『NTE: Neverness to Everness』(NTE)のサービスが、2026年4月29日より開始されました。プラットフォームはプレイステーション5(PS5)、PC、スマホ(iOS、Android)。 舞台は“ヘテロシティ”と呼ばれる架空の大都市。ひたすら街を探索したり、街に現れる異象(アノマリー)を討伐したり、住人との交流を楽しんだり、カーレーシングに勤しんだり、店舗経営をしたり……とにかくいろいろなことができる本作で、やはり気になるのが“異象”という存在です。




この記事は『NTE: Neverness to Everness』の提供でお送りします。
表では秩序正しいファッションシティに見えるヘテロシティですが、その裏では異象と呼ばれる存在により街の一部に空間の変化が起こり、不思議な世界が広がっています。プレイヤーはこの街で、骨董品屋エイボンの鑑定士として働きながら、街に発生する異象の依頼を解決していきます。
筆者は神社や民俗学に興味があり、個人的に調べたりするのが趣味。そんなオカルト好きの目に、『NTE』の異象は魅力的に映りました。
『NTE』における異象(アノマリー)とは何か
このゲームに現れる異象とは何か。ゲームの説明を借りれば、“日常に突如起こる不思議な現象や、急に現れる謎の生物”の総称です。昨今の日本語表現的には“怪異”といったところでしょう。

この街で遭遇する異象からは超常的な空気を感じます。
悪意を持ち自動販売機や壁の落書きに憑依して街を暴れ回るものもいれば、頭がテレビの形のカワウソのような生き物・タギドのように、仲間として行動をともにするものもいます。街に溶け込み、「そういうもの」として街の人に受け入れられている、善悪では分類しきれない個性豊かな存在が異象なのです。

エイボンの仲間・タギド。
鑑定士が抱えるひとつひとつの依頼は、基本的に独立した短編として機能しています。依頼をこなしながら街の人と交流していきますが、そこには派手さのない、日常に寄り添うような、言ってしまえば地味な依頼も多くあります。
一般的なRPGで言うなら“クエスト”なのでしょうけど、雰囲気が少し異なるような。プレイしているうちに、オムニバス形式のアニメや短編小説集を読んでいるような感覚に近いと感じました。
『NTE』は『遠野物語』なのかもしれない
唐突に聞こえるかもしれませんが、筆者はこのゲームをプレイしながら、柳田國男の『遠野物語』を思い出しました。『遠野物語』とは、1910年に出版された日本の民俗学の古典で、岩手県遠野地方に伝わる怪異や伝説を集めた短編集です。

『NTE』では悪さをしない異象とも多く出会います。
『遠野物語』最大の特徴は“実在した人物が、実際に体験した”という話が集められていること。「むかしむかしあるところに~」ではなく、「~~村の何某が~」という語り口で語られます。
ザシキワラシ、山女、河童、神隠しなどは私たちからするとファンタジーですが、遠野物語に登場するいわゆる妖怪や神の類は、劇的な解決を迎えるわけでも、意味深な教訓を残すわけでもなく、ただそこに存在したものとして淡々と語られます。
そして『NTE』に登場する異象たちも、それに近い存在に感じました。ヘテロシティでの異象は日常的に発生しており、人々は“そういうもの”として受け入れています。

急に辺りが水浸しに……この街では、異象は決して珍しい存在ではありません。
異象が自分の店で暴れているからどうにかしてほしい、という依頼は発生しますが、それがなぜ発生したか、なぜこんなことになったかまでは深くは語られないことも多々あります。異象はあって当然のものとして、街に織り込まれているのです。
遠野物語が「なぜ河童がいるのか」を問わないように、『NTE』も「なぜ異象がいるのか」を問いません。そのことが、このゲームに独特の空気感を与えているように感じます。
暴れて害をなす怪異は倒すべき敵でもありますが、それ以上に“折り合いをつける相手”として、どこか身近なものとして描かれているように感じました。

一流の鑑定士たるもの、異象と自撮りもします。

討伐した異象は収容します。撃破や破壊ではなく、“収容”。
なぜ『NTE』の怪異は“怖くない”のか
ここまで異象について触れてきましたが、『NTE』をいわゆるオカルトゲームとして捉えると、少しイメージとズレを感じるかもしれません。

歩いていると突然現れる、明らかに怪しい“異象界”。
異象の謎は深く掘り下げられるわけではなく、なぜ存在するのかという問いに対する明確な答えも、少なくとも序盤では示されません。異象があり、それと共存し、依頼をこなしていく。そうした流れで物語は進んでいきます。
怪異は恐怖や謎として強調されるのではなく、あくまで日常の一部として描かれています。そのためプレイを通して強く感じられるのは、異象への恐れや解明への欲求というよりも、この街の一員として“異象のある日常に自然と馴染んでいく感覚”でした。

異象が占拠した廃校に迷い込むのも、鑑定士の日常です。
そう言えば『遠野物語』も、怪異を“解明すべき謎”として描いてはいませんでした。そこにいるもの、現れるものとして語られます。『NTE』がどこかさらっとしているように感じるのは、こうした怪異との距離感にあるのかもしれません。特別なものとしてではなく、当たり前に存在するものとして受け入れられているからです。
これはつまり、現代に妖怪が現れた場合どうなるかを想像できる、“いまの時代の妖怪奇譚”とも言えるのではないでしょうか。
『NTE』はゲームというより、もはや生活
『NTE』は、オカルトや怪異をホラー的な恐怖としてではなく、街の一部として溶かし込んだゲームです。

美しい景観もゲームの魅力のひとつ。ただ散歩するだけでちょっと楽しい。
異象は怖いだけの敵ではなく、話ごとに違う顔を持つ登場人物のひとりです。ヘテロシティで暮らしていると、いつの間にか「また変な依頼が来た」のような感覚で異象を受け入れている自分に気づきます。それは遠野の人々がザシキワラシの話をするような、淡々とした共存の感覚なのではないでしょうか。
ここでの生活はプレイする人次第でしょう。派手なバトル要素やいろいろなお遊び要素ももちろんありますが、筆者は深夜にログインし、街を歩いてマップを解放し、気まぐれに電車やバスに乗り、ビルの上から街を見下ろし、たまに依頼をこなしたり街の異象や脅威をこらしめる……そんなチルなヘテロシティでの生活がすっかり気に入ってしまいました。

的地を定めず、「どこに行くんだろう?」と考えながら乗るバスも楽しい。
これはゲームではない、生活だ。ゲームをプレイするうちに、いつしか本当にヘテロシティで生活しているような気持ちになっていったのです。ヘテロシティって家賃どう? 物価は高いのかな? 日常の買い物にはどこに行こうかな……。
どこか日本の都市にも似たヘテロシティで、“怖くない”怪異と隣り合わせの日常を楽しんでほしい。怪異に魅せられたひとりとしてのお願いです。

さて、ここからはゲームライターのカイゼルちくわさんにバトンタッチ。ヘテロシティでの生活の魅力を教えていただこうと思います。
日常と非日常が溶けあう自由なアーバンライフ
異象が日常と隣り合わせの、不思議な『NTE』の世界。ここからは実際に、ヘテロシティではどのような暮らしが待っているのか、どんな生き方ができるのかを実例でお見せしていこう。

鑑定士であり異象ハンターという肩書きこそあるが、プレイヤー=主人公はどんな生活をしたっていい。
ヘテロシティは前述のとおり日常と非日常が絶妙に溶け合う不思議な街。街中では“どこかで見たことがある”と直感的に感じるような風景が隣り合い、境界があいまいだ。
超近代的な高層ビルの横を通り過ぎると、いつの間にかノスタルジーを感じる街並みが姿を現す。この辺りは東京にも似ていて、港区の赤坂や青山のような中心地は街自体が古く、路地に1本入ると昔ながらの住宅街や商店が並んでいたりする。


最先端と郷愁が隣り合わせ。これが『NTE』の空気を作り出している。
この街では、本当にどんな生き方をしてもいい。メインストーリーの進行には時間制限があるわけでもなく、寄り道は無限に許される。そして、そんな寄り道に無限に応える刺激が用意されている。


街をぶらぶらするだけでも何かが見つかり、何かが起こる。街で生きること自体が刺激的なのだ。
たとえば、今日は釣りでもしてのんびり過ごそうかなと思ったとする。マップを開いて眺めると、釣りができるスポットを見つけた。さっそくバイクを呼び出して移動だ。

クリアビュー丘というところに行くと海釣りができるみたい。

のんびりスローライフといえば釣り。バイクでのツーリングもいい。
車両の操作はなかなかピーキーだが、“快適モード”に切り替えると最高速度に制限がつき、かなり運転しやすくなる。海沿いのバイクツーリングをのんびり楽しんでいたところ、バイクで爆走する無軌道な若者たちがいきなり難癖つけてきた。

この街で解決すべきトラブルは異象だけではないということだ。
とはいえ、さすがは我らが鑑定士。無軌道な若者程度はあっさり撃退。ついでに彼らが乗っていたバイクがなかなかレトロでイカス感じだったので、頂戴してツーリングを続けた。
しれっと書いたが、こういうこともできる。

自分が持っている車両以外もいただくことができる。

そして待望の釣りスポットで、ゆったりと過ぎる時間を満喫。いい休日だ。
そのまま海辺から街に帰るついでに散策していると、ふと視界に入った異質な超高層ビルが気になった。気になったなら行けばいい。ファストトラベルを経て、該当ビルの最上階へ。

日常的な風景にほぼ溶け込んではいるが、妙なビルが気になる。

実際に出向いてみると、やはり異質。急に広がる非現実感にゾクゾクする。

操作キャラのスキル次第では、ビルの壁面を走ったりすることも可能。これまた非現実感があって楽しい。
高層ビルで遊んでいると、ちょうど美しい夕日が拝めた。これは記念撮影タイムだろうということで、撮影モードで自撮りやドローン空撮を駆使。仲間との思い出がまた1ページ増えた。エモい。


撮影モードでは仲間を呼び出して、立ち位置や表情、ポーズなどを変更可能。ドローンでの空撮も楽しい。


仲間と絆を深めると、車の助手席に座ってもらったり、いっしょに観覧車に乗ったりすることも可能。撮影がより捗る。
このように、仲間と過ごす時間というのも、ヘテロシティを語るうえでは欠かせない。絆が深まるイベントだけでなく、街をぶらぶらしていたら偶然仲間を見かけることもある。これが思った以上にうれしいもので、急いでいてもついつい話しかけてしまう。


いっしょに博物館を回ったり、ガソリンスタンドで偶然出会ったりと、仲間との日常もまたいい刺激。
仲間には依頼や戦闘以外でも、いつも助けてもらってばかりだ。また別の日の話になるが、マップを眺めていてどうしても行きたい場所を見つけてしまった。

車やグライドで高速移動ばかりというのもなんなので、たまにはのんびり電車で向かおう。

目的地はこちらです。
メイド喫茶だ。やったぜ。懐かしさと高揚感と萌えキュンさ、いろいろな感情が揺れ動くスポットだ。別の意味で現実と非現実の境界が溶けていく感覚がある。喫茶ではなく“麻雀”と書いてあるのがまた挑戦的でいい。


内装も完璧。
なぜ麻雀なのか店員に訊いてみたところ、店長が元プロ雀士で麻雀好きだからというじつにわかりやすい理由だった。店員のメイドさんたちも鍛えられており、麻雀の腕には自信ありらしい。

ぶらりと立ち寄った店にもしっかりとバックボーンがある。それがヘテロシティ。
ただ、現在はどうやらメイドさんたちとの麻雀は楽しめない模様。残念な気持ちを抑えて、仲間3人を急に呼び出して雀卓を囲んで癒された。
メイド喫茶で急に公務員含む仲間を呼び出し、雀卓を囲む。これがヘテロシティの平和を担う鑑定士の姿である。

ただ、やはりメイドさんと麻雀を楽しめなかったのは心残りだ。萌え萌えリーチとかしてほしかった。ここでグレて非行に走るとどうなるか、実際に市民の車を奪った事例で紹介しよう。

奪った車で走り出す、15の夜。
すると画面左上に、星のマークとゲージが出現した。当然、スーパースター度を示すものではない。
指名手配度だった。自由とはいえヘテロシティの治安はわりとしっかりしており、悪さをしすぎると逮捕されてしまう。捕まりたくないのでパトカーを奪って逃走したが、あえなくお縄に。罪に罪を重ねるのはよくない。本日の学びであった。


そして、まさかの刑務所暮らしがスタート。急に獄中日記に移行する記事、怖すぎるな。
とはいえ、保釈金を払えばすぐ出られるし、労働すると刑期日数は減る。模範囚になろうと心に決めた。そして、刑務所の中もやたらと描写が細かい。ここもアーバンライフの一部なんだなぁ。




読書中の人がいたりトレーニング設備があったり。快適そうである。
このまま獄中日記で走り切る手もあるが、さすがにどうかと思うので、何とか出所したい。だけどお金は払いたくない。となればやることはひとつ。脱獄だ。
当刑務所にはいくつもの脱獄方法が用意されている。ただし、失敗して看守に見つかれば刑期延長だ。リアルでは品行方正に生きているので、こういうところではスリルを味わいたい。結果、何度も見つかり、もとの刑期の2倍くらいお世話になるはめになった。後悔はしていない。


脱獄のためのアイテムや手がかりを集めるアドベンチャーゲームが始まった。


無事に脱獄成功(方法は秘密)。遠ざかる刑務所を眺めつつ、感傷に浸った。二度と来ないからな。
やっぱり真面目に働こう。刑務所から街に戻るボートからの風景を眺めつつ、心を入れ替える。この街の異象事件を、仲間といっしょに解決していくのだ。
異象とのバトルもかなりライトな感覚でこなせるのも、本作のおもしろいところ。メンバーを交代するだけで強力な“異能連環”が発動したりと、戦闘中に難しい操作はほとんどない。簡単だからこそ、街ブラ中に戦闘が起きてもシームレスに解決でき、街ブラの楽しみが阻害されないわけだ。

各キャラの属性である“異能系統”のシンボルが隣り合っている(画面右下)のが、異能連環の発動条件。組み合わせごとに異なる追加効果がある。

交代するだけでド派手なサポートスキルが発動。回避もボタンひとつででき、タイミングよく回避すれば強烈な“極限反撃”につながるのがまた気持ちいい。
スタイリッシュな連続攻撃や必殺技も、左右のマウスボタンをカチカチしつつEキーとQキーを押している程度(PC版の場合)で簡単にくり出せる。交代も簡単で、1、2、3、4の数字キーを押すだけ。




簡単な操作で気持ちよく大暴れ。
もちろん、戦闘や依頼解決にとことんこだわった暮らしをしてもいい。編成画面でキャラクターに装備させる“弦盤”のオプション能力や、キャラのステータスを変化させる“ギア”の組み合わせにこだわれば、理想的なキャラを生み出せる。
育成面でも、各キャラに新たな能力を与える6段階の“覚醒”では、6つの能力の中から好きな順番で能力を獲得できる。キャラカスタマイズもまたアーバンライフ同様に自由。

この街ではどのように生きてもいい。それを体現するような育成システムだ。
振り返ってみると、今回紹介した暮らしぶりもそうとう自由というかカオスな日常だが、これでもまだヘテロシティで楽しめるアーバンライフのごくごく一部にすぎない。思いついたり気になったり、そのたびに新たな何かが待っている。それがヘテロシティという超現実的都市。
日常と非日常が隣り合わせの街だからこその、退屈しない毎日。ログインしたら何となくぶらぶらする、それだけでも何かが起きる世界。それが『NTE』なのである。


今回は時間が足りなかったが、不動産経営やカーレースなどもぜひやり込んでみたかった。ハウジングをはじめ、楽しめる要素は無数にある。