
ファミ通の編集者が遊んでほしいゲームを紹介する連載企画。ミス・ユースケがおすすめするタイトルは、ビビッドなドット絵が印象的なRPG『Keylocker | Turn Based Cyberpunk Action』(以下、Keylocker)です。
【おすすめポイント】
【おすすめポイント】
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- 鮮烈なビジュアル。そして、どこかコミカルなドット絵
- 抑圧からの解放を目指す、ある種王道の物語
- じわじわと世界の真実が明かされる演出
ミス・ユースケがおすすめするゲーム
『Keylocker | Turn Based Cyberpunk Action』
- プラットフォーム:Nintendo Switch、XSX|S、PC
- 発売日:2024年9月19日
- 開発元:Moonana
- 発売元:Serenity Forge
- 価格:Switch版は3077円[税込]、Xbox Seriese X|S版は2350円[税込]、PC版は2300円[税込]
支配に抗うように虚構の世界をぶっ壊す。それがロック
パッと見の印象にガツンと殴られ、ついゲームを買ってしまうことがよくある。音楽や本で言うところの“ジャケ買い”だ。『Keylocker』との出会いはまさにジャケ買いだった。
目がちかちかする極彩色の中に、どこか薄暗さと反骨精神を感じさせるビジュアル。「これは絶対にロックなゲームだ」と興奮してスタートしたところ、果たしてその通りだった。
目がちかちかする極彩色の中に、どこか薄暗さと反骨精神を感じさせるビジュアル。「これは絶対にロックなゲームだ」と興奮してスタートしたところ、果たしてその通りだった。
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物語は主人公BOBOが収監されている監獄から始まる。とくに説明もないまま脱獄することになり、専門用語が飛び交うなか、流されるように行動開始。音楽が魔法のような役割を果たすらしく、ときにギターをかき鳴らして看守たちをぶちのめしていく。何がどうなっているのだろう。理解が追いつかない。
混乱しながら進めると、おぼろげながら全容が見えてきた。どうやらここはサイバーパンクなディストピア社会で、音楽が禁じられているらしい。音楽には“エレキ”というエネルギー資源を生み出す力があり、エレキ生成権は特権階級の“サテライト”が独占。音楽を生きがいとするBOBOは存在自体が重罪のようなものだ。
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空に浮かぶ監獄から脱獄を果たしたとき、彼女は古いジュークボット(音楽をかけるジュークボックス+ロボット)と出会う。いまの気分にぴったりな曲をリクエストすると、ごきげんなナンバーが耳に届いた。
音楽の歓びをかみしめるように、夜の闇を引き裂くように、BOBOはチンピラから失敬したバイクを走らせる。感情を揺さぶるシーンをじんわり味わったところで来るのだ。オープニングアニメーションが! くぅ~! である。
この“わかってる”演出はスタンディングオベーションものだ。僕は確信した。『Keylocker』は僕と相性がいい。まるで初めてのセッションでお互いの音楽性を理解し合ったかのようだった。
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感情のままに突き進むBOBOは、何度もサテライトの手先と衝突する。ストレートな彼女の生きかたとは異なり、ターン制の戦闘は戦略的だ。攻撃か、移動か、それとも先にエレキの力を溜めるのか。
複雑そうに見えても心配はいらない。行動順以上にボタン入力のタイミングが重要で、つまり音楽(リズム)の力で押していけるから。敵の攻撃時は毎回のようにQTEが発生し、うまくいけば猛攻を受けてもノーダメージ。どんなピンチもリズムに乗れば切り抜けられる。
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戦闘スタイルはゲーム開始時に選んだクラス次第。うちのBOBOはごりごりのアタッカーだ。手に携えたギター、そしてごつい斧は反権威と破壊衝動の象徴だろうか。立ちはだかる敵の首を傍若無人にはねていく。パンクすぎる。
ちなみに、初期クラスはジャガーノート、サムライ、ハッカー、シーケンサーの4種類があって、僕が選んだのはジャガーノートだ。無骨なヘルメットとミニワンピのコーディネートがかわいいから。大事な選択はこれくらい衝動的でいい。
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『Keylocker』の世界の描き方は僕を夢中にさせた。全体的にわけがわからなくて、それでいい。不親切というより説明セリフが少ないだけで、わからないなりに進めていくと、いつしか自分がこの世界になじんでいる。
マップ上のオブジェクトはその多くがインタラクト可能。深そうな言葉もあれば、くだらないジョークも隠されている。ニュアンス込みで日本語化するのはたいへんだっただろうなと翻訳家さんの苦労をしのんでしまった。そのおかげでとてもおもしろい。
マップ上のオブジェクトはその多くがインタラクト可能。深そうな言葉もあれば、くだらないジョークも隠されている。ニュアンス込みで日本語化するのはたいへんだっただろうなと翻訳家さんの苦労をしのんでしまった。そのおかげでとてもおもしろい。
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「メロディアスな罪が埋められている。」
「ハッピー・ピクセルフライ。プログラムされた通りの味がする。」
「さかさまのスカル。この世界の政治経済に対する感覚と同じだ。」
などなど。わけがわからないだろう。でも、ゲームを進めると何となく理解できるようになるからふしぎだ。
「ハッピー・ピクセルフライ。プログラムされた通りの味がする。」
「さかさまのスカル。この世界の政治経済に対する感覚と同じだ。」
などなど。わけがわからないだろう。でも、ゲームを進めると何となく理解できるようになるからふしぎだ。
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こうした情報が脳の中に蓄積されるたびに世界への解像度が上がる。最初はNPCとの会話の意味すら理解できないのに、気づいたらBOBOの怒りを肌で感じられるように。自分と世界の境界が曖昧になっていくようだった。
キャラクターのセリフは端から端まで尖っている。脳を刺激するパンチラインもたくさんあるが、この記事のスクリーンショットではあまり使っていない。直接体験してほしいから。
キャラクターのセリフは端から端まで尖っている。脳を刺激するパンチラインもたくさんあるが、この記事のスクリーンショットではあまり使っていない。直接体験してほしいから。
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と、安心するのはまだ早い。『Keylocker』はこちらの理解が追いつくことを待ってくれない。ジェットコースターである。
地面に埋まっているアルパカを探し、空飛ぶじゅうたんで砂漠を抜け、労働者層の話を聞くうちに「やっぱりひどい世界のようだぞ」と核心が強まり、仲間との恋愛要素も用意され、でかい頭だけの化け物とビキニの美女は身内同士で男女の関係にある。そして、ライブでみんなに音楽を届けようというシーンで急に始まる音ゲー。何なんだ。
つぎからつぎへと飛び込んでくる情報を丁寧に処理している暇はない。開発者の哲学も思想も衝動も感情もすべてがごちゃまぜになって視覚と聴覚から侵入してくる。僕らには駆け抜けるようにゲームを進める道しか残されていないのだ。
地面に埋まっているアルパカを探し、空飛ぶじゅうたんで砂漠を抜け、労働者層の話を聞くうちに「やっぱりひどい世界のようだぞ」と核心が強まり、仲間との恋愛要素も用意され、でかい頭だけの化け物とビキニの美女は身内同士で男女の関係にある。そして、ライブでみんなに音楽を届けようというシーンで急に始まる音ゲー。何なんだ。
つぎからつぎへと飛び込んでくる情報を丁寧に処理している暇はない。開発者の哲学も思想も衝動も感情もすべてがごちゃまぜになって視覚と聴覚から侵入してくる。僕らには駆け抜けるようにゲームを進める道しか残されていないのだ。
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一方で、ユーザーインターフェース周りは親切とは言い難い。アイテムの装備可否やスキル効果、育成方法など、わかりにくい点は多々ある。
とはいえ、これでいいのである。だってロックンローラーってそんなもんだろう。聴いてくれるファンはもちろん大切だ。だけど、何よりも大事なのは自分の衝動なのだから。
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これは僕の想像だが、開発者は懇切丁寧な作りにはあえてしなかったのだと思う。もし細かい用語解説が入っていたらそれがブレーキとなり、プレイヤーはいったん立ち止まってしまう。独特の疾走感が失われていたかもしれない。
遊ぶうえでのストレスを減らすことはゲーム開発にとって常識だと思うが、そんなの関係ない。最初から最後まで全力疾走。ひたすらにぐいぐい引っ張っていくエネルギーを感じる。
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さて。大手メーカーが作る商品としてのゲームとは異なり、インディーゲームはコミティアや文芸フリマで売られる自費出版本のようなものだと思っている。たくさん売れることは大事だけど、完成させた時点で十分に尊い。
『Keylocker』は抑圧からの解放を目指し、音楽で自由を勝ち取る物語だ。ルールをぶち壊すのだから、ときには身勝手さも必要なはず。めちゃくちゃで、荒々しくて、洗練されていない部分もある。それはそういうものとして受け入れた方がいい。だって、きれいなだけのロックなんてもの足りないだろう?