『The Cube』インタビュー。アトミックハートのスピンオフは、空に浮かぶ巨大立方体の上でバトルするMMORPGシューター【Summer Game Fest 2025】
 ソヴィエトパンクなレトロフューチャー世界を舞台にした一人称視点アクションアドベンチャーゲーム『アトミックハート』。そのスピンオフ作として『The Cube』が発表された。

 本作はPCおよび家庭用ゲーム機向けにリリース予定で、発売時期は未定。ゲームエンジンはUnreal Engine 5を使用するとのこと。
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回転する巨大構造物“キューブ”に飛び込め

 本作はMundfishのデビュー作である『アトミックハート』と世界観を共有する“アトミックユニバース”の作品として、その幅を広げるものとなる。

 その中心となるのは、空中にたたずむ巨大な立方体型の浮遊構造物“キューブ”。各面が大規模なフィールドとなっており、さらに全体が数列に分かれて回転して変形するという、奇想天外な代物だ。
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 キューブは世界を襲う危険な現象の中心となっており、プレイヤーは人類を救うためにその中に飛び込んでいくことになる。その核には秘密の方程式が隠されており、解読できれば人類を救えるが、失敗は絶滅を意味するという……。

 というわけで公開されている画像等でも、キューブの面なのだろう地面が裁断され回転している中で敵と戦っている様子が見られる(恐らくキューブには重力が発生していて、その面に立つことができるのだろう)。

 Mundfishではこの分割して回転している環境の中での探索やバトルを実現するため、“スプリットレンダリングシステム”と呼ばれる描画の仕組みを開発したそう。
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 気になるゲームジャンルだが、イメージを掴むために参考として挙げられているゲームには『Destiny』や『The Division』などのシリーズや、『Warframe』、そして『モンスターハンター』シリーズなどがあり、成長要素のある協力プレイ型のゲームプレイがメインとなってきそう。だが本誌で行ったメールインタビュー(後述)では、「従来のPvE型の協力ゲームとも違う」とのコメントもあり、実際どんな感じになるのか気になるところ。

 また「果たしてあなたはもう1ターン生き残ることができるのか?」というキャッチフレーズからは、何らかの“ターン”をひと区切りに進行していくことがうかがえる。一方で成長要素については「たとえ失敗しても」それが無駄にはならないと語られており、継続的なアップグレードとカスタマイズでキャラクターを強化していけるようだ。
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メールインタビュー: 脱出シューターでもバトロワでもない、新しいMMORPGシューター

――マルチプレイのアクションシューティングとしてどんなタイプのプレイ体験を期待できますか? PvEの協力シューター? アトミックハート版のバトルロイヤルでしょうか? それとも脱出シューターに近いですか? ソロでプレイできるのでしょうか?
Rob Bagratuni
 『The Cube』は上記すべてに当てはまりません。バトルロイヤルでもなく、脱出シューターでもなく、従来のPvE型の協力ゲームとも違いますね。探索、成長、そして絶えず変化する世界でのダイナミックな遭遇を中心としたマルチプレイのRPGシューターです。

 ソロでプレイすることもできますが、世界自体は共有されているため、平和なハブや高リスクのミッション中に他のプレイヤーと遭遇することになります。時には協力し、時には衝突することもあるでしょう。一人で進むこともできますが、キューブの核にある謎の一部を真に解き明かすためには協力が必要となります。
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――『アトミックハート』では、主人公のP-3は銃、近接武器、そしてポリマーグローブの能力を使って戦っていました。本作ではどんな武器や戦闘スタイルを期待できますか?
Rob Bagratuni
 銃、近接戦闘、そしてポリマーアビリティは間違いなく『The Cube』に再登場し、ゲームプレイの核となる柱であり続けます。ですが一方で、それらをサポートするRPGシステムが大幅に進化しています。カスタマイズ、クラフト、武器の相乗効果を深め、はるかに多様で戦略的な深みを提供します。
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 今作では、幅広いスキルツリーから能力を選択していく中で、それがより実際のゲームプレイに的確に影響を与えるようになっており、自分にぴったりのプレイスタイルを見つけられるようになるでしょう。

 ですので、使用する手段そのものは依然としておなじみの銃、近接、アビリティのトリオに基づいていますが、それらの実際の使用ケースや、ビルドの構築、組み合わせ方はまったく新しいものに感じられるでしょう。より柔軟で、より階層的で、あなたの好みに合わせてよりカスタマイズされたものになります。
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巨大な謎の“キューブ”に潜む謎を追え

――あの巨大な浮遊するキューブのアイデアはどこから来たのですか? 他のメディアやゲームからインスピレーションを受けましたか?
Rob Bagratuni
 あのアイデアは、数年前、従来の平面的な世界という常識に疑問を抱き始めたときに生まれました。世界自体がどのように構築されているか、そしてそれがゲームプレイをどのように形作るかという根本的な部分からプレイヤーを驚かせることができる何かを作りたかったんです。
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 その時に、“回転し浮遊するキューブ”というコンセプトが浮かび上がりました。最初は荒唐無稽でほとんど不可能なアイデアのように感じられましたが、正直なところ、そこが良かったんです。他の人に話した時にもよく「それは無理じゃない?」と言われたんですが、それこそがまさに挑戦すべき種類の課題だと確信しました。
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――“スプリットレンダリングシステム”について教えて下さい。どのように機能するのですか?
Rob Bagratuni
 キューブは、常にリアルタイムで回転する表面と層を持つ巨大な構造物です。これらの表面には、草、木、湖、建物から車両、モンスター、他のプレイヤーまで、何千もの動的なオブジェクトが配置されています。

 この複雑な環境をゲームとして処理するために、独自の分割レンダリング(描画)システムが開発されました。これにより、リアルタイムでの回転、シームレスな環境間の移動、正確なマルチプレイの同期、効率的な物理演算処理を、すべてパフォーマンスを維持しながら実現できます。これにより『The Cube』の絶えず変化する世界が視覚的に印象的なだけでなく、その中で完全にインタラクティブにプレイ可能なものにしています。
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アトミックユニバースの拡張

――このゲームはスピンオフとして『アトミックハート』の世界を拡大するとのことですが、このプロジェクトはいつどのように始まったんですか? IPを拡大することは、最初からの計画だったんでしょうか?
Rob Bagratuni
 『The Cube』は“アトミックユニバース”を舞台にしていて、オリジナルのゲーム(『アトミックハート』)の出来事からしばらく経った後の物語です。メインストーリーから直接的に繋がるものではありませんが、キャラクターの再登場や共通の美学、そして世界の設計やコアメカニクスに織り込まれた『アトミックハート』固有の雰囲気を通して、メインストーリーと交差します。
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 キューブ自体は『アトミックハート』の世界内で突如出現した謎の現象です。その異常な出現と神秘的な起源はすぐに世界中の科学者や研究者の焦点となり、科学的な好奇心、画期的な発見、そして危険の中心地となりました。これはまさに科学と実験、そして未知が交錯する世界なのです。

 私たちは常に『アトミックハート』がより大きなユニバースへと成長する可能性を秘めていると考えていたので、『The Cube』はその進化における自然な一歩だったと言えます。
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――このゲームを楽しむために『アトミックハート』をプレイする必要はありますか?
Rob Bagratuni
 『アトミックハート』をプレイしていた場合、再登場しているキャラクターに気がつくでしょうし、彼らが世界と共にどのように進化してきたかを理解できるでしょうが、オリジナルの『アトミックハート』をプレイしなくても、『The Cube』を楽しむことができます。

 このゲームは、同じ世界内で新しいストーリー、つまりあなたのストーリーを語るものです。特定の主人公の物語ではなく、その核となるのはあなたとあなたの旅、そしてキューブの謎を解き明かす上でのあなたの役割に関するものなんです。新規プレイヤーは迷うことなくすぐに飛び込むことができますし、長年のファンはその下に流れるより深い物語の層との繋がりを見つけるでしょう。
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マルチプレイゲーム開発という難題への挑戦

――マルチプレイゲームの開発は特有の難しさがありますね。一旦出来上がっても、サポートしていくのはさらに難しい。しかもMuncfishは若いスタジオです。この困難にどのように対処しますか?
Rob Bagratuni
 その通りです。マルチプレイゲームを構築し、サポートするのは全く異なる(そして時には恐ろしい!)挑戦です。でも実は、これは私たちが長い間やりたかったことなんです。最初のゲームの開発中から、『アトミックハート』内でマルチプレイ体験を提供するというアイデアはすでに頭の中にありました。今、ついにそのビジョンを実現する機会を得たというわけです。
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 簡単ではないことは承知していますが、私たちは全力を尽くすことを完全に約束します。『アトミックハート』での作業を通じて、コンテンツ制作のための強力で効果的な開発体制の構築を行えたのは幸運でした。その経験は、技術的な実行だけでなく、規模を拡大し、迅速に適応し、高品質なコンテンツを一貫して提供する方法を学ぶ上で極めて重要でした。

――ローンチまでの流れについて教えてください。ローンチ前にプレイテストやベータ版を実施する予定はありますか? もしそうなら、日本からも参加できますか?
Rob Bagratuni
 先ほどお話ししたように、マルチプレイゲームの開発とローンチは信じられないほど複雑なプロセスです。だからこそ、正式リリースに先立ってクローズドとオープン両方のプレイテストを実施する予定です。これらの一連の内部および外部テストは、プレイヤーに最も響くものが何かを定義するのに役立つでしょう。早期のフィードバックは、純粋に楽しくプレイできる体験を形作る上で不可欠だと信じています。

 日本のプレイヤーに参加していただければ、光栄であると同時に少し緊張します。日本のプレイヤーの皆さんは好奇心が強い上に深い経験がおありですので、そのフィードバックは私たちにとって非常に貴重なものとなるでしょう!

Rob Bagratuni

『アトミックハート』および本作の開発元MundfishのCEO。