大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
 いまや日本を代表するバンドとなったMrs. GREEN APPLE。そのボーカル/ギターを務め、全楽曲の作詞・作曲・編曲に加えて、衣装を含むビジュアル面など、バンドのクリエイティブをすべて司っているのが大森元貴氏だ。
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 音楽の枠を超えて多彩な表現活動を続ける大森氏は、かねて自身のX(Twitter)で、『超探偵事件簿 レインコード』や『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』など、ゲームクリエイター・小高和剛氏が手掛ける作品のファンであることを公言してきた。

 そして今回、そんな大森氏と、TooKyoGames(トゥーキョーゲームス)代表の小高氏による対談が実現。じつは小高氏も、Mrs. GREEN APPLEのメジャーデビュー時からその楽曲を聴いてきたファン。まさに、互いの作品を深く知るふたりによる対談となった。

 好きな作品への率直な感想を皮切りに、ものづくりへの向き合いかたや、作品を生み出す原動力、さらにはふたりがいっしょにゲームを作るなら――という話まで、トークは濃さ全開。大森氏から飛び出した突然の告白も必見だ。

 25000字を超えるロング対談を、ぜひ最後までチェックしてほしい。
※本記事には、『ダンガンロンパ』シリーズ、『超探偵事件簿 レインコード』、『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』などのネタバレが含まれます。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

大森元貴氏おおもり もとき

1996年生まれ。Mrs. GREEN APPLEのフロントマンで、ボーカル/ギターを担当。バンドの全楽曲の作詞・作曲・編曲を担うほか、アートワークやミュージックビデオのアイデア、衣装を含むビジュアル面など、クリエイティブ全般を司る。ソロアーティストや俳優としても活動している。(文中は大森)

小高和剛氏こだか かずたか

ゲームクリエイター。TooKyoGames代表。『ダンガンロンパ』シリーズで企画・シナリオを手掛ける。おもな作品は『超探偵事件簿 レインコード』、『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』など。(文中は小高)

「小高さんは欺き界の神様」――『ダンガンロンパ』との出会いと『V3』の衝撃

大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
――おふたりは、以前にちょっとだけ面識があるとお伺いしましたが?

小高
 先日ライブに招待していただいて、その後にちょっとご挨拶した程度ですね。

――なるほど。ではちゃんとお話しするのは……。

大森
 今回が初めてです。とても楽しみにしてきました。

――ありがとうございます。大森さんも小高さんもお互いの作品がお好きとお聞きしていますので、それぞれの作品やクリエイティブのお話など、お互いに聞いてみたいことを、自由に聞いていただこうかなと思っています。

小高
 あの、早速脱線するんですけど(笑)。Mrs. GREEN APPLEがメジャーデビューされたのは2015年7月8日でしたよね。じつは僕の誕生日も7月8日で、勝手に親近感を覚えていたんですけど、あの日にデビューすることにしたのは何か理由があったんですか?

大森
 いやー、とくに理由はなくて、音楽フェスが8月や9月に開催されていたので、曲を出すのであればその前の7月くらいか、という感じで決まっていた気がしますね。

小高
 じつは、“78対22の法則”というものがあって……。

大森
 何ですかそれ(笑)。

小高
 都市伝説のようなものなんですけど、たとえば大手ハンバーガーチェーンで以前に販売されていた安めのセットは390円だったんですね。これは500円で買うとお釣りが110円で、390円と110円がちょうど78:22になっていて。これが、ビジネスにおける黄金比のように語られることがあるんですよ。

 それで、先ほどお話したように僕の誕生日が7月8日だから、「自分は何か持って生まれたんじゃないか」と思っていたんです。有名な占い師の方に初めて占ってもらったときにその話をしたら、「ふーん」みたいに流されましたけど(笑)。

大森
 (笑)。

小高
 だから、デビューの日も敢えてこの7月8日を選ばれたのかなと思ったんですよ。

大森
 たぶん、そんなことはないんじゃないかなと思います(笑)。そのお話は初めて聞きました。というか、今日最初からこの感じで行くんですね! なんかうれしいです! 今日は本当に光栄です。

――本当に脱線からのスタートですね(笑)。でも小高さんは78という数字にはこだわられていますよね。

小高
 そうなんですよ。『ダンガンロンパ』でも、苗木誠たちは78期生なんですよね。それで『ダンガンロンパ』が成功したのかも、と考えると本当にこの法則はあるかもしれないな、って。

大森
 おもしろいですね。7月8日デビューでよかった(笑)。

――大森さんが小高さんの作品にハマったきっかけをお聞きする前に。まず大森さんは子どものころからゲームを遊ばれていましたか?

大森
 僕は男3人兄弟の末っ子なんですけど、兄と年が7歳ずつ離れているんですよ。だから物心がつくころには兄貴たちがゲームをしていて、それを日常的に見ていました。小学生のころは『大乱闘スマッシュブラザーズ』や格闘ゲームをみんなで遊んでいて。ゲームはすごく身近にありましたね。それこそ、『ダンガンロンパ』も次男から教えてもらったんですよ。

小高
 『ダンガンロンパ』を最初に遊んだのはPSP(プレイステーション・ポータブル)ですか? それともPS Vita(プレイステーション Vita)?

大森
 PSPでしたね。当時は中学生くらいだったと思いますけど、すごい衝撃でした。1作目は兄がプレイしているのを見て、後から自分でプレイして、そこから2作目と『V3』もプレイしました。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談※『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』:2010年にスパイク(現スパイク・チュンソフト)からPSP向けに発売された“ハイスピード推理アクション”。“超高校級”の才能を持つ高校生たちが閉鎖された学園で“コロシアイ”を強いられ、殺人事件が起きるたびに“学級裁判”で犯人を突き止めていく。犯人は“クロ”と呼ばれ、学級裁判で正体を暴かれたクロには“オシオキ”と呼ばれる処刑が行われる。
――中高生であのゲームに触れると、インパクトがすごそうですね。

大森
 おかげでひねくれちゃってしょうがない(笑)。小高さんはもう欺き界の神様ですから。人格形成のうえで、多感な時期にあれをやるっていうのは、かなり大きかったと思います。本当に衝撃的な出会いでした。

小高
 最近はゲーム業界でも、中学生のころ、高校生のころに『ダンガンロンパ』を遊んでいました、っていう若い方と仕事をする機会がすごく増えたんですよね。やっぱりその時期にプレイしていると、社会人になって遊んだ人とはまた違った、怨念みたいなものを感じます(笑)。

大森
 ピュアな時期にやる、っていうのは大きいですよね。推しなんかも作っちゃうんですけど、もう最悪なことに(笑)。

――プレゼントを贈って好感度を上げていたキャラクターがつぎの章で……、みたいなことが当たり前にありますからね。

大森
 そんなゲームはそれまでなかったですからね。小学生のころから、対戦ゲームをみんなで遊ぶのが当たり前だったんですけど、それがいきなり覆されたんですよ。小説のような、映画のようなものを自分で遊べるっていうのも、すごく衝撃的でした。

小高
 ストーリードリブン系のゲーム(編注:物語を中心に進行するゲームのこと)は遊んでいなかったんですか?

大森
 当時は、あまりひとりで何かをプレイすることはなかった気がします。

――推しを作るとひどい目に遭うというお話もありましたが、『ダンガンロンパ』で好きなキャラクター、印象的だったキャラクターはいますか?

大森
 それはもちろんいっぱいいますよ。でも、衝撃だったのは、やっぱり『ニューダンガンロンパV3』のゴン太(獄原ゴン太)ですね。メンバーも僕が『ダンガンロンパ』を好きなのを知っているし、みんなもプレイしているんですけど、ゴン太の話で盛り上がるのがすごく楽しいです。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談※『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』:2017年にスパイク・チュンソフトからPS4、PS Vita向けに発売された“ハイスピード推理アクション”。シリーズ第3作で、初代や『2』で描かれた希望ヶ峰学園をめぐる物語から舞台や登場人物を一新。16人の“超高校級”の生徒たちが“才囚学園”に閉じ込められ、新たな“コロシアイ”に巻き込まれていく。終盤に待ち受ける驚愕の展開は、発売当時大きな話題を呼んだ。
小高
 ゴン太は本当にいい奴ですからね。『ダンガンロンパ』では珍しい存在かもしれません。ほかはだいたいイヤな奴っていうか(笑)。

大森
 あれは初めての読後感でした。悪い読後感のなかでも、とくに強烈だったことを覚えています。「まだこういうのがあるのか……」っていう、ある種の感動すら覚えましたね。

小高
 『ニューダンガンロンパV3』はどうでした?

大森
 めっちゃ好きです。でも、これを言っちゃうんだ、みたいなのはありました。“第四の壁”をブチ破っちゃうのも衝撃でしたし、「でも、そうだよな」っていう感覚もあったんですよね。僕はもう、慄きたくてプレイしているので、そういう意味で言うと大好物でした。

小高
 ありがたいですね。

大森
 でもすごいですよね。1作目から続く人の欺きかたが、どうやってこんなにいっぱい思いつくんだろう、って。学生のころは本当に、「これを作っている人は頭がおかしいに違いない」と思っていました(笑)。『V3』のころには僕もクリエイターとして仕事をしていたんですけど、やっぱり衝撃でしたね。

小高
 あれは、スパイク・チュンソフトだからできた、みたいなところはあると思います。ふつうのゲーム会社だったら、そこまで積み上げてきたIPを爆破させるようなことはしませんから(笑)。

大森
 そうですよね(笑)。

小高
 当時の宣伝担当も、最初にプロットを書いて読ませたら、「これはさすがにない」と思ったらしいんですよ。でも、ひと晩置いて考えてみたら、「意外とこれが『ダンガンロンパ』なのかも」ってなったんですよね。

大森
 いや、すごくわかります。

小高
 もともと、『ダンガンロンパ』と『スーパーダンガンロンパ2』はプレイヤーが安全なところにいたんですよね。いくらキャラクターが死んでも、プレイヤーは悲しくはなるけど、客観的に見ているところがあったんです。『V3』では、その客観的な立場にいるプレイヤーをもっと作品内に巻き込みたいと思ったんですよ。

 これまであなたが愛した『ダンガンロンパ』シリーズ、膨大な時間を費やしてもらったこの作品すらも壊していく。その絶望をキャラクターとプレイヤーとでいっしょに乗り越えましょう、みたいなことなんですよね。そういう意味で“第四の壁”を越えてプレイヤーを巻き込んで絶望させることで、そこから生まれる希望も現実を超えてくれるかな、と思ったんです。

大森
 もう、イマーシブ(没入感の強いもの)っていう言葉が出てくる前のイマーシブでしたよね。でもやっぱり、「それでも前に」っていうところが小高さんの作品のいいところだと思います。散々なことをやっているのに、どこか品があるというか。そこが僕はすごく好きです。僕もいろいろな活動をするうえで、下品にはならないようにしよう、というのは大事にしているので。

小高
 ちょっともう、(作品内の)下ネタはやめます(笑)。

大森
 そういう下品ではないです(笑)。

小高
 でもそうですね。露悪的とはまた違うものを意識していますね。

大森
 そう、向かっていく先がすごく上品なんですよね。だから、どれだけ散々に、メッタメタにされても、どこか幸せなところがあるというか、苦しかった思い出にすら品がある感覚が、大好きです。

小高
 ありがとうございます。ユーザーのみんながそう思ってくれるかな、と開発中は思っていたんですけど、発売時のレビューは想像以上に荒れましたね(笑)。

大森
 いや、でもあれはあれでいいんだと思います。クリエイトってこういうことだよな、みたいなものをすごく感じました。

小高
 でも実際、レビューで星1評価を付けた人って、多くの人がクリアーしているんですよね。「5章までは神ゲーで、6章はマジで星1です」みたいな感じなんですよ。最後まで遊んでくれたのなら、もうこっちの勝ちだな、っていう(笑)。

大森
 作られているときから、「これはいろんな反応が出るぞ」みたいなことは考えられていたんですか?

小高
 ある程度は覚悟していたんですけど、完成が近づくにつれて、「これはけっこういいぞ」、「なんだかんだ言って評価は高いかも」みたいに思っていたんですよね。でもそんなことはなかった、っていう。

大森
 やっぱり、評価っていうのは小高さんの中でも大事な指標なんですか? 見ていると、「そんなことは気にしないぜ」っていう側面もあるような気がしますけど、エンタメ、娯楽として評価もしっかり見ているのか、そのへんが気になります。

小高
 そういう意味で言うと、そんなに気にはしていないですね。

大森
 そうですよね。

小高
 気にはしていないんですけど、褒められたほうがうれしくはあるじゃないですか。でも、発売から10年近く経ってまた風向きが変わってきましたよね。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
――『V3』はいまは再評価されている印象があります。

小高
 やっぱり当時はみんな、ちょっとかかりすぎていたというか。

大森
 時代的に先を行きすぎていたのもありますよね。

小高
 『V3』は、『魔法少女まどか☆マギカ』や『Fate/Zero』のシナリオを書かれている虚淵玄さんにも「あまりにも危険すぎる乾坤一擲の妙手」とお褒めの言葉をいただいて、それが僕はすごくうれしかったです。

大森
 だって本当に、イカレているじゃないですか(笑)。すごいなと思いますし、クリエイターはそうあるべきだなと思います。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

“サイコポップ”から続く、小高和剛の“発明”


――大森さんは『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』(以下、『ハンドレッドライン』)もクリアーされたと伺っています。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談※『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』:2025年にアニプレックスからNintendo Switch、Steam向けに発売された“極限”と“絶望”のアドベンチャーゲーム。主人公・澄野拓海ら、それぞれ異なる特殊能力を持つ15人の生徒が、迫りくる“侵校生”から“最終防衛学園”を100日間守り抜く。物語はプレイヤーの選択によって多岐に分岐し、まったく雰囲気の異なるシナリオが展開。100種類のエンディングが用意されている。
大森
 何をもってクリアーとするか、みたいなところはありますけどね(笑)。

小高
 さすがに1周目だけですよね。お忙しいでしょうし。

大森
 いや、ちゃんと真相解明編までやりましたよ。もちろん。ほかにも複数のエンディングを見ましたから。

小高
 すごい。自分で作っておいてアレですけど、エンディングが100個あるゲームなんて、忙しい人がやるべきゲームではないですね(笑)。

大森
 本当に(笑)。1周目が終わって2周目に突入したときは、「マジか。でも、ですよね。小高さんの作品だもんな。これですよ」みたいな感じでしたね。ちょうど海外で撮影をさせていただくタイミングだったので、飛行機の中で寝ずにずっとやっていました。

小高
 タイミングが噛み合ったのであればよかったです。

大森
 『ハンドレッドライン』もそうですけど、どうやってこの発明をするのか、って毎作品で思うんですよ。いくつもオチがあったらおもしろいじゃないかと思っても、なかなか人に伝えたり、形にしたりするところまでは至らないと思うんですよ。どんなパワーとモチベーションが小高さんを動かしているんだろう、と思います。

小高
 ゲームは作るのに時間もお金もかかってしまうんですけど、販売されるゲーム自体はどれも同じくらいの値段なんですよね。たとえば『ハンドレッドライン』も『モンハン』もだいたい同じ値段で販売される中で、お客さんにはかかったお金や時間なんて関係ないじゃないですか。

 新規IPであるとかも関係なく、ひとつのゲームとして比べられてしまうので、そこはもう、勝負するにはある程度タガが外れていないと意味がないんですよね。そうじゃないと、そもそも手に取ってもらえないので。だからもう、みんながやりたいかどうかは別で、「ふつうならこれやらないでしょ」みたいなもので戦うしかないっていう。

大森
 新規IPを発明することと、「これはやらないだろう」が同居しているのが意味わからないですよね。

小高
 ひとつあるのは、被らないようにしたい、っていう考えなんですよね。シナリオで言えば、100個あるエンディングの中から苦労してたどり着いた真相解明編の最後で、主人公たちがああいうことになるのは、最初に考えていたんですよ。むしろ、そこに至るための道のりを作っていった。

 『ハンドレッドライン』には、戦争に巻き込まれた若者たちの悲劇みたいなものをイメージしているところもあるんです。そこまで説教臭くはならないようにしつつ、戦いの先の平和のようなものを表現したかった、というのもあります。戦うこと自体は虚しいけれど、その先に戦争を終わらせることができたなら、そこには救いもある。そういうことをうまく伝えられれば、唯一無二の読後感になるなと。

大森
 プロットを書く前の原案というか、最初の火種は何だったんですか?

小高
 ひとつ、僕らの集大成を作りたいなと思ったんです。ミセス風に言ってしまうと、フェーズ1の集大成、ある意味でのベストアルバムを出したいと思ったんですよね。だから『ダンガンロンパ』や『超探偵事件簿 レインコード』(以下、『レインコード』)の要素も入れたくて、それをやるためにはたくさんのストーリーが必要だ、というところからスタートして。結果、100個のエンディングがあるゲームになりました。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談※『超探偵事件簿 レインコード』:2023年にスパイク・チュンソフトからNintendo Switch向けに発売された“ダークファンタジー推理アクション”。雨が降り続く街・カナイ区を舞台に、記憶喪失の探偵見習いユーマ=ココヘッドと、彼に取り憑く“死に神ちゃん”が未解決事件に挑む。“超聴覚”や“過去視”など、それぞれ異なる“探偵特殊能力”を持つ“超探偵”たちと協力して事件を調査し、謎が具現化した“謎迷宮”を攻略しながら真相に迫っていく。
――大森さんが小高さんの作品を好きだと公表されたのは、X(旧:Twitter)で『レインコード』のことを投稿されたときですよね。小高さんのまわりでも話題になりましたか?
小高
 最初に投稿を見たときは、本当にビックリしました。大森さんが『レインコード』を遊んでくれているんだ、って。それで、すぐにスタッフにも見せましたね。

 やっぱりみんな喜んでいました。僕ら、あまり直接褒めてもらえることがないので(笑)。まさか大森さんが作品について投稿してくれるとは思っていなかったです。

大森
 もちろん遊びますよ。

小高
 でも逆に、大森さんのイメージダウンにならないかな、って心配にもなりました。「あんなゲームが好きだったんだ」って(笑)。

大森
 そんなことはないですよ(笑)。「私も始めました」みたいな反応もありましたし。

小高
 それはまずい。

大森
 まずくないです(笑)。もっと知ってもらうべきですし、これを好きである僕も知ってほしいですよ。僕、『レインコード』すっごく好きなんですよ。

小高
 ありがとうございます。僕も好きです(笑)。

大森
 すごいゲームだと思うんですよ。うちのスタッフにも紹介して、いま遊んでくれている人もいるんですけど、あれは本当にどういう発想なんですか? 人が考えられる内容なのか、って。

小高
 まず、ゴッサムシティ(『バットマン』の舞台となる架空の都市)みたいな雰囲気の街を作りたい、と思ったのがひとつのきっかけでした。あと、謎解きって『ダンガンロンパ』もそうですが、キャラクターがしゃべるだけでなかなか絵の変化がないんですよね。

 それもそれでいいんですけど、謎解きのフローチャートみたいなものを可視化できないかな、と思ったんです。それで、ダンジョンのような形で、謎が解けていくごとに景色が変わっていく、みたいな着想からのスタートでした。『ダンガンロンパ』でやれなかったファンタジーもやりたくて、それらをコネコネしているうちに、ああいうふうになった感じです。

大森
 相当コネコネしましたね。『ダンガンロンパ』でもそうでしたけど、血がピンクっていうのもすごいですよね。あれはなんで蛍光のピンクにしたんですか?
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
小高
 ふつうの赤にすると陰鬱とした雰囲気が強すぎて、ちょっと重いなっていう感じがしたんですよ。

大森
 あれだけの内容を作っておきながら、その感覚はあるのがまた意味わからないんですよね(笑)。それはやっぱり、アート的な意味ですか?

小高
 そうですね。もともと、『ダンガンロンパ』は“サイコポップ”っていうキーワードで作っていて、赤い血はサイコすぎるな、と。

大森
 ポップが担う部分と、サイコが担う部分のバランスですか。

小高
 そうですね。青とかも試したんですけど、ペンキっぽくなっちゃって、血に見えなかったんですよね。やっぱり暖色かな、というので最終的にはピンクになりました。

大森
 めちゃくちゃおもしろい。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

小高和剛が語るMrs. GREEN APPLE。“青と夏”は「逆張り」から生まれた


――大森さんから見た小高作品についてのお話を伺いましたが、今度は小高さんから見た大森さん、Mrs. GREEN APPLEの楽曲などについてお聞きできればと思います。最初に曲を聴いたのはいつでしたか?

小高
 最初は、ラジオですね。運転中にラジオをよく聴いていて、そこで流れていた曲を聴いたのが最初だったと思います。

 アルバムを初めて買うきっかけになったのは、“WanteD! WanteD!”でした。最初に聴いたとき、僕の思っていたイメージと違っていて、違うアーティストなのかと思ったんですよ。でも調べたらやっぱりミセスで、それでファーストアルバムの
『TWELVE』とセカンドアルバムの『Mrs. GREEN APPLE』を買いました。

大森
 うれしい。

小高
 『Mrs. GREEN APPLE』はとくに好きで、運動しながら聴くことが多いんですけど、テンポ感がいいんですよね。アルバムを通して聴くとシェフおすすめのコースみたいな感じで、こういう気持ちからこういう気持ちに、って誘導してくれるんですよね。2026年9月30日には待望のニューアルバムが出るので、楽しみにしています(笑)。

大森
 宣伝まで。ありがとうございます。

小高
 曲単位で印象に残っているものだと、“VIP”ですね。『V3』を出した後にたまたま聴いたら、レビューで僕が言われていたことが全部書いてあったんですよ。「買い被りってなんだっけ」とか「昨今のあなたは鼻につくわ」とか、めちゃめちゃ責められてるなって思って。

大森
 失礼しました(笑)。

小高
 運転中に聴いてたんですけど、ちょっと路肩に止めましたからね。「まさにこれ、今の俺だ。落ち着こう」って。

一同 (笑)

大森
 “VIP”は、それこそ7月8日に出したデビュー盤の曲なんですよ。

小高
 そうですよね。最初に話したデビュー日の話ともつながって、僕にとっては思い出深い曲ですね。あとは、“青と夏”のカップリング曲になっていた“ア・プリオリ”とかですね。あれも表題曲との温度差がすごくて、すごく好きです。僕は、ちょっとほの暗いところから光を見ているような感じの曲が好きなんです。“Loneliness”とか“アウフヘーベン”とか、ああいうところの雰囲気が好きですね。

大森
 じゃあ、絶対につぎのアルバムも好きですよ。

小高
 楽しみです。あと、アルバムの曲数が多いのもいいですよね。ランニングとかにめちゃくちゃいいんですよ。

大森
 いまお話に出た“青と夏”で我々を認知してくださった方も多いんですけど、僕は通信制高校に行っていたので、あの歌詞で描かれているような青春はまったく経験してきていないんですよ。中学のころも、学校に行くより曲を作っているほうが楽しくて、2年生のころはほぼ学校に行っていなかったんです。

 だから、学校で部活動を楽しんでいる人とか、友だちと楽しくやっている人に対しては、「へっ、なにくそ」みたいな気持ちだったんですよね。そういう人たちに復讐したくて“青と夏”を書いたんです。あのころの気持ちを逆張りして、ポップに昇華することで、多くの人に届けて認められることが、いちばんの復讐になると思ったんですよ。こういう発想は、やっぱり『ダンガンロンパ』を学生時代にやっちゃったからですね(笑)。

小高
 それで言うと、僕も中高ともに男子校だったので、“青と夏”とか“Speaking”で歌われているような世界は経験していないんですよね。だから逆に、自分が持っていないキラキラしたものっていう感じで、見ていて楽しいなとは思います。

大森
 クリエイトしていくうえで、たとえば欺くことと認められることって、すごく近しいなと思うんです。“ア・プリオリ”などを挙げてくださいましたけど、“青と夏”っていう、あの曲のカップリングに格好いい曲が入っていることが、僕の中ではすごくバランスが取れているんです。

 じつは、そういうのはたくさんあるんですよね。僕らのイメージとして世間ではどうしてもポップな側面が先行して届くんですけど、意外と僕の中では、ポップであることは最大の逆張り、自分の人生観における逆張りなんです。

小高
 なるほど。とてもおもしろい。

大森
 だから、『ダンガンロンパ』がすごく好きです。

小高
 僕も『ダンガンロンパ』みたいな、男女がひとつの空間にいるような状況はまったく経験していないから、どういう会話をするのか、よくわからないんですよ。

大森
 それで“コロシアイ”をさせるんですね。でもやっぱり、経験していない何かからクリエイトするのが、最大のエネルギーになるんだなって思いますね。

小高
 そうですよね。そういえば、先日ライブに招待していただいて、生でミセスを聴くのはあれが初めてだと思ったんですけど、よくよく思い出したら、2017年に大阪でやったフェスで見ていたんですよね。確か“WanteD! WanteD!”をやっていたと思います。

大森
 そうなんですか。うれしい。2017年だったらちょうど“WanteD! WanteD!”の時期ですね。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

ポップの奥にある絶望と希望。“ケセラセラ”と“天国”をめぐる創作論


――おふたりの作品は、入り口はポップながら、絶望や死を想起させるものを描くような、決してポップではない側面もある点が共通しているかと思います。ご自身のなかで、こういうことを伝えたい、といったテーマのようなものはあるのでしょうか。

大森
 前向きになる言葉を綴っているアーティストの方はもうたくさんいらっしゃるので、僕が同じようなことをしてもしかたがないと思うんですよね。さっきも言ったように、僕は物事をひねくれて見て、斜に構えた人で、でも認められたい気持ちもあって、そんな自分をどうプロデュースしようか、から始まったんです。

 その中で、嘘はつきたくないというのと、正しく認められたいという思いがありました。希望も歌いたいし、聴く人が明るくあってほしいし、楽しいエンタメをやる。それもわかるんですけど、それをひたむきにやりすぎると、僕の中で無理が生じるんです。だから、誰も嘘をつかない世界線を作ろうと思った結果、こういう作品になっていったんです。

 何かに失望している人に向けて期待を歌ったとしても、それが叶うか叶わないかは、聴き手に委ねられるものだと思うんですよね。そんな感覚で書いています。

小高
 僕が受け取った感じで言うと、“ケセラセラ”や“ダンスホール”の歌詞は、自分に言い聞かせている感じがするんですよ。その強がり感が好きですね。応援ソングというよりも、「もう自分でやるしかない」みたいな印象を受けるんです。

大森
 そう、そうなんですよ。大衆向けっぽいのは我々のキャラクターだけで、曲の内容は1対1か、ひとりの人間についての話しかしていないんですよ。それはもう、ずっと変わらずですね。「トゥギャザー!」みたいなことは一度も歌ったことがないんですけど、我々のキャラクターと出で立ちでそういうふうに見えるというか、まろやかな印象になっているんですよね。

小高
 “ケセラセラ”の「私を愛せるのは私だけ」って、すごくいい言葉にも聞こえるけど、ある種突き放した言葉にも聞こえるんですよね。あれはうまいな、って。

大森
 曲を作ったとき、メンバーにも「これは前向きな言葉じゃなくて、諦観。諦めることと同義なんだ」という話をしていました。

 ドラマのタイアップ曲だったのもあって、いろいろ歌詞を変えていったんですよ。それは変えてくれと言われたからじゃなくて、僕の中で違うなと思って変えたんですけど、「生まれ変わるなら? また私だね」の部分はもともと「生まれ変われない また私だけ」だったんです。

小高
 けっこう薄暗いですね。

大森
 そうなんですよ。暗いな、って思って。言い換えてぜんぜん違う言葉にはなったんですけど、僕の中での意味合いは同じなんですよね。ポジティブにするか、ネガティブにするかっていうのも、派生元は同じなんです。そういう言いかたはよくしますね。

小高
 この「生まれ変わるなら? また私だね」は、『ダンガンロンパ』でクロとして処刑された奴の最後の言葉として使いたかったですね。ユーザーは「いや改心しろよ」って思うじゃないですか。最初に聴いたとき、「これは欲しかった。もうパクれない」って(笑)。

大森
 すごくうれしいです。

小高
 僕は音楽の専門家じゃないから細かいことはわからないんですけど、大森さんの作る曲って、歌唱方法と歌詞、メロディーとアレンジが、ひとつずつ積み重ねていくよりは、もっと密接に絡み合っているような印象なんですよね。

 “天国”を聴いて、この歌いかただからこの言葉を選んでいて、だから裏で鳴っているのがこの音なんだ、めちゃめちゃ計算されているな、と思ったんですよ。これ、合ってます?

大森
 もちろん、そのつもりでやっています。

小高
 よかった。要素をひとつずつ作っていくんじゃなくて、彫刻のようにあらゆる方向から彫り進めて音楽を作っているのかな、と思ったんですよね。

大森
 曲を作るときは、時間をかけずに作るんです。頭の中で、これで完璧にいける、って思ったタイミングでワーっと作るんですよ。アレンジまで全部ひとりでやっていて、ギターのフレーズやキーボードの音も全部決めて、マスタリングまで仕上げたうえでメンバーに展開しているんです。

 そういう意味で言うと、頭の中の「こう描きたい」っていうイメージを、まず形にしています。だから、僕も説明できない密接な何か、っていうのは絶対にあると思います。

小高
 そこに唯一無二感が出ていますよね。本当に、“天国”を聴いたときは、ここ数年でいちばんビックリしました。この年になっても、初めて聴くような感覚があるんだ、みたいな。曲として聴くとやっぱりポップスで、単なる実験音楽ってわけではないんですよ。それがまたすごいなと思って。僕のなかではけっこうランキング上位の曲ですね。偉そうに言っちゃった(笑)。

大森
 めっちゃうれしいです。これも、たくさん考えて作りました。レコード大賞を取らせていただいて、我々の曲が世間に多く届いたタイミングだったんですよね。そこでつぎに何を歌うべきかと考えたときに、やっぱりずっとポップなものを歌っていてもしょうがないなと思ったんです。自分の独自性、作家性みたいなものを今一度見せよう、と。

 “天国”は自分の主演映画
『#真相をお話しします』の主題歌でもあるんですけど、主演の映画で主題歌も担当するってパッケージ感が強すぎて、僕が観客だったら引いちゃうなと思ったんですよ。映画自体はミステリーでありながらもポップコーンムービーなので、どれだけフックを作れるかと考えたときに、最後に主題歌としてあの曲が流れたら、どんな読後感になるだろう、って考えて。

 そういうバランスで、映画の撮影をしながら書いた曲でした。僕の中でもいろいろなバランスがあって、あの曲はあのタイミングでなければ、作れていなかったかもしれないです。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

音楽的ルーツはなく、本もあまり読まない。大森元貴の言葉はどこから生まれる?

小高
 曲作りにはあまり時間をかけないということでしたけど、どれくらいで作れるものなんですか?

大森
 本当に集中して作ると、作れるときは2~3時間くらいでいけますね。“青と夏”のカップリングになった“点描の唄”は30分でできました。

小高
 30分はすごい。音楽のインプットはふだんからされているんですか?

大森
 いや、僕ぜんぜん詳しくないんですよ。洋楽とかもまったく通っていなくて。

小高
 ビートルズって、知ってます?

大森
 もちろん知ってます(笑)。でも昔から聴いていた、っていうわけでもないですし、音楽一家でもないんですよ。

小高
 でも確かに、何かに影響されている印象もあまり受けないバンドですよね。ミセスはミセスというか。そういう意味だと、何が源泉なんでしょうね。

大森
 僕も、ずっとわからないんですよ。昔から妄想っ子で、「こんなことができたらいいな」をどうやったら実現できるか、そのツールというかアウトプット先をずっと探していた気がします。それが、音楽と出会ったときに、音楽が好きだとか、できるとかではなくて、「これだわ」ってなったんですよね。小学6年生のころでした。

小高
 小学6年生でそんな感覚が。すごい。

大森
 それからは、もう音楽でやっていくんだと勝手に思い込んで、学校も行かずに毎日3曲くらい作って、みたいなことをしていました。音楽からクリエイトにつながって、っていうよりは、クリエイトがあって、たまたまアウトプットの方法が音楽だったっていう感じですかね。

小高
 ある意味、スポーツ選手の入りかたに近いですよね。早い段階で「これでやっていく」と決めて、そこだけをストイックに磨いてきたというか。

大森
 そうなんですかね? ただ、僕の場合は音楽が先にあったというより、クリエイトしたいという気持ちが先にあって、そのアウトプット先がたまたま音楽だったんですよね。

小高
 まわりのミュージシャンにそういう方はいるんですか?

大森
 いないんですよ。だから気持ち悪がられます(笑)。じつは、音楽トークがめっちゃ苦手なんです。詳しくないので。いわゆる音楽的なルーツみたいなものもなくて、それが一時期コンプレックスでした。でも、「もう誰かのルーツになっちゃおう」と思ってからはすごく気持ちが楽になって、そこからがミセスのフェーズ2みたいな感じでした。

小高
 最初に歌を聴いたときは、もともとオペラをやっていたのかな、みたいに思ったんですよ。でも、何もかも独学で磨き上げた人は強いですよね。

大森
 どういうふうに歌ったらいいだろうとかも、地道に考えるだけでした。どこかに習いに行くようなこともしていませんでしたね。絶対習ったほうがいいんですけど(笑)。

小高
 でもそうやって独学でやってきたからこそ、さっきの全部が密接に結びついている感覚につながっているのかな、とも思えますね。

大森
 もう、僕が究極に僕であり続けることを試される、音楽機関みたいな感じですね。過去や外部から引っ張り出してくるものもないので、どちらかと言うとゲームをプレイしたときの感覚とか、遊びに行った先で見た風景とか、その気持ちをどうやって音楽に昇華するか、みたいなものが強いかもしれないです。

 音楽からの刺激と言うよりは、私生活の中にある当たり前の情景、そこで密接に絡み合っている何かが源泉になっている気がします。

小高
 音楽のルーツがとくにないということでしたけど、本は読まれるんですか?

大森
 読まないですね。それよりはゲームを遊ぶことのほうが多いです。

小高
 そうなると、歌詞のインプットはどこからしているんですか? けっこう、口語じゃない古い言葉の表現も使われているじゃないですか。それはどこから来ているのかな、と。タイムスリップしているんですか?

一同 (笑)

大森
 いや、なんでしょうね。本当に本は読まないんですけど、どこかで知ったんですよね。

小高
 たとえば“ケセラセラ”っていう言葉も、昭和のおじさんが使っていたワードなんですよね。ミセス以前のケセラセラがどういうふうに使われていたかも思い出せないんですけど、あれをどこから持ってきたのかな、って思ったんですよ。

大森
 ケセラセラは、“なるようになる”っていう意味が、前向きだけど諦観も含んでいるようで、すごく好きな言葉なんです。“なんとかなる”とはぜんぜん意味が違うじゃないですか。どれだけがんばっても、行く先が決まっていると思うと困難に対しても少し気持ちが楽になるっていうのが、素敵だなと思います。ドラマの脚本をいただいたときに、この言葉が浮かんできたんですよね。

 本は読まないんですけど、高校のときに倫理を選択していたのもあって、哲学系の資料なんかを見るのは好きなんですよ。“ケセラセラ”の歌詞にもツァラトゥストラっていうワードを入れているんですけど、それはニーチェの
『ツァラトゥストラかく語りき』から引っ張っているとか、そういう知識だけはちょっとあります。

小高
 “メメント・モリ”とか。

大森
 そうそう。そういうものを派生させて言葉を紡ぐのが好きですね。

――人の思考や人間観察などに興味を持っていらっしゃるのかな、という印象を受けました。

大森
 やっぱり斜に構えて人を見る学生時代を過ごしてきましたからね。いまは冷笑時代なんて言われていますけど、みんながやっているのはまだまだ。冷笑というのはそんなものじゃないんですよ、って思います。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

「勉強にならない趣味」が見つからない。ふたりの創作を動かすもの

小高
 ゲーム以外の趣味みたいなものは何かありますか?

大森
 最近は行けていないんですけど、バレーボールで身体を動かすのはすごく好きですね。母がママさんバレーをやっていたので、その影響で。

小高
 でもバレーだと、指を怪我したらたいへんですよね。

大森
 そうなんですよ。その兼ね合いでなかなか行けなくなっちゃったんですけど、本当は好きなんです。趣味ってなかなか難しいですよね。趣味の音楽を仕事にしちゃっているので。

小高
 そうですよね。僕もそれで趣味がないんです。でも最近、何か趣味が欲しくなったんですよね。

大森
 なんで欲しくなったんですか?

小高
 これまで情熱でゲーム作りを続けてきて、自分のやりたいことをやってきたんですけど、もう一個、違うエンジンが欲しいなと思って。

 ずっと気を張っていくだけだとペースが変わらなくて、そのペースに飽きちゃうところもあるんですよね。だから一回気持ちを休ませて、また行くぞ、と気持ちを切り替えるために趣味が欲しいなと。でも、釣りは外に出たくないし、キャンプなんかもクーラーがないしな、っていう(笑)。

大森
 めっちゃわかるな。

小高
 だから最近は、人に会うと「趣味は何ですか?」って聞くようにしているんですよ。何かおもしろいものをおすすめしてもらえないかな、と思って。

大森
 でも、僕もやっぱり趣味ってないんですよね。僕らはそこが同じ軸にいる気がします。これじゃまずいのかな、と思っているところではあるんですけど、何をしても、どうしても仕事につながってしまうんですよ。

小高
 作ること自体が楽しいと、そうなっちゃいますよね。何かを始めても、「これは勉強になるな」って考えてしまう。だったら勉強にならないものを選べばいいんですけど、それもなかなか難しくて。

大森
 無理だと思います(笑)。そもそも「勉強にならない趣味を持ちたい」と考えている時点で、それを何かに活かそうとしていますからね。

小高
 確かに。あとはもう、暇なときに、どうやって人を●すか考えるくらいで。

大森
 それがクリエイティブにつながっているのが、本当にどうかしていますよね(笑)。

小高
 実行するタイプのサイコパスじゃなくて、本当によかったです。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
――クリエイティブにつながるインスピレーション源という点では、小高さんは音楽からイメージが湧くようなことはありますか?
小高
 インスピレーションを受けるというよりは、フィルターをかけるような感覚ですけど、多いですね。それこそ“Loneliness”とか“アウフヘーベン”とか、ああいうので気持ちのフィルターをかけてから仕事を始めることは多いです。

 “Loneliness”って、もう「死にたい今日も」から始まるじゃないですか。いわゆるミセスのイメージとは逆なんですけど、人にミセスを勧めるときはあの曲を勧めています。

大森
 パブリックイメージと相反したところで人に勧めてもらえているのは、めっちゃうれしいです。

小高
 ミセスをなんとなく知っている人って、ポップなイメージしかないと思うんですよ。僕のまわりには鬱屈とした奴が多いので、「明るい曲はちょっと」みたいに言うんですけど、いや明るくないぞ、と。この曲を聴いてみろ、「死にたい」から始まるんだぞ、って言って勧めています(笑)。

 あの曲を聴いていると、たとえば『スーパーダンガンロンパ2』がアニメになったら、エンディング曲はこれだな、って思うんですよね。もうこういうカットで進んで、ここでエンディングに入るな、っていうのが想像できちゃうんです。

 『ダンガンロンパ』を最初に作っていたときは、hideさんの“ever free”という曲を毎日のように聴いていました。当時は移動中にあの曲を聴いて、『ダンガンロンパ』のネタを考えていたんですよ。

 “サイコポップ”という作品のフィルターが、まさにhideさんの世界観に近かったんです。あの曲で自分の気持ちを作品の方向へ持っていきながら、アイデアを考えていましたね。

――大森さんは音楽以外の部分からインスピレーションを受けるとのことでしたが、小高さんはゲームからの刺激という点ではいかがですか?

小高
 これはあんまり多くの人が読む対談で言いたくはないんですけど……、僕はいろいろなところからパクっているので(笑)。

大森
 インスパイア、インスパイアですね(笑)。

小高
 そう、インスパイア! おもしろいと思った素材をちょこちょこかき集めて、それを僕の中にある調理法と、僕しか知らない調味料で炒めて、僕のものにして出すようにしています。

大森
 そうなったらもう、シェフは小高さんですね。

小高
 そう。そのパターンが多いから、逆に言うとネタ切れはしないですね。

大森
 すごいな。

小高
 今度はまったく別のテイストを持ってきて、混ぜ合わせたらこうなるかも、みたいに考えることが多いですね。だからゲームでも音楽でも、いろいろなものからインスピレーションを受けます。

 最終的なアウトプットを想像するときに音楽を聴くと、言葉では表せないエモーションの部分にフィルターをかけられるんですよね。作品によっては、Squarepusherみたいな、ハードコアなドラムンベースやクラブミュージックを聴きながら、「この感覚で出したい」と考えることもあります。

 一度ガーッと考えていても、何かでリセットされると、すぐには同じ気分に戻れないじゃないですか。そういうときに、作品に合う曲を聴いて、もう一度スイッチを入れることはよくありますね。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

“裏切らない”ことも裏切りになる。ふたりが語る自分らしさと創作


――おふたりとも長く活動を続けられてきて、ファンが期待するミセスらしさ、小高作品らしさのようなものがあると思います。そういった期待にどれだけ応えるか、あるいは逆に裏切るか、などは意識されますか?

大森
 言葉選びが難しいんですけど、我々もデビュー時はギターロックで始まって、いったん休止して復帰したと思ったらダンスを踊ったり、かと思えば朝ドラに出たりして、わりとずっと、わけのわからない活動をさせてもらっているんですよね。

 ミセスは明るいポップだと言う人もいれば、いやあれはポップのふりをした何かだと思う人もいて、いろいろな解釈があるんです。その人たち全員を楽しませようとすると、どこかに歪みが生じてしまう。

 だから行き着いた結論は、「僕が楽しければいい」みたいなことなんです。僕が楽しむためにやって、そのさまを楽しんでもらえるような活動をしたい、僕もメンバーもそういう考えに至っています。逆に言えばすごく意識しているんですけど、けっきょくは僕がワクワクして、それでみんなにもワクワクしてもらいたい。そういうふうに派生していけばいいなと思っています。

小高
 さっきの話とも少し被ってしまうんですけど、やっぱりいきなり『モンハン』や『スーパーマリオ』には勝てないんですよ。いろいろなゲームがある中で手に取ってもらうには、ある種の逆張りというか、個性が必要なんです。ほかではできない体験を与えないと、話にすらならないんですよね。まわりが巨大な帝国ばかりですから。

 そういう意味で、自分らしさみたいな部分は武器になると思っていて、丸くならないように、トガったものでユーザーを刺しに行くくらいの気持ちで作っています。大森さんが言った通り、自分がやりたいものを突き詰める、ということに近いかもしれません。そこで勝負するしかないので、開き直ってやっている感じですね。

大森
 自分らしさって難しいですよね。自分が折れていったところを数えていけば、それが自分らしさにはなるのかな、とは思いますけど。

小高
 けっきょくひとりの人間なので、無理しなくても勝手に出てきちゃうようなものではありますよね。だから、前作から大きく変えようみたいなことも、意識しなくていいのかなと思っています。“被ってるじゃん”て言われても、「いや、いまはその気分だから」みたいなことでいいんじゃないかな、と。

大森
 うん、大好き。

一同 (笑)

――急な告白! 大森さんもおっしゃっていましたが、小高作品を遊ぶからには裏切られに行くような、そういう感覚もありますよね。

大森
 ありますね。

小高
 そうなると、一周回って裏切らないっていうのもアリな気がしますね。

大森
 それもいいですよね。たぶん僕、うれしすぎていろいろ出ちゃいますよ。「裏切らないんだ!」っていう。僕はもう、それぐらいカルト的に小高さんの作品を愛しているので。

 でも小高さんを知る身としては、ただのいい話で終わったらそれはそれで気持ち悪いですよね。「マジか」ってなるとは思いますけど、本当に僕はハンドリングされたいので、どうなっても楽しめてしまうと思います。

――衝撃という点で言えば、『レインコード』の冒頭の展開もすごいですよね。序盤からまさかの展開というか。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
大森
 あれも大好きです。本当におかしいんじゃないかと思いましたよ。発売前にあれだけいろいろと展開してからの、「マジかよ」っていう。『V3』もそうですけど、やっぱり「ふざけんなよ」ってなるんですよね(笑)。

小高
 あれは本当は、『ダンガンロンパ』でやりたかったんですよ。15人全員を発売まで紹介しておいて、ゲームが始まったら一気にひっくり返して、まったく違うメンバーで「誰だ、こいつら」からスタートする。でも、それは宣伝上もコスト的にも、どう考えても無理だったんです。

 『レインコード』は序盤に登場するのが5~6人だったので、「これならやっとできる」と思いました。

大森
 しかも、超聴覚や生命探知、念写みたいに、この先でいくらでも活かせそうな能力が、ひとりずつちゃんと用意されているんですよ。まったく抜かりがないから、余計に「マジかよ」と思いました。

 あのシーンを見た瞬間、「あぁ、僕はこれから3日間くらい、寝ずにこのゲームをやるんだな」って悟りました。大好き。

――また告白が(笑)。

大森
 もう全部最後に「大好き」って付けたいです(笑)。『レインコード』はまた記憶をなくして遊びたいですね。

小高
 僕も、『レインコード』は最後のほうとかがけっこう好きなんですよ。終わりかたが大人っぽいな、って。『ダンガンロンパ』にはなかった読後感で、気に入っています。

大森
 そうなんですよね。『レインコード』の次回作はないんですか?

小高
 そこはスパイク・チュンソフトさん次第ですね(笑)。ゲーム業界はそこがおもしろくて、『ダンガンロンパ』も『レインコード』も、僕らが会社員時代に作った作品なので、権利はスパイク・チュンソフトさんが持っています。ゲームの権利は、音楽の印税などとは仕組みがかなり違うんですよ。僕らも作品の権利を持っているのは『ハンドレッドライン』だけなんです。

大森
 ああ、そうなんですね。小高さんの頭の中では、次回作を作るとしたらやれるものは揃っているんですか?

小高
 作ろうと考え始めればできると思います。でも、その時その時でいま作っているものへ全部出し切るようにしています。つぎの作品のためにアイデアを溜めるというより、つぎが始まると決まったら、そのときに全力で考えるという感じですね。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

小高和剛が名付ける大森元貴は「超高校級の●●●●」

大森
 『ハンドレッドライン』で言うと、NIGOUがかわいいですよね。プレイしているときに思わず大谷育江さんに「出てきたよ!」って連絡しちゃいました。

小高
 大塚芳忠さんに演じていただいたSIREIとのコンビもよかったですね。マスコットで言うと、『ダンガンロンパ』のモノクマとモノミの掛け合いもすごく好きなんですよ。『スーパーダンガンロンパ2』は今度リメイク+新作の『スーパーダンガンロンパ2×2』が出るんですが、オリジナル版では、モノクマを大山のぶ代さん、モノミを貴家堂子さんに演じていただきました。

 ゲームの音声収録って、アニメのように同じ場所で掛け合うのではなく、基本的にはひとりずつ収録するんです。だから、ふたりが漫才をするシーンも、ぜんぜん掛け合いになっていなかったんですよね。でもそれが逆に、どこか異次元の会話みたいになって、めちゃめちゃおもしろかったんです。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談※『スーパーダンガンロンパ2×2』:『V3』から約10年を経て登場するシリーズ最新作(2027年初頭にスパイク・チュンソフトから発売予定)。『スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園』のビジュアルや演出などを刷新した“オリジナルモード”に加え、同じ舞台・登場人物ながら、とある事件をきっかけに被害者や犯人、トリックまでもがまったく異なる完全新規シナリオ“キョウキモード”を収録。新シナリオは原作と同等以上のボリュームで展開される。
大森
 合わなかったことが、逆に合っていたんですね。

小高
 そうなんですよ。こっちではド○えもんがしゃべっていて、あっちではタ○ちゃんがしゃべっていて、ふたりで会話している感じがまったくしない。「なんだこれは!」と思ったんですけど、それが最高でした。

大森
 (笑)。そもそもですけど、モノクマを大山さんに、っていうのはどう決まっていったんですか?

小高
 会議で誰に演じてもらおうかと話していたときに、僕がふざけて「ド○えもんは?」って言ったんですよ。そうしたらたまたまツテがある人がいて、「聞いてみる」となって。それでのぶ代さんが会社に来てくださって、いったんその場で台本を読んでくださったんです。そのときの発声が、もうめちゃくちゃ通る声でイメージとしても最高だったので「絶対やってほしい」となったんです。のぶ代さんものぶ代さんで、いい感じじゃない、みたいな反応で。

大森
 それまでやっていた役から考えると、そこもちょっとおかしいですよね(笑)。

小高
 のぶ代さんの中だと、モノクマはいい子らしいんですよ。

大森
 なるほど?

小高
 まったく、いい子ではないんですけどね(笑)。のぶ代さんのなかではそれが定着していて。「かわいくていい子なのよ、この子は」って。

 ただ唯一のぶ代さんからリクエストされたことがあって、当時は犯人の最期のシーンについて、まだ“ショケイ”って言っていたんです。でも、のぶ代さんがそれは怖いから嫌だっておっしゃって、それでオシオキに変わったんです。

大森
 大山さんのおかげだったんですね。

小高
 そうなんですよ。それが逆に、ただのサイコじゃなくてサイコポップなワードになってくれたので、結果的によかったですね。

大森
 大山さんもそうですけど、声優の皆さんがすごく豪華ですよね。いまでこそ『ダンガンロンパ』は大きな作品だと思いますけど、最初はまだ完全新規の作品じゃないですか。そこにあの声優陣はすごいですよね。

小高
 最初にのぶ代さんがハマって、そこに苗木誠役の緒方恵美さんも入ってくださったので、そこからは順調に集まってくれました。だから最初は売れるかなと思ったんですけど、初週の販売本数はそうでもなかったんですよね。これはダメかなと思っていたら、そこからジワジワと売れてくれて。

大森
 僕の兄じゃないですけど、「これやってみてよ」って広めたくなった人が多かったんでしょうね。

小高
 そこは本当に救われました。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
――発売から約1年後に廉価版が出て、廉価版が長く売れ続けるという当時でも珍しい状況でしたね。
大森
 そこから、いまだにカフェとのコラボなどが開催されているわけじゃないですか。かなり珍しい現象ですよね。

小高
 有害図書に片足突っ込んでいるような作品なんですけどね。

大森
 いやいやいや(笑)。

 『ダンガンロンパ』を学園ものにするとか、“超高校級の○○”みたいなキャラクターが出てくるのは、小高さんのなかで学校に対するこだわりみたいなものがあったんですか?

小高
 高校生とかを描くのが好き、というのはありますね。やっぱりゲームのゴールに至ったときに、キャラクターにはいろいろな意味で成長していてほしいんです。ゴン太もそうですけど、最初はこうだと思っていた奴がじつは、みたいな意外性も含めてですね。そういう意味で、伸びしろはおっさんよりも高校生のほうがあるな、と(笑)。

大森
 ちなみに、僕に“超高校級の○○”っていう肩書を付けるとしたら、何になりますか?

小高
 えーーー! それ、めちゃめちゃふつうのヤツを出しちゃいそうで嫌なんですよ(笑)。

大森
 ミュージシャンとかですかね。

小高
 ……あ、“超高校級のエンタメ界の大谷翔平”。

一同 (笑)

大森
 肩書に人名入ること、あります!?(笑)。

小高
 唯一無二です(笑)。大森さんは何刀流もやっていますし、5、6年くらい前からエンタメが細分化していくなかで、ミセスは逆に国民的な存在になっているじゃないですか。単なるミュージシャンでもないんですよね。あの活動を形容するとしたら、もう大谷翔平しかないんじゃないですかね。

大森
 うれしいです。

小高
 でも、最初に死ぬでしょうね。

大森
 どうやって死ぬんだろう。

小高
 「明日ライブやるぞ!」ってみんなでテンションが上がっている中で、幕が開いたら、プラーン……、みたいな。

大森
 もうそこまでできてる(笑)。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

大森元貴がゲームを作るなら? 小高和剛と考える“音楽×ゲーム”の可能性


――大森さんは舞台の演出など、総合的な演出も手掛けられているかと思いますが、ゲーム作りに興味はありますか?

大森
 いやいや、そんな簡単には言えないです。おもしろそうだなとは思いますけど、思うだけですね。

小高
 作ってほしいですけどね。大谷翔平だし、できるはずですよ。大谷翔平って、たぶんサッカーうまいじゃないですか。彼はスポーツなら全部できると思うんですよ。大森さんはエンタメ界の大谷翔平だから、ゲームも作れると思います。

大森
 大谷翔平だから?

小高
 そう、大谷翔平だから。

大森
 大谷翔平じゃないんですよ。

一同 (笑)

小高
 でも、糸井重里さんが『MOTHER』を作ったみたいに、「こういう切り口もあったんだ」みたいなことはできるんじゃないかと思います。何年かしたらAIが進歩してもっと簡単にゲームが作れるようになっているかもしれないですし、ぜひ見てみたいです。

――ゲームには、プレイヤーの操作によって体験が変わる、ほかのエンタメにはないインタラクティブ性があります。大森さんなら、それをどう活かしたいと思いますか?

大森
 まだ具体的に考えたことはないんですけど、ゲームには、ほかのエンタメでは得られないのめり込みかたと、人に何かを体験させる力があると思うんですよね。だからこそ、自分なら何を作るのか、どうやって作るのかは気になります。

小高
 ゲームって生まれてまだ50年くらいの歴史の浅い文化なんですよね。だからもっともっと進化できると思っていて、物語の見せかたもまだ突き詰められていないと思いますし、音楽の聴かせかたも、BGMだけじゃない何かがあると思うんです。

大森
 そうですね。それは本当に思います。

小高
 そういう意味で、掘りがいのあるジャンルなんですよね。極論、ボタンをひとつ押すだけでもゲームなんですよ。『ダンガンロンパ』の学級裁判とか、『ハンドレッドライン』で誰にトドメを刺すか決めるときも、ボタンを押す瞬間の葛藤があるじゃないですか。それ自体がゲームなんですよね。

 音楽にしても、ゲームを介した新しい届けかたみたいなものは、あるんじゃないかと思います。具体的なことはまったく思いついていないんですけど(笑)。もしかしたら、大森さんがゲームを作り始めたら、音楽をこういうふうに配置したい、こうやったらおもしろいんじゃないか、みたいなアイデアが生まれるかもしれないですね。

大森
 確かに、何か出てくるかもしれないですね。

――“天国”についての、映画を見た後にこの曲が流れたら読後感がどうなるか、といった発想もある種インタラクティブというか、近い部分もあるのでは、と思います。

大森
 広告やマーケティングも含めて、全部がエンタメであるべきだとは思っています。グッズもライブの衣装も、すべてのミーティングに出て話を聞いています。

小高
 全部ひっくるめて、世界観を作っているんですね。

大森
 そうです。だから、全部インタラクティブなものであるべき、っていう考えもありますね。

――ゲーム業界で言うとディレクターの視点に近いのでしょうか。

小高
 ディレクターの仕事も会社によりますからね。僕はグッズとかは見ていないので(笑)。大森さんはクリエイターであると同時に表現者でもあるので、そういう意味でトータルの世界観作りにはすごく気を遣っていらっしゃるんだな、と思います。

 僕らの場合は、ゲームを作り終えたら、基本的にはそこでおしまいなんですよ。もちろんバグがあれば直しますし、いまならアップデートもありますけど、大森さんは作品を出した後も、ライブやグッズを通して世界観を展開し続けるじゃないですか。そこはゲームとは少し違いますよね。

 たとえば15分くらいの音楽を作ってもらって、その時間で終わるゲームなんかはいいかもしれないですね。音楽の展開に合わせてゲームも展開して、可能ならゲームの展開によって曲も変化して、でも15分の1曲で終わる、みたいな。

 音のプロといっしょに作るなら、いっそ映像を排した、目に頼らない耳だけで遊ぶゲームもおもしろいかもしれないですね。そういうゲームなら、目の不自由な方も遊べる設計にできるかもしれないですよね。とか、いい奴っぽく言ってみました。

大森
 大好き。

一同 (笑)
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

曲では泣かない大森、泣くまで作る小高。ふたりの“完成”とリセット

小高
 ご自身の歌詞のテーマって、どれくらいリスナーさんに伝わってほしい、伝えたいと思いますか?

大森
 本当は100%伝わってほしいですけど、そんなのは無理なので、歌詞や物語の受け取りかたは、それぞれに委ねられるべきだと思います。

小高
 ライブとかだと、歌詞で号泣される観客の方も多いじゃないですか。あれもすごいなと思うんですけど、大森さん自身、歌詞や世界観に入って泣いてしまうことはないんですか?

大森
 あんまりないですね。あくまで届けている感覚です。

小高
 マスタリングを終えて、全部終わってから聴いたときに、「めっちゃいい曲じゃん」って泣けてきたりは?

大森
 僕はないですね。メンバーはライブで泣くこともあるんですけど、僕は作っているときが気持ちのピークなんですよね。完成した瞬間に、その子のポテンシャルや最大公約数みたいなものを想像しながら産み落としている感覚があるので、その後に起きることは、ある意味でもう知っている現象なんです。

 ちょっと説明が難しいんですけど、感動もしているし、ありがたさもあるんですけど、やっぱりいちばん感動するのは曲が生まれた瞬間ですね。

 でも本当に、歌詞ひとつ、楽曲1曲で救われましたと言ってくださる方もいるので、それはすごくうれしいです。僕が直接何かの影響を与えるというよりは、巡り巡ってそういうことが起きている、っていう感覚ですね。自分で種を植えるんじゃなくて、タンポポの綿毛をふっと飛ばして、どこかでタンポポが咲くかな、くらいの気持ちというか。

小高
 僕もテーマとか言われちゃうと、そんな大それたことまでは正直思っていなくて。希望や絶望を伝えたいというより、物語を書くうえで必要だから書いているところがあります。

大森
 わかる気がします。

小高
 自分の中でテーマのようなものがあったとして、でもそれをお客さんが持って帰らないといけない、ということでもないと思うんですよ。ムダな時間でも楽しんでもらえればそれでよし、みたいに思っていますし。ムダがいちばんの贅沢とも言えますしね。

 でもいまお話を聞いていて、僕と逆だなと思ったのは、僕は完成させるときは泣くまでやるんですよ。たとえば『レインコード』の死に神ちゃんのシーンとか、『スーパーダンガンロンパ2』のラストとか、『ハンドレッドライン』も、泣けると言われているところは泣かせたくて作っているんですよ。

 そういうところは、自分で音楽を選んで、表情も選んで、シナリオの文章も自分で調整しているんですが、そのうえで自分がテストプレイしたときに、ほろりと涙が落ちてきたら完成、っていうふうにしているんです。これは絶対ですね。

大森
 泣けなかったときは、その原因をとことん突き詰めて直していくんですか?

小高
 そうですね。

大森
 でも、それってすごく俯瞰して見ないとできないですよね。

小高
 そうなんですよね。僕はそれがけっこう得意なんですよ。

大森
 俯瞰と主観のスイッチングができるんですね。おもしろい。

小高
 あんまり仕事に集中していないので(笑)。

大森
 いやいやいや(笑)。

小高
 でも、いい意味で、テストプレイのときは仕事として集中しすぎず、シンプルにぼーっと遊べるんですよ。作り手としての自分から、ユーザーとしての自分にスイッチするというか。

大森
 プレイしているときは、ちゃんとユーザーなんですね。

小高
 そうですね。その状態で自分が泣けるかどうかを見る、という作りかたをずっとしています。泣けなかったら、どこに原因があるのかを作り手の視点に戻って考える。その切り替えは意識していますね。

 でも、大森さんもそういうスイッチングはできるんだと思いますよ。じゃないと、のめり込んで30分や数時間で曲は作れないでしょうから。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談
――小高さんは開発チームの意見を取り入れてシナリオを変更することもいとわないスタイルですが、大森さんもメンバーから言われて変えるようなことはありますか?
大森
 言われて、「そうだな」と思ったことはもちろん変えます。ワンマンに見られがちなんですけど、整体や歯医者、美容院などで、自分ではできないことを施術してもらう時間がすごく好きなんです。

 仕事でも、自分が想像もつかなかったこととか、「こっちのほうがよくないですか?」みたいなことを言われたいんですよ。でも、ゼロイチのクリエイトをしているがゆえに、周囲の人からはなかなか言いづらいんだと思います。

――ご自身の専門分野でないところからの驚きを受けたい、という意味ではゲームから受ける刺激はまさにそれに近いのかもしれないですね。

大森
 そうですね。貴重なものだと思っています。

小高
 ゲームは没入感があるからいいですよね。遊ぶためのハードが必要だし、自分で動かさないといけないからエンタメとしてのハードルは高いんですけど、そのぶん没入感が強くて、その世界に逃避できるのがすごくいいし、そこがゲームの武器なんだ、っていうのは意識しています。

大森
 ゲームの没入感はいいですよね。メンバーともいまだに、夜にボイスチャットをつなぎながらゲームをしているんですよ。ライブが終わった後に、夜中まで『GTAオンライン』をやることもあります。

 そうやって遊びながら、雑談のような形で大事な打ち合わせをすることもあるんですよね。音楽活動を始めて十何年経っても、娯楽に没入しながらメンバーと過ごす時間は、ずっと大切にしています。ゲームは僕らにとって、やっぱり特別なものなんです。

――ものすごい人数の前でライブをした後に『GTAオンライン』をやっているのはすごいですね(笑)。

大森
 めちゃくちゃ戦っています(笑)。『エルデンリング』もやりますね。

小高
 『エルデンリング』みたいなゲームも、『ダンガンロンパ』みたいな字を読むゲームもそうですけど、やっぱり思考がリセットされますよね。ほかの情報をシャットアウトできるというか。

大森
 そうなんですよね。脳みそがゲームでいっぱいになるので、それもありがたいです。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

「感情をぐちゃぐちゃにしてほしい」――“相思相愛”対談を終えて


――そろそろお時間も迫ってきたということで、お互いに言葉を交わされたご感想を伺えればと思います。

小高
 すごく楽しかったです。ミュージシャンの方とお話しする機会があまりなかったので、怖い人だったらどうしようかと思っていたんですよ。

大森
 そんな、ぜんぜんですよ。

小高
 ロックミュージシャンって、ちょっと怖いイメージがあるじゃないですか。

大森
 あぁ、ロックミュージシャンは怖いですね。

小高
 ●●●さん(編注:とあるミュージシャン)みたいな人だったらどうしよう、みたいな。

大森
 ここはリアクションしないでおこう。

一同 (笑)

小高
 すごくお話ししやすかったですし、こういうふうに考えて曲を作っているんだ、っていうのは、刺激になると言ったら月並みですけど、本当に刺激的でした。しかもそれを尋常じゃないペースでやられていますからね。本当に、超人だと思います。

――大森さんはいかがでしたか?

大森
 いやもう、ご褒美でした。すごくうれしかったですし、学生のときに精一杯『ダンガンロンパ』をプレイしていた僕に伝えてあげたいです。このインタビューの直前はメンバーといっしょに仕事をしていたんですけど、「これから小高さんと会ってくるんだ」って自慢してから来ました。本当に楽しかったですし、まだまだ話し足りないです。今後ともよろしくお願いします。

小高
 9月30日に発売される6thオリジナルフルアルバムも、より楽しみになりましたね。

大森
 ゲームでも何か協力できることがあれば、何なりとおっしゃってください。

――ぜひ何かしらのコラボを実現してほしいですね。では最後に、お互いに今後どのような作品を作ってほしいか、メッセージを交わしていただければと思います。

大森
 僕はもう本当に、散々な気持ちにさせてほしいです。僕をどうにかさせてください。感情をぐちゃぐちゃにしてほしいですね。

小高
 感情のジェットコースターを作ることと、止めどきをなくすことっていうのはめちゃめちゃ大事にしているんですよ。大森さんに改めて言われて、是が非でも死守しないといけないですね。

大森
 響いてた(笑)。でも本当に、そこは大事ですよね。

――小高さんから大森さんに望むことは何でしょうか。

小高
 僕からはもう、長生きしてほしいです(笑)。無理しすぎずに長生きして、より長く国民的な存在であり続けていただきたいですね。何も言わずとも、ミセスの音楽が変わり続けているのは、聴くだけでわかりますから。

 あとは、それを続けていくための健康やモチベーション、そういうところとうまく付き合いながら、なるべくたくさんのものを作り出してほしいですね。いまは音楽やテレビ、CMなどがメインになると思うんですけど、大森さんのクリエイティブはもっといろんなことができると思っています。

 ゲームに限らず、絵を描いたり小説を書いたり、新しいことに挑んでほしい。ご自身は本を読まないということでしたけど、そういう人が小説を書いたらきっと新しいものができあがる。そういうのも楽しみです。僕らを楽しませ続けてほしいですね。
大森元貴氏(Mrs. GREEN APPLE)「ひねくれたのは『ダンガンロンパ』のせい(笑)」。ポップの奥にある絶望と希望。小高和剛氏と語る“相思相愛”対談

担当者プロフィール

  • 世界三大三代川

    世界三大三代川

    ファミ通.com編集長。『ゼルダの伝説』、『ファイナルファンタジー』、『ダンガンロンパ』、『スプラトゥーン』などの記事を担当。記事のほか、動画番組などのプロデュース、“スプラトゥーン甲子園”の解説なども。

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