湿った空気、崩れかけた廊下、ずるりと何かを引きずる音、奇怪な実験器具、狂人のうわ言、埃をかぶった手記。やがてすべてが人智を超えた宇宙的恐怖でひとつに繋がる……。『The Sinking City 2』は、そんな“クトゥルフもの”の抗いがたい魅力がしみ出してくるサバイバルホラーゲームだ。 本作は日本語にもローカライズ対応し、2026年8月18日午後6時よりプレイステーション5/Xbox Series X|S/PCで発売開始。ひと足先にレビュー版をプレイしたので、その内容をご紹介しよう。
クトゥルフ神話の世界観によるオリジナルホラー作品
舞台となるのは1920年代アメリカ、謎の洪水による浸水が収まらず、半ば水没しまま放棄された街アーカムだ。オカルト研究家の主人公カルヴィン・ラファティは、儀式の失敗により“幻夢境”に魂が囚われてしまったまま眠り続けるパートナーのフェイを救うため、手がかりを求めてアーカムをさまようことになる。
ゲームの形式としては、かなりオーソドックスな三人称視点のサバイバルホラー。章ごとに定められたエリアを乏しい銃弾とともに歩き回り、謎を解いたりカギとなるアイテムを入手して、新たなルートを開き更なる深淵へと迫っていく……という、よくある感じだ。
でもオーソドックスなのは悪いことじゃない。前作『The Sinking City』ではオープンワールドにサバイバルホラーに探偵アドベンチャー……と要素を盛り込みすぎて中途半端な仕上がりとなってしまったところ、今作ではプレイ要素がしっかりまとまって、本題のストーリー体験までスムーズなものになっている。

街中に発生しているワーム“スリザー”は、死体を乗っ取ってゾンビのようにしてしまう。

アーカム市街では移動手段としてボートが活躍するが、船をつけられる場所は決まっていて、船で自由に探索するというほどではない。
さて本作で重要なのが、H・P・ラヴクラフトらが生み出したクトゥルフ神話の作品群にめちゃくちゃ影響されつつも、“1. 前作と主人公も場所も異なる独立した作品である”ことと、“2. 特定の原作を持たないオリジナル作品である”ということだろう。なので前提知識なしにプレイ可能だ。
でも実際遊んでみて驚いたのが、思っていた以上にド直球なクトゥルフもののシェアードワールド作品だったこと。地名をはじめとする固有名詞や概念を引用しまくっているのは飾りじゃない。じめっとした世界の底が突然抜けてむしろ晴れ晴れとどこまでも落ちていくような話の転がり方までちゃんと“あの感じ”なのだ。

両眼をスリザーに置き換えることで古文書を読めるようになっちゃった人。スリザーに乗っ取られた死体たちと比べると危険ではないのだが、より不気味だ。

探索中に見つけた地図。アーカムは前作の舞台オークモントとは結構離れた、ミスカトニック河の河口近くの街というのがわかる。
サブテキストも含めて語られるホラー体験がたまらない
ミスカトニック大学に始まり、アーカム市街、エイクリー記念病院、そしてアーカムの魚市場……と章ごとに探索していくなかで、カルヴィンはアーカムで蠢く陰謀の片鱗をあちこちで目撃することになる。
このオリジナルのクトゥルフものホラーとしてのストーリー体験は、本作の核であり最も楽しい部分だ。これはカットシーンを交えて語られるメインストーリーだけでなく、各地に残された手記やメモなどのサブテキストや、ラジオで語られる怪異譚なども全回収したいところ。街中のさまざまな日常の場面がおかしなものに侵食されていた様子がちょっとずつわかってくる。

ラジオでは“マッシュルーム・ジャック”なる人物によりさまざまな怪奇譚が披露される。妄執が生み出す悲劇、奇妙な治療の結末、超自然的悪意に魅入られた人々……。

街の存在自体が州知事に否定されるというとんでもない事態。サブテキストは謎解きに関係なくともできるだけコンプリートしたい。
サバイバルホラーとしてのプレイ要素は一長一短あり
では新作サバイバルホラーとしてのメカニズム部分はどうかというと、“基本的にスムーズに遊べるがちょっと古い部分や難もある”といったところ。
サバイバル&クラフト要素はインベントリがキツい
特にアイテムを携帯するためのインベントリの制約はかなりキツく、探索をきっちりやってると新しい武器(&その弾)も増えていくので、アップグレードを逃さないようにプレイしても最終盤まではあまり余裕がない。
回復や弾を作れるクラフト用の素材の種類が4つで固定されているのはせめてもの救いだけど、“とりあえず出てるアイテムを収納するためにセーフルームと往復する”みたいなあるあるをやらざるをえない。

初期状態のインベントリはこんな感じ。あっという間に弾や素材で埋まって謎解き用のアイテムが持てなくなったりするので、探索しまくって一刻でも早く拡張するしかない。
戦闘は強すぎる回避に頼りがち
TPS(三人称視点シューティング)要素はかなりスムーズで、このタイプのゲームをやったことがある人なら特に違和感なく遊べると思う。
街中に這い回るワーム“スリザー”に乗っ取られた人間がメインの敵になるのだが、先に書いたように弾数が厳しめなので、ボコッと飛び出ている腫瘍を狙ったり、足を撃ったり回避で敵のしがみつきをスカして転倒させたところを踏みつけるといったテクを交えつつやりくりしていくことになる。あまり弾を使わずに切り抜けられた時は結構嬉しい。

足に腫瘍ができている時は、破壊ダメージに加えて転倒からの踏みつけで追撃も狙うチャンス。
ただしゲーム全体を通した戦闘のバランスはあまりよくない。敵の種類が限られていてボス戦以外の難所が単なる集団戦になりがちだし、一方で回避アクションがめちゃくちゃ強く、“回避連打で戦わずに単に逃げるのが正解”という場面まであるぐらいだ(セリフで「逃げるしかない!」とか言ったりする。うーん説明的)。
なので慣れてくると集団戦も回避連発でとりあえず距離を取って手近な敵を倒していくだけになってしまうし、そのカウンターとして遠距離弾や長距離の飛びつき攻撃をしてくる敵が用意されているけども、それはそれでこっちの行動が不意にとがめられたりして結構フラストレーションになる……といった感じなのだ。
まぁ戦時下のウクライナでの開発ということで限界があったのかもしれないけど、土台はしっかりしてると思うだけにもうひと声欲しかったな、というところだ(ゲーム起動時にこれまでに発令された空襲警報のえぐい数が示されてていたり、レビュアー用資料に開発スタッフの周囲の被害の様子が載ってたりして本当に大変だと思う)。

逃げ回って距離を取りながら遠距離弾を撃ってくるというウザイ敵。

この部屋にたどり着いたら、ぜひすべての“症例”をチェックしてみて欲しい。筆者は打ちのめされた
マップは探索コンプに便利だが、強化にはそもそも周回前提の部分も
一方で探索&サバイバルに欠かせないマップはかなり使いやすい。最近の『バイオハザード』シリーズのように、マップ上に回収可能なアイテムが表示されたり、謎もアイテムも残ってない状態になると部屋の表示色が変わったりするので開きまくりだ(便利すぎて、ボス戦中にも再湧きしたアイテムを見逃さないために開いてしまう)。
じゃあマップで全回収を狙っていけば最強になれるかというと、そうでもないのが悩ましいところ。探索や謎解きの報酬で得られるポイントを使って能力強化を得られるシステムがあるのだが、これが周回プレイ前提で設計されているのだ。1周目終盤ぐらいになるまではなかなか恩恵を感じづらく、これは正直ちょっとうーんという部分だ。

マップは全部青くしていくのをオススメしたい。赤いうちはまだ何かしらの取り逃しがあるということだ。

能力をセットするための追加スロットを開けるのに結構なポイントを使ったり、最上位は完全に周回プレイ限定だったり、そもそも上位の能力に何があるのかがアンロックするまでわからなかったり、1周目だと効果を感じられるのに時間がかかる。
カルトホラー的な芯がちゃんとあるコズミックホラー
ほかにも、主人公がやたら章終わりで気絶したかと思えば、ヒロインのフェイもやたらあっちこっち敵に連れ回されてたり、ちょっとコテコテな部分があるのは否めない。
でも優れたB級カルトホラーっぽいというか、「こういう話をやりたいんだ!」という根本の部分は間違いなくしっかりしてる作品だ。事態が解決するどころかどんどん理解不能な方向に悪化し、「もしかすると運命ははるか以前に尽きていたんじゃないか」と絶望するような宇宙的恐怖。それを味わいたい人はぜひどっぷりと浸かってみてほしい。