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『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】

『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】
 ファミ通の編集者がゴールデンウィークに遊んでほしいゲームを紹介する連載企画。ミス・ユースケがおすすめするタイトルは、バタフライエフェクトシミュレーター『歴史の終わり』です。
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【オススメポイント】
  • NPCとの人間関係など、ミクロな視点からの世界の変化
  • “自分は歴史の一部である”という実感
  • “正しくなくていい”という救い。悪事を働ける背徳感

ミス・ユースケがオススメするゲーム

『歴史の終わり』

  • プラットフォーム:PC(Steam)
  • 発売日:2025年12月10日早期アクセス開始
  • 発売元:WorldMap
  • 価格:2800円[税込]
※本稿は週刊ファミ通2026年2月26日号(2026年2月12日発売)の特集“ファミ通編集者31人が2025年に遊んだオススメゲーム”をWeb用に調整したものです。

些細な行動が歴史を変える世界で、滅びに向かう人間を見ていたい

 たいへんなゲームに手を出してしまったぞ。『歴史の終わり』を初めてプレイしたとき、そう覚悟したことを覚えている。ちっぽけな存在として争いの絶えない原野に降り立ち、途方に暮れてしまった。ごくりと喉が鳴る。
『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】

 一見、中世風の世界を旅するRPGなので、まずは生きなければならない。武器や防具を揃え、戦闘でレベルを上げ、兵士を雇う。長旅には食料も必要で、部隊が大きくなればそれだけ消費も激しくなる。やることを逆算すると、まずは金策だ。

 食いぶちを稼ぐために目を付けたのは交易だった。ある街の名産品は遠隔地では希少だから高く売れるはず。意気揚々と出発したものの、すぐに出鼻をくじかれる。道中で女盗賊に襲われたのだ(危険を伴うから交易は儲かる)。必死の抵抗で撃退に成功し、逆に相手の金品を略奪。女盗賊は捨て台詞を残して逃げ去り、
生け捕りにした下っ端は奴隷商人に売り払えたので思わぬ臨時収入である。
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交易所で仕入れて、遠く離れた街で売却する“交易”。食料もここで買えるのだが、たくさん買うと“買い占め”と判断され、市民の不満が高まる。
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ここで撃退したのは女盗賊ビーラ・コンテだが、スクリーンショットを取れていなかったので、エド・ザンデというやつを倒したときの画像をどうぞ。
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囚人=奴隷の金額はだいぶ安い。命が軽い世界である。
 後味はすっきりしないが、悪いのは襲いかかってきた向こうだ。手のひらサイズの罪悪感を抱くと同時に知ってしまった。悪いことをすればこんなにも簡単に金を稼げるのか、と。往来には商人も行き来しているから、あいつらから奪えばいいのか、と。ふしぎな高揚が僕を包む。

 ある日、その女盗賊が貧しい民衆に施しをしている場面に遭遇した。きっと彼女は根っからの悪人ではなく、食うために悪事を働いているのだろう。そうでもしないと自由に生きられないほど露骨な階級社会。閉塞感を嘆きながら酒場に入ったらその女盗賊もいて、退治したことを逆恨みされてしまった。あまりの傍若無人ぶりはいっそすがすがしく、何があっても生き延びてやるというエネルギーすら感じる。気圧されて酒を一杯おごることにした。
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左側の主人公グラフィックはいくつもの選択肢から好きなものを選択。主人公のキャラ設定を自分で決めて、生き方に合っているものを選ぶとロールプレイ度が上がる。
 仕事を求めてギルドに顔を出すと、盗賊の討伐依頼が出ている。ターゲットはさっきの女盗賊だ。何度か倒すうちに名前が挙がらなくなり、どうやら裏稼業から足を洗ったらしいのだが、ここからが急展開。その美貌が貴族の目に留まり、気づけば権力者の夫人の座を得ていたのだ。
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何度も命のやり取りをしたが、お酒を組みかわすうちに仲よくなって特徴が見えてくる。ビーラ・コンデは“非常に美しい”性質を持つらしい。
 これが『歴史の終わり』の本領である。プレイヤーの選択が歴史の流れに影響を及ぼすのはもとより、NPCたちも意思を持って生活しているため、勝手に結婚し、勝手に裏切り、勝手に死に、想像できない方向に話が転がっていく。

 僕が倒さなければ彼女は改心することなく、生涯の伴侶に出会うこともなかったはずだ。“盗賊の討伐”なんてRPGではありふれた行動は貴族たちの勢力図を塗り替えてしまった。この後、
権力を手にした元女盗賊が挙兵し、世界中を巻き込んだ権力闘争が始まる可能性もある

 これはバタフライエフェクトシミュレーターなのだろう。些細な行動は時間をかけて重大さを増し、あずかり知らないところで大事件が起きる。それを観測することに僕は愉悦を見出してしまった。物語上、世界は滅亡に向かっていて、主人公には崩壊を止める使命がある。そんなことより、ぐらぐらした人間たちはどんな滅びを迎えるのだろう。見てみたい。
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さまざまなNPCがマップ上で行動している。急に攻撃を仕掛けて金品を奪ったりできるのだが、軍人は強いので序盤は返り討ちにあいがち。
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自分とは無関係のところで戦争に発展することが多い。トラブルが起きるとアラートが表示され、戦争が始まると戦況ががんがん画面右に流れる。
 往来を行き来する商人から金品を奪って資金と兵力を蓄え、世界征服に乗り出せば、みずからの手で混沌に引きずり込める。とはいえ、僕は自由なゲームでも悪いことができないタイプだ。自分の欲求よりも社会のために動こうとしてしまう。

 滅びの原因を突き止めるためには国の研究機関に入るのが手っ取り早く、そのためには国に仕官する必要があって、でも素性の知れない浪人風情が入り込めるはずがないから住人からの依頼をこなして名声を高めて……と、最初は品行方正に生きるつもりでいた。

 国は3つあるものの、情勢はどこも不安定。歴史ある宗教国家には腐敗が蔓延し、新興国は他民族からの攻撃に脅かされている。軍事国家は何だかきな臭い。戦争による“憎悪”と生活レベルの格差による“分断”が高まるほどに世界は崩壊に向かって転がっていくので、本来なら世界平和を目指すべきだ。

 どこかに信頼できる名君はいないのか。どんなに探してもいないようなら自分で世界を統一する手もある。フィクションに登場する信念のある悪は、こうした理由で世界征服を目指すのだろう。
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ギルドで地道にクエストを受けて名声を高め、神聖ルシェ帝国に仕官した。
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NPCひとりひとりに設定が用意されており、性格によって行動も異なる。僕が仕えるガストロプ・ルシェは一見厳格な王様だが、たいへんな人生を歩んでいる模様。
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国に所属すると戦争に駆り出される。攻め込まれたら街の地形を活かして防衛しないといけない。
『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】
自分の評価を上げるには、いい噂を流すという手もある。逆に、気に入らないやつの悪評を流すことも可能。なりふり構っていられない。
 僕の善性は異端審問官が厳しく目を光らせる街で大きく揺らぐことになる。暴力による支配で民衆の精神が限界を迎える中、少女から小瓶の回収を依頼された。中身は毒。審問府に流して横暴な連中に復讐するのだという。下水道を通って街にも流れるため、住人たちにも被害は出るだろう。そのころには毒は薄まっているから大きな問題ではないと言い張るが、果たしてそれは正しい行為なのか。

 このとき、僕の中で張り詰めていた糸が切れた。無理に正義を気取らなくていい。目には目を。歯には歯を。
理不尽な暴力には暴力で返せばいいじゃないか。それが許されるのも自由なゲームの特権なのだから。僕は復讐に燃える住人に毒の入った小瓶を手渡した。

 この選択は正解だったのか、僕にはわからない。
『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】
毒を流せばいっとき心は晴れるかもしれないが、うまくいく保証はない。もし失敗したらこの娘はどうなってしまうのだろう。
 なお、これは比較的序盤に発生したイベントである。重い選択を強いられ、だけどその正解/不正解をすぐにたしかめる術はない。主人公は寿命による死がほぼない長命種なので、長い時間をかけて変化を見届けていく。

 その間に、忠誠を誓った主君は戦争で命を落とすかもしれない。王の子ども、さらにその子どもの旅立ちを看取ることもあるだろう。たとえば、その王の子孫が悪政を敷き、暴動で国を追われたとしよう。出奔先で力をつけ、民衆に復讐を果たすべく争いを挑んできたとしたら。きっと、僕はかつての主君の子孫を手にかけるのだと思う。
『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】
ガストロプ・ルシェにはエレイーザという娘がいる。人間性が歪んだ絶世の美女。放っておいたら国が滅びそうだけど、お顔がとても好みだから忠実な下僕になりたい気持ちもある。ほら、自分の気持ちには正直になりたいじゃないですか。
『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】
なお、僕は自キャラのグラフィックをエレイーザと同じにしているので、たまにこういうややこしいことになる。
 さて。『歴史の終わり』はいわゆるサンドボックス系のゲームだ。“何でもできるRPG”と形容するのは簡単だが、それでは重要な核が手のひらからこぼれ落ちてしまう。自由度の高さこそ至高とされるジャンルにおいて、“運命をコントロールできないこと”は強い輝きを放つ。

 本作が紡ぐのは一編の大河ドラマである。戦闘がリアルだとか爽快だとか、物語が泣けるとか、そういう気持ちよさを味わうゲームではないと思う。プレイヤーやNPCの行動のひとつひとつは小川のせせらぎにすぎない。河口に近づくにつれて川幅は広がり、いつしか大きなうねりになっている。タガが外れた世界の暴走は誰にも止められず、それ自体がひとつの生命のようだ。
『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】『歴史の終わり』このサンドボックスRPGは大河ドラマシミュレーターだ。自分の行動で歴史が変わる世界で、滅びに向かう人間を眺める甘美な時間【GWおすすめゲームレビュー】
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 人知れず崩壊に向かう世界の片隅で、あるときは傾国の美貌であらゆる権力を翻弄する娼婦のように、またあるときはすべてを知りながらも流れに身を任せる吟遊詩人のように振る舞う。人が堕ちていくさまをぼんやり眺める時間は、それはそれは甘美だった。

Writer:ミス・ユースケ
 自分ではどうしようもない状況に陥って必死に抗いたい。だが、現実でそうなるとたいへんなので、翻弄されたい欲をゲームで満たす。そういう意味では『
SAEKO』もオススメ。
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