで言えませんが……もし現実になったらうれしいですね。

――フードは各地域のイメージや文化をデザインとして取り入れているのでしょうか? 『マリオカート』ならではのアレンジが入っているようにも感じたので。

矢吹
 “地域を走る楽しさ”のひとつとして、各エリアに合いそうなフードを用意しようという意図がありました。ただ、寿司やたこ焼きなど日本の食べものは種類が増えてしまいましたね。
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――街中の看板やステッカーのデザインにも強いこだわりを感じました。まるで『マリオカート ワールド』の世界に、実在する企業やブランドが存在しているかのようです。そういった表現はどのような意識で設計されていたのでしょうか? 

矢吹
 街なら街、山なら山、牧場なら牧場らしい雰囲気を出すために看板やステッカー、ちょっとした造形物のひとつひとつでその場所に“いる”という感覚を高めています。

 テキストは基本的に英語ですが、海外チームにも意見をもらいながら「どんな文言がいいか」、「どのキャラクターとどう結びつけるか」などを決めていきました。

 ただ、ひとつひとつをバラバラに作っていたら世界としてつながりません。たとえば、“トロフィーシティ”には“おばけシネマ(英名:BOO CINEMA)”の建物がある、というように、全体を見渡しながら、どこにどんなお店があるのか、どんな広告があるのかといったことを合わせて作っています。そうした積み重ねが、キャラクターや世界観をより深く考えるきっかけにもなりました。
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――過去作にも看板や装飾はありましたが、今回はとにかくデザインの作業量が圧倒的だったのではないですか?

矢吹
 倍どころじゃなかったですね。“世界を作る”というのは、そういうことも含むんだとチーム全体が認識していましたし、ある意味ではいちばん楽しい部分でもありました。たくさんのメンバーが協力しながら“手作り”していくような感覚です。
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――世界の細部が作り込まれているのでフリーランでフォトモードがはかどります。どういったきっかけで取り入れた機能でしょうか?

矢吹
 フォトモードが正式に用意されたのは、開発の終盤に差しかかったころでした。それまでは開発ツールを使ってスタッフどうしでいろんな場所の写真を撮って共有していました。「こんなところにガボンで行ったよ!」みたいなやり取りですね。

 それがすごく楽しくて「プレイヤーにも届けたいよね」という話になったのが、フォトモード実装のきっかけです。走る、音楽を聴く、時々何かを見つける。そういうゆったりした日常の中に、写真を撮る行為がマッチしているかと。フレンドといっしょに撮る写真は、ひとりで撮るのとはまったく違ったよさがあるので、ぜひいろんなシチュエーションを試してもらえたらなと思っています。
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――最後にすでに遊んでいるプレイヤーと、これからプレイする予定の方に向けてひと言メッセージをお願いします。

矢吹
 すでにプレイしてくださっている皆さん、本当にありがとうございます。今回の『マリオカート ワールド』は、とても広い世界で、数多くのルートがあります。きっとまだ知らない場所もたくさんあると思いますので、ぜひいろいろな場所を走って発見してほしいです。機会があれば家族や友だちを誘ってレースを楽しんでもらえればなと思います。

 そして、これからNintendo Switch 2を手にする方もたくさんいると思います。『マリオカート』は序盤で差がついても追いつけるゲームです。いまからでも、1年後でも、2年後でも、まったく遅くありません。Nintendo Switch 2と同時に開発を進めてきたタイトルとして、ハードとの相性はバツグンだと思いますので、ぜひ手に取って遊んでいただけたらうれしいです。
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