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目隠し必須ホラー『Cling To Blindness』レビュー。ゲームなのに画面なし、音だけを頼りに謎の足音から逃げつつゴールを目指す。意外にも配信向き

byありみち

目隠し必須ホラー『Cling To Blindness』レビュー。ゲームなのに画面なし、音だけを頼りに謎の足音から逃げつつゴールを目指す。意外にも配信向き
 2025年11月7日にPC(Steam)にて配信開始となった『Cling To Blindness 目隠し必須ホラー』(以下、『Cling To Blindness』)。タイトルにもある通り、目隠しをして遊ぶという変わったコンセプトのゲームです。
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 アナログゲームならまだしも、PCゲームで画面を見ないとは、いったいどんなプレイ体験になるのかとワクワクしながら遊んでみました。

 ゲームメディアとしてはあまりなさそうな、
画面写真一切なし、というスタンスでレビューをお届けしたいと思います。
※本稿はPLAYISMの提供でお届けします。

目隠し必須とは? 音だけで進める斬新な設定

 本作の開発者は、謎言語解読アドベンチャー『7 Days to End with You』や、探索型性格診断『Refind Self: 性格診断ゲーム』などを手掛けたLizardry氏。どちらも斬新な設定やシステムをゲームの世界に落とし込んだ作品ですが、本作『Cling To Blindness』もかなり尖った設定の作品です。

 その尖った設定というのは、やはり“目隠しが必須”という点。昨今は美麗なグラフィックを売りにしたおもしろいゲームがたくさん発売されていますが、もはやその“グラフィック”を一切そぎ落としたスタイル。あまりにもロック。

 どうやってゲームを進めていくかというと、ポイントはふたつ。ひとつは、風鈴の音や電話の音など、目標となる音に向かって歩いていくこと。そしてもうひとつは、ひたひた、と迫る謎の足音から逃げること。操作はPCゲームでよくあるキーボードのWASDなどは使わず、マウスのみなので目を瞑っていても問題なくプレイできます。

 本作はサツキという主人公が、廃村の跡地で謎の儀式に挑む場面から始まります。以下、公式のあらすじを抜粋します。

あなたは主人公の「サツキ」となって、とある村の跡地に儀式を執り行いに向かいます。
耳を澄ましてください。
足音が聞こえてきたなら、それはあしおとさんです。
あしおとさんに、決して追いつかれないで。
風鈴の音を頼りにお札を集めてください。
画面には何も映りません。
だから、目隠しを外さないでください。目隠しを取られるまでは。
これは、目隠し必須ホラーゲーム。
出典:出典:『Cling To Blindness 目隠し必須ホラー』公式サイト
 ちなみに、儀式のルールは以下の通り。

一。目隠しは絶対に取らない事。
二。あしおとさんに追いつかれない事。
三。お札を五枚全て回収する事。

 主人公・サツキの声は
伊瀬茉莉也さんが、そして儀式の案内人の声は三石琴乃さんが担当しています。めちゃくちゃ豪華。

 “あしおとさん”という名前、都市伝説の怪異っぽくていいですよね。儀式の目的は何なのか、なぜ目隠しをしなければならないのか、あしおとさんとはいったい何なのか。すべての疑問をいったん飲み込み、筆者はホットアイマスク(※)とヘッドホンを装着しました。音の出所を空間的に把握しなければならないので、
イヤホンかヘッドホンは必須です。
※プレイ中、目をぎゅっと瞑っていてもOKです。より臨場感が出るかなと思い筆者はアイマスクを着用しました。ホットなのは気分です。

“見えない”=“怖い”とは限らない

 筆者は、「ホラーは好きだけどジャンプスケア(※)は嫌い」というとんでもなく面倒なタイプ。死にまつわる物語を読むのが好きであって、ビックリしたいわけじゃないんですよね。
※突然大きな音などでビックリさせる演出
 そしてなんと、本作は公式サイトの紹介文に「※ゲーム内にジャンプスケア要素はございません。」との表記があります。めちゃくちゃうれしい。

 自己紹介が終わったところで、初めて本作『Cling To Blindness』を知ったときの印象をお話します。浮かんだのは、
「“見えない”って“怖い”のか?」という疑問です。

 メラビアンの法則、というものをご存じでしょうか。この法則は、人間どうしがコミュニケーションを取る際にどんな情報にもとづいて印象が決定されるのか、その割合を示したものになります。その内訳は以下の通り。

視覚情報(見た目、しぐさ、表情、視線)……55%
聴覚情報(声の質や大きさ、話す速さ、口調)……38%
言語情報(言葉そのものの意味、会話の内容)……7%

 人間は言語によるコミュニケーション方法を確立しているにも関わらず、情報源の半分以上は視覚からきています。

 つまり、見えないということは情報の半分以上を遮断するから、“怖い”も半分以下になるのではないか? ということ。

 ホラー映画やホラーゲームは、ゾンビや幽霊のビジュアルが恐怖のほとんどを占めているような気がします。音や演出も重要だとは思いますが、そこは恐怖ではなくビックリにつながる要素なのかなと。

 よくホラーにされがちなわらべうた
『かごめかごめ』の遊びだって、最後に目隠しを外して後ろを振り向く答え合わせがあるから怖いのでは?

 しかし、見えないからこその怖さ、という概念があるのもまた事実。目隠しをされた状態で知らない場所に放置されたら誰だって怖いし、ホラー作品に触れたあとのお風呂やトイレ、真っ暗な寝室はちょっと怖い。

 と、いろいろ考えながらプレイしてみたのですが、結果から申しますと『Cling To Blindness』、
あんまり怖くない。いわゆるホラーゲーム的な怖さはほぼない、と言って差し支えないかと思います。

 プレイヤーはサツキとなって儀式を遂行するため、お札を集めていきます。お札の近くには風鈴があるので、その音色がする方向が正面になるようマウスで向きを調整して歩いていく。ここで怖いのが、あしおとさんの存在です。

 ひた、ひた、と裸足でぬかるんだ土を踏むような足音が、プレイヤーを囲むように聞こえてくるんですよね。儀式の手助けをしてくれる案内人さんの話によれば、あしおとさんに捕まってしまうと自分がつぎのあしおとさんとなり、そこから抜け出すために人を追うようになる、とのこと。

 このひたひた音も絶妙です。たとえばこれがコツコツ音だったら、靴を履いた生きている人間っぽいのでジャンルがヒトコワ系になってしまう。でもこのひた、ぺちゃ、ひた、という足音が絶妙に幽霊や怪異っぽさを演出してくれています。

 でも意外と、この足音が怖くない。おそらく、足音の間隔が一定だったのが大きいと思います。もし、ひた、ひた、という足音が急にひたひたひたひた! と迫ってきたらそれはめちゃくちゃ怖い。

 声優さんのいいお声が耳元で流れているのもあって、ほとんどASMR(※)――は過言かもしれませんが、公式サイトに「ジャンプスケアなし」と記載されているだけある、というのが正直な感想です。
※Autonomous Sensory Meridian Response(自律感覚絶頂反応)の略。筆者がリラクゼーション効果を感じているのはプレイ前に着用したホットアイマスクによる可能性が拭いきれない。
 サツキはなぜ儀式に挑むことになったのか、そもそも儀式とは、そしてあしおとさんとはいったい何なのか。ホラーが苦手な方にも、ぜひ挑戦して結末を見届けてほしいなと思います。

 「ホラーとか絶対無理!」という方は、ぜひ
“ペンギンさんモード”をお試しください。あしおとさんの足音が、かわいいペンギンさんの足音に変更されて恐怖が和らぎます。想像してみてください、自分の後ろをよちよちとペンギンさんが追いかけてきている姿を……。やっぱりこのゲーム、癒やしゲームなのでは?

ライター泣かせのゲームではあるが、意外にも配信向き

 パッと見で引き込まれる画面写真をたくさん配置すること、そしてプロモーションビデオやプレイ動画があればなおよし――どこのゲームメディアにも共通している“読者を惹きつける”ポイントだと思います。

 本作は、その映え的な部分が一切使用できない。かつ、ストーリーもネタバレになってしまうので詳細は語れない。レビューのお話をいただいた段階から「どうやって記事書こうかなぁ」と頭を悩ませ、プレイ後には「どうやって記事書こうかなぁ……」とホットアイマスクの下で涙目になっていた筆者でした。

 そんなライター泣かせの本作ですが、プレイしてみて思ったのは、意外と
ゲーム配信や、画面共有で友人とプレイするのに向いているな、ということ。

 本作には
“視覚補助モード”があり、それをオンにすると本来なら何も映らない画面にオブジェクトの位置情報と字幕が表示されるようになります。これによって、プレイしていない人でも、プレイヤーが何をやっているのか直感的に把握できるようになります。

 この視覚補助モードが実装されている、そして
公式サイトで配信用の目隠し素材も配布されていることから、もう公式が「ゲーム配信や友人との画面共有でのプレイもおすすめ」と推しているんですよね。

 実際に、筆者も友人に画面共有しながらプレイしてみたのですが、なかなかに楽しかったです。おそらく、
スイカ割りをする人を眺める楽しさと同じような感覚だと思います。

 家にPCとイヤホン・ヘッドホン、そして目隠し(ホットアイマスクでも代用可)がある方は、ぜひ
『Cling To Blindness』をプレイしてみてください。

『Cling To Blindness 目隠し必須ホラー』

[IMAGE]
  • 発売日:2025年11月7日発売
  • 対応プラットフォーム:PC
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 発売元:PLAYISM
  • 開発元:Lizardry
  • 価格:690円[税込]
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