コタケクリエイトさんと言えば『8番出口』や『8番のりば』で知られる開発者である。実写映画『8番出口』の興行収入は50億円を突破。いまをときめくクリエイターと言っても過言ではないと思うし、新作なら大々的にプロモーションを仕掛けてもおかしくないけど、ブースの作りはとてもシンプルだ。試遊用PCが置いてあるくらいで飾り付けなしのストロングスタイル。
僕も並んでプレイさせてもらった。
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11/9の東京ゲームダンジョン10に、
— コタケ / KOTAKE CREATE (@NOTOKEKE) November 7, 2025
開発中の新作『Pale Dots』を出展します!
巨大な何かがいる惑星からの脱出を目指すゲームです。
よろしくお願いします🎮️ pic.twitter.com/4557qDCSDg
付近には宇宙船らしき残骸が転がっていた。主人公は宇宙服を着ているからおそらく宇宙飛行士か何かで、この惑星に不時着したのだと思われる。説明は少ないが状況から推測できる。きっと、どこかに移動すれば何かが解決するのだ。そうに違いない。
言葉でこと細かに説明しなくても状況の描写があればいい。
突然放り出された大地からは生命の気配が感じられなかった。まるで映画やSF小説に出てくる“死の世界”だ。寂しい。とにかく寂しい。
『8番出口』を『8番出口』たらしめているのは不気味さだろう。無機質な通路から何らかの意思を感じるような。怖いから一刻も早く逃げ出したい。直接的な怖さというより、焦りがホラーを形作っている。
強引に『Pale Dots』との共通点を探すとすれば“不安”だろうか。今回プレイできたシーンだけでは断言しようもないが、どうにも不安が付きまとう。ひとりで砂漠を彷徨うのだから、心細いに決まっている。
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操作方法に変わったところはなく、一般的な3Dアクションといったところ。歩いて、走って、ジャンプして、つかんで。こちらを攻撃してくる敵は出てこなかったものの、ときおり暴風が吹きすさんで行動を阻害する。自然現象がそのまま障害物のようなものだ。
走り回っていると電柱らしきものが視界に入る。どうやら通電はしていない。垂れ下がる電線を上ると進むべき道が開けた。よかった、この道で正しいみたいだ。
ちょっとした達成感と同時に疑問もよぎる。電柱があるということは、かつて人類のような知的生命体が隆盛を誇っていて、いまはもう滅びてしまったのだろうか。かすかな文明の残り香から何とも言えない寂寥感が漂う。ほかに遺物はないかと目を凝らした。
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よくわからないままに、とりあえず「あそこに行けば何とかなるんじゃないか」と目星をつける。それはたいてい正解だ。答えが見つかるたびに先へ先へ進みたくなる。
これは僕の発想が優れているわけではなく、見えない形でルート誘導が設計されているのだと思う。一見、どこにでも行けるオープンワールドのようだが、僕は開発者の手のひらの上で踊らされている。そのダンスホールで踊り続けたい。
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鉄骨のような足場をわたり、決死の大ジャンプでロープをつかむ。そのとき、巨大な影が視界を横切った。
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「おー……」と声が出た。それは空飛ぶ巨大なエイだった。さくさく進んで調子に乗っていたところ、冷や水を浴びせられた気分だ。こちらには気づいていないようで、ゆっくり去って行く。自分なんてちっぽけな存在であると思い知らされる。雄大に羽ばたくように空を舞う姿を見て、美しいと思ってしまった。
気づくとずいぶん高いところまで登ってきていた。周囲は切り立った崖になっていて、飛び移れそうな場所もない。どうすればいいのだ。途方に暮れていると何かが近づいてきた。さっきのエイだ。
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このエイは1匹ではないらしい。静かに行軍する様子は神秘的でもあった。一定のルートを周回しているようで、自分がいる崖のすぐ近くを通るみたいだ。飛び乗れば脱出できるかもしれない。意を決して大ジャンプを敢行。落下感に背中がぞわぞわした。
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何とか飛び乗ったエイの背中には無数の草が生い茂っていた。どれだけ長い間、空を漂っているのだろう。生物なのか、はたまた機械なのか。正体すらわからないが、身を任せるほかなかった。
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エイの背中には何かないのかと探索していると急に気候が激変した。落雷が主人公を襲う。振り落とされないように草をつかんで耐え、嵐が過ぎ去るのを待つしかない――。と、ここで試遊時間が終了。緊張から解放され、ふっと肩の力が抜けた。
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力を持たない主人公が、どうしようもないままに死力を尽くす。全体のイメージとしては『ワンダと巨像』が近いが、どんなにがんばっても圧倒的な脅威に立ち向かうことはできない。できることと言えば、おろおろ逃げ惑うだけ。
きっとコタケクリエイトさんは大いなる力をもってプレイヤーを弄びたいのだと思う。『8番出口』では些細な異変で、『Pale Dots』ではもっと大きな存在で翻弄する。何が起きているのか、ずっとわからない。なぜだかそれは不快ではなくて、まだしばらく彼の手のひらの上で踊っていたいと思っている。















