『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】

『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】
 集英社ゲームズとリアル脱出ゲームのSCRAPが贈る、PCでもスマホでも遊べるクリックタイプの謎解きアドベンチャーゲーム『カミとミコ』が2026年4月23日に発売される。
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 本記事では発売を記念して、シナリオ・キャラクターデザインの赤坂アカ氏と“謎”を制作したSCRAPの加藤隆生氏、マーケティング等を担当した集英社ゲームズのミヤザキユウ氏にお話をうかがった。
『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】

赤坂アカ 氏あかさか あか

漫画家。新潟県出身。『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(全28巻)、『【推しの子】』(原作、全16巻)、『恋愛代行』(原作、全4巻)など数々のヒット作を手掛ける。 現在は“週刊ヤングジャンプ”にて『メルヘンクラウン』を連載中(文中は赤坂)。

加藤隆生 氏かとう たかお

1974年岐阜県生まれ、京都府育ち。同志社大学心理学部卒。2004年にフリーペーパー“SCRAP”創刊。2007年にイベント企画のひとつとして開催した“リアル脱出ゲーム”が好評を博し拡大化。2008年に株式会社SCRAPを設立。マンションの1室から夜の遊園地など、空間と趣向を変えて展開される“リアル脱出ゲーム”は全世界で累計1,700万人以上を動員している(文中は加藤)。

ミヤザキユウ 氏

集英社ゲームズ 事業開発部 プロデューサー/ゲームデザイナー。ボードゲームや謎解きなど、体験型エンタメの企画・制作を手がける。集英社ゲームズではマンガを原作とするボードゲームシリーズ“マンガボドゲ”などを制作。著書『ボードゲームのアートワーク&デザイン』(文中はミヤザキ)。

『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】
左からミヤザキユウ氏、加藤隆生氏、赤坂アカ氏(オンライン参加)。

「世界を作るゲーム、どうですか?」何気ないひと言から始まった3年4ヵ月の軌跡

『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】
──まず、本プロジェクトの立ち上がりについてお聞かせください。赤坂先生、SCRAPさん、集英社ゲームズさんがどのような流れで組むことになったのでしょうか?

加藤
 いろいろ経緯はあるのですが、スタート地点は私と赤坂さんとの飲みの席になりますね。

赤坂
 もともと僕がSCRAPさんのファンで、知り合いの伝手で加藤さんとお話をさせていただく機会をもらったという感じですね。当時はまだ『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(以下、『かぐや様』)の1巻が出たばかりのタイミングだったので、「100万部売れたら、デカいことしようよ」と言っていただけて、うれしかったですね。

加藤
 そのときはまだSCRAPも小さかったので「この人と組むなら、もっとお互いに大きくなってからがいいな」という考えもありました。赤坂さんは絶対にビッグになると思っていましたし。

赤坂
 僕としては『かぐや様』の1巻を出しただけで、ほかに結果を出せていなかったので「そもそも、よく会ってくれたな」という気持ちでした。なので前向きな返答をもらえてテンションは上がりましたね。「加藤さんたちといっしょに仕事をできるくらいがんばるぞ!」と。

──最初のモチベーションはそこにあった、ということですね。

赤坂
 もともとSCRAPさんといっしょに仕事をしたい、という野望はずっと持っていました。それこそ『かぐや様』の文化祭編では謎解きをSCRAPさんに作ってもらいたいとも思っていましたし。でも、つぎの話を作るのに精一杯で、そんな相談をする余裕もなく……。

──では実際にゲーム制作が動き出したのは、お互いが大きくなっていい頃合いになったから、みたいな感じでしょうか?

加藤
 そんな感じですね。初めてお会いしてから赤坂さんとはポツポツ会っていたのですが、あるとき「そろそろ何かやってみませんか」と今度は僕のほうから話を振ってみたんです。お互いに大きくなったのもそうですし、僕にも余裕ができたし。

 とにかく、そんな話を振ってみたら赤坂さんが「世界を作る、みたいなゲームはどうですか?」と。

──これはまた、規模が大きいですね。

赤坂
 「これはフカしちゃったな」と思いながら帰ったのを覚えています(笑)。

加藤
 僕は帰路の中で「世界を作る、か……」と赤坂さんが見ているものを想像しながら帰りました。ただ「“世界”を作れるゲームであれば、赤坂さんを巻き込めるんだな」と、ふつふつと燃え上がるものも感じていましたね。

──世界を作る、これがゲーム制作開始のキーワードになるわけですね。

加藤
 ただ「世界を作るゲームとは何か?」という点には悩まされました。悩みに悩んだ末、たどり着いたのがピクトグラムです。

 もともと「言葉に強く依存するリアル脱出ゲームを海外展開するにはどうしたらいいか」と考えていた際に、言葉を使わず人を思考させ、コントロールできるものとして思いついていたものでしたが、「世界中で意味が伝わるピクトグラムを使い、世界を作っていくゲームはどうだろうか?」と。

──トイレや非常口のサイン(看板)がピクトグラムになっているのも、言葉を必要とせず意味が伝わるからですもんね。

加藤
 そうして3年4ヵ月前、“ピクトグラムを使った謎解きを採用した世界を作るゲーム”として、“神様ランキング”というゲームの企画書を書き上げ、赤坂さんに持っていったんです。

──具体的にはどういった企画だったのでしょうか?

加藤
 何億と多重世界がある中で、神様になって世界を育てるという内容でした。ただ神様の言葉は人類に通じないので、ピクトグラムを使って伝えていくんです。

──赤坂先生、企画書を初めてご覧になった印象はいかがでしたか?

赤坂
 “世界を作るゲーム系”というアイデアに、加藤さんはこういう答えを出してくれるんだなと驚きました。そこからやり取りをしていく中で、「企画をちょっとだけいじってもいい」というお話になったので、いまの『カミとミコ』の原型にもなるものを作って投げ返し、そこからゲーム制作が始まっていきます。

加藤
 ただ、戻ってきた企画書を見たら、ランキング要素が消えてタイトルも“神様ランキング”という名前じゃなくなっていたんですよ(笑)。「ランキング要素はどうするんですか?」と聞いてみても、「ランキングはもういいです」と。「ちょっとだけいじる」って聞いてたのに、ざっくり変わったことにもビックリでした(笑)。

赤坂
 シレっと外したつもりでしたが、一瞬でバレましたね(笑)。

──現在の『カミとミコ』の中に、“神様ランキング”の原型だった部分は残っているのでしょうか?

赤坂
 神が関わるというコンセプトや、人類・世界を進化・進歩させていくという原型はそのまま残っていますね。

加藤
 企画書が固まってからしばらく、なかなかそれ以上先に進まなかったのですが、赤坂さんに状況を尋ねてみたところ「じゃあ缶詰めしてプロット仕上げますね」とSCRAPに来てくれたんです。それから会議室にこもって10時間くらいでしたかね? 赤坂さんが「プロット、めちゃめちゃいいものができました!」と声をかけてくれて、会議室に入ってみたらホワイトボードに情報がびっしりと!

──それはインパクト大ですね……! プロットはPC上で作っていくイメージを持っていましたが、ホワイトボードとは……。

加藤
 その様子からはもちろん、書かれている内容にもビックリしましたよ。ネタバレになるので言えないのですが、「何言ってんだこの人」と思うような内容も書かれていましたし。心が1回拒否するくらいには驚くことが書かれていました(笑)。

──加藤さんが当初に想定していた路線とは、まったく違うものが描かれていたのでしょうか?

加藤
 そうなんですよ。なので、最初は受け止められなかったですね。話が違うし「それ、本当におもしろいんですか?」とも思いました。ただ赤坂さんの原案ですから、そこにおもしろさは絶対あるはず。そう思って消化不良のまま、ホワイトボードを2週間ぐらい眺めていましたね。ちなみに、ホワイトボードの写真は“死海文書”という名前で保存しています。

──イメージしやすい(笑)。この通りに歴史は動くんだという、予言のようなものですね。

加藤
 ただ2週間考え続けたら、赤坂さんの意図がようやくわかったんです。ただ人類を発展させるだけなら、何が起こるかわかる物語になってしまう。予測できない楽しさを生むためには、どこかでプレイヤーの想像を裏切らないといけない。そう考えると、赤坂さんが作ったプロットがどんどんおもしろく見えてきて「そういうことだったのか」と納得し、赤坂さんのプロットをもとに“謎”の制作がスタートしていったという感じです。

──消化不良を起こすくらい、衝撃的なブラッシュアップだったんですね。その段階から、集英社ゲームズさんもプロジェクトに加わっていくのでしょうか?

加藤
 そうですね。赤坂さんと仕事するにあたって、デジタルゲームへの知見やマーケティングのノウハウをサポートしてくれる人がほしいと思い、僕と赤坂さんをつないでくれた方に相談をしたところ、集英社ゲームズさんを紹介していただきました。

──では集英社ゲームズさんは、本作においてはデジタルゲームのノウハウ共有やマーケティングなどの支援として参画されているんですね。

ミヤザキ
 そのような感じです。最初に企画書を見せてもらったときは驚きましたね。「いままでこういうのやってなかったんだ!」と。人類の進歩って、謎解きそのものじゃないですか。たくさんの人がチャレンジをして、何かをひらめいて。本当に脱出ゲームでやってることと同じだったので、ありそうでなかった題材だったんだなと。

 それに赤坂先生がシナリオを担当するなんて「こんなのおもしろいに決まってるじゃないか!」と確信し、「ぜひやらせてください」と即諾しましたね。

──そんな本作は“現代知識無双”を打ち出していますが、このアイデア自体は最初の企画書の時点からあったのでしょうか?

加藤
 そうしたワードではありませんでしたが、ヒラメキを使って人類を発展させていく、というコンセプトは最初期からありました。

ミヤザキ
 そのあたりの見せかたは、我々の方でパッケージングさせていただいています。

──非常にキャッチーなワードです。現在の知識を持ったまま過去に介入できるのはすごい優越感ですよね。

赤坂
 異世界転生ものとしても人気のジャンルですよね。大きな存在になりたいという欲求を満たしてくれるコンテンツだと思いますし、クラフトのシーンでは世界をイチから作っている感覚が得られるので、見ていても楽しいですよね。

──ゲーム開発では、企画書と製品版の内容が大きく異なることも多いかと思います。当初の企画書から製品版に向け、大きく変わったところはありますか?

ミヤザキ
 ほぼ企画書通りになっていると思います。「ここにはこういった要素を付け加えたほうが親切になる」と埋めた部分はありますが、方向性はまったく変わっていませんね。

赤坂
 僕は話を考える際、下手をしたら二転三転することもあるのですが、『カミとミコ』の筋出しに対しては自信がありました。加藤さんが最初、方向性を大きく変えた提案を飲み込んでくれたので、ありがたかったですね。

失敗すら楽しめる。全方位にかわいすぎるミコのリアクション

『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】
──ミコという非常に魅力的なキャラクターも、企画の時点から存在していたのでしょうか?

赤坂
 原始時代のミコのキャラクターデザインを、SCRAPさんのホワイトボードに描かせてもらったところがミコの始まりでしたね。

──死海文書(ホワイトボード)には概要のテキストだけでなく、キャラ原案も入ってたんですね。。

赤坂
 ホワイトボードに描いたのは原始時代のミコでしたが、この物語のエンドは現代にしようと思っていたので、現代のミコのビジュアルもなんとなく想定はしていました。むしろ現代のミコの想像があったからこそ、原始のミコのデザインが完成したと言ってもいいくらいですね。
『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】
──どういうことでしょうか?

赤坂
 ミコは知識を有したまま転生をくり返す存在なので、原始のミコも現代のミコもある意味では同一人物です。そう考えたら「現代まで進む中で、いろいろ経験するんだろうな。でも“いろいろ”ってなんだろう?」とか「こういう経験もするということは、難しい子になるのかな」と想像が膨らみ、ミコの中にある“不思議さ”が生まれました。そうして始まりと終わりがつながった瞬間に、僕の中でミコのキャラデザインが完成したという感じですね。

──最初と最後があって、そこからほかの時代のミコが派生していったんですね。

赤坂
 ネタバレ気味ですが、パッケージの姿がオチであるところも、僕的には気に入っています。ここに早く行きたいじゃないですか。プレイするモチベーションになると思います。

──たしかに「この姿のミコ、いつ出てくるんだろう」と気になりすぎて、ガンガンプレイが進みました。

赤坂
 “カミノイシ”を提示した際のリアクションも、モチベーションに寄与できていると思っています。僕は失敗しがちな人間なので、SCRAPさんの脱出ゲームでも、いつも息巻いて参加し、敗北して帰ることがザラです(笑)。

 なので本作では、ミコと話しているあいだはプレイヤーにはずっと楽しくあってほしい。そういう願いも込めてデザインしています。おかしな話ですが、あえてミスをしてほしいとも思いますね。ミスをしてもミコがいろいろ反応してくれますし、リアクションもたくさん用意したので、見てほしいです。
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変態的と言えるほど徹底した、64色でのドット表現

──本作を制作するに当たり、いろいろな表現方法があったと思うのですが、ドット絵やチップチューンを採用された背景をうかがえますか?

加藤
 ドット絵にしたい、というのは赤坂さんからの提案でしたね。

赤坂
 そもそも企画提案の段階から「絵は描かないで大丈夫ですよね?」みたいな話はさせていただいていて(笑)。原案で参加するぶんには大丈夫だけど、線画とかをしっかり描き込むとなると大仕事になりますから。そういった下心もあって、ドット絵での表現を提案させていただきました。ドット絵ならばキャラクターデザインをドッターさんに渡すだけで済むと思ったので(笑)。

 ただこういう悪巧みはまぁうまくいかないもので。開発が進んでいくうちにイベントスチルのお話が生まれ、SCRAPさんから「原画をお待ちしております!」と。イラスト作業はキャラクターデザインまでだと思っていた読みは、かんたんに外れましたね(笑)。

加藤
 そんなドット絵にも、ちょっとした秘密があります。ドット絵の制作をお願いしたのは石田芙月(X:@fuzuzu)さんという方なのですが、この方がすごい方でして。パッと見て遊びたくなるポップで完璧なドット絵なのですが、じつは使っている色数に制限をかけているんですよ。レトロゲーの雰囲気を再現するために。
『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】
赤坂
 本当に変態的ですよね、色の絞りかた。64色しかないんですよね。

──64色だけ? そもそもカラーパレットで作るというのも、現代ではあまり聞きません。

ミヤザキ
 そうなんです。本作は原始時代から現代まで、本来ならば色の使いかたが違って然るべきにも関わらず、64色しか使わないという制限を用いることで、ビジュアルの統一感を出してくれたんです。

赤坂
 ふつうやらないですよ。だから最初にドットのサンプルがいくつか届いたとき、使っている色が不思議で「もしかして色数を絞ってます?」と石田さんに聞いてみたら、「よく気づいてくれましたね!」って。

加藤
 石田さんは「ドット絵は写実みたいなものは描けないので、想像してもらうための技法なんだ」ってずっと仰っていました。64色しか使わないのも、そういった技法のうえに成り立っているすごいテクニックなので、ここはぜひ注目してもらいたいですね。

──ドットゆえに湧き上がる感情や、深みは確実にありますよね。

加藤
 そのための適切な色数やピクセル数も、すごく考えて作ってくださいました。こうした石田さんのこだわりのお陰で、ミコが持つ不思議さも際立ちました。

赤坂
 現代では“ドット絵風”の作品は多くありますが、『カミとミコ』のドット絵は本物のドット絵です。同じ絵描きからすると「そんなにガチなドットをいまどきやるか?」と感服しました。

加藤
 色をギリギリに絞っているからこそ、「ここ、もうちょっと明るくしてくれないですか」というオファーが「ダメです」と返されることも多々ありましたね(笑)。

──そんなドット絵にぴったりな、チップチューンを中心としたBGMも非常にすばらしかったです。「サントラ出してくれないかな」と思ったくらい良曲揃いで……。

加藤
 サントラは善処します(笑)。じつは僕は前職がミュージシャンで、曲にもこだわっていたので、そう言っていただけるとうれしいですね。

──シーンごとに、プレイヤーの感情とのリンクもかなり計算されていると感じました。

加藤
 僕は、ドット絵のゲームには音楽がすごく重要だと思っています。ドット絵はその粗さゆえに、絵として表現できない箇所が出てきます。それはユーザーの想像力を掻き立てる魅力でもありますが、そこに音楽を加わることで、より想像力は力強く働くようになるんです。

 ただちゃんと想像力の方向性を誘導するにはメロディアスである必要がある。そういった点では「だれが聞いてもこういう気持ちになれるよね」という音楽がしっかり完成したと思っているので、少しでも多くの方に本作のドット絵とチップチューンが織りなす表現を味わっていただきたいです。

独り語りをおもしろく魅せる赤坂アカの技量。そして異常なほど豊富なミコのリアクション

──ちなみに、赤坂先生がゲームのシナリオを担当されるのは、『カミとミコ』が初になるのでしょうか?

赤坂
 高校時代に同人ゲームを作っていたので、初めてではないとは思っています。“吉里吉里2”というエンジンを使い、厨二病全開のノベルゲームを作っていました。そういえば、そのとき作っていたものも世界が滅ぶ滅ばないという話でしたね(笑)。

──マンガとゲームのシナリオは、リアクションを取る人物が作品の中にしかいないか、外にもいるのかという違いがあるため、性質というか構造が違う印象があります。そんな中、本作のシナリオを書き上げる上で意識された部分はありますか?

赤坂
 おっしゃる通りの構造の差があるので、そこは意識しました。マンガでは登場人物がツッコミを入れてオチが付けられますが、ゲームではプレイヤーがツッコミを入れてくれるかはわかりません。

 こうした事態を避ける目的もあって、『カミとミコ』のシナリオは基本的に“ミコのひとりリアクション物語”という形にしています。しかしこの形式はひとり語りがつまらなかったら終わりなので、がんばって書き上げました。またプレイヤーを飽きさせないために、語りやリアクションの色も変えています。堅苦しい語りがあったり、砕けてる語りがあったり。章によって生まれ変わったキャラクターの設定が微妙に違っているのは、そのためです。

加藤
 そういえば、シナリオテキストが上がってくるたびに驚かされたのを思い出しました。ミコはずっと独り言を言ってるキャラクターで、プレイヤーはそれをずっと聞く。それに対するコミュニケーションとしては、“カミノイシ”をポンと提出するだけです。それで話がおかしくならず、物語の興味をずっと湧かせ続けるというのは、本当にすごいですよ。ミコの独り言こそ魅力になってることは、プレイしたらすぐ感じていただけると思います。

──本作では、謎解きの謎もシナリオの中に組み込まれていますが、ここはどのように制作が進んだのでしょうか? まず謎ありきでストーリーを作ったのか、それとも謎のテーマだけ決まっていて、そこに向けてシナリオを書き、謎制作サイドが謎を調整したのか。いかがでしょうか?

赤坂
 最初は、僕が書いたシナリオに謎を当てはめていただく形で進行しましたが、最終的には「この章でこれをテーマにした謎が何個入る」とテンプレートが共有され、それをベースにシナリオを書き、調整したという感じですね。

加藤
 かなり時間をかけてプロットをしっかり作ったのが功を奏しました。プロットに沿って謎を作れば、赤坂さんがシナリオに謎を組み込みやすくなりますから。ただそれでも細かい調整は都度必要なので、うまいこと脚本にまでまとめてくれた赤坂さんに感謝しています。

赤坂
 プロットもかなり綿密に作っていたので、それに沿ってシナリオを書いた僕は早い段階で「よし! これで『カミとミコ』のシナリオ作業終わり!」と思っていたのですが、謎を入れる調整部分こそが執筆作業の本番でしたね(笑)。

 調整のためのキャッチボールが延々終わらなくて(笑)。ただその甲斐あって、シナリオの中にキレイに謎が組み込めました。

加藤
 謎を作っている側と謎をデジタル化する側、そして赤坂さんが、いっしょの場所で作業できるわけではなかったので、調整には時間がかかってしまいましたね。さらに集英社ゲームズさんにもデジタルゲームとしてのチェックをしていただいていたので、3者の中をつねにチェックが回り続けているような感じでしたね。

 そもそものテキスト量が膨大ということもありましたし。
『カミとミコ』赤坂アカがホワイトボードに書き記した“予言書”が始まりだった。赤坂氏、SCRAP、集英社ゲームズがそれぞれの視点で語る裏話【発売直前インタビュー】
──テキスト量がかなり膨大とのことですが、どれくらいのボリュームになるのでしょう?

赤坂
 ストーリーについては、そこまで文量を書いたつもりはないんですよね。SCRAPさんのファンは、謎を解きたくてゲームをやっている方々だと思うので、あまり文章が多いとメインディッシュの謎までが遠くなって飽きてしまうかもしれないと思っていたので。

 いつもならバーって書いてしまいますが、端的に、それこそ子ども向けの絵本の感覚に近い印象で書いています。なるべく短い文章にし、その中にエッセンスやキャラの魅力や要素を入れ込むよう心がけて執筆しています。

──と聞くと、そこまでボリュームがあるように思えないのですが……?

赤坂
 ストーリーの最初から最後までを一本の線でつなぐと、そこまでのボリュームではないですよ。ただやっぱり、いっぱい書きたかったんですよね(笑)。なので、“カミノイシ”をミコに示した際の分岐を、たくさん入れさせていただきました。そのボリュームは、まぁ多くなっちゃいましたね。

ミヤザキ
 本筋とは関係ない部分のテキストをめちゃくちゃ書いていただきました。

赤坂
 本筋部分より多いと思います(笑)。

──本筋よりミコの反応のほうが多いって、どういう作りなんですか! そして加藤さん、赤坂さんが「カミノイシの分岐」と言った瞬間、ため息をつきましたね。

加藤
 いや、だって本当にたいへんだったんですよ!(笑) カミノイシが10個あるとして、その1個をミコに渡すだけでもミコはしゃべるわけですよ。つまりそれだけで10通り。ただこのゲームはカミノイシを複数個組み合わせてミコに渡すこともできて、仮に2個の組み合わせで渡すとなると、それだけで45通りに、3個なら120通りにもなります。それが10章ぶんあるんですよ?

 最初、赤坂さんから分岐リアクションをしっかり作りたいって聞いたとき、「あ、この人おかしいのかな?」って思いましたもん(笑)。

──“カミノイシ”は章によって種類も異なりますし、とんでもないパターン数になりますよね……?

加藤
 しかも1章の中でも物語は変わっていくから、「フラグが立ったときには都度セリフを変えないと」とかまで言い始めて。

赤坂
 いやいや、それを書くのがおもしろいんですよ! それでこのゲームの深みが増すんです!

加藤
 僕は「組み合わせは2個でいいんじゃない? 3個じゃなくてもよくない?」と何度か進言したんですけどね? ただ気付いたら物語の主軸とは関係ないテキストが、本筋を超えるボリュームと熱量で上がってきて。

──それでボリュームが増えたと(笑)。

加藤
 ただね、これがまたおもしろいんですよ! ミコというキャラクターがどんどん膨らんでいくし、世界がどんどん深まっていきました。けれども、物語の根幹になる部分は、適切にわかりやすく描かれてるという構造。天才ですよ。

──恐るべき技量と発想力ですね。あらゆる選択肢を確かめたくなってきます。

ミヤザキ
 公称プレイ時間は6時間ほどですが、分岐の先までつぶさに見ていくと、公称プレイ時間にはぜったい収まりません。軽く数倍になると思っていてください。

赤坂
 ぜひ、いろいろ見ていただきたいですね。掘りたい人はいくらでも掘っていただいて大丈夫な作りにしています。

「1回記憶を失って自分でプレイしたい」制作陣が太鼓判を押す創世体験

──これまでの開発を振り返って、それぞれの視点でいちばんたいへんだったのはどのような作業でしたか?

赤坂
 “カミノイシ”の分岐テキスト……。

加藤
 自分でやるって言ったヤツじゃないですか!

赤坂
 書きたかったものの、作りながら「言わなきゃよかった」と後悔しました(笑)。

加藤
 私は謎解きの設計が難しかったですね。謎解きって、まずオチを決めてから作り始めるんですよ。たとえば本作では火を発明するとか、農耕を発明するとか。ただこれをゲームに組み込める問いにするには、どうすればいいのかが非常に難しかったです。

 歴史的に辻褄があっていてほしいし、ゲームとしてのヒラメキもほしい。さらに物語としても整合性を取りたい。そうなると、ただ答えから逆算するだけではダメだし、どんな“カミノイシ”があればいいのか、それをどのタイミングでどういう風に出せばいいのか。めちゃくちゃ悩んで試行錯誤をして形にしました。
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──やはり謎の制作ってかんたんではないですよね。

加藤
 1回、スランプなのかまったく作れなくなった時期もありましたね。そこで弊社の各プロジェクトからエースを呼び集めて「1週間でいいからこっちのプロジェクトに関わってほしい」と、各章のアイデアをそれぞれ出してもらったこともありました。あのときは本当にしんどかった。人類の発明と立ち向かってるみたいな気持ちになって、とてもひとりじゃ抱えられない。

──まさに神様の視点ですね。どう人類に気づかせるかという。

加藤
 そうなんですよ。でも気付けないんですよ。ミコはカミが気付かせてくれるけど、僕はカミと交信できないから。なのでひたすら試行錯誤の日々でした。

ミヤザキ
 僕は赤坂先生と加藤さんという、シナリオトップ、謎解きトップのおふたりに対して、ある種のダメ出しをしなければいけない立場だったんですよね。それが、いちばんたいへんでしたね。

──胃が痛くなりそう……。

ミヤザキ
 ヒットメーカーの赤坂先生に対して「ここはこうしたほうがミコちゃんらしいと思います」とか、謎解きの神様のような加藤さんに「謎解きをやってない人に、これは難しいと思います」とか、言えます?

 ただ今回私たちはデジタルゲームのノウハウを伝えるという立場でしたし、『カミとミコ』はふだん謎解きをやられてない方にも手に取ってもらえるタイトルだと思っているので、謎解きに触れてこなかった人にも遊んでほしいんです。

 なので「おこがましいな」とは思いながらも進言をさせていただきました。個人的に赤坂先生、加藤さんのファンでもあったので、本当に難しい立場でした。
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加藤
 そのわりには、明け透けな指示が飛んできましたね(笑)。

──(笑)。それでは最後に、本作を楽しみにしている読者の皆様にメッセージをお願いします。

ミヤザキ
 謎解きゲームはちょっと苦手かも……という人にこそ、すごくオススメしたいです。体験版を遊んでいただいたユーザーさんからはゲームとしてのおもしろさはもちろん、「とにかくミコちゃんがかわいい。気づいたら解けていた」という感想もいただいています。頭を悩ませるストレスよりも、謎解きの楽しさが遥かに勝る作品になっているので、多くの方にプレイしていただきたいですね。

加藤
 100万年を6時間くらいで通過できる、奥深いゲームです。老若男女、ひとりも置いていかないつもりで作りました。ちょっと背伸びした小学3年生でも、興味を持った60代の昔ファミコンを遊んでいたような人たちも、感受性が豊かな10代〜30代の人たちも楽しんでいただけると思います。

 さらに「こんなことがあったんだ、知らなかった」という史実の知識も出てくるでしょう。歴史を通じて“いま”を感じられるゲームに仕上がったので、ぜひ遊んでいただければと思います。

赤坂
 地球規模・歴史規模のゲームをちゃんと作れたということはすごく意義深いですね。僕自身がいちばんやりたいゲームを、いっしょに作っていただけた。1回記憶を失って自分でプレイしたいです。

 何度も擦ってしまいますが、“カミノイシ”の分岐シナリオに関しては、かなり力を入れて作っています。「失敗しても楽しい」という体験は、それくらい僕にとって、そして謎解きにとっても大事だと思います。答えを提出して、ただ「違います」と言われるだけだとおもしろくありませんが、『カミとミコ』ではそこもおもしろくなるようにしているので、お得な要素としてお楽しみください。おもしろく謎解きができるようがんばりましたので、皆さんぜひプレイして、楽しい時間を過ごしてください。
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[2026年4月23日13時15分修正] 一部記載内容に誤りがあったため、該当の文章を修正いたしました。
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