発表時には、“おっさん・ミーツ・ガール”な作品として、おもにおじさんたちから注目を集めていた。そんな本作を、おじさん代表としてレビューする。
とにかくストーリーがいい! おじさんなら主人公に感情移入して泣けること間違いなし
ざっくりストーリーをまとめると“傷つき、敗れ、諦め、忘れ、いろいろなことを過去に捨ててきたおじさんが少女と異世界を旅する物語”といった感じ。ただここからレビューを進めていくにあたり、ネタバレの要素はいっさい省きたい。ぜひプレイヤー自身の目でストーリーを追ってほしいので、ストーリーに関してはふんわりした点も多く出てくるかと思うが、ご了承願いたい。
さてストーリーの紹介に戻ろう。主人公のユージンはとにかく不幸で、カメラマンを目指して上京するも、初恋の人と仲違いし、都会で務めた会社は倒産、妻とは離婚し、心機一転始めたカフェも潰れてしまうという始末。ストーリーを終えたいま、不幸の原因を探ると単純に不運というわけではなく、ユージンにも原因はあるのだが、まぁとにかく不幸だ。










ここまでが導入だ。不幸をスタートラインとしているものの、異世界で少女と出会い、旅をともにするというワクワクする展開から物語は始まっていく。
ただここから展開していくストーリーは、すべてがワクワクするようなものではない。さまざまな神霊を救いながら、ユージンは過去の不幸や自身の過ちなど、苦い想い出を振り返っていくことになる。これが刺さるんだわ。


またストーリーの合間合間には、色褪せた謎の世界で妄想のようなものを見ることもある。ここでもまた、辛い記憶と邂逅することになる。ユージンがなぜいまのような状態になっていくのかは、この世界で紐解かれていく。

言ってしまえばユージンは基本的にはいい人なんだけど、何かから逃げるために別方向への努力を始めてしまうタイプ。
たとえば初恋から一歩踏み出す勇気がなく、そこから逃げるように夢を追いかけ始めたり、はたまた家庭から逃げるために仕事に精を出したり。本来正面から受け止めるべきものから逃げているため、逃げた先でがんばってそれなりの成功をしても、幸せにはならんわな。



このゲームのいいところは、ただつらい過去を、忘れたい過去を呼び起こすだけでなく、ちゃんと救いを用意してくれていることだ。自分の周りには支えてくれる人がいる、わかってくれる人がいると教えてくれること。


人間誰しもひとりでは生きていけず、ひとりではどうにもならないこともある。そういったメッセージをちゃんと届けてくれるので、ユージンに感情移入をしていっしょに自責の念を感じても、ちゃんと救ってくれる。優しい。
途中心が苦しくなる瞬間もあったが、エンディングまで走り抜けたいまとしては、「いまのままではいけない」、「もっとしっかり生きないとな」と、清々しく前向きになれている気がする。
たぶんだけど、世の中のおじさんでユージンのように諦めや後悔、逃避を経験した人は多いはず。むしろ、そういった経験なく過ごしてきた人のほうが少ないはずだ(少なくあれ)。きっとそういったおじさんフレンズならば、本作に感情を揺り動かされつつも、最終的には前向きな反省ができると思う。
ユージンに自己を投影せず、ユージンの人生をよりよく導こうとプレイヤー目線でプレイをした場合であっても、得られるものはあるはずだ。それくらい本作のストーリーはいい!
ファインダー越しに世界を紐解くシステム。カメラへのこだわりもすごい
パズル的思考が求められるような謎解きギミックは存在しない。しかし言葉の裏にある気持ちを汲み取る読解力、共感力、想像力は求められる。神霊たちの悩みを解決するには、写真撮影時に表示されるテキストや会話をヒントに“相手が何を望んでいるのか”を察して求められる写真を撮り、それを“神の火鉢”に捧げなければならないのだ。





ストーリーをクリアーするだけであれば、神の火鉢への奉納は最小限でいいのだが……。本作のストーリーは、神霊たちの過去や想い、悩みなどを理解すればするほどストーリーの奥行きを感じられるようになる。せっかく本作をプレイするのであれば、この奥行きをぜひとも感じてほしい! 多くを理解していけば「あの会話は、そういう過去があってのことだったのか!」と発見できることもある。本作のストーリーは、それほど深く作られているのだ。


カメラで撮影するというアクション自体もおもしろい。ただ対象を画角に捉えてシャッターを押すだけではなく、ちゃんとピントを合わせ、シャッタースピードを調整して撮らなければならない。このカメラというガジェットへのこだわりがすごい! F値やらホワイトバランスやらといった複雑すぎる要素を排しつつも、ちゃんと撮影にこだわっている雰囲気が味わえるように作られているのだ。カメラ好きにはもちろん、カメラはあまり使わないけれど興味がある人もカメラいじりの感覚を楽しめるだろう。








爽快感なんてないし、自分のダメなところを指摘されているような気分にもなる。しかしそれを差し置いても、ストーリーがおもしろく、途中から前向きな気分にさせてくれる。おじさんだからこそ得られるものがあるゲームだと感じた。気になる人はぜひ。

















