しかしなぜ格闘ゲームのコマンドをシステムとして組み込むことにしたのか? なぜこれほどまで中野ブロードウェイを作り込んだのか? 同社プレジデントのノーラン・ジョセフ氏にインタビューする機会を得たので、特異なシステムと中野ブロードウェイへの偏愛、そして制作における哲学を率直に語ってもらった。

NOLAN JOSEPH(ノーラン・ジョセフ)
東京・渋谷を拠点とする株式会社DDDistortionプレジデント。 大学時代は英文学を専攻し、執筆活動などを経て来日。日本ではeスポーツ事業を展開する株式会社Sonic Boom Entertainmentにてシステムエンジニアとしてキャリアを築き、同社のゲームプロジェクトとして『NIGHTMARE OPERATOR』を立ち上げる。その後、本格的に開発を進めるために、日本国内の仲間とともにDDDistortionを設立。引き続き同タイトルのディレクター兼プログラマ―として開発現場を統括している。
シューターのファンに、格ゲーのコンセプトを届けたかった
――え? でも本作はTPSですよね?
――まだよく見えてこないですね。まずは理由から聞いても?
近年、『ストリートファイター6』でモダン操作(簡易入力でコンボを出せるモード)が実装されたことで、格闘ゲームの新規プレイヤー数は増えたと思います。しかしまだ足りない。そこで、また別方向からアプローチをすれば、さらに格闘ゲームのユーザーを増やせるのではないかと。そしてプレイヤー数がどんどん増えれば、またゲームセンターの文化が復興するのではないかと。
そのためにはまず何をすればいいか。格闘ゲームの要素を別ジャンルに持っていき、別ジャンルのユーザーに格闘ゲームの楽しさの一端に触れてもらおう! こうした発想が『NIGHTMARE OPERATOR』開発のスタート地点になります。
――なるほど。具体的には、どういったシステムで格闘ゲームの要素を表現しているのでしょうか?

通常、ゲームでミスをすると「やってしまった」という後悔が生まれますし、対戦ゲームにおいては焦りも生まれます。しかしこれがホラーゲームになると、ミスをすると後悔よりも“怖い”、“パニック”という体験のほうが色濃く出るようになります。そしてプレイヤーは怖い体験から逃れるために、自然と素早く正確なコマンド入力を目指すようになり、確実に上達していくと思ったんです。

ただ、それではコマンドシステムがまったく不要になってしまうので、最強を目指すのであればコマンドは絶対に必要になるバランスにしています。簡易コマンドモードも実装する予定なので、そこから少しずつコマンドを身に付けていくのもいいと思います。
――おもしろい試みだとは思いますが、正直に言うと、ただ武器を切り換えるためだけにコマンドを入力するのは面倒ですね……。コマンドを入力することによるメリットはあるのでしょうか?
このテクニックを利用すれば、現在BitSummit展示中のデモ版でボスを20秒で倒しきれます。私が見ていた限りでは、ビジネスデイでボスを倒せた人は何人もいましたが、みなさん数分かかっていたと思います。コマンド入力の強さを知っていると知らないとでは、明確に差が生まれる作りになっているんです。一般公開日にご来場いただく皆さんには、ぜひコマンド入力を駆使して大火力を出してみてほしいですね。

こだわりにこだわって作った中野ブロードウェイ
ひとつ目の理由は、開発規模です。なかなかイメージしづらいかもしれませんが、現実にない世界を作り上げるというのはたいへんです。その世界の法則や文化を想像し、それをベースにマップや街を作る。簡単に聞こえるかもしれませんが、世界をまるまるひとつ作るわけですからね。私たちは全員で8人しかいないので、完全なオリジナルファンタジー世界を作るのは現実的ではなかったんです。その点実在する場所をベースにすれば、チーム内でイメージの統一がしやすく、開発がスムーズに進められることもあり、実在の場所を選択しました。
ふたつ目は、ほかの競合と差別化を図るためです。東京を舞台にしたゲームで、驚くほどの再現度を持つゲームはいくつかありますよね? 『龍が如く』や『ペルソナ5』、『AKIBA'S TRIP』とか。そういったタイトルと同じ場所を舞台に選んでしまうと、どうしてもそれらのクオリティと比較されてしまいます。そこで、意外と穴場になっていた中野や下北沢を舞台として選出しました。
3つ目は、純粋に私が大好きな場所だから(笑)。以前務めていた会社が下北沢に近く、毎日昼休みに歩き回っていたし、中野は毎週格闘ゲームのイベントに通っていたので、もはや私にとっては庭みたいなものです。

それと施設内のカオスな雰囲気も再現できるよう、細部をこだわりました。中野ブロードウェイって、施設の中がとにかくごちゃごちゃしていますよね? それを再現するため、フィギュアや同人誌、漫画などのオブジェクトをたくさん作って配置しています。リクエストが多かったのでアートチームはたいへんだったと思いますが、お陰でいい感じに再現できたと思います。



日本文化をリスペクト。古来より伝わる妖怪も登場
――日本古来の妖怪が出るとなると、それを祓い清める陰陽師や修験者といった存在も登場するのでしょうか?

ただどうしても本作を表現するにあたって、神社っぽい要素は入れたくて……。悩みに悩んで“神社っぽいなにか”はゲーム内に登場させています。ただそこでも神聖な場所だと感じる方も多いと思うので、そこで戦うような演出は入れていません。
とにかく私は日本が大好きなので、真面目に向き合いたかったんです。
PS2時代のゲームのほうが、何をすべきか明確だった。ローポリ風ビジュアルを選んだ理由
もうひとつの理由は個人的な見解をもとにした話なのですが……。近年のリッチなゲームは、グラフィックが美しすぎてゲームプレイに集中できないことがあるんですよね。ものが多すぎて「どこを見ればいいか」、「どこに進めばいいか」がわかりにくい。逆にプレイステーション2時代のゲームをプレイすると、その点がすごく明確なんです。リアルさや自由度も魅力的な要素ではあるのですが、私にとってはゲーム体験をジャマする要素にもなっているように感じてしまうのです。
だからグラフィックはある程度きれいにしつつも、余計な情報量を増やさないようにしたかった。それでローポリ風スタイルを採用しています。
――そう聞くと、中野ブロードウェイの見え方も変わりそうです。














