
『ファイナルファンタジー』シリーズや『サガ』シリーズといった同社を代表するRPGタイトルに加えて、実写アドベンチャーの『春ゆきてレトロチカ』、熱狂的なファンも多い『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』などの通好みなタイトルまで、全34作品がセール対象となっている。
ファミ通.comでは今回、このセールの開催に合わせてライターによる「思い入れたっぷりに作品を紹介するレビュー」を展開。本記事では「『サガ』とは長い付き合いになる……」と語るヨージロによる、『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』(以下、『ミンサガ』)のレビューをお届けする(『ミンサガ』は50%オフの2700円でセール中!)。
なお、『ミンサガ』はスマホ版以外もセール価格で販売中。Nintendo Switch版、PS5版、PS4版が2025年8月13日(水)23時59分(予定)までセールとなっているので、本記事を読んで気になった方はチェックしてほしい。
初めての『サガ』は何もかもが衝撃的だった
初めてプレイしたのは小学生のとき。1990年発売のゲームボーイ用ソフト『Sa・Ga2 秘宝伝説』だった。友人の家へ遊びに行ったところ、やたらとデカい箱のゲームボーイソフトがあり、「これなに?」と尋ねたところ「『サ・ガ』っていうゲームの新しいやつだよ!」と少し誇らしげに答えてくれたのをよく覚えている。
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初めての『サガ』は何もかもが衝撃的だった。
レベルの概念がない成長システム、倒したモンスターの肉を食べて姿を変える仲間モンスター、装備するアイテムによってステータスが変化するロボ……いままでに遊んできたRPGの“お約束”が通じないゲームデザインに困惑すると同時に、激しく興奮もさせられた。
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また、いまでこそ“河津節”の呼び名でおなじみとなった、シリーズ総合ディレクター河津秋敏氏による特徴的な言いまわしや絶妙に余白があるストーリー展開も、当時は当然ながら初体験。
「いまのあんたがいちばん みにくいぜ!」に代表される外連味のあるセリフや、物語の序盤から登場するアポロンの不穏な存在感は、子どもながらに「『サガ』は一味違う」と理解させるに十分な魅力に満ちていた。
何もかもが新しくて、不完全すらも愛せた『ロマサガ』
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『ロマサガ』は何もかもが新しかった。
ゲームボーイで展開していたシリーズの新作が当時の最新ハードに登場するというだけでも十分にエキサイティングな話だが、何よりも「一味違うぜ!」と興奮させられたのは、ゲームボーイ時代を遥かに上回る勢いでRPGの“お約束”を破壊するゲームシステムたち。なかでも僕が魅了されたのは、フリーシナリオシステムだった。
フリーシナリオシステムとは、プレイヤーの選択や行動によってシナリオの発生タイミング、内容、結末が変化するというもの。オープンワールドのゲームが一般的になった現在においては、そのような形でのストリーテリングは珍しいものではないが、当時は文字どおり“無限の可能性”を感じさせる、斬新なシステムだったのである。
しかも、”フリー”になるのはただのシナリオじゃない。河津節が効いた、いい意味で余白の多いシナリオだ。それがフリーシナリオシステムによって断片化され、連続性を失ったことで何が起きたのか。
邪神サルーインの復活を阻む――という明確な目標こそあるものの、その過程でプレイヤーが体験するのは、四天王と呼ばれる強力な精霊たちのパシリだったり、家族に秘密でハーレムを築いた権力者をこらしめることだったり、開拓地で復活したバンパイア退治だったり、なんの罪もない戦士を殺してアイスソードを奪うことだったりする。挙げ句の果てに、サルーイン復活阻止のキーになる”デステニィストーン”は全然集まらないのだ!
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……言ってしまえば脈絡がない物語だったわけで、正直なところ、この時点でのフリーシナリオシステムは完成したシステムとは言い難かった。
しかし個人的には、この脈絡のなさや説明不足だった点が、図らずも本作に神秘的なムード、あるいは神話的な広がりを与えたとも考えている。いろいろと足りないからこそ、必然的にプレイヤーは物語を理解するために自分なりの解釈を行うことになるわけで、いま思えばゲームにおける“ナラティブな体験”の走りだったような気がしないでもない。
そんな具合に、作品の不完全さすらも愛せるほどに僕は初代『ロマサガ』に魅了されていたのだが、じつは現在に至るまで本作をクリアーしたことがない。理由はシンプルで、僕には難しすぎたのだ。
『サガ』シリーズがついに完成した『ミンサガ』という到達点
そして2005年、プレイステーション2で初代『ロマサガ』のリメイク『ロマンシング サガ -ミンストレルソング』が発売される。13年越しで雪辱を果たす機会がついにやってきたのだ。
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結論から言えば、僕は『ミンサガ』を自力でクリアしてエンディングを見た……1度だけではない。何度も、何度もクリアした。
誤解がないように言っておくと、『ミンサガ』は簡単なゲームではない。練り込まれたシステムや、力押しだけでは勝てないボス戦といった点を鑑みれば、もしかすると初代『ロマサガ』よりも難しいゲームかもしれない。
だが、難度の高さなんてものがどうでもよくなってしまうほどに――ましてや13年越しの雪辱なんていう“私怨”もどうでもよくなってしまうほどに、『ミンサガ』はあまりにもよくできた『サガ』だった。
たとえばフリーシナリオシステム。オリジナル版の時点では「完成したシステムとは言い難かった」と書いたが、『ミンサガ』では発生しているイベントの内容が一覧で確認できる“イベントリスト”が搭載されたことによって、現在ゲームの中で何が起きていて、何をするべきなのかが明確になった。
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バトルシステムはそれまでの『サガ』シリーズの集大成とも言える仕上がりだ。
『ロマサガ2』で初めて導入され、その後シリーズを代表するシステムとなった“閃き”、『サガ フロンティア』から導入された“連携”といった既存システムに、ターン経過で変動するBP(技や術の利用に必要)、武器の耐久度を示すEPといった要素が絡んでくる『ミンサガ』のバトルでは、「とりあえず攻撃ボタンを連打する」といった気の抜けたプレイは許されない。
現在の1戦をいかに勝つかに加えて、その後に待っているバトルの回数も勘案して戦わなければいけないという緊張感が常に求められるのだ。
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一部ボスの凶悪すぎる強さも『ミンサガ』の魅力のひとつ。強力な武器、技、術を準備するだけでは勝てない。必要なのはトライ&エラーだ。
再戦をくり返してボスの行動パターンを理解し、有効な状態異常を検証し、適切な行動順を検討し、最後は天に祈る……このスリリングさは、もはやRPGの皮を被ったソウルライク。自分でも何を言っているかよくわからないが、まあそれくらいとにかくエキサイティングってことなのである。
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……そんな感じで『ミンサガ』のすばらしいところを挙げ始めたらキリがないのだが、同作はただのよくできたRPGってわけではない。誤解を恐れずに言えば、1989年にゲームボーイ用ソフト『魔界塔士Sa・Ga』から始まった『サガ』シリーズは、『ミンサガ』という作品によって、ようやく完成を迎えたとも思うのだ。
『ミンサガ』は『サガ』シリーズの性(サガ)を果たした転換作でもある
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河津氏は『サガ』というタイトル名の由来について、過去のインタビューの中で「アメコミの“ズガガガ”、“ドバババ”みたいな音のように、勢いのあるものにしよう、と」と語っており、サガという言葉の本来の意味である“叙事詩”については否定している。また、日本語における“性(サガ)”という意味についても、シリーズ1作目『魔界塔士Sa・Ga』の中で「これも いきもののサガか・・・・」というタイトル回収的な使い方をしていたが、「後から付け足したものです(笑)」と語っていた。
しかしそれでも、長年シリーズを愛してきたいちプレイヤーからすれば、『サガ』シリーズの物語はどう考えても叙事詩的だし、“RPGのお約束”に挑戦し続ける性(サガ)――運命を感じずにはいられなかったりする。だからこそ僕は、不完全なところも含めて『サガ』のすべてを「『サガ』は一味違う」と愛し続けてきたのだ。それは、少し歪んだ愛だったかもしれない。だが、『ミンサガ』は過去作の最良な部分を換骨奪胎し、慎重に組み上げたことでついに不完全さを乗り越えた。『サガ』シリーズはついに、自身の運命(サガ)を果たしたのである。
実際のところ、『ミンサガ』以降の『サガ』シリーズはもはや“RPGのお約束”なんてのは眼中にない印象を受ける。現時点でのシリーズ最新作『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』で、ついに“技の閃き派生”がオープンな情報となったように、いまの『サガ』シリーズが挑戦しているのは“『サガ』シリーズのお約束”なのではないだろうか。
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だから、もしあなたが『ミンサガ』以前の『サガ』しか触れたことがないなら、ぜひ完成された『サガ』を知る意味で『ミンサガ』をプレイしてほしい。『ミンサガ』以降の『サガ』しか知らないのであれば、シリーズの原点であり転換点でもある『ミンサガ』をプレイしてほしい。
もし『サガ』シリーズを一度も遊んだことがないなら……いまからこんなに素晴らしい作品群を初体験できるなんて、じつにうらやましい話だ!
『ミンサガ』を“完璧”な作品にした『リマスター』という最後の1ピース
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……とは言ったものの、である。『ミンサガ』は『サガ』として“完成”した作品ではあったが、“完璧”な作品ってわけではなかった。
たとえばゲームのテンポ。移動と会話と戦闘をくり返すRPGにおいて、ゲームのテンポのよさというのは最重要事項と言ってもいいかもしれないが、『ミンサガ』はお世辞にもテンポがいいゲームとは言えなかった。
キャラクターの移動スピードは少し前に大流行したネットミーム「エッホエッホ」を彷彿とさせるゆったり感だったし、バトルも技や連携の演出に力が入っているが故に、1戦1戦に時間がかかってしまいがちである。
とくに移動速度の遅さはハッキリ言ってけっこうなストレスで、大きな街で何か用事をこなそうとするときは、心を無にして「エッホエッホ」と走るキャラをただ見つめるしかなかった。
また、『ミンサガ』は戦闘での勝利数に応じてゲーム内の時間が進行するシステムなのだが、その進行度を計る術が各街にいる“義勇軍”と呼ばれるチュートリアルキャラの会話内容の変化くらいしかない。進行度なんて気にせずプレイしてもいいのだが、少しでも多くのシナリオを体験するなら、進行度は無視できない要素だ。
そのほかにもゲーム内容的にいろいろと気になる点はあるのだが、身も蓋もないことを言ってしまうと『ミンサガ』は20年前の作品である。いかにすぐれた作品であったとしても、現在プレイするには内容的にも物理的にもキビシイ。
……というわけで、我ながらじつにわかりやすく話題を誘導してしまったが、ここで『ミンサガリマスター』の出番である。
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『ミンサガリマスター』は、何もかもが完成されていた『ミンサガ』を完璧な作品にした最後の1ピースだった。
“リマスター“とあるからグラフィック面が強化されたのはもちろんのこと、上で挙げたようなオリジナル版でストレスを感じた点を丁寧に調整。移動やバトルスピードは倍速、3倍速へ変更が可能となり、メニュー画面から進行度もわかるようになった。さらには、追加要素まで用意されていたりと、大奮発の内容になっている。
なお、変更点や追加要素については2022年の発売当時に掲載された以下レビューで網羅されているので、ぜひそちらを確認してほしい。
僕は『ミンサガ』を20年前のオリジナル版発売時に散々プレイし、2015年に配信されたPS2アーカイブス版でも散々プレイしてきた。だからリマスター版が発表されたときは「いくら快適になったとは言え、さすがにもうね……」と考えていたのだが、いざ発売されてプレイしてみたら、オリジナル版よりもPS2アーカイブス版よりも散々プレイする結果となってしまった。
……そんなとてつもない作品が、なんといまなら半額で買えてしまう。迷っている時間があったら、その時間を『ミンサガリマスター』のプレイ時間に当てたほうがきっと有意義だ。