『ILL』インタビュー。ホラー映画で鳴らしたクリエイターたちが手掛ける一人称視点サバイバルホラーはクリーチャーデザインがヤバげ!【Summer Game Fest 2025】

byミル☆吉村

『ILL』インタビュー。ホラー映画で鳴らしたクリエイターたちが手掛ける一人称視点サバイバルホラーはクリーチャーデザインがヤバげ!【Summer Game Fest 2025】
 インディーゲームチームTeam Cloutは、『V/H/S/Beyond』や『ロングレッグス』などのホラー映画に関わったスタッフや、『Lords of the Fallen』や『Diablo II: Resurrected』などのゲームのコンセプトアーティストが自分たちのホラーゲームを作ろうと結成したスタジオ。

 その夢の結晶として開発が続けられている一人称視点サバイバルホラーゲーム『
ILL』が、一人称視点アクションアドベンチャー『アトミックハート』で知られるMundfish傘下のパブリッシングレーベル“Mundfish Powerhouse”と契約したことが発表された。発売時期は未定で、対応プラットフォームはプレイステーション5/Xbox Series X|S/PCとなっている。
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注目のポイントはリアルでグロテスクなクリーチャーデザイン

 『ILL』のストーリーの詳細はまだあまり明かされていないのだが、主人公はもっとも大事なものを救うため、異形の怪物たちが潜む人里離れた巨大な研究施設を進んでいくことになるという。ゲームシステムはサバイバル要素強めで、弾などの物資が少なめな中、アイテムをクラフトしたり武器を改造・手入れしながらやりくりしていくそう。
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 それだけなら割とありがちだが、本作の特筆すべき点はまさにその異形、血が滴り、骨や内臓がむき出しになったリアルでグロテスクなクリーチャーデザインだろう。ホラー作品のコンセプトアーティストたちが核になっているというだけあって、すでに公開されている画像だけでも不気味でギョッとするような姿が見られる。

 しかもその上でさらに部位破壊のシステムなども入っているそうで、それによって外見がさらにズタボロになるだけでなく、場合によってはクリーチャーの行動にも影響してくるとか。武器が不具合を起こしたりすることもあるらしいので、予想外の反撃を招いた中でジャムったりしたらいろいろとヤバそう(日本で発売できるのか若干心配にもなるが)。
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 そのほかゲームエンジンにはUnreal Engine 5を採用しており、クリーチャー以外の雰囲気的なホラー演出もなかなかな感じ。さらにリアルな聴感を演出するバイノーラルオーディオシステムを組み込んでいるそうなので、視覚だけでなく聴覚でも怖がらせてくれそうだ。

メールインタビュー: ホラー映画やゲームでの経験を活かした「自分たちのホラー」を目指す

――あなたはいくつかのゲームでコンセプトアートを手がけて来ましたが、それらのプロジェクトから最も学んだことは何ですか? そして、なぜ自分たちののホラーゲームを作ろうと決めたんですか?
Max Verehin
 私たちは映画とゲームの両方でコンセプトアーティストとして幅広い経験を持っています。他のプロジェクトでの作業は、コンセプトの段階からオリジナルのアイデアへと昇華させ、ビジュアルランゲージ(※視覚的にメッセージを伝える手段)を構築し、世界を作り出すために、どのようにコンセプトの段階から考えていくかを学びましたね。

 私たちは常にホラーというジャンルに深い愛情を抱いていたんですが、最終的に自分たちのアイデアを実現し始める適切な時期が来たと感じたんです。私たちには表現したいことがたくさんあり、ホラーはそのための完璧な言語なんです。
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――薄暗いシーンなどが印象的ですが、Unreal Engine 5のライティングシステムであるLumenはこのゲームのホラーの雰囲気にどのように役立っていますか?
Max Verehin
 私たちはLumenを使って、映画のようなリアルなライティングでホラー演出を行っています。これを使うことで、プレイヤーや周囲の環境に自然に反応するライティングが可能となっています。また、ダイナミックなライティングの変化も活用していますね。部屋の電灯が明滅するとか、エリア全体の照明がガラッと変わるといった演出です。こういったテクニックはホラー的な緊張感とペース配分に欠かせません。光が変わると安心も脅かされるんです。
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サバイバル要素が強く、臨機応変に部位破壊なども狙って戦う戦闘

――戦闘システムの設計はホラーゲームにおいて最も難しい部分の一つです。一般的に強すぎるわけには行きませんが、それでもある種の強さの幻想はなきゃいけない。さらにこのゲームではサバイバル要素も含まれている。このゲームの戦闘とサバイバル要素をどのように説明しますか?
Max Verehin
 『ILL』における戦闘は重く残忍です。あなたはスーパーソルジャーではなく、脆弱なのです。弾薬は少なく、敵と遭遇するたびにまずどうアプローチするか考えるよう強いられます。むやみに撃ちまくる余地はありません。うまく計画し、状況に適応し、わずかなもので生き残る必要があります。この行動と制限の間の緊張にこそ、真のホラーがあります。
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――いくつかのホラーゲームにはクリーチャーの部位破壊システムがあります。ゲームによっては『デッドスペース』のように戦略的に使用できますが、単なる視覚的な表現に過ぎない場合もあります。このゲームではどうですか?
Max Verehin
 『ILL』では欠損は万能のメカニクスではなく、すべての敵を倒すために切断する必要があるわけではありません。敵の種類によって異なる戦闘アプローチが求められます。

 しかし特定のケースでは、特定の四肢や臓器を狙うことで戦術的な優位性を得られるだけでなく、それによって戦闘へのアプローチや敵の行動を根本的に変えることができます。そしてもちろん視覚的にも、恐ろしいほどリアルな損傷が絶えず緊張と感情的なプレッシャーを加えます。

『ILL』のテイストを理解するための5つのホラー作品

――直接影響されたかどうかに関わらず、このゲームの雰囲気を理解するのに役立つホラーゲーム/映画/小説/その他のホラーメディアを5つ挙げてください。
  1. 『遊星からの物体X』(※映画) – 奇怪な変身とパラノイアのために。
  2. 『サイレントヒル3』(※ゲーム)– 抑圧的で不快な、絶え間ない恐怖の雰囲気のために。
  3. 『関心領域』(※映画) – 見えなくともそこにあることを感じられる、恐怖を示唆するサウンドデザインの見事な使い方のために。
  4. レオニード・アンドレーエフ『紅の笑み』 (※小説) – 精神崩壊の熱狂的で幻覚的な描写のために。
  5. The Caretaker 『Everywhere at the End of Time』(※音楽アルバム)– 音が馴染みのある状態から完全に悪夢へとゆっくりと劣化していく、終わりのないホラーのために。

Mundfishをパートナーに得て、現在開発の真っ只中

――Mundfishとの交渉はいつどのようにアプローチしたんですか? なぜ彼らをパートナーとして選んだんでしょう?
Max Verehin
 彼らはすでに成功したタイトルをリリースしており、私たちが直面していた開発上の課題について深い理解を持っていたので、 パートナーの有力な候補として見ていました。

 自分たちが「これはどうすべきだろう」と自問し始めていた問題に対する回答をもう持っていたんです。そして前に進むための(資金等の)リソースだけじゃなくて解決策も持ってきてくれました。開発を拡大するためのワークフローを構築する方法とか、クリエィティブな核を維持しながらチームを拡大していくにはどうすればいいかとか。そこまでのサポートは珍しいので、答えは簡単でしたね。

――現在の開発チームの規模について教えてください。また、進行状況はどんな感じでしょう?
Max Verehin
 Mundfishと提携して以来、チームは8人から50人に増えました。初期には、適切な人材を集めてプリプロダクション(※本開発を始める前のコンセプトを固める段階)を完了するのに課題に直面しましたが、そこからはホラー業界や映像業界、ストーリー重視のゲームの開発経験などのバックグラウンドを持つ経験豊富な開発者による強力で安定したチームを構築できています。Mundfishチームからは技術的なサポートも受けていますね。

 現在はシステムのコアとビジュアルスタイルが確定し、すでに本格的な制作段階に入っていて、ゲームのあらゆる部分で積極的に開発を進めています。多くのことを達成できましたが、まだ多くのことが残っています。なかでも、最も複雑で重要な段階の一つがまさにこれから始まろうとしています。それは『ILL』のようなストーリー重視のプロジェクトにおいて極めて重要な役割を果たすカットシーンの制作です。

――発売時期について言えることはありますか?
Max Verehin
 特定のリリース時期を発表する準備はまだできていませんが、『ILL』は非常に野心的なストーリー重視のゲームであり、私たちはそれにふさわしいものにしたいと考えています。ゲームプレイシステムからシネマティックな体験まで、すべてを完璧にするために時間をかけています。ゲームが適切な状態になったと確信した際に、詳細をお伝えします。

Max Verehin

Team CloutのCEO。コンセプトアーティストとしてゲーム業界でも『Lords of the Fallen』、『Diablo II: Resurrected』、『シャドウ・オブ・ウォー』などにコンセプトアートを提供してきた。

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集計期間: 2025年06月07日22時〜2025年06月07日23時