福田己津央インタビュー。「ユーザーが喜んでくれるなら、どんな展開にしてもらってもかまわない」ロボット作品の夢の舞台と語る『スパロボ』は、“敵”であり“味方”だった【スパロボ35周年記念】

福田己津央インタビュー。「ユーザーが喜んでくれるなら、どんな展開にしてもらってもかまわない」ロボット作品の夢の舞台と語る『スパロボ』は、“敵”であり“味方”だった【スパロボ35周年記念】
 シミュレーションRPG『スーパーロボット大戦』シリーズが、第1作発売から2026年で35周年を迎えた。これを記念し、ファミ通.comでは、『スーパーロボット大戦』シリーズに関わってきたロボット作品を手掛けるクリエイター陣へのスペシャルインタビューを掲載する。
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 第3弾では、『GEAR戦士電童』や「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」、『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』などで知られる福田己津央監督にインタビューを実施した。

 原作では悲劇的な運命を辿るキャラクターが展開によっては生存するなど、“IF”のストーリー展開も人気のひとつである『スーパーロボット大戦』。数々のロボット作品が集結するプラットフォームである『スーパーロボット大戦』に対して、福田氏はどのように視線を注いでいるのか。アニメーション監督・演出家としてのリアルな視点から、アニメとゲームの関係性についてじっくりと語っていただいた。

福田己津央ふくだみつお

サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)のスタッフとして、数々のアニメ作品に携わる。現在はフリーのアニメーション監督・演出家として活躍。監督としての代表作として、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』、『GEAR戦士電童』、「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」など。現在は「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ZERO』を制作中。(文中は、福田)

じつはゲームは“仮想敵”だった

――福田監督の作品が初めて『スーパーロボット大戦』に参戦したのは『スーパーロボット大戦R』の『GEAR戦士電童』、据え置き機では『第3次スーパーロボット大戦α』の『機動戦士ガンダムSEED』でした。ご自身の作品がゲームになると聞いた当時の心境はいかがでしたか?

福田
 じつは、あまり当時はいい思い出というのがないんです。こういったコラボレーション的な展開は基本的にはプロデューサー間で取り決められることが多いためです。ただ、当時の『スーパーロボット大戦』の関係者の方にお会いしたときには、「『スーパーロボット大戦』に出してよ」といったことを、けっこうな頻度で伝えていたことだけは覚えています(笑)。

――福田監督側からリクエストされていたのですね。

福田
 やっぱり、『スーパーロボット大戦』に出演するしないだと、注目度がまったく違いますから。ロボット作品の夢というか。ひとつの巨大なブランドだと自分は思っています。

――『スーパーロボット大戦』に出演することで、認知度も上がりますし。

福田
 同じ原作者くくりとかはありましたけど、『スーパーロボット大戦』のようなたくさんの作品が集結して一緒に戦うようなコンテンツって、“みんな思いつくけど、絶対にやらない”ようなことだと思うんです。絶対に人気が出るはずなのに、やらない。理由は簡単で、相当に困難だと予想できるし、後のトラブルも容易に想像できる。それなのに35年前に「やろう」って決めてスタートされた当時の開発者の方は、本当にすごいと思っています。

――いまではコラボレーションといったものは定番となりましたが、当時はかなり珍しい試みでした。

福田
 そうですね。35年前から、ロボット作品と密接に関わってきたコンテンツなので、そこに出していただけるというのは、非常に光栄なことだと、当時から思っていました。『GEAR戦士電童』は正直、当時のセールスとしては、決して芳しいものではなかった作品なんです。ですから、『スーパーロボット大戦』に出演させてほしいという依頼を聞いたときは、うれしかったですね。作品のクオリティーは本当に自信があったので、『スーパーロボット大戦』に出演することで、もう一度盛り上がってくれれば、という想いでした。
スーパーロボット大戦R/GEAR戦士電童
――ゲームに収録されるグラフィックなども確認されたと思いますが、当時どういった感想を持たれましたか?

福田
 ……もう許されることだと思うので言ってしまうと、「なんじゃコレは、キャラが似てねえよ!」って当時は思っていましたけど(笑)。

――当時のグラフィックの解像度や表現の限界もありましたからね。ゲームの戦闘アニメーションについては、どうでしたでしょうか。

福田
 こっちも正直言ってしまうと、テレビアニメの映像よりもクオリティーが高くて、よくできていると感じることが多かったです。アニメ制作よりも、ゲーム制作のほうがかけられる予算が多いこともあると思うのですが、アニメよりもワンシーンをより作り込めることは、少しうらやましい思いでした。ただ……。

――ただ……?

福田
 一部の武器のエフェクトが派手すぎないか? と思ったことがいくつか。必殺武器とかはド派手でカッコいいんですが、通常兵器もかなり派手なんです。「これだけ大爆発したなら撃破できたな」って思っても、HPを半分も減らしていないことがあって。「いやいやもっとダメージ受けただろ!」って画面にツッコミを入れながら確認していたことも(笑)。

――そうかもしれないですね。アニメーション監督ならではの視点かもしれません。

福田
 そういった意見もありつつですが、頭身が小さいデフォルメロボットでありながら、本編をしっかり想起させる工夫や原作再現がきちんとされているので、「原作を好きな人が作ってくれている」というのは感じています。

――福田監督の演出といえば、テンポ感と“魅せるポージング”のカッコよさが魅力です。当時もいまも、『スーパーロボット大戦』の開発チームはそのケレン味を必死に研究して再現しているように感じます。
スーパーロボット大戦Y/デスティニーガンダム
福田
 『GEAR戦士電童』にしても、『機動戦士ガンダムSEED』にしても、僕らがアニメを作っていた当時の“仮想敵”って、じつはゲームだったんですよ。

――アニメにとっての仮想敵がゲーム、ですか?

福田
 そうです。どういう意味かというと、当時の子どもたちって、つねに1台のテレビを奪い合っていたわけなんです。自分でテレビを占有できる時間は限られているから、ゲームを遊ばれちゃうとアニメを観てもらえなくなってしまうんですよね。だから、ライバルになるのはほかの番組ではなくゲーム機(ファミコンやスーファミなど)だったんです。ゲームを押し退けなければ、アニメを観てもらえない時代だった。だから我々もゲームを研究して、ゲームの“おもしろさ”や“テンポ感”をアニメの演出に取り入れていくようにしました。

――ゲームに対抗するために生み出された演出が、巡り巡ってゲームに還元されているというのは、非常に興味深いサイクルですね。

福田
 ゲームって、プレイヤー自身が主人公ですよね。でもアニメやドラマといった映像は、視聴者が主人公に感情移入できるようにしないといけない。ですから、アニメではこの“感情移入させるための1工程”が本当に大事なんです。それに加えて、とにかく飽きさせない画面作りやフィールドの変化(砂漠、宇宙、夜の雨など)を意識していました。ゲームに登場するフィールドって、毎回違うから新鮮ですよね。『機動戦士ガンダムSEED』ではそこを意識して、毎回同じフィールドで戦うことがないよう、さまざまなシチュエーションが登場する設定を考えていました。

――たしかに、『機動戦士ガンダムSEED』は戦闘シーンのフィールドがバラエティーに富んでいますが、そういった意図が。

福田
 「またこの場所か」って思われちゃうと冷めちゃいますからね。

――ゲームのいいところをアニメに活かしていったんですね。

福田
 いや、活かしたというか、むしろ「ゲームを売れなくしてやる」くらい思って作っていましたよ(笑)。

『スパロボ』は“IF”だから「好きなようにやっていい」

――『スーパーロボット大戦』の大きな魅力として、同じ作品でも原作とは異なる展開を迎える“IFストーリー”があります。「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」ですとニコルやステラが生存することも多いですが、こういった試みについて、原作に関わる人としてどういった考えを持たれていますか?

福田
 これはぜんぜん、やってもらってかまわないと思っています。ちょっとドライに聞こえるかもしれないのですが、原作と『スーパーロボット大戦』は、まったくの別物として考えています。

――たしかに、前提としてほかの作品のキャラクターたちと共演していますから、最初から“IFストーリー”だと言えるでしょうし。

福田
 そうです。僕は基本的に媒体を問わず、原作本編やメインストリームを扱うものについては必ず監修を行って、きちんと発言をすることで責任を負うようにしています。一方で『スーパーロボット大戦』に関しては、そもそもIFを描いているので、まったく口を出していません。「好きにやってください」と言っています。

――監督から開発チームへ意見するようなことはなかったんですね。

福田
 そこで僕が中途半端に関わってしまったら、オフィシャルなのかIFストーリーなのか、わからなくなってしまうと思っているんです。ニコルでいうと原作では悲劇的な運命をたどってしまいますが、『スーパーロボット大戦』では生き残ることもある。だから、「これニコルですよね?」って聞かれても、「ぜんぜん違うじゃん」と思うのは当たり前で、それはIFなんだから割り切るべきなんです。それに、『スーパーロボット大戦』については自分が責任を持つことができないですから、責任を持てる場以外では口を挟むべきではないという考えもあってのことです。

――責任の所在を明確にされているからこそ、「自由にやってくれ」と言えるわけですね。

福田
 そもそも、『スーパーロボット大戦』はさまざまな作品を集結させる独自のタイトルですから、ひとつの作品に寄り添いすぎるほうが無茶なんです。ユーザーが満足して、楽しんでくれればそれでオーケー。逆に「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の主要メンバーが死んでしまうような展開でも、ユーザーさんが納得しておもしろがってくれるんだったらどんどんやっていただきたいです。
――ユーザーさんに楽しんでもらえればいいと。

福田
 基本的には僕が決めることではないですし、ユーザーさんが納得してくれれば、どういうふうに改変してくれても問題ないと考えています。逆に寄せなくてもいい、くらいにも思っていますよ。原作の物語にも、『スーパーロボット大戦』にも、どちらにも確実なニーズがあるんです。ですから、接近しすぎると、逆に悪いことが起こりかねません。制作者どうしで殴り合いに発展する可能性もある(笑)。

――激しい意見のぶつかり合いが(笑)。

福田
 ですから、『スーパーロボット大戦』は自由にゲームを作ってもらえればいい、と昔から考えているんです。自分も、いちユーザーとして楽しませていただきたいという想いです。というかそもそも、いろいろな作品のシナリオをひとつにまとめるというのが、とんでもないことだと思うんですよ。誰が考えているの、って。

――そのタイトルの出演作それぞれのライセンサーとすべてやり取りするわけですし。

福田
 IFの展開とは言いつつも、原作の設定などには齟齬がないようにしていますし、それぞれの作品のエピソードを活かしつつ、1本のシナリオにまとめている。開発チームのスタッフの方々が本当にそれぞれの作品を愛してくれているから、成立しているんだと思います。
――ご自身が関わられた『スーパーロボット大戦』シリーズ作を実際にプレイされたこともあると伺ったのですが、プレイヤーとしての感想はいかがでしたでしょうか。

福田
 難しかったですね(笑)。とりあえず自分が手掛けた作品のロボットだけを徹底的に改造して戦わせていました。

――自軍を自分の監督作品で固めるわけですね! とくに印象に残っている作品やプレイ体験はありますか?

福田
 いちばんおもしろかったのは、『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』が参戦していたタイトル(『スーパーロボット大戦V』など)ですね。アンジュ自身がぶっ飛んでいるから、ゲームのキャラクターとしてもすごく弾けていて楽しかったです。
スーパーロボット大戦V/ヴィルキス
――キャラクターどうしの掛け合いも『スーパーロボット大戦』の醍醐味ですが、原作者側の視点から見て気になった部分はありましたか?

福田
 プレイしていて思ったのは、「あ、開発の人たちはアスランやラクスの扱いかたに慎重になっているな」ということでした。

――具体的にどういう部分で感じられたのでしょうか?

福田
 アスランって、ゲームの中だとすごくモテるしカッコいいキャラクターとして扱われがちなんですけど、僕からすると、「なんでこんなにモテるの!?」っていつも思っていました(笑)。アスランは、顔はいいんですけど、けっこうオタク気質なんです。だから、ストレートな二枚目として扱われると、「なんで!?」って思ってしまうんです。ラクスについては、彼女は本来自分の意志を主張するようなタイプではないんです。相手に問いかけて、相手にしゃべらせようというキャラクターなのですが、ゲームだと饒舌になることが多いので「扱いが難しいんだろうな」と。
スーパーロボット大戦DD/インフィニットジャスティスガンダム弐式
――テキスト主体のゲームだからこその苦労が垣間見えたと。

福田
 そうですね。アニメのアフレコと違って、ゲームのボイス収録は役者さんがほかの役者さんと関わることなく個別に収録することが多いですし、セリフも長文になりがちです。あと、基本的にはテキストですべて見せないといけないので、こういった意味でもキャラクターの会話がメインになってしまうのはしょうがないことだとは思います。そういった制限がありつつも、工夫しながら作られているんだなと感じますね。

『スパロボ』完全オリジナルのユニバースが見たい

――35年間にわたってロボット文化とともに歩んできた『スパロボ』ですが、今後どのような役割を果たしていってほしい、あるいはどんな挑戦を見てみたいと思われますか?

福田
 『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイがガンダムと出会うシーンとか、『マジンガーZ』の兜甲児がマジンガーZと出会うところを、もう一度ゲームで再現してほしいなと思っています。最近の『スーパーロボット大戦』だと、歴戦のパイロットとして登場することが多いので、また少年のころの彼らに会いたいと思っています。

――『第2次スーパーロボット大戦』など、初期シリーズの展開がもう一度見たいんですね。

福田
 35年も続いているシリーズですから、作る側もプレイする側も「この展開、前にも見たな」という慣れが出てくると思うんです。あくまで個人的な意見ですが、原作のストーリーをなぞって一堂に会するという枠組みを超えてもいい時期なんじゃないかと思いますね。

――新しいアプローチが欲しいと。

福田
 たとえば、マーベルの『アベンジャーズ』みたいに、異なる作品のキャラクターが集まりつつも、独自の1本のシナリオが展開するまったく新しいストーリーをゼロから展開していくなどですね。

――クロスオーバーの域を超えた、オリジナルなユニバースで展開する物語が見たいということでしょうか。

福田
 そうです。宇宙を滅ぼそうとする巨大な悪に対して、作品の垣根を超えて最初から勢力が入り乱れて戦うような。それで、『アベンジャーズ』のように一度敗北してしまって、その後新機体に乗り換えて逆転する、みたいな展開があったらおもしろいですよね。いちプレイヤーとしてもワクワクしそうです。

――それくらい思い切った世界観の『スーパーロボット大戦』が発売されてもおもしろそうですね。

福田
 『スーパーロボット大戦』という存在は日本独自のものであり、日本のロボットアニメ文化の“軸”そのものだと思っています。『スーパーロボット大戦』というプラットフォームがあるからこそ、過去の作品が知られ、新しい作品へと光が当たっていく。もし『スーパーロボット大戦』がなくなったら、日本のロボットアニメ文化そのものが終わってしまうと言っても過言ではないと思います。
スーパーロボット大戦DD/マイティーストライクフリーダムガンダム
――『スーパーロボット大戦』はそれほどに大きな存在だと考えられているんですね。

福田
 僕自身、サンライズで育ってきた人間として、ロボットアニメを作らないサンライズなんて考えられないという時代を生きてきました。いまのアニメにはさまざまなジャンルがありますから、ロボットものをわざわざ作らなくても、誰も困らないかもしれません。ですが、だからこそ僕はこれからもロボットアニメを作り続けていきたいと思っています。もちろん、その作品も『スーパーロボット大戦』に出演できればうれしいですね。

――いちファンとしては、福田監督の新作オリジナルロボットアニメが制作され、それが『スーパーロボット大戦』に参戦する日を心待ちにしています。

福田
 なんと言っても売れたもん勝ちの世界ですからね。文句を言われようがなんだろうが、おもしろいものを作って結果を出すだけです。これからも僕のアニメと、『スーパーロボット大戦』を応援していただければうれしいです。
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