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格闘ゲーマーを増やしたい。だからホラーTPSにコマンド入力を入れた。『NIGHTMARE OPERATOR』開発者インタビューから溢れ出る中野ゲーセン文化への情念【BitSummit2026】

格闘ゲーマーを増やしたい。だからホラーTPSにコマンド入力を入れた。『NIGHTMARE OPERATOR』開発者インタビューから溢れ出る中野ゲーセン文化への情念【BitSummit2026】
 2026年5月22日から京都勧業館みやこめっせで開催されている、インディーゲームイベント“BitSummit PUNCH”に、DDDistortion社がインディーゲーム『NIGHTMARE OPERATOR』を出展中。
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 本作は、5月23日に行われたBitSummitアワード授賞式で、ゲームデザイン最優秀賞を受賞した作品。ゲームの内容は、武器切り換えに格闘ゲームのようなコマンド入力が求められる、個性的なTPSアクション。壊滅した東京を取り戻すため、中野や下北沢などを舞台に妖怪と戦うホラー要素も含んでいる。

 しかしなぜ格闘ゲームのコマンドをシステムとして組み込むことにしたのか? なぜこれほどまで中野ブロードウェイを作り込んだのか? 同社プレジデントのノーラン・ジョセフ氏にインタビューする機会を得たので、特異なシステムと中野ブロードウェイへの偏愛、そして制作における哲学を率直に語ってもらった。
格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】

NOLAN JOSEPHノーラン・ジョセフ

東京・渋谷を拠点とする株式会社DDDistortionプレジデント。 大学時代は英文学を専攻し、執筆活動などを経て来日。日本ではeスポーツ事業を展開する株式会社Sonic Boom Entertainmentにてシステムエンジニアとしてキャリアを築き、同社のゲームプロジェクトとして『NIGHTMARE OPERATOR』を立ち上げる。その後、本格的に開発を進めるために、日本国内の仲間とともにDDDistortionを設立。引き続き同タイトルのディレクター兼プログラマ―として開発現場を統括している。

 なお、本作の詳しい内容については以下のレビュー記事をチェックしてほしい。

シューターのファンに、格ゲーのコンセプトを届けたかった

――まず本作のコンセプト、そしてどのようなゲーム体験を届けたいと考えているかを教えてください。

ノーラン
 格闘ゲームプレイヤーを増やしたい。それが本作最大の目的であり、システムのコンセプトの骨子となっています。

――え? でも本作はTPSですよね?

ノーラン
 そうですね。ジャンルとしてはTPSアクションです。私は、ふだんシューティングゲームをよく遊ぶ人にも、格闘ゲームを楽しんでもらいたくて、このゲームを作っています。

――まだよく見えてこないですね。まずは理由から聞いても?

ノーラン
 私はもともと大の格闘ゲームファンで、以前はよく中野のゲームセンターで遊んでいました。当時は格闘ゲームのイベントも頻繁に開催され、大きく盛り上がっていたのですが、コロナ禍以降、ゲームセンターの閉店が相次ぎ、ゲームセンターで遊ぶ格闘ゲームプレイヤーは減ってしまったと思うんです。

 近年、『
ストリートファイター6』でモダン操作(簡易入力でコンボを出せるモード)が実装されたことで、格闘ゲームの新規プレイヤー数は増えたと思います。しかしまだ足りない。そこで、また別方向からアプローチをすれば、さらに格闘ゲームのユーザーを増やせるのではないかと。そしてプレイヤー数がどんどん増えれば、またゲームセンターの文化が復興するのではないかと。

 そのためにはまず何をすればいいか。格闘ゲームの要素を別ジャンルに持っていき、別ジャンルのユーザーに格闘ゲームの楽しさの一端に触れてもらおう! こうした発想が『NIGHTMARE OPERATOR』開発のスタート地点になります。

――なるほど。具体的には、どういったシステムで格闘ゲームの要素を表現しているのでしょうか?

ノーラン
 コアになるのは、格闘ゲームのコマンドを入力して武器を切り換える“クラッチシステム”です。格闘ゲームのコマンドを難しいと考える人は多いと思いますが、まずはコマンド入力に成功する喜びを味わってもらいたくて、こうしたシステムを採用しています。
格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】
画面右側にあるコマンドを入力すると、武器性能が対応するものへと切り換わる。
ノーラン
 ホラー要素をストーリーの核にしたのも、“クラッチシステム”を活かすためです。

 通常、ゲームでミスをすると「やってしまった」という後悔が生まれますし、対戦ゲームにおいては焦りも生まれます。しかしこれがホラーゲームになると、ミスをすると後悔よりも“怖い”、“パニック”という体験のほうが色濃く出るようになります。そしてプレイヤーは怖い体験から逃れるために、自然と素早く正確なコマンド入力を目指すようになり、確実に上達していくと思ったんです。
格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】
――コマンド入力が苦手なプレイヤーへの配慮などはありますか? というのも、私は“昇龍拳”が出せなくて格闘ゲームを諦めた口でして……。

ノーラン
 安心してください、ちゃんと救済策はあります(笑)。いくら目的が目的とはいえ、要素ひとつが原因で入口にも触れてもらえないのは寂しいですから。コマンドに慣れてほしいという気持ちはありますが、簡単に武器の性能を切り換える方法も用意しています。

 ただ、それではコマンドシステムがまったく不要になってしまうので、最強を目指すのであればコマンドは絶対に必要になるバランスにしています。簡易コマンドモードも実装する予定なので、そこから少しずつコマンドを身に付けていくのもいいと思います。

――おもしろい試みだとは思いますが、正直に言うと、ただ武器を切り換えるためだけにコマンドを入力するのは面倒ですね……。コマンドを入力することによるメリットはあるのでしょうか?

ノーラン
 そこもちゃんと用意してあります。コマンドで武器を切り換えると、攻撃速度が早くなるんです。たとえばレールガンは、ふつうに使うと1発1発を撃つのにかなり時間がかかります。しかし本作は武器切り換えが完了するまでの待機時間が存在せず、武器切り換え直後はすぐに弾丸を発射できるため、素早く連続でコマンドを入力すれば、レールガンだって連射できるんです。

 このテクニックを利用すれば、現在BitSummit展示中のデモ版でボスを20秒で倒しきれます。私が見ていた限りでは、ビジネスデイでボスを倒せた人は何人もいましたが、みなさん数分かかっていたと思います。コマンド入力の強さを知っていると知らないとでは、明確に差が生まれる作りになっているんです。一般公開日にご来場いただく皆さんには、ぜひコマンド入力を駆使して大火力を出してみてほしいですね。
格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】
今回の試遊版で挑めるボスキャラクター。狐の妖怪のようだ。

こだわりにこだわって作った中野ブロードウェイ

――世界観や舞台について聞かせてください。なぜ戦いの場が中野や下北沢など、サブカルチャー文化の発信地に偏っているのでしょうか?

ノーラン
 理由は3つあります。

 ひとつ目の理由は、開発規模です。なかなかイメージしづらいかもしれませんが、現実にない世界を作り上げるというのはたいへんです。その世界の法則や文化を想像し、それをベースにマップや街を作る。簡単に聞こえるかもしれませんが、世界をまるまるひとつ作るわけですからね。私たちは全員で8人しかいないので、完全なオリジナルファンタジー世界を作るのは現実的ではなかったんです。その点実在する場所をベースにすれば、チーム内でイメージの統一がしやすく、開発がスムーズに進められることもあり、実在の場所を選択しました。

 ふたつ目は、ほかの競合と差別化を図るためです。東京を舞台にしたゲームで、驚くほどの再現度を持つゲームはいくつかありますよね? 『
龍が如く』や『ペルソナ5』、『AKIBA'S TRIP』とか。そういったタイトルと同じ場所を舞台に選んでしまうと、どうしてもそれらのクオリティと比較されてしまいます。そこで、意外と穴場になっていた中野や下北沢を舞台として選出しました。

 3つ目は、純粋に私が大好きな場所だから(笑)。以前務めていた会社が下北沢に近く、毎日昼休みに歩き回っていたし、中野は毎週格闘ゲームのイベントに通っていたので、もはや私にとっては庭みたいなものです。
格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】
――好きだからという理由がいちばん強そうですね。好きな場所をゲーム内に再現するとなると、細部までこだわったのではないでしょうか? こだわりポイントを教えてください。

ノーラン
 こだわったのは、記憶・想い出と整合性を取れるようにすることですね。たとえば、中野ブロードウェイを観光した外国人が自国に帰ってこのゲームをプレイした際、記憶と照らし合わせながら動き回っても違和感がない状態を目指しました。さすがに廊下の長さなど、いろいろな縮尺はゲームとして成り立つように調整していますが、この目標はおおよそ達成できていると思っています。

 それと施設内のカオスな雰囲気も再現できるよう、細部をこだわりました。中野ブロードウェイって、施設の中がとにかくごちゃごちゃしていますよね? それを再現するため、フィギュアや同人誌、漫画などのオブジェクトをたくさん作って配置しています。リクエストが多かったのでアートチームはたいへんだったと思いますが、お陰でいい感じに再現できたと思います。
格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】

日本文化をリスペクト。古来より伝わる妖怪も登場

――本作は“妖怪”が登場するとのことですが、妖怪と一口に言ってもその存在は昔から伝承されている存在、近代に生まれたものなど多岐に渡ります。本作ではどのようなスタイルの妖怪が登場するのでしょうか?

ノーラン
 伝承にある妖怪も、オリジナルの妖怪も登場します。ただ伝承にもあるような知名度のある妖怪はボスキャラとして、オリジナル妖怪は雑魚敵として出てくるようにしています。

――日本古来の妖怪が出るとなると、それを祓い清める陰陽師や修験者といった存在も登場するのでしょうか?

ノーラン
 そこはすごく悩みました。それこそ企画当初の主人公は白い上着に赤いズボンという、巫女を彷彿とさせるような衣装でした。ですが、いろいろ構想を固めていくにあたって「外国人が考える日本」のテイストがどこかに混ざってしまうのではないか、そしてそれは失礼に当たるのではないかと思うようになり、最終的にこの案はボツにしました。
格ゲーコマンドで武器を切り換えるホラーTPS『NIGHTMARE OPERATORS』開発者インタビュー。格ゲー要素を入れた理由は、中野ゲーセン文化にふたたび火を灯したいから?【BitSummit2026】
現在の主人公の服装。
ノーラン
 妖怪は民間伝承の要素が色濃いと思いますが、陰陽師や修験者は宗教とも結び付くもので、雑に扱っていいものではないという考えです。

 ただどうしても本作を表現するにあたって、神社っぽい要素は入れたくて……。悩みに悩んで“神社っぽいなにか”はゲーム内に登場させています。ただそこでも神聖な場所だと感じる方も多いと思うので、そこで戦うような演出は入れていません。

 とにかく私は日本が大好きなので、真面目に向き合いたかったんです。

PS2時代のゲームのほうが、何をすべきか明確だった。ローポリ風ビジュアルを選んだ理由

――本作は独特のローポリゴン風ビジュアルが目を引きます。このアートスタイルを選んだ理由を教えてください。

ノーラン
 まずホラーというジャンルとの相性です。ホラー映画でも、たとえば『リング』(1998年公開、配給:東宝)などはアナログな雰囲気が恐怖を増幅させていますよね。あの表現手法を真似したかった。

 もうひとつの理由は個人的な見解をもとにした話なのですが……。近年のリッチなゲームは、グラフィックが美しすぎてゲームプレイに集中できないことがあるんですよね。ものが多すぎて「どこを見ればいいか」、「どこに進めばいいか」がわかりにくい。逆にプレイステーション2時代のゲームをプレイすると、その点がすごく明確なんです。リアルさや自由度も魅力的な要素ではあるのですが、私にとってはゲーム体験をジャマする要素にもなっているように感じてしまうのです。

 だからグラフィックはある程度きれいにしつつも、余計な情報量を増やさないようにしたかった。それでローポリ風スタイルを採用しています。

――そう聞くと、中野ブロードウェイの見え方も変わりそうです。

ノーラン
 発売後にゲームをプレイして楽しんでもらえたら、ぜひ実際に中野ブロードウェイや下北沢にも足を運んで探索してみてほしいですね。Steamのウィッシュリストに追加してお待ちください!

担当者プロフィール

  • ヒゲメガネ長谷部

    ヒゲメガネ長谷部

    Steam歴15年のPCゲーマー。イラストにはヒゲがなく、現実では(ほぼ)メガネをかけていないため、ペンネーム詐欺と言われている。好きなゲームジャンルはFPS、シミュレーション、サバイバルクラフト。

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