200時間くらい遊んでいた。2025年の“俺のゲーム・オブ・ザ・イヤー”は『グランツーリスモ7』に捧げたい。
「なんで発売から3年経ったこの『GT7』にいまさらハマって遊び続けたのか」というと、ひとつの要因がそうさせたわけではなくてさまざまな要因が複合的に組み合わさっている。
本稿ではその中でもとくに“難易度設定の妙”、そして“プレイヤー自身のスキルが上がっていく快感”について語っていきたい。年末年始の余暇によければちょっとお付き合いください。
- メインモードの難易度設定が絶妙。山内一典への感謝
- 山内一典の裏切り
- スピンに次ぐスピン。連敗に次ぐ連敗
- もうひとつ行き詰まっていた
- 走れるようになった!
- 圧倒的気づき
- ニュルブルクリンクに再挑戦
- 『グランツーリスモ7』、いいゲームです。
- まとめ:ゲームと身体性
メインモードの難易度設定が絶妙。山内一典への感謝
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ほかの『グランツーリスモ』シリーズと比べても本作はとくにユーザーフレンドリーにできていると思う。
具体的には、レースゲーム初心者でも楽しめるような運転アシスト機能がついていたり、ドライビングの講習になるライセンスモードが充実していたりするのはもちろん、特筆すべきはメインミッションとなる“カフェメニュー”の難易度設定が絶妙な点だ。
最初はコンパクトカーを使ったごく簡単なものから、徐々にセダンや乗用車に乗り換え、そしてスポーツカーやフォーミュラマシンに到達する。この動線と階段がじつに巧みに設定されている。
プレイヤーはひとつひとつのミッションをこなしていくなかで自然とテクニックとカスタマイズ(チューニング)知識を身につけ、上達を実感する。その中にはクルマを購入、所有する楽しみ、新たな知識を得る喜びもある。
ここの誘導の丁寧さはほかのレースゲームとまったく一線を画していて、さすが日本製のゲームだとしみじみ思う。一歩一歩、プレイヤーを導くように設計されたレベルデザインは本当に日本の宝だよ。
ほどよくやさしい設定のなか、基礎的なクルマでドライバー(プレイヤー)の知識と腕前を自然と上達させていってくれる。頼りになる先輩がいるボーイスカウトのキャンプ活動みたいだ。火の起こしかた、ロープの結びかた、テントの立てかた……。徐々に経験を増やし、いっぱしのスカウトになっていく。
「何かわからないことはあるかい? 何でも言うんだよ」と、たくましく爽やかに導いてくれるお兄さん(山内一典)の姿を幻視するようだ。
ありがとう山内さん。
山内一典の裏切り
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ところが。
そうして進めて行くとメインミッション終盤で、大いにつまずいた。つまずいて転んで斜面を転がり落ちて全身骨折靭帯断裂今季絶望するくらいの衝撃を受けた。
『GT7』プレイヤーにはひょっとしたら記憶に残っているかもしれない高難度ミッション、ポルシェカップ。コースは、これはもう断言してしまう、世界一難しいサーキットであるドイツ・ニュルブルクリンク。
しかも雨。しかもポルシェ縛り。ここで3位入賞を果たさないといけない。これがめちゃくちゃ難しい。
まずコースが難しい。
1周約20kmという大型コースは道が狭く起伏に富みブラインドコーナーが多く、右に曲がり左に泳ぎ、ときにバンクし斜めになりながら自我を保ち、坂を登り坂を下りスピードは乱高下し、まるでジェットコースターに乗っているような心持ちになる。しかもそれは自分で運転しなければならずコースアウトが許されないジェットコースターだ。
つぎにクルマが難しい。
ポルシェ。日本でもおなじみ有名な高級車。RR(リアエンジン・リアドライブ)というわりと特殊な駆動方式にこだわり、独特な乗り味で世界中のカーマニアに愛され続けているポルシェ。
でね、そのポルシェ……。ポルシェ……ポルシェさぁ……!
ポルシェがすんげえスピンしやがるの!!!!
とにかく滑ってスピンしやすいんだポルシェってクルマは! RRという駆動方式のせいなのかドライバーの腕前のせいなのか……(後者である)。
ポルシェというのは上級者向けの車種なのですね。
「はっきりとわかる……踏めば死ぬ」(『湾岸MIDNIGHT』ポルシェドライバー島達也)。
雨なの!
雨降ってくるの!! 途中から!!!
雨が降ってくるとなおさら滑るの!!!!
雨が降るともうツルッツルに滑る!
ほんの少しオーバースピードになったり油断したら即スピンして縁石に跳ねて芝生にボイングルグルグルグルグルガシャーンホギャアアアアアアアアア!!!!
ニュルブルクリンク!!!
ニ ュ ル ブ ル ク リ ン ク !!!!!
ニ ュ ル ブ ル ク リ ン ク !!!!!!!!!!!!(叫び声)
あ、あれ……さっきまで明るく楽しく導いてくれていたやさしいボーイスカウトの先輩の山内一典さん(幻視)は……どこに……どこに消えたの……。急に「雨のニュル北でポルシェでがんばってね。じゃね」と僕を突き放してどこへ消えたの……どうして……。
これまで「初心者歓迎! 誰でも楽しめます」というユニバーサルデザインだった軽やかな階段が突如として絶望の反り立つ壁に。高尾山が立山・剣岳に。ラジオ体操がビリーズブートキャンプに。
とにかくいきなり難度が急上昇して面食らう羽目になったのだった。
それでも「あーあ、もういいや!」とならずに、何度もチャレンジを続けられた理由は、まずゲーム自体がおもしろいこと。ポルシェカップが難しければほかのコースやモード(ミュージックラリー)で遊んでもいい。何より、ここまで積み重ねてきたゲームへの信頼感があったからだ。
「壁にぶつかっているいまこの瞬間は難しいけど、何かきちんとしたプレイをすれば、必ずクリアーできるはずだ」という信頼感をゲームと山内一典氏に抱いていた。きっとこの難度設定も意図的なものであるはずだ。なぜならここまですごく丁寧に連れてきてくれたんだもの、と。
信じてるぞカズノリ!
スピンに次ぐスピン。連敗に次ぐ連敗
ニュルブルクリンク!!!!
ニ ュ ル ブ ル ク リ ン ク !!!!!!!!!!!!!!!!(叫び声)
ぜんぜん勝てないでやんの。スピンしまくりでやんの。山内一典氏と自分を信じてトライをくり返すものの、安直に失敗を積み重ねていった。
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GT-Rを……GT-Rを使わせてくれ……!(四駆で走りやすくてとても速い日本車)。
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ははぁ、なるほど。車種をRRから四駆(4WD)に変えてしまえば、一気に楽勝……とまではいかないかもしれないけど、RRに起因するスピンしまくりという状況からは抜け出せるだろう。
なるほど……EVの4WDね……そういう車種があったのね……それは盲点だったね……。
けれど、けっきょく僕はタイカンを使わなかった。アドバイスを求めておいて無視した。ごめんなさいモゲさん。
それは、もう少しがんばればいけそうだという光も見えてきたころだったし、壁にぶち当たって詰まって躍起になっているところに車種から変えてクリアーするのは、なんだか逃げのように感じられたからだ。勝つならこのまま正々堂々と腕前を上げて勝ちたい。面倒くさい奴とお思いでしょう。自分でもそう思います。
それでこだわった上で勝てればかっこいいんだけど、これがまぁー勝てないこと、勝てないこと。びっくりするくらいぜんぜん勝てない。リアルタイムで1週間くらい行き詰まっていた。なにこれぇ。何このコース……何このクルマ……。
レースゲームの魅力のひとつは、格闘ゲームと同じくらいルールがわかりやすくて、とにかく抜かされたら負けだという人間の原始的な感情を刺激するところにある。
簡単に言うと、抜かされると「ムギャーッ!」と腹が立ってムキになって抜き返したくなる。ダイレクトな興奮。
そして、そこで「テメェ何を俺様を抜かしてくれてやがんでえ!」とアクセル全開にするとコーナーでツルッと滑って大スピン。嗚呼……。
僕は、ニュル北の前にしっかり行き詰まっていた。そこにあるのはもはやニュルブルクリンクではない。アイガー北壁だった。
もうひとつ行き詰まっていた
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あまりにポルシェカップで行き詰まるので、「じゃあ一旦ほかのコースを攻略するか……」とやっていて、もうひとつ壁にぶち当たっていた。
それはラリーカーで走るダートコース。具体的にはサルディーニャ・ウィンドミルズ。雨のニュルという高い壁、目を背けたらさらに壁。土の壁。
こちらも雨のニュル北ポルシェと同様、アクセル全開で走るとすぐにドリフトして明後日の方向にすっ飛んでいってしまう。土の路面はズルズル滑って、ニュル北以上にクルマのコントロールが効かない。これまで問題なく走り勝ち続けていたはずの走法で、まっすぐ走ることすら困難になった。
「これゲームのほうが間違ってるんじゃないの??」
と言いたくなるくらい、クルマが真っ直ぐ走らない。
いや本当は真っすぐは走るんだけど、曲がろうと思うとオーバーステア(曲がりすぎ)になって、戻そうと逆ハンドルにすると今度は反対に振られ……アレっと思って、したっけ、もうスピンさ。
おお……おおお……。
ニュル北とダート。敵はライバルたちのクルマよりも、すぐにスピンしてしまう自分だったのだった。
走れるようになった!
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そんなふうに悪戦苦闘しながらダートコースを走り続けていた。
プレイをやめない原動力は、『グランツーリスモ7』はクルマを走らせているだけで楽しいという根源的な快感と、先にも述べたゲームへの信頼だ。慣れれば、運転がうまくなれば、きっとクリアーできるようになるはず。そんな思いでまずは完走を目指した。
3、2、1、ゼロ。スタートとともに、一気にアクセルを全開に踏み込む。クルマは弾き出されるように勢いよく飛び出していく。そして最初のコーナー。ギュギュギュッとブレーキを踏む。勢いそのままにノーズをコーナーに向け、向きすぎて、アワワと慌てて元に戻すと逆に振られて――クルマは僕の気持ちをあざ笑うかのようにクルクルと回ってコース外に吹っ飛んでいった。
……もうわかった、腹が立った。じゃあ絶対にスピンしないように、おっかなびっくりエコ運転のふんわりアクセルで運転してやるよ! 最下位で上等だい! レースとか知らん! コースを回って帰って来るのが目標だい! 参加賞が優勝ね! えい! さらば走り屋! ぷん! 俺は『東京バス案内』(セガ)の運転手になるぞ!
そうしてアクセルを全開にせず、じわじわとデュアルセンスのR2を半分ほど押し込んで、半クラならぬ半アクセルくらいのスピードで走った。そうしたら……
走れた。完走できた。
結果はもちろんダントツの最下位だったけど、きちんと1周できた。スピンもコースアウトもしていない。これは……つまりどういうことだ……?
……あっ、ひょっとして、アクセルってつねに全開じゃないほうがいいの!?
圧倒的気づき
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どうやら、アクセルは、なんでもかんでもいつでもどこでも奥までガツッと踏み込めばいいということではないらしい。離したり、弱く入れたり、強めに入れたり、そして全開にしたり。出力を使い分けるということが有効らしい。この気付きを得るまでにかなりの時間を費やしていた。アホである。
“アクセルワーク”ってそういう意味だったのか! 目から鱗が落ちる思いだ。そういえばマンガ『頭文字D』でも「コーナーともストレートも言えないパーシャル区間が大事」って言っていたような気がする。
ひょっとしてまさか……ブレーキもいっしょ……ってコト!?!?!?
状況に合わせてやんわりとアクセルを踏んだり、全力ではないブレーキを使ったほうが、いいみたい。
これまでの筆者の走行理論は「行けるところまでまっすぐアクセル全開で踏み込み、ギリギリのブレーキラインでガツッと全力ブレーキで制動して、グイッと気合いで曲がる」という、アクセルもブレーキもゼロかイチか、ONかOFFか、バリバリ全開でガッと来てギュイーン理論だった。それは理論ではない。小学生である。
(いやまあ、小学生並みの理論とはいえ、実際このやりかたでもそれなりに終盤のミッションまでは進められたので……)。
アクセルとブレーキを柔らかく使うとよい。この気付きを得た後、ダートコースの記録は飛躍的に伸びていった。速度も順位も上がっていき、ドリフト走行でクルマをコントロールし、逆にすっかりダートコースの魅力にハマった。ハプティックフィードバックで伝わる“土の路面”の感じがめちゃくちゃ気持ちがいい。
ニュルブルクリンクに再挑戦
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という遅すぎる気付きを得た後に、再びポルシェカップに挑戦する。つまりダートコースの走りの応用だ。いったん順位は気にせずに、ゆっくりとアクセルを踏んで走る。曲がれなかったカーブが曲がれるようになり、コースアウトもスピンもしなくなった。
気づきによって身につけた技術。クルマをコントロールする実感。何度もくり返すうちに、しだいに、あの暴れ馬だったポルシェを自在に操れるようになっていく。土の路面で身に着けたコツがほかのコースでもしっかり通用することを実感。
抜かされてもムキになってアクセル全開にせず、ゆっくりじわじわ車間を詰めていってスリップストリームで速度を稼ぎ、一瞬のコーナリングで抜き去る。そういう高度なことがこのポルシェで、ニュル北で、できるようになっていた。
……え、これめっちゃおもしろくない? すげえおもしろいんだが。
現実のクルマを表現するときに“人馬一体の快感(フィーリング)”なんて形容をすることがあるけど、僕が『グランツーリスモ7』で感じたのはまさにそのおもしろさだ。思うようにクルマを操作できたときの爽快感! それは高速域にもあるし、そこまで速くない走行でも感じられる。そのことに気づいて、本作のおもしろさをぐっと引き寄せられた気がした。
そして、改めてポルシェカップ。
世界一難しいニュルブルクリンクも、アクセルワークに気をつけながら(というかその概念に気づいてから)、スピンせず完走でき、少しずつ順位を上げられるようになった。
細かいカーブをパスし、名物のバンクを超えて、レースは終盤。なんとここまで、初めて首位に立っている。ゴールまで残り1分程度、このまま首位を保ってゴールすれば、難関のポルシェカップをクリアーできる!
ニュルブルクリンク最終盤には長い長いストレートがある。“ドッティンガー・フーエ”という名の2キロを超える直線。ここではどのクルマもアクセルを踏み込み続け、その速度は時速300キロに迫る。新幹線並みのスピートでハンドリングは至極繊細になり風景は視界に溶けていく。
このまま首位で、最後に残るわずか数個のコーナーをやり過ごせば、ようやくクリアーだ。そんなとき、雨が降り出した。雨粒が相対速度300キロでフロントガラスに叩きつけられる。じんわりと手汗が滲む。近づいてくるカーブ。緊張に震える指先。ぐぐっとブレーキに力を込めて、速度を落とす……。
ブレーキを強く掛けた瞬間、タイヤが滑り出す。な、なぜ! どうして! ハンドルを切ってないから強く直線的にブレーキを掛けてもスピンするはずがない。
あっ、これ、あれか? 教習所でやったやつだ!
ハイドロプレーニング現象!
ハ イ ド ロ プ レ ー ニ ン グ 現 象 !!!!!!!!
ハ イ ド ロ プ レ ー ニ ン グ 現 象 !!!!!!!!!!!!!(叫び声)
あわあわあわ、あわわわわ……なんとか立て直して……いま初めて優勝を……ずっと立ちはだかっていたポルシェカップを……クルマが……せめて2位……いや3位でクリアーで……アクセルワークを……パーシャル区間の……あっこれ、もうダメだ(この間0.1秒)。ギュルギュルギュルギュル、どっかん。ガシャーン。
「はっきりとわかる……踏めば死ぬ」(本日2度目の『湾岸MIDNIGHT』島達也)。
ぶーん。ぶーんぶーん。じゃばじゃばじゃば。
芝生からコースを眺めると、後続車が軽快な音を立ててつぎつぎと僕を抜き去っていく。実際にはそんなことないのだろうけど、抜き去られるとき、盛大に泥水をぶっかけられている気すらする。あっという間に順位は転落し、今回もポルシェカップクリアーならず、だった。いけると思った。いけなかった。
……。
…………。
……………………………。
ニ ュ ル ブ ル ク リ ン ク !!!!!!!!!!(絶叫音)
『グランツーリスモ7』、いいゲームです。
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その後、何度かの再挑戦を経て、ようやく、本当にようやくポルシェカップをクリアーできた。
そのときのうれしさと言ったら、もう、なかった。震える心を落ち着けて、今度はドッティンガー・フーエ、最後のストレート、時速300キロからのブレーキも丁寧に。丁寧すぎて後続に追いつかれた。絶対に抜かさないぞという気持ちで露骨なブロックをくり返す。最後まで粘りに粘って2位入賞。拳を天に突き上げる。
![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/62298/a874580104bf4e2f75620b774b405919d.jpg?x=767)
獅子は子を千尋の谷に落とすという
その設定に応えられた自分がうれしい。じょうずに操作できるようになったポルシェがかっこいい。クルマっていいもんだなあ。『グランツーリスモ7』はいいゲームだなあ。ありがとう、山内一典。敬称略。
まとめ:ゲームと身体性
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改めてその魅力をまとめておくと、自身のスキルが上がっていく喜びと楽しみ、そしてプレイヤーを上達させる導線設計(レベルデザイン)の巧みさ。ただやさしくするだけではなくて、絶望させるほどの障壁もある。しかし、プレイをくり返すと、ある日突然できるようになる。その瞬間の爽快感といったら!
ゲームプレイが単なるプレイではなくて、何かある種、プレイヤーの“体験”に変わっていく。
また、クルマを思うように操れるようになってしみじみと感じる、PS5コントローラ“デュアルセンス”と本作との相性のよさ。コントローラを傾けるとモーションセンサーでハンドル代わりになり、R2・L2の押し込みと反動(アダプティブトリガー)と細やかな振動(ハプティックフィードバック)が生み出す臨場感は、じつに身体的に快感を生む。もちろんハンドルコントローラも憧れるんだけど、『グランツーリスモ7』においてはデュアルセンスとのベストマッチっぷりをまず味わってみてほしい。
かつて水口哲也氏が『Rez Infinite』の“シナスタジア・スーツ”(ゲームと連動して全身26ヵ所が振動するというデバイス)で目指した、ゲームプレイと身体性の共感とはひょっとしたらこういうものだったのかもしれない。とにかく、電子ゲームと身体的な快感の接続というのを、リアルレーシングという表現方法をもって、(少なくとも筆者個人において)実現に至っている。それは『Rez Infinite』のように最初からそこを目指したというより、リアルドライビングシミュレーターであることを追求し続けた結果、いま、たどり着いた境地なのではないかと思う。クルマの運転は身体的快感に直結しているものだ。リアルな挙動を、クルマのグラフィックを、コースの美しさを、エンジン音を、ドライビングの楽しさを、クルマの魅力を、ゲームでシミュレートしようと全力で邁進し続けて、ついにその域に到達したのではないか。
だから『グランツーリスモ7』の魅力とは、ごく簡単に言うと、
本当にクルマを運転しているみたいな気持ちになる。そしてそれはとても気持ちいい。
とても気持ちがよくて楽しいです。シンプルな結論だけど、シンプルだからずっと続く。いいゲームです。
余談
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あと、本当はもっと語りたいポイントがたくさんある。ニュル北やダートコースの壁に絶望していたときもゲームを続けられたのは、ウィークリーミッション(規定のレースで勝つ)やドライビングマラソン(42.195km走る)など、日々定められた細かな目標があったから。デイリーミッションをこなしているうちになんとなく新しいクルマが手に入ったり資金が手に入ったり、日課として42キロを走ってルーレットを回すだけでも毎日楽しかった。こういうユーザーフレンドリーな設計がやっぱり本作はとてもいいと思う。
ほかにも、たとえば本作にはレース以外の楽しみもとても多い。フォトモードやリバリーで愛車を愛でたり、世界各国の名車をコレクションしたり、クルマの歴史を学んだりと、クルマにまつわるあらゆる楽しみが詰め込まれている。
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