『Samson』レビュー。GTAクローンというより“オープンワールド中年借金返済シム”と捉えると光る部分が見えてくる、悩ましくも懐かしいゲーム

『Samson』レビュー。GTAクローンというより“オープンワールド中年借金返済シム”と捉えると光る部分が見えてくる、悩ましくも懐かしいゲーム
 2026年4月8日発売の『Samson』は、『ジャストコーズ』シリーズや『Mad Max』を手掛けたChristofer Sundberg氏の新スタジオLiquid Swordsが手掛ける、PC向けのオープンワールドアクションアドベンチャーゲーム。
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 本作のレビュー版をプレイしたので、その内容をご紹介しよう。なお残念ながら本作には日本語ローカライズがないため、英語設定でプレイした。

GTAクローンぽいけど、そうじゃない所に良さがある悩ましいゲーム

 本作の主人公は、強盗などの逃走を担う運転手(ゲッタウェイドライバー)のサムソン。とある事件で失敗した彼は服役するハメとなり、ようやく地元に帰ってきてみれば組織への莫大な負債を背負い、さらにそのカタに女兄弟が人質になっているという事態に。

 ゲーム本編は、そんなドン底状態のサムソンがかつての悪友に仕事を回してもらい、運転の腕とステゴロ(素手の喧嘩)の強さを買われて犯罪仕事で日々の返済を行っていく……という、ダークな中年男のオープンワールド借金返済シムとなっている。
『Samson』レビュー
舞台は1990年代のアメリカ。シャバに帰ってきたサムソンが悪友たちと再会し、犯罪組織への返済に追われる。
 さて本作、めっちゃ悩ましいゲームだ。開発が「(GTAとは)方向性が違う」と主張しているとはいえ、ジャンル的に「つまりGTAみたいなもの?」と思う人も多いと思うし、実際に遊んでみても最初の方は良くも悪くも“ひと昔前によくあったGTAクローンっぽいゲーム”の感触があったのは否めない。

 それは単に“暴力とクルマのハンドリングで大抵のことを解決するオープンワールドの犯罪アクションアドベンチャー”というだけじゃなくて、以下のような微妙な部分も含めて良くも悪くも「うわ懐かしっ!」って感じだ。

  • ミッションの目的地を指し示すミニマップ上のマーカーがちょっとズレてて、見た目通りにたどり着けないで迷う
  • 設定上は敵対組織の拠点にわざわざ盗みにいくぐらいのブツが、屋根の上とか工場の床とか理解不能な場所にほっぽかれてる
  • そもそもブツを示す段ボール箱の外見が、“レアなホッケー選手カード”を盗みに行くミッションでも特殊な工具を盗みに行くミッションでも同じ(使いまわし)
  • カーチェイスでなかなかトドメを刺せないと同じルートを周回しはじめる
  • ミッション開始地点と開始後に指定される目的地がムダに離れてて、せっかく通ってきた道を無駄に戻らされたりする
  • NPCがたまに変な挙動を引き起こす(敵対判定がオンにならずにボッ立ちしてるとか、隙間にハマって突然ハイジャンプするとか)
『Samson』レビュー
“チンピラがレアなホッケーカードをたまり場のテキトーな場所に置いてるので暴力で強奪しに行く”みたいなご都合主義、俺は好き。悪いってんじゃなくて、リアリティのバランスの取り方がちょっと昔のゲームっぽいよねってハナシ。
『Samson』レビュー
標的のクルマを体当たりで大破させていくテイクダウンミッションは、ドライバーとしてのサムソンの腕の見せどころ。ミスり続けて敵が周回し始めると「あっスイマセン」という感じになるので、サイドラム(横方向への体当たり)をキメて確実にダウンさせていこう。
 「あーそういう感じのゲームあったわ」って人、いるでしょ? でも本作にその手の”値段が安い新作のGTAクローン”(※米ドルだと24.99ドル)の役割を期待するなら多分、あまりいい結果にはならないと思う。

 だって本作には輪をかけていろんなものが足りない。ドライブ中に聴くカーラジオはないし(まぁ権利料高いからね)、部屋の模様替えはおろか服の買い物もできない。街中のアクティビティも少なければ、カメラに凝ったカットシーン演出とかもほとんどない。
PC Gamer誌のインタビューによると、開発途中で資金削減を食らって方針変更を余儀なくされたそうなので仕方ないのだろう。

 『Samson』の戦闘は銃を使わない近接格闘メインのシステムなので、同じく近接格闘システムが特徴のひとつだった『
スリーピングドッグス 香港秘密警察』を今回のレビューのために再インストールして遊んでみたんだけど、まぁ普通に充実してて楽しかった。正直に言うと、“GTAっぽいゲーム”を求めて遊ぶならそういう過去の名作を引っ張り出してくるだけで十分じゃないかと思う。

 
だけど、一応のクリアーと借金全額返済までプレイして感じた“『Samson』なりの良さ”はそれ以外の部分にある。だからなおさら悩ましいんだ! ここからはその点について説明していこう。
『Samson』レビュー
格闘戦は弱攻撃・強攻撃以外にパリィや武器攻撃・武器投げがあり、ダウン状態を取ると一撃必殺のフィニッシャー攻撃を出せる。……が、あんまり深みはない。『スリーピングドッグス』みたいな環境攻撃があったら良かったなぁ。

返済は計画的に。仲間との板挟みになりながらの借金返済シム

 『Samson』の核となっているのは華々しい犯罪計画ではなく、毎日やってくる支払いだ。昼・夕方・夜にアクションポイント(AP)が割り当てられていて、ミッションをプレイするとAPを消費して時間が進行。夜にAPがなくなるとそれ以上ミッションは受けられなくなり、自室で寝る時にその日の分の返済が行われるという仕組みになっている。

 ミッションにはストーリーの進行に関わるストーリーミッション以外に相棒のカーターが取ってくる通常ミッションがあり、大きく分けてクルマ系のジョブと徒歩系のがある。前者は警察からの逃がし屋だけでなく、タイムアタックのストリートレースやブイブイ言わせてる連中の排除など(クルマで体当たりして大破させていく)、後者は殴り込みや尾行、物資の強奪などだ。
『Samson』レビュー
1日がスタートするとその日の返済額と借金の残額がドーンと出るという仕組み。気が滅入るね。
『Samson』レビュー
毎日の返済額や消費APなどを考慮しながらミッションに挑む。後述する通り、ストーリーミッション(青)は安い。
 稼いだ金が返済額に足らないと借金取りの兄貴たちが付け狙ってくるようになるので、限られたAPの中で高額なミッションをこなしていくのが理想なんだけど、なかなかそうもいかない。

  • 話を進行させるストーリーミッションは通常ミッションより貰える額が安い
  • ミッションを失敗すると報酬ゼロでギブアップして進めるかAPを追加消費してリトライするかの二択
  • マニュアルセーブはなく、ほぼミッションの受注・完了時のオートセーブのみ
 こんな感じのシステムなので、1日あたりの返済額自体はそんなにシビアではないものの、たまにミッションでしくじったり、カネの渋いストーリーミッションを受けたりしたら相応にカツカツになっていく。

 なので街角でカネの入ったバッグを置いて談笑中のチンピラたちから強奪して足しにしたり、復讐に燃える兄弟たちを尻目にストーリーミッションを後回しにしたり、街中のタイムアタックレースで障害物にぶつかった瞬間にリアルにゲームをリセットしたりするんだけど、まぁ情けない。
『Samson』レビュー
返済が遅れると怖いお兄さんが取り立てにやってきます。拳で説得して帰ってもらうと段々強くなっていきます。
 でもGTA的な成り上がり感のない、そんな世知辛い借金返済生活が段々楽しくなっていくのだ。時間帯ごとにランダムにPerk(能力ブースト)が得られるというシステムもあって、昼に格闘戦のブーストなら喧嘩系をやって、夕方にクルマ系ミッションの報酬アップが来たらそちら、といった感じの調整ができたりもする。

 ところで記者はつい律儀に毎日返済しようとプレイしてしまうのだが、通常ミッションは普通に過去にプレイしたものが再登場する仕組みなので、必ずいちばん高額なのを選ぶようにしてるとまぁ、ちょっと飽きる。なのでちょっとぐらい返済額が足りなくなってもあんまり気にせず殴り倒して新たな1日を頑張る、というアウトロープレイをしてみるぐらいが丁度いいかもしれない。

 ちなみにお金に余裕がある時は、あえてその日の返済額以上に有り金全部を支払うという選択も可能だ。翌日は持ち金0ドルから始まるのでクルマの修繕もできずいきなりピンチなわけだけど、それによってブーストを得られる金欠プレイ用スキルが用意されていたりもする。
『Samson』レビュー
“十分に返済しなかったら翌日最初のミッションが消費APマイナス1”みたいなスキルもある。ただちょっと入手が遅めなので、こういう偏ったプレイに向いたスキルはもうちょっと早めに来てもいいんじゃ、と思わないでもない。

自分たちが生み出した街に対する開発の愛情が感じられる仕組みも

 そんな悩ましい仕上がりの本作のベストの部分を挙げるとすれば、それは間違いなくゲームの舞台である“ティンダルストン”そのものだ。オープンワールドとしてのサイズはたいして大きくないが、オープンワールドゲームを作ってきた開発ならではのこだわりが端々から感じられる。

 サムソンの育った地元であるティンダルストンは荒廃していてどこも汚く、ジャンキーがそこら中をうろつき、街をちょっと歩けば近所のどこかから絶叫が聞こえてくるという終わってる場所。

 ゲームにはそんな街の各所にある“名所”を発見していくシステムがあり、見つけるとサムソンの皮肉混じりの解説を読めるのだが、地元民ならではの微細なニュアンスが感じられたり、中には彼の子供の頃のささやかな思い出が含まれていたりして、なんとも言えない愛憎が沁みるのだ。
『Samson』レビュー
「知らねぇやつは“ナイフ横丁”はスゲー危ねぇとか言うけどよ、実際刺されたやつは見たことねぇぜ」とか、地元民がゆえに知る微細なニュアンスを教えてくれる。
 さらに街の各所では困った人々を助けたりするミニクエストが用意されていて、探索中に偶然遭遇したそれらに対処していくと、新種のドラッグの蔓延、臓器密売疑惑、地上げ計画など、荒廃した街のさらなる暗部に迫る事件を追っていけるようになっている。正直一個一個のクエストは短いんだけど、コレが通常ミッションより面白い。

 そして、名所めぐりや街中のクエストを発見するための探索はミッション外なので時間帯の進行と関係なく行えるし、名所を一定数発見するごとに基本APが増えるという最強のおまけまでついている。

 本来の軸を構成する借金返済ミッションより面白くて味があるのはなんか本末転倒な気もするけど、多分やれることが限られている中で開発チームがせめて注力できたのが、自分たちが生み出した世界への思い入れを込めることだったんだろう。
『Samson』レビュー
絡まれてるグラフィティライターを助けてみたら、実は新種のドラッグ“ホワイト・ウィスパー”の蔓延をなんとかするべく、治療してくれるドクターに繋がる情報を描いてるのがわかったり。こういうアウトローや“危険な地域”のなかの微妙なグラデーションが描かれるのが個人的に面白い。
 そんなわけで本作、『GTA』も『ジャストコーズ』も『Mad Max』も投影しない方がいいが、オープンワールド中年借金返済シムとしての見どころはそれはそれとしてある、かなり独特でピーキーな作品となっている。

 3Dオープンワールドゲームとしては勝負価格な24.99ドルという部分を勘案したいのだが……円安つらいですねぇ。上記に挙げた良所が気に入った人は思い切ってトライするか、ウィッシュリストに入れてセール待ちというのもアリだと思う。

 なおレビュー段階では結構キツいバグも多かったが、記者がスタジオ側に報告したもの(特に進行不能系のバグ)に関しては確認済みで発売直前のDay0パッチで修正予定とのことなので、きっちり直るのを祈ろう。

 参考までに筆者のクリアータイムは17時間。ただしこれはバグによる手戻りや完全返済のために多めにプレイした分も含めてのもので、「メインストーリーのクリアーなら公称10時間、全部遊び尽くすなら25時間以上」という公式の説明の範囲内だろう。
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