「今度の『パワプロ』はファンタジー!?」
そんな言葉を耳にしたとき、筆者としては「ついにか」と思った。
そう、ついに“野球を知らない人間”が『パワプロ』に手を出すときが来たのか、と――。

『パワプロ』――『パワフルプロ野球』シリーズの“サクセス”と言えば、野球選手育成シミュレーションの金字塔。筆者も前々から興味はあったのだが、「野球わからないからな……」という気持ちからなんとなく手を出せないでいた。しかし、最新作はファンタジーというではないか。それなら野球オンチの自分でも楽しめるのでは?
その考えはずばり的中。2026年3月26日にKONAMIよりリリースされたタイトル『パワプロアドベンチャーズ』(以下、『パワアド』)は、いままで『パワプロ』をやってこなかったプレイヤーでも、手軽にサクセスでの育成を楽しめるタイトルだった。
“教本”で初心者も安心。サクセスの沼にずっぷり漬かる
『パワアド』は、ファンタジーとしてはかなりライト寄り。それこそライトノベルやネット小説などをイメージしてもらえるとわかりやすいと思う。
設定自体も、世界樹の恵みによって栄えた世界で魔物とかもいて、そんな魔物から人々を守る冒険者がいて……という王道ど真ん中なものとなっている。『パワアド』は、そんな世界で野球選手ではなく冒険者を育成するタイトルだ。

オープニングでは、平和な世界に魔王が誕生し、封印されるも最近復活の兆しを見せていることなどが語られる。

かつて冒険者に助けられた少年(主人公)が、冒険者を目指す。そんな王道のストーリーだ。

ちなみに主人公が所属する国の名前は“パワフル王国”。名前だけ聞くとあまりにも脳筋すぎる。
主人公たちは、そんな世界で冒険者を育成する学校・パワフルアカデミーに通うことに。そこで個性豊かな仲間とともに鍛錬を積み重ね、魔物などが絡む重大な事件を解決しながら、立派な冒険者を目指す。
こちらもざっくりと言ってしまえば魔法学園モノのフォーマット。ファンタジー作品が好きな層であれば、非常になじみのある設定ではないだろうか。

偉大なる相棒、ヤンスロットとともにパワフルアカデミーへ。名前の語呂がよくてちょっと悔しい。
そして主人公は、冒険者として“団”を結成する。しかしまだ団には人員が足りず、このままでは魔物たちを倒しきれない……! ということで、この団に所属する冒険者をプレイヤーが育成するのが『パワアド』のメインコンテンツである“サクセス”だ。
舞台は主人公たちと同じパワフルアカデミー。ここでの学生生活の結果で、どんな冒険者になるかが決まる。


サクセスには6人のイベントキャラクターを編成することが可能。
サクセスの内容も王道の育成シミュレーション(元が『パワプロ』なので当然だが)。サポートキャラクターを編成し、週ごとにコマンドを選んで育成を実行。コマンドごとにステータスの育成に使えるポイントがもらえて、それらをうまく配分させつつ理想的な冒険者を育てていく。
訓練には体力を消費し、体力が少ないと失敗して冒険者がケガを負う。それを防ぐために、ときには訓練をしないターンを作って……という、シンプルかつなじみやすいシステムで、『パワプロ』シリーズ未経験の筆者でも楽しく遊ぶことができた。

訓練は持久力、筋力、瞬発力、命中、知識、メンタルの6種類。

筋力訓練のひとつ“土嚢運搬”。筋力を中心にポイントを獲得しつつ体力が減る。

得たポイントをもとに、生命力、パワー、魔力、素早さ、耐久力、精神力といったステータスを育てていく。このポイントを割り振る瞬間が気持ちいい。

編成したキャラクターによっては、訓練の後にさらにポイントを得られたり、特殊能力を覚えるのが楽になるイベント(いわゆる“コツ”をもらえるもの)が発生する。いろいろな人といっしょに訓練するのがお得。
ありがたかったのが、“教本”の存在だ。
サクセスでは育成を始める前に、その冒険者がどのジョブに就くかを選ぶことになる。物理、魔法ごとに前衛と後衛があり、それぞれ物理は剣士と弓使い、魔法は魔闘士、魔法使いの4種類。このジョブごとに、「どのステータスを伸ばすとよいか」を教えてくれるのが教本である。

チュートリアル担当のトリアルさんが“教本”についてやさしく教えてくれた。とにかく目標値を目指して育成すればいいわけだな、なるほど。

ポイントは、ステータス以外にも“特殊能力”というものにも割り振りが可能。こちらについても教本がオススメを示してくれる。
おかげであまり『パワプロ』シリーズに詳しくない人間でも、「とりあえず教本に従うか」となれるのがありがたい。もしかすると、熟練のプレイヤーからすれば教本のステータス配分は最適解から外れているのかもしれない。だが、初心者にとっていちばんつらいのは、“そもそもの正解がわからないこと”である。その点『パワアド』は、ゲーム内でひとまずの正解を示してくれるので、迷わずに済むのがありがたい。
教本自体にも初級、中級、上級と段階があるので「今回の育成ではここまで進められたぞ!」と、自身の成長を図る指標にもなる。モチベーションの維持にもつながるだろう。

教本の目標を達成すると、ボーナスポイントがたくさんもらえるのもありがたい。達成感と大量の効果音が心地いい瞬間だ。
シナリオも、王道ながらしっかりとファンタジーらしいツボを押さえているのがうれしい。とくに主人公の幼なじみである銀髪エルフのマリセア。彼女と恋人になった後に発生するデートイベント中には、ファンタジーではよく創作のタネにされる“長命種と短命種の恋愛”についても触れられており、「こういう要素も入れてくるのか!」と感心してしまった。
ガチガチの王道ファンタジーほどの重さはないが、おいしいところをしっかりと味わわせてくれる。読まなくても育成には何の支障もないけど、シナリオを楽しみたいプレイヤーのことはないがしろにしない。そんな思いが感じられる。

「ヒューマンに比べて、エルフは寿命がすごく長い」と語るマリセア。恋人関係になるのもすごく悩んだんだろうなあ。

永遠の愛を誓いたい。切実に。
……ちょっと個人的な余談なのだが、マリセア、マジでかわいい。
けなげで愛らしくて気がきいて料理もじょうずで超かわいい。筆者はまだ一度デートイベントを完走しただけではあるのだが、ずいぶんと深い沼に引きずり込まれたような気分だ。
中学生時代に「『パワプロ』はギャルゲーだ」と仲のいい友人が熱弁しているのを鼻で笑っていたが、いまはそんな自分をぶん殴りたい。あのときはごめんな友人Mよ。デートイベントって、本当にいいものだな。

握った手の大きさに驚くマリセア。か、かわいい……。困り眉で笑顔なのもかわいい。最高。

と、かわいさにやられそうになりつつも、ステータスが関係する場面では感情ではなく「どちらの選択肢が育成としてベストか」を考えながら選んでいた。それはそれ、これはこれ。
そもそもキャラクターそれぞれが全体的に素敵。刀剣類に異常な愛情を注ぐ刀鍛冶のハガネ、天真爛漫な癒し後輩系獣人であるシュトマ、生徒のことを誰よりも考えて行動してくれるジャナイ教官。どのキャラクターも自分にとっては新鮮に映り、テキストを読むのが楽しかった。

シュトマがすごくかわいい後輩で……。実家の宿屋をよりよくするために最高のおもてなしを求め、こちらにちょいちょい無茶ぶりをしてくるのだが、「しゃあねえなあ」と笑って協力したくなってしまう。

ハガネもキャラがとんがっていて好き。「サンドラと引き離されるのがつらい」と言っているが、このサンドラとはハガネが(半ば強制的に)預かって鍛えなおした主人公の剣。他人の剣を変な名前で呼ぶな。

ホワイトタイガーのような獣人のゼヘナに匂いをかがれているところ。いいよな。みんなもかわいい獣人女子に匂いかがれてえよな。
サクセス自体のプレイ時間は、すべてのシナリオをスキップすると、筆者のプレイ実測でだいたい15分~20分程度。操作もシンプルなので、移動中などにもサクっと手軽に遊べそう。
ちなみにメインシナリオに編成したキャラクター固有のやり取りなどをスキップせずに読むと2時間ぐらい。こちらは時間があるときにじっくり楽しむのをオススメしたい。

個人的には一度全部通して読むのをオススメしたい。軽い気持ちで読めて、ちゃんと王道を外さない。そんなかっこよさがあるストーリーだった。
サクセスが一度完了すると、一定量の経験値を獲得できる。この経験値を使ってサクセスシナリオ自体を強化することができ、次回からはよりステータスを高められるような仕組みになっている。空き時間に細かくプレイして、強化を積み重ねていきたいところだ。

サクセスを終えるとシナリオ経験値が手に入る。一定以上を獲得するとシナリオポイントを獲得。

ポイントを使ってシナリオ強化。ツリー形式になっているため、下にある強化がどんな感じかを見て決めたい。
メインクエストは半放置で進む。とにかくサクセス。どんどんサクセス。
サクセスで育成した冒険者は、その後主人公たちの団に合流し“バトル”を行う。このバトルはいわゆる放置系のコンテンツであり、編成しておくだけで魔物たちをどんどんしばき倒してくれるというもの。
ときおり“強敵”と呼ばれるボスモンスター的な立ち位置の魔物が登場し、これを討伐することで『パワアド』自体のメインクエストやストーリーが進行する仕組みだ。基本的にはこの強敵を倒すために、より強い冒険者をサクセスで育成していくことになる。

サクセスで育成した冒険者を編成。陣形の概念があるので、前衛後衛のジョブをバランスよく育成して配置したい。

戦闘はホーム画面で勝手に行ってくれる。そのあいだにサクセスをしたりショップを見たり、ほかのことをしていても大丈夫。

強敵は登場時に演出が。造形はシンプルながらそれぞれ特徴があり、ほかにどんな魔物がいるのか気になるところ。

強敵に挑む、倒す際などにシナリオが進行。200年前に封印された魔王が復活の兆しを見せているらしく、これからの展開も気になるところだ。
メインクエストでありながらも、放置で進むというのがとてもいい。サクセスで育てた冒険者を編成して、強敵に挑ませながらプレイヤーはまたサクセスへ。育成が終われば強敵が討伐されていて……と、サクセス中心にゲームがプレイできる。
「けっきょく皆さんがやりたいのはそこ(サクセス)ですよね」という開発陣の声が聞こえてくるような仕様で、ストレスフリーなのがたいへんありがたい。

サクセスをしながら進行を待つ。「とりあえず順調に進んでるっぽいな、うむうむ」と満足したらまたサクセスへ戻る。こういうのがなんか楽しい。
メインクエストが進行すると、新たな要素も解放されていく。サクセスシナリオで編成する冒険者を育てるための素材を入手できる“討伐依頼”やサクセスに持ち込めるアイテムを作成できる“調合所”など、非常にソーシャルゲームらしい親しみやすい要素が満載。こちらもサクセスの合間にちまちまと進めておきたい。

強敵を倒し団の活動が認められると、どんどんできることが増えていく。

拠点も最初はこんな感じで、チャレンジ(いわゆるデイリーミッションなど)やアイテムを保存する倉庫ぐらいしか使えない。ここもメインクエストの進捗により解放される。
全体的に基本無料系のアプリゲームをプレイした経験があればなんとなくわかる要素で構成されているため、新たに『パワプロ』を始める人にとってはサクセスを中心に物事を覚えればいい。新規参入にかかるコストがとても低いのは大きな利点だ。
それに、サクセス以外がシンプルということは、思う存分サクセスに没頭できるということでもある。目新しさは少ないかもしれないが、これは新たなプレイヤーはもちろん、既存の『パワプロ』プレイヤーにとってもうれしいはず。

経験者は「既存キャラクターがどういう姿になっているのか」を見るのも楽しいはず。
総じて、『パワアド』はサクセスを中心にバランスよくまとめられたタイトルだと言えるだろう。
本作がファンタジー設定になった経緯自体「野球を詳しくないプレイヤーに向けて門戸を広げたい」という思惑があったそう。実際に『パワプロ』シリーズ未経験で触れた身としては十分すぎるぐらいにサクセスを楽しめた……というか、かなりずっぷりと沼に入れられたような気分だ。気が付けば頭にピローンピローンと、ステータスアップの効果音が響いて離れないほど。

ケガ率を見て、歯噛みしながら訓練をするかどうか選ぶ。こういう苦しくも楽しい瞬間が好き。
『パワプロアドベンチャーズ』の配信は、本日2026年3月26日。もちろん記事を執筆しているいま現在はプレイできていないので、そんな先行プレイでの思い出を反芻することしかできないのが悔しい。
きっとこの記事が公開されているころ、筆者はまたトレーニングの成功率にひやひやしつつ、ときにはケガで悲しく、ときにはトレーニングの成功を喜び、マリセアとのデートでにやけながら“サクセス”を遊んでいるはず。ああ、パワフルアカデミーへはやく足を運びたい……。
