『鈴蘭の剣』×『ウィッチャー3』コラボ記念対談。相思相愛の関係から、パッションの赴くままに実現した夢のコラボの経緯に迫る

byNiSHi

by古屋陽一

更新
『鈴蘭の剣』×『ウィッチャー3』コラボ記念対談。相思相愛の関係から、パッションの赴くままに実現した夢のコラボの経緯に迫る
 XDより配信中のスマホ、PC向けタクティクスRPG『鈴蘭の剣:この平和な世界のために』(以下、『鈴蘭の剣』)。

 『
タクティクスオウガ』や『ファイナルファンタジータクティクス』に強い影響を受けた本作は、緻密に作り込まれた戦記物語と戦略性の高いバトル、そして崎元仁氏が手掛ける壮大で美麗な音楽が多くのゲームファンを魅了している。

 アップデートのたびに、登場キャラクターたちの過去や未来を描くシナリオなどが多数実装。2024年8月にはリリースから1周年となり、1年を通じて描かれた物語が大団円を迎えた。現在は、新章実装に向けた準備期間となっているが、そのあいだも期間限定イベントや
『ダンジョン飯』とのコラボなど、団長(プレイヤー)を飽きさせない施策が精力的に行われている。

 そんな『鈴蘭の剣』と、CD PROJEKT REDによるオープンワールドRPG『
ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、『ウィッチャー3』)の大型コラボが実現。ゲラルト、イェネファー、トリス、シリがプレイアブルキャラクターとして実装。異界からの森の主を巡るコラボストーリーやクエストが楽しめる。コラボの開始は2025年11月28日から。
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 今回のコラボについて、『鈴蘭の剣』ディレクターの郭磊(グォレイ)氏と、CD PROJEKT REDジャパン・カントリー・マネージャーの本間覚氏にインタビューを実施。両者のタイトルへの愛が実を結んだというコラボの経緯などを聞いた。
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郭磊氏グォレイ

XD『鈴蘭の剣:この平和な世界のために』ディレクター。高校のときに遊んだ『タクティクスオウガ』に感銘を受け、ゲームクリエイターを志す。『ウィッチャー3』のファンでもあり、とくにゲラルトとイェネファーがお気に入り。(写真左・文中は郭)

本間覚氏ほんまさとる

CD PROJEKT REDジャパン・カントリー・マネージャー。『ウィッチャー3』では日本語版のローカライズプロデューサーを担当。『鈴蘭の剣』はプライベートで遊ぶほどのお気に入り。(写真右・文中は本間)

※この記事はXDの提供でお届けします。

相思相愛のような関係から夢のコラボへ

――郭さんにお話をうかがうのは、約1年ぶりとなります。『鈴蘭の剣』も1周年を迎えましたが、この1年間を振り返ってみて、いかがですか?
 『鈴蘭の剣』は、スタートダッシュに成功しましたが、途中で進むべき方向性を探っていた時期がありました。ですが、ファンの皆さんの支持もあってプラスに転じることができ、無事1周年を迎えることができました。これからも、期待してくださっているファンの方々のために、自信を持って、楽しみながら開発を進めていくつもりです。

 ゲームのコンテンツにつきましては、日本バージョンですと、イリヤの解放が行われ、その先に広がる世界に足を踏み出す物語が1周年で描かれました。今後は、今回のようなコラボコンテンツをお届けしつつ、エラマンの国に向かったりと、さまざまな世界に赴き、平和を守るストーリーを展開していく予定です。ぜひご期待いただければと思います。
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――さらに広い世界での、団長たちの冒険が待っているのですね。それでは早速、今回のコラボの経緯をお聞かせください。

本間
 弊社の中国チームに、郭さんのお知り合いが在籍していまして。いっしょにゲームするほどの仲だそうなんですが、おふたりの雑談の中で、「『鈴蘭の剣』と『ウィッチャー3』でいっしょに何かできたらいいね」と話されていたとのことなんです。

 ときを同じくして、私自身が『鈴蘭の剣』にめちゃくちゃハマっていまして。もともと、シミュレーションRPG、タクティカルRPGと呼ばれるジャンルが大好きで、モバイルでも気軽に遊べるということで『鈴蘭の剣』をプレイし始めてから、本作の虜になりました。そのことをX(旧Twitter)でポストしていたところ、郭さんにも伝わったようでした。

 そこから、昨年2024年の東京ゲームショウでお会いさせていただくことになりました。その際、郭さんご自身も『ウィッチャー3』が大好きとのことでしたので、何かごいっしょできることがあるかもしれないということで、正式にオファーを出されてはどうですか、と進めさせていただいたんです。
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本間氏のプライベートアカウント。数多くのキャラクターが育成済みで、そのやり込みの高さがうかがえる。
――相思相愛のような関係から、コラボが生まれたのですね。

本間
 オファーをいただいた後、社内で承認を得る必要があったのですが、その際は少し苦労しました(笑)。『ウィッチャー3』は、最近ではさまざまな作品とコラボさせていただいていますが、もちろん簡単にコラボの企画を通せるわけではありません。『鈴蘭の剣』はとてもおもしろいタイトルですが、アジア向けのゲームですので、ポーランドにある本社の人にはあまり知られていませんでした。

 そこで、私自身がおもしろさは保障すると力説し、わがままを通すような形で、何とか承認を得ることができました。そこから、かれこれ約1年間、XDさんには開発をがんばっていただいている状態となります。

 本間さんが私たちの作品を楽しんでいただけているとお聞きして、本当にうれしかったです。『ウィッチャー3』は世界的な人気を誇っているゲームですので、コラボのご提案を前向きにご検討いただけたときには、天にも昇るような思いでした。

 そこから、本間さんのご尽力のおかげでとんとん拍子で進めていただけて。改めて、本間さんには感謝の思いでいっぱいです。

本間
 私は、シミュレーションRPG(SRPG)がいちばん好きなジャンルでして、いつの日かSRPGを作りたいと思っているほどです(笑)。『鈴蘭の剣』は多くのSRPGファンがプレイされていると思いますし、そこでゲラルトが活躍するとなると、SRPG好きかつ『ウィッチャー』シリーズのファンにはたまらないと思いましたので、その点を社内でも推しました。

――とはいえ、社内であまり知られていないタイトルとのコラボということで、取り決めるのには、並々ならぬご苦労があったと想像できます。

本間
 私がCD PROJEKT REDに在籍して9年が経過していたので、幸いある程度意見を聞き入れてもらえる土壌ができていました。『ウィッチャー3』にも前職スパイク・チュンソフト時代から関わっていたというのもあります。

 そうした環境のもと、『鈴蘭の剣』はすばらしい作品で、アジアで高い人気を誇っていることをアピールし、アジア地域における『ウィッチャー』シリーズの認知度のさらなる向上にも貢献できると、パッション全開で、情熱を持って押し通させていただきました(笑)。

――(笑)。『鈴蘭の剣』のどういった点に惹かれたのですか?

本間
 大きく、ふたつあります。ひとつは、丁寧に作られた昔ながらのSRPGの味わいです。私は、ファミコンのころからSRPGに親しんできました。ドット絵のキャラクターたちがチームを組んで、ユニットを成長させながら戦っていくシステムが大好きでした。本作では、2Dドットと3DCGの技術を融合させたグラフィックのもと、クラシックなSRPGの魅力が存分に味わえます。まず、その点に惹かれました。

 ふたつ目は、ナラティブを重視したストーリーテリングです。これは弊社がもっとも大事にしている点でもあり、『ウィッチャー3』や『
サイバーパンク2077』では50~100時間にもおよぶ壮大な物語をプレイヤーに体験していただけます。

 『鈴蘭の剣』も、ストーリーテリングに力を入れていらっしゃいます。『鈴蘭の剣』では、絶望的なエンディングを乗り越えるために、パラレルワールドをたくさん旅して、自分の追い求めるエンディングに辿り着いていきます。私たちとは異なる手法ですが、ストーリーテリングに重きを置いていらっしゃるのは明らかで、ある種のシンパシーを感じたということもあり、本作にのめり込んでいくようになりました。

――皆さんにとって、ストーリーテリングはとても重要な要素でもあるのですね。

本間
 私たちCD PROJEKT REDにとって、もっとも力を入れている要素であると言っても過言ではありません。たとえば、弊社では“選択と結果”というコンセプトのもと、プレイヤーの選択に応じてクエストの結末やエンディングが変わるシステムを重要視しています。ゲームプレイやアート、音楽などにももちろん力を入れていますが、なかでもストーリーテリングはスタジオの特徴なのかなと思います。

――郭さんも『ウィッチャー3』がお好きだったとのことですが、とくに、どの点が魅力的だったのですか?

 まずは、リアリティーが溢れることにともなう没入感です。ほかのゲームでは体験できないような、自分がその世界に浸っているような感覚が味わえます。

 そして、本間さんもおっしゃっていたように、ストーリーの要素です。共感できるような物語を非常にたくさん描かれている点がすばらしいです。苦しみを伴う選択をして、それによって物語の行く末が変わるのがとてもユニークでした。その中で、魅力的なキャラクターたちが活躍する様子に圧倒されました。
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コラボは『ウィッチャー』シリーズのプロフェッショナルが徹底的に監修

――そんな2作のコラボが、昨年の東京ゲームショウをきっかけに始動したのですね。

本間
 まずは、ゲラルト、イェネファー、トリス、シリの4人がプレイアブルキャラクターとなること、そして、『ウィッチャー3』でおなじみの怪物・レーシェンが登場する専用のクエストを実装いただくことが決まりました。『ウィッチャー3』には、異次元につながる門“ポータル”があり、それを通じてレーシェンが『鈴蘭の剣』の世界に現れた、というのが大まかなあらすじとなります。
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ゲラルト。
 この物語は、弊社でも念入りにチェックし、フィードバックをさせていただきました。いったん、大まかな物語を『鈴蘭の剣』のライターさんにお考えいただき、そこから『ウィッチャー』だったらこうだ、こうあるべきだ、といったフィードバックを行いました。その結果、最初にいただいたアイデアは全部なくなっているほどです。

――そうなのですね。当初考えていた物語とは別物になっていると。

本間
 最初は、“ワイルドハント”(※)を登場させたりと、かなり規模の大きい話をご提案いただいていました。『ウィッチャー3』、そして『鈴蘭の剣』の世界にも大きな影響をおよぼすような。
※『ウィッチャー3』において、人々に破滅の先触れとして怖れられる謎の軍勢。ゲラルトの養子であるシリを追っている。[IMAGE]
シリ。
 ただ、『ウィッチャー』シリーズにおいては、ゲラルトが世界を救うような物語は語られません。

 あくまで、シリやイェネファー、トリスといった身近な人たちとどういった関係性を築きながら守っていくか、という点がゲラルトのお話を語る上での核となっています。たとえば、ゲラルトは政治とはなるべく距離を置こうとしますよね。
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イェネファー。
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トリス。
 最初のアイデアでは、国家間の争いといった規模の大きい話でしたので、すべて没にさせていただきました。そこから、もう少し規模を小さくして、たとえば特定の怪物を退治しに行く話、1体の怪物と対峙するゲラルトの話でしたら、こちらも受け入れることができるとご提案し、進めていただきました。

 そこから、どれほどフィードバックを重ねたかわからないほどですが、各キャラクターの感情表現をはじめ、細かな点まで現在進行形で開発を進めていただいています。

――ストーリーにこだわりがあるということで、まずはその点をしっかり固めたのですね。

本間
 ポータルという便利な設定がありますので、ほかの世界に行きやすくはあります。国家間の争いに関与するよりも、困っている人たちを助けながら描いていく、地に足のついたストーリーをお届けすることを大事にしていますので、かなり強くフィードバックさせていただきました。

 私たちは、『鈴蘭の剣』の世界の中に、『ウィッチャー3』の世界観を構築できればと考えていました。ただ、本間さんのお話にあったように、国家間の争いに関与するのはゲラルトの信条に反しますし、実際、『ウィッチャー3』を巻き込んだ壮大な物語を描いたとして、どのように決着をつけるのか、という点はかなりハードルが高いと感じました。

 そうしたこともあり、本間さんのご提案通り、地に足の着いたお話を目指すことになりました。
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――壮大な物語から地に足のついたお話になったとのことですが、どのようなやり取りのもと開発は進められたのですか?

本間
 物語については、我々から起承転結の部分をお渡しして、それをもとに『鈴蘭の剣』のライターさんにご考案いただいたものを受け取り、修正をお戻しする形で進行しました。ですので、大まかな枠組みは、我々が提案したものになっています。

 クエスト進行や、ゲラルトたちキャラクターの性能といったゲームプレイ要素の強いものに関しては、キャラクターの資料をお渡しして、そこから開発チームの皆さんのご提案に基づきながら構成しています。

 私たちは、本間さんを始めとするCD PROJEKT REDの皆さんと、綿密なやり取りを行うことを心掛けました。お互いの共有のドキュメントを作成し、そのドキュメント上で編集を行い、フィードバックを受け取ったりしながら、綿密に、かつ効率よく開発を進めました。これによって、ほかでは体験できないような楽しい開発となりました。

本間
 弊社には、『ウィッチャー』シリーズの世界設定を監修しているプロフェッショナルのチームが存在しています。彼らは、ゲラルトの使う魔法や着ている服の意匠など、あらゆる設定を把握しています。私の『ウィッチャー』に関する知識が1だとしたら、彼らは1000と言える知識を持っています。

――そんなですか?

本間
 そんな彼らが監修を担当しているので、たとえば、ゲラルトのセリフはすべて書き直してお戻ししたり、シリとトリスのちょっとした会話にも修正いただいたりと、フィードバックは本当に多岐にわたりました。『鈴蘭の剣』の開発チームの皆さんにとってはたいへんなご苦労があったと思います。そのすべてに対応いただけていますので、我々も納得のいくクオリティーに仕上がっています。

――改めて、本間さんの考える『ウィッチャー3』の魅力をお聞きしたいです。

本間
 弊社の開発チームを差し置いて、私ごときが『ウィッチャー』を語るのもおこがましいのですが、私個人としては、キャラクターだと感じています。『1』~『3』に関しては、ゲラルトの魅力が作品の支持に大きくつながっているのかなと。

 魅力的なキャラクターがいないと、ストーリーテリングができないとも考えていますので、ストーリーテリングと同様に、キャラクターも重要であると考えます。『ウィッチャー』シリーズでは、キャラクターたちを人間臭く描き、そこから関係性を表現していますので、その点は『ウィッチャー3』の魅力と言えると思います。

 ゲラルト自身の魅力としては、やはり、身近な人たちのことをいちばんに考えているところだと思います。

 先ほど、国家間の諍いにはあまり足を踏み入れないとお話ししましたが、それはウィッチャーとしての立場も関係しています。ウィッチャーは怪物退治の専門家です。身体変異を経て強大な力を手に入れていますが、その力で特定の国に肩入れするのではなく、あくまで人々の依頼に基づいて怪物退治をするのがウィッチャーの仕事であり設定です。ゲラルトもその枠組みを外れることはありません。

 そして、ウィッチャーは身体変異を経て感情が抑制されると言われているのですが、ゲラルトはそうではありません。自分の近しい人たちの幸せを願い、弱者を守ることを信条としています。感情的で、彼らのためなら自分の命を顧みず行動する。そんな人間臭いところがゲラルトの魅力なのかなと思います。
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『ウィッチャー3』おなじみの怪物を巡る物語。人々のモラルを問う

――そんな『ウィッチャー3』と『鈴蘭の剣』のコラボで描かれるストーリーのテーマはありますか?

 物語としては、『ウィッチャー3』のレーシェンが現れて悪さをするため、それをゲラルトたちが団長と協力して退治するという内容です。その裏で、たとえば何か問題が起こった際に、自分たちとは異なる身分を持つ人間の仕業だろうと決めつけて非難するような、人の悪意のようなものが描かれます。それを、ゲラルトとイェネファーの介入によって解決を目指すという、ある種のモラルを問うのが物語のテーマになっています。

 『ウィッチャー3』の中でも、ゲラルトとイェネファーはふつうとは異なる変わった人のように描かれています。当然、ふたりは性格が異なりますし、自身への向き合いかたも違います。そんなゲラルトとイェネファーを、コラボストーリーの中で丁寧に表現することを大事にしています。

本間
 クエストの作りとしては、『ウィッチャー3』のサイドクエストに近いと思います。『ウィッチャー3』では、メインのお話とは別に、ひとつひとつ結末のある、スタンドアローンの物語がたくさん用意されていました。それが、『ウィッチャー3』の世界ではなくて、まったく異次元の世界で展開されます。

――キャラクターたちのビジュアルなどは、どのように制作されたのですか?

本間
 ドット絵のビジュアルについては、我々からはあまりフィードバックさせていただくことはありませんでした。自由に表現いただいた後、ゲラルトやシリの剣のデザインを指定のものにしてほしい、といった我々のこだわりとして外せない点だけをお伝えし、修正いただきました。ピクセルやボクセルの数が限られている中で誠実にご対応いただけましたので、弊社のアーティストもたいへん満足していました。

 『ウィッチャー3』は3Dの写実的なスタイルのビジュアルですが、それをドット絵に落とし込む際には、どのように動かして表現すればプレイヤーに満足いただけるのかを第一に考えました。

 ただ、デザイナーたちも『ウィッチャー3』が大好きなので、その思いをもとに、たとえば銀の剣と鋼の剣の違いがわかるように、楽しみながらこだわりをもってデザインしていました。そのため、ビジュアルについてはあまり苦労なく進んだ印象です。
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本間
 キービジュアルやキャラクターのアートについても、我々が大きく変えた部分はなく、開発の皆さんによるものをなるべく尊重させていただきました。『鈴蘭の剣』と『ウィッチャー3』ではアートスタイルが異なりますので、その点で多少の軌道修正はありましたが、そのほかはベルトの色の変更といった細かい修正ばかりで、スムーズに進んだかと思います。
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――今回のコラボでは、どの地域をメインターゲットにしているのですか?

 世界中です。『鈴蘭の剣』は、中国語、日本語、英語、韓国語の4つの言語をベースにして世界に向けて発信しています。『ウィッチャー3』もそうだと思いますが、私たちも世界を視野に入れて、『鈴蘭の剣』というIPを世界中のゲームファンに楽しんでいただきたいと考えています。ですので、私たちにとってどの地域も重要です。

 強いて言えば、とくに注目しているのが英語圏の方々です。英語圏は、『鈴蘭の剣』としてはまだまだファンを獲得したい地域と捉えています。『ウィッチャー3』は言うまでもなく、多くの英語圏のファンを獲得していると思いますので、今回のコラボによって、英語圏へのさらなる訴求を期待しています。

 そして日本においても、『鈴蘭の剣』はコアゲーマーの方を中心に愛していただいておりますが、今回のコラボを機に、さらに多くの方に遊んでいただきたいと考えています。

ゲーム『ウィッチャー3』を表現したアニメにも注目

――ここまで開発を振り返ってきて、とくにこだわった点をお聞きしたいです。

本間
 やはり、ストーリーです。ストーリーの部分は、我々も妥協できない、譲れない重要な要素でしたので、当初の規模感をいったん白紙に戻していただいて、じっくりと制作いただきました。

 それと、ゲーム外でこだわっている点としては、2Dアニメーションの部分です。クエストの冒頭部分をアニメで表現いただいています。中国のアニメスタジオさんが担当してくださっているのですが、非常に誠意をもってフィードバックにご対応いただけており、その甲斐あって、『ウィッチャー』らしいアニメになっているのかなと思います。

 今回は、ゲーム『ウィッチャー3』のゲラルトとイェネファーをアニメで表現しているのですが、これは初めての試みとなりますので、『ウィッチャー』ファンにも楽しんでいただけると思います。

 注目ポイントは、ゲラルトとイェネファーの掛け合いです。今回は英語版の声優さんによる英語ボイスとなっていまして、ふたりが共闘する部分も登場します。もともとの脚本には戦闘シーンはなかったのですが、せっかくアニメを作るのなら、と無理をいって入れていただきました。その共闘シーンを含めて、ゲラルトとイェネファーの関係性が見えてきたり、ふたりをよく知っているファンの方ならニヤリとできる構成にもなっています。その結果、当初は30秒の予定だったものが、90秒となっています。そのぶん、見ごたえのあるものに仕上がっていると思いますので、ぜひ注目していただけたら幸いです。

――ゲーム内のゲラルトたちも、英語ボイスとなるのですか?

本間
 はい。『鈴蘭の剣』には英語音声はないのですが、『ウィッチャー3』をグローバルで見たときに、もっとも印象的なのは英語ボイスだということで、今回は特別に、すべての言語版に英語ボイスが実装されます。

 それに加えて、日本のファンのために、日本語ボイスも実装するという手もあったかと思います。ただ、今回のコラボで、イェネファーはすごく重要なポジションを担当しています。そして、イェネファー役を務めてくださっていた田中敦子さんは昨年(2024年)に逝去されています。

 私個人の考えとして、新たにイェネファーの日本語版の役者さんを決めるなら、CD PROJEKT RED発のコンテンツで……という思いがありました。もちろん、そういった機会があるかどうかまだわかりませんが、『鈴蘭の剣』では、全世界でそもそも英語ボイスをメインに据えたい、というご意見もありましたので、日本語ボイスの実装は見送ることにしました。ですので、日本のファンの方には、今回は英語のボイスでお楽しみいただければと思います。

――ゲラルトやイェネファーたちと団長(プレイヤーキャラクター)の交流にも期待が高まります。

本間
 イェネファーは、『ウィッチャー』シリーズでは姉さん女房のように描かれていて、ゲラルトもイェネファーの前ではタジタジになる場面がでてきます。『鈴蘭の剣』の主人公である団長も、個性的なキャラクターを導くリーダーシップを発揮しており、イェネファーも団長を一目置いている節があります。『ウィッチャー3』のキャラクターたちが団長をどのように評価しているのかを、ちょっとした掛け合いから知ることができますので、『ウィッチャー3』、『鈴蘭の剣』ともに楽しまれている方にはぜひ注目していただきたいです。
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『ウィッチャー3』への深い愛のもと、印象的な名シーンも再現

――今回のコラボを通じたやり取りの中で、とくに印象的だったことがありますか?

 今回は、本当の意味でのコラボになったのではないかと思います。両者が同じ方向を向けていっしょにがんばれた点が、これまでにない感覚で、とても楽しかったです。私たちにとってすばらしい体験でした。そのため、今回はCDPRと直接やり取りを行ったこと、非常に効率的に進められただけでなく、関わるすべての方がIPを大切に思っていることを強く感じられ、この点が私たちにとって非常に感動的でした。

本間
 私は幸いなことに、社内でコラボのプロデュースを担当できるパターンが多いんです。最近ですと、『サイバーパンク: エッジランナーズ』と『ギルティギア ストライヴ』のコラボがそうですし、『ウィッチャー3』と『モンスターハンター:ワールド』、『ソウルキャリバーVI』のコラボなどもそうですね。

 たくさんコラボをさせていただいていますが、そもそもIPを愛していただかないと、コラボは実現しません。そういった意味では、『ウィッチャー3』が好きなことが前提となります。幸いにも『鈴蘭の剣』の開発チームの皆様は、『ウィッチャー3』を理解した上でストーリーやゲームプレイ要素を落とし込んでくださったため、心置きなく開発をお任せすることができました。
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――開発チームの皆さんからの愛が伝わった、とくに印象的だった場面はありますか?

本間
 スキルについてでしょうか。『鈴蘭の剣』では、各キャラクターに13個ほどスキルが用意されていて、それを組み合わせて戦います。ゲラルトこそ『ウィッチャー3』の主人公なので、“印”と呼ばれる呪文が5種類あったりと、戦闘のバリエーションがあらかじめ用意されており、ゲームデザインがしやすかったかと思いますが、イェネファーやトリスについては、いちからさまざまな呪文を考案していただく必要がありました。『グウェント ウィッチャーカードゲーム』に登場したイェネファーやトリスまで参考にしていただき、なるべく世界観から逸脱しないスキルを多数生み出していただいています。その点は非常に愛を感じました。

 ほかの作品とコラボする際に必要なのは、本間さんもおっしゃっていましたが、その作品に対する愛です。自分たちが好きだという気持ちがあって初めて、コラボ先のお相手にも満足していただけるものが作れるのだと思います。

 私たち自身、『ウィッチャー3』とのコラボは願っていたことではありますが、実現できたのは、本間さんのおかげです。本当に幸せです。

 そんな本間さん、そして『ウィッチャー3』への愛を存分に表現するために、ゲラルト、イェネファー、トリスにスキンもご用意しました。私たちが『ウィッチャー3』を遊んでいるときに、もっとも心を動かされた場面を切り取って、スキンにさせていただきました。

 ゲラルトは、ふだんは鎧を身に纏っていますが、スキンでは、シリがゲラルトを訪れたときの、親子間の愛情をリアルに表現できるようなスキンを作りました。

 トリスについては、『ウィッチャー3』において、トリスとゲラルトはダンスパーティーに参加します。ですが、ふたりはダンスパーティーにはあまり興味がなく、途中でコッソリと抜け出して、庭園の中でデートを楽しみます。そういった雰囲気をスキンで再現しました。

 どのスキンも愛情を注いで作りましたので、プレイヤーの皆さんにもぜひチェックしてほしいです。
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本間
 すべて、『ウィッチャー3』に登場するシーンから着想を得てスキンに落とし込んでいただいています。『ウィッチャー3』のファンでしたら、「あのシーンだ」と想像できるほどの再現度ですので、各種スキンもぜひ楽しんでいただけたらうれしいです。

――それでは最後に、コラボを楽しみにしている団長さんたちにメッセージをお願いします。

本間
 今回のコラボは、私のわがままを通すような形で企画が成立しましたが、開発チームの皆さんとのやり取りを通じて、『ウィッチャー3』への深い愛が伝わりました。こちらの提案にもすごくいいリアクションをしてくださって、楽しみながら開発が進行したようで、私たちもうれしかったです。ご多忙な中、熱心に制作してくださって、本当に感謝しております。

 改めて、『鈴蘭の剣』はすばらしいゲームです。ただ、シミュレーションRPGはニッチなジャンルですので、『ウィッチャー3』のプレイヤーさんの中にはまだ手に取っていただいていない方もいらっしゃると思います。ですが、開発チームの皆さんが深い愛情を持ってコラボコンテンツを作り上げてくださったので、ぜひお楽しみいただけたらなと思います。

 この場をお借りして、日本のファンの皆さんに感謝の思いをお伝えさせていただきます。この1年間を通じて『鈴蘭の剣』が大きく成長したこと、そして無事1周年を迎えていまにいたることができたのは、皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。

 皆さんのご支持のおかげで、今回『ウィッチャー3』とコラボさせていただくことができました。『鈴蘭の剣』の世界の中で、ゲラルトたちはどのように活躍するのか。団長さんたちはもちろん、『ウィッチャー3』のファンの方々にもぜひ見届けていただけたら幸いです。
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