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『ゼルダ無双 封印戦記』インタビュー。『ティアキン』ファンなら絶対に遊びたくなるようなゼルダ愛と、幅広いプレイヤー層に向けたおもてなしの精神を詰め込んだ作品

『ゼルダ無双 封印戦記』インタビュー。『ティアキン』ファンなら絶対に遊びたくなるようなゼルダ愛と、幅広いプレイヤー層に向けたおもてなしの精神を詰め込んだ作品
 コーエーテクモゲームスより、2025年11月6日に発売されたNintendo Switch 2 専用ソフト『ゼルダ無双 封印戦記』(以下『封印戦記』)。任天堂のゼルダチーム協力のもと、開発はコーエーテクモゲームスのAAAスタジオが手掛けている。

 本作は、任天堂の『
ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下『ティアーズ オブ ザ キングダム』)の過去の世界、太古の封印戦争を描く作品で、一騎当千の“無双”アクションはそのままに『ティアーズ オブ ザ キングダム』につながる新たな物語が明かされる。

 今回は、開発を手掛けたコーエーテクモゲームスと、任天堂のゼルダチームのキーマンたちにインタビューを実施。開発が始まった経緯から、採用したシステムについてなどさまざまなことをお聞きした。
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早矢仕洋介 氏はやし ようすけ

コーエーテクモゲームス所属。AAAスタジオ長。(文中は早矢仕)

松下竜太 氏まつした りょうた

コーエーテクモゲームス所属。プロデューサー。(文中は松下)

青柳公樹 氏あおやなぎ こうき

コーエーテクモゲームス所属。ディレクター。(文中は青柳)

青沼英二 氏あおぬま えいじ

任天堂所属。『ゼルダの伝説』シリーズフランチャイズスーパーバイザー。(文中は青沼)

藤林秀麿 氏ふじばやし ひでまろ

任天堂所属。シナリオスーパーバイザー。(文中は藤林)

※以下、タイトル名 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』……『ブレス オブ ザ ワイルド』 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ キングダム』……『ティアーズ オブ ザ キングダム』 『ゼルダ無双 厄災の黙示録』……『厄災の黙示録』 『ゼルダ無双 封印戦記』……『封印戦記』 [IMAGE]

ファンだからこそ遊びたい1本を

――本作が作られることになった経緯を教えてください。

早矢仕
 『ティアーズ オブ ザ キングダム』が発売され、私たちもいちファンとして遊ばせていただきました。発売日からやり込んでいき、その裏側にある物語を知っていくたびに「ああ、これは私たちに新たな『ゼルダ無双』を創れというメッセージだ!」と、ひしひしと感じまして。

 発売日の翌週には、これは絶対に『ティアーズ オブ ザ キングダム』を題材にした『ゼルダ無双』を創るべきだと、松下といっしょに企画書を作って、任天堂さんへお話を持っていくことを決めました。もうそれくらいのスピード感で進めていましたね。

松下
 前作の『ゼルダ無双 厄災の黙示録』(以下『厄災の黙示録』)も、開発スタートから終わりまで『ゼルダの伝説』チームの皆さんといっしょに開発に臨みました。約5年ぶりにまたごいっしょできるのがうれしくもあり、その関係性があったからこそ、企画当初からゲームの根幹となる部分から、最後までゲームをどう仕上げるのか密に相談することができました。

――やはりプレイしていて、“封印戦争”を“無双”で描くべきだと感じられたのでしょうか。

松下
 発売前から太古の世界が重要なキーワードになるだろうと、いちプレイヤーの視点からワクワクしていましたし、実際にプレイしてみると、やはり“封印戦争”が物語の鍵になっていました。『厄災の黙示録』も、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下『ブレス オブ ザ ワイルド』)の100年前に起きた厄災を描いています。そこに近い構図だったからこそ、これは作らせてほしい! と考えていました。

――『厄災の黙示録』は約400万本以上のヒットを飛ばしました。その結果もあったからこそ、今回につながったのでしょうか。

早矢仕
 それはもちろんあります。ただ、ゼルダファンの目線から見たときに、ファンが遊びたいと感じていただけるゲームを具体化できるのではないかと考えたことがいちばんの理由です。企画を考えているときから、もう『ティアーズ オブ ザ キングダム』のファンならば絶対に遊びたくなるタイトルになると松下とともに感じていました。

――コーエーテクモゲームスのAAAスタジオ初タイトルとなりますが、『封印戦記』きっかけで立ち上がったのでしょうか?

早矢仕
 いえ、『封印戦記』はスタジオが立ち上がる前から開発していました。AAAスタジオは、コーエーテクモゲームスの今後を考えて設立したスタジオなので、本作とは当初関係ありませんでしたが、“AAAスタジオ”を名付けたのであれば、その名に負けない1作目にしようとチーム一同で『封印戦記』の開発に臨みました。
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――なるほど。青沼さん、藤林さんはスーパーバイザーとして、どのような監修を務めていたのでしょうか?
青沼
 私は『ゼルダの伝説』シリーズ全体として、監修させていただきました。前作の『厄災の黙示録』ですとか、初代『ゼルダ無双』からのお付き合いがありますので、基本的には同じような役割を務めさせていただきました。

藤林
 私はシナリオの監修のほか、世界観の部分で『ゼルダの伝説』シリーズとの親和性や矛盾がないか見させていただきました。本作は過去に起きた“封印戦争”のお話です。それでいて、今回、新たに描かれているシーンが多々あります。

 たとえばソニアですとか、『ティアーズ オブ ザ キングダム』ではあまり活躍が描かれなかったキャラクターたちが、もしその場面になったらどういったセリフを発するだろうか? などといったことも、いっしょに考えさせていただきました。

松下
 本作はシナリオがとても重厚なタイトルです。ボリュームも大量にあるので、時間的にはとても長くお付き合いさせていただきました。

――発売からしばらく経ちましたが、プレイヤーたちの反響をどう受け止めているのでしょうか。

松下
 『ゼルダの伝説』シリーズファンの方々は、ものすごく細かい部分まで見てくれるんです。語られていないような要素まで拾ってくださって、考察を楽しんでいただいている方が多く、とてもうれしく思います。

 実際、開発チームもそういった濃いファンの方々に向けて、メッセージを散りばめるようにしていました。ただそれを見つけるスピードがものすごく早くて、驚きました。伝わらないかもしれない、と思いながらも用意した部分すらほとんど見つけてくださって、開発者冥利に尽きますね。
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――任天堂のおふたりは、今回の『封印戦記』をどう見ていますか?
藤林
 『厄災の黙示録』のときも感じましたが、任天堂が制作するアクションアドベンチャーとしての『ゼルダの伝説』だけではカバーしきれないゲーム性が、『封印戦記』の魅力かと思います。“無双”としてのアクションで表現するほうが、よりプレイヤーの皆さんに喜んでいただける部分がたくさんあるはずです。そこがうまく皆さんに届いていると思うので、私としてもうれしい限りです。

青沼
 アクションゲームがあまり得意ではない人にも遊べるタイトルになっているのがいいですよね。『ティアーズ オブ ザ キングダム』につながる物語、といった部分でストーリーを重視して楽しみたい方も多いかと思います。“無双”シリーズは、簡単操作でありながらも、アクション性の高い要素が盛り込まれている場合も多いですよね。

 そのあたりのバランスがうまく取れていて、ストレートに「おもしろい」と言っていただけるようなタイトルに仕上がっているように感じました。

藤林
 たしかに。私の周囲でも、“無双”シリーズに初めて触れたという方々が多いのですが、クリアーまで遊んでくださった方が多いんです。開発当初に『ゼルダ無双』シリーズファンの方々に喜んでいただくことはもちろん、『ティアーズ オブ ザ キングダム』から遊び始める方もいらっしゃると思うので、初心者の方にもやさしいゲームになるといいな、といった話をさせていただきました。実際に工夫してくださったおかげで、実現できているのかなと思います。

青柳
 遊び始めるハードルはグッと下げて、多くのプレイヤーの方々にクリアーまで遊んでほしいと作り込んでいきました。目標としては、『封印戦記』を最後まで遊んだあとに、もう一度『ティアーズ オブ ザ キングダム』を遊びたくなるようなタイトルを目指していました。実際にそういった声も届いているので、目標を達成できたのかなとホッとしています。

 また、画面分割でのふたりプレイだけでなく、おすそわけ通信でのふたりプレイにも対応しています。親子で遊んでいる、といった声も届いていますので、そういった部分からも間口が広く、取り組みやすいアクションゲームにできたと実感しています。
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早矢仕
 『厄災の黙示録』を経て、細かいアクション面では任天堂さんから要望はなかったのですが、我々としてはいくつか反省点がありました。そこを対応していくことで、ハードルを下げながらもアクションの深みも持たせることができました。それもあって、初心者にやさしい“無双体験”でありつつ、アクションゲーマーの皆様にも楽しんでいただける遊びを提供できたのかなと思います。

――ストーリーについて深くは語れないと思いますが、『ティアーズ オブ ザ キングダム』では本作で描かれたシナリオの、その断片が冒険のなかに散りばめられていました。『ティアーズ オブ ザ キングダム』制作の時点で、詳細を含めて封印戦争の全容は決まっていたのでしょうか。

藤林
 実際にゲーム中に語られる以外の部分も、裏設定として基本すべて決めています。そこは物語を作るうえで欠かせないので、封印戦争がどのようなものだったのか、何が起きたのかは考えていました。ですが、『ティアーズ オブ ザ キングダム』にそのすべてを詰め込んだわけではありません。

 先ほど早矢仕さんたちが「これは『ゼルダ無双』を創れというメッセージだ」と受け取った、といったお話をされていましたよね。『ティアーズ オブ ザ キングダム』を作っていたとき、『封印戦記』の開発が始まる話はありませんでしたが、『厄災の黙示録』のように、またそういった機会があったらいいなと、個人的には思っていました。

 実際にお話をいただいたときには「来たか!」と、溜め込んでいた“封印戦争”にまつわる設定やストーリーを共有させていただきました(笑)。もちろん、『封印戦記』を作るにあたって考えられた、新たな要素やオリジナルの部分も存在します。

松下
 “封印戦争”はもちろん、戦争のお話です。そこは“無双の戦場”で、あるべき姿に表現できたと感じています。加えてストーリーについても、“龍の泪”の補完に留まらず、本作をひとつのゲームとして遊んだときに、最初から最後まで新体験を楽しんでいただけるような仕掛けも用意しました。

――また、登場キャラクターの四賢者は、本作で新たに名前が付けられました。これも当初から考えられていたのでしょうか?

藤林
 ある程度考えてはいましたが、『ティアーズ オブ ザ キングダム』では、意図的に四賢者に名前を付けませんでした。裏では、どういった人物だったのかは考えていましたが、作中では立ち位置として“水の賢者”などの“名”が重要であって、キャラクター性は付けたくなかったんです。

 ですので、名前は本作の企画中に決定しました。キーワードとなるような言葉だけをヒントとしてお伝えしたり、相談したりしながら決めていった形です。それぞれの名前に由来はあるのですが、そこはプレイヤーの皆さんの想像の余地として、あえて正解を語らないでおこうと思います。
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――わかりました。ちなみに四賢者がプレイアブル化したのは、やはり『厄災の黙示録』の英傑たちが使用できたからですか?
松下
 いちばんは“仮面の下が隠されていた”ところです。知られざる歴史を知る、といった本作のテーマにおいて、本編では仮面の姿しか描かれなかったキャラクターたちの姿がわかる、というのはロマンがありますよね。操作して活躍させることでそのキャラクターたちを知っていく、という部分も“無双”シリーズの魅力でもありますので、そこともうまくマッチしたと思っています。

初心者にもやさしい無双アクション

――『ゼルダ無双』シリーズはやはりリンクが主軸にあり、ド派手な無双アクションをくり出しても、勇者リンクだからこそ違和感もなかったと思います。ただ、本作の主人公はゼルダです。アクション面なども、リンクと比べるとやや大人しめな印象もありましたが、そのあたりの調整は苦労されたのでしょうか。

青柳
 当初はリンクに負けず劣らずの、カッコいいアクションをくり出すゼルダ、という方針で作り込んでいたのですが、あまりにもキレがよすぎてちょっと違うなと、いったん白紙に戻したこともありました。ですので、おっしゃる通り今回とても苦労した要素のひとつです。

 ゼルダの基本の構えひとつ取ってもなかなか満足できるものができなくて、任天堂さんへオモチャの剣を片手にお邪魔して、「こうですか? これはどうです?」と実際にゼルダならば、剣をどう構えるのがいいか実演しながら相談もさせていただきました(笑)。

藤林
 ありましたね(笑)。私や青沼の前で、ゼルダの構え案を披露してくださって。

青柳
 そこから単に剣で戦うのではなく、神事や舞のようなイメージも取り入れて、巫女が舞うようなゼルダらしいアクションに仕上げていくことができました。ちなみに、実際にゼルダのアクションを作っていたスタッフたちも、頭を悩ませながらオモチャの剣を振って考えていたそうです(笑)。

 物語としては、王家の者として最低限の剣の素質はあったと思うんです。咄嗟にラウルから光の剣を渡され、最初こそ戸惑いの中で振るい始めますが、元の時代にいたお付きの騎士を想起することで、剣技になじんでいく……。そのあたりは物語にも取り入れることができましたし、本作の読み物としても用意しているので、苦労したぶん自信作になりました。
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――その一方で、ラウルはまさに“無双”といった感じで、主人公タイプの性能になっていると感じました。
青柳
 『封印戦記』は、ラウルの一代記のような物語だと考えています。ある意味では、ラウルも主人公なのだろうと考えて、槍でオーソドックスに戦うアクションにしています。ただ最初は少し大人しすぎたのか、藤林さんから「もっと“関羽”っぽくしてほしいです」といった要望をいただきまして(笑)。

 そこはもう我々の得意分野ですから、『
真・三國無双』シリーズに登場する三国志の無双武将の如くキレのあるアクションを、ラウルにいくつか盛り込んでいます。
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――とてもわかりやすい例ですね(笑)。また、新アクションとしてふたりで協力して放つ“シンクストライク”があります。なぜ本作で取り入れたのでしょうか?
松下
 『ティアーズ オブ ザ キングダム』の中では“手と手”が強く印象に残っています。手と手のキーワードを『ゼルダ無双』として落とし込んだ結果、協力して困難に立ち向かうアクションになりました。演出としてもキャラクターどうしがタッチするので、つながりを感じられると思います。

 前作でも協力アクション自体は可能だったかと思いますが、『ゼルダ無双』シリーズは複数のキャラクターをステージ内で使い分けながら、進めていくゲームです。ただ、ひとりひとりが文字通り“無双”できる強さを持っているので、同じ場所で戦うより、戦力を分散させたほうがステージ攻略では有利になりがちだったんですよね。

 一方で本作ではストーリーシーンだけでなく、バトル中でも“手と手”にしっかりと意味を持たせ、プレイヤーの攻略と一致させたいと考えていたので、同じ場所で戦うメリットや、同じ場所で自然と戦うことになるような仕組みを採用しています。

――発動機会は少なめながらに、組み合わせによっては特別なシンクストライクが発動したりと、なかなかリッチなシステムですよね。

青柳
 『ゼルダ無双』の特徴のひとつが、本編では描かれないような、キャラクター性の誇張です。ふたりで発動する、誇張したアクションはどのようなものがいいか、と考えながら作っていきました。また、実際に手と手を合わせる、といった部分も意識して作っているので、注目してみてほしいです。

松下
 おっしゃるように、シンクストライクは何度も連発するような技ではありません。ですから、戦いの中で“このふたりなら、どんな技が出るんだろう?”と、組み合わせの変化が長く楽しめるかと思います。毎回の戦闘の楽しみのひとつとして、用意できたのかなと。本作のプレイアブルキャラクターは手の形が違うキャラクターばかりですので、そこもちょっとした注目ポイントです。
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――シンクストライクの案を見たとき、任天堂のおふたりはどう感じられましたか?
青沼
 とてもコーエーテクモゲームスさんらしいアクションですよね。“手と手”というキーワードをしっかりと汲み取ってくださって、それをアクションに結び付けていて。とても素晴らしいアイデアだと思いました。

 しかも、シンクストライクは自分の意思で好きに発動するというより、タイミングが合ったから発動するといった機会が多いですよね。見たことがない組み合わせでシンクストライクを発動したとき「えっ、こんな技が出るの!?」と発見できたときの喜びもありました。

藤林
 開発の方々から伝わってくるのが、『ティアーズ オブ ザ キングダム』らしさを重視すること。そして、『ティアーズ オブ ザ キングダム』でありながらも、それを無双アクションにすることをつねに考えていらっしゃることでした。『ティアーズ オブ ザ キングダム』の持っていたテーマを深いところまで解釈してくださり、その過程も見させていただきました。シンクストライクは、物語性をうまく戦闘に取り入れてくださったな、とも感じました。

――さらに、本作より“ゾナウギア”がアクションに取り入れられました。『厄災の黙示録』のシーカーアイテムに近いシステムだと感じていましたが、どのように落とし込んでいったのでしょうか。

青柳
 まさしくシーカーアイテムのシステムを踏襲しつつも、属性ごとの特徴をゾナウギアに持たせていきました。燃やせそうなモノには炎を、相手が何かを投擲してくるのであれば跳ね返して……、など『ゼルダの伝説』のパズル的要素を無双アクションとして再解釈したような形です。

 シーカーアイテムと違うのは、ゾナウギアはそのギア自体を使うので、キャラクターを変えても性能が変わらないところです。『厄災の黙示録』以上に操作キャラクターが頻繁に切り換わるゲーム性としていますので、そこが変わってしまうとややこしさにつながってしまいます。

 とはいえそれではキャラクターの個性が弱くなってしまうので、キャラクターそれぞれ固有技も使えるようにして、全体をまとめていきました。
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――ゾナウギアは、もともとパーツの1個として使うといったパズルのピースのひとつのような存在です。こういった攻撃アクションになったことについて、任天堂のおふたりとしてはどんな印象だったのでしょうか。
藤林
 シーカーアイテムを利用したアクションを『厄災の黙示録』から見ていたので、ゾナウギアをどう使いたいのかはなんとなくわかっていました。ですから、ゾナウギアの持つ仕組みを“無双”だからこそのド派手なアクションにきっとうまく落とし込んでくださるだろうと、ワクワクして見ていました。

青沼
 いままで培ってきた無双アクションのシステムに、ゾナウギアがピッタリとハマっていました。遊んでいる側も理解しやすかったと思いますし、アレンジもすごく効いていて楽しかったです。まさかこんな使いかたをするとは、と驚きもありましたね。

藤林
 先に言葉だけで「このゾナウギアはこんな使いかたをしても問題ないですか?」といったことを聞かれることもあって(笑)。やはりお互いゲーム開発者ですから、ああ、たぶんこういうアクションがやりたいんだなと想像してニヤニヤしていました。

青沼
 私たちがNGを出すことはほとんどなかったですよね。

松下
 むしろ、アイデアの二手三手先まで考えてくださることもありました。「ああいう使いかたをするなら、こういうのも問題ないですよ?」みたいな。

――使いかたについての確認などは、恐る恐るの確認だったのでしょうか?

松下
 いえ、『厄災の黙示録』からNGをもらうことはほとんどなくて、むしろもっと「無双らしくしてほしい」、「どんどんやってほしい」と言っていただくことのほうが多かったので、こちらとしても思いっきり発想しよう、という心構えでした。

――やはり種類が豊富なうえに、ゾナウギアでできそうなこと、で取りまとめながらアクションにしていくのは苦労されたのでしょうか。

青柳
 とても難航しました(苦笑)。作りながら性能がどんどん変わっていったゾナウギアもありますし、表現によっては“これだと違うよね”と見直されたものもありました。

松下
 よかったのは、ゾナウギアはプレイヤーが使い込めば込むほど、素直に無双できるアクションになったことです。無双のジレンマのひとつとして、プレイヤーが無双するほど世界観とは乖離していってしまったり、強すぎる一撃であるほど、自分の活躍ではないように見えてきてしまう、という問題があります。

 強すぎるゾナウギアで無双するのではなく、プレイヤーの手でゾナウギアを使いこなして無双する。ちょっと使いどころを見極めることで活躍できる、そんな立ち位置としたことで、無双アクションとしても世界観としても納得性ができたと思います。

――ゾナウギア、固有技の属性は多々ありますが、遊んでいて感じたのは、ステージごとに属性が絞られていて、とても遊びやすかったことです。固有技、ゾナウギアはバトル中に変更もできますが、それが頻繁に起きると複雑になりそうなので。

青柳
 まさに狙っていたところです。固有技とゾナウギアのセットを何度もやらせてしまうと、テンポも悪くなってしまいますし。

――また、ウルトラハンドによる乗り物や装置を作る要素はミネルが担っていることや、スクラビルドのような“スクラアタック”も登場しますよね。

青柳
 バトルアクションをしながら乗り物や攻撃装置を作って戦うのは、無双アクションのゲームテンポには合わず、実現が難しい部分だったので、ミネルのアクションとして全力投球しました。かなりはっちゃけたアクションになりましたし、結果的にキャラクター性にもなってよかったです。実はミネルのガジェットは、いずれも『ティアーズ オブ ザ キングダム』で“試作”してから無双アクションにしたんです。同じ物が『ティアーズ オブ ザ キングダム』でも作れるので、ぜひ試してみてほしいですね。

 また、スクラアタックも同じ理由で、その場で武器を作って戦うとテンポが悪く、かつ太古の時代なのでそこまで武器の種類も登場させられません。魔物の素材を利用することで、スクラビルドの要素を部分的に再現したのが、スクラアタックです。
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おもてなしをする『ゼルダ無双』

――発売近くまで明かされていなかった、謎のゴーレムには驚きました。

松下
 驚いてほしかったので、ずっと隠していたんですよね。「謎のゴーレムです」と明かしても名前でもないですし(笑)。謎であることが彼のいちばんの個性です。また、『ティアーズ オブ ザ キングダム』の物語を知っている人にとっては、龍の泪には出てこない謎の存在が出てきた瞬間に、一気に物語がどう動くのかわからなくなる部分があって。そこを期待して登場させました。

青柳
 表の歴史は、すでにある程度は語られているわけですよね。その裏にあった知られざる物語を、謎のゴーレムとカラモたちが担っています。

――謎のゴーレムは飛行形態になって戦闘するシーンがあるのにもビックリして。

青柳
 開発中は“空の無双”と呼んでいましたね。『厄災の黙示録』にも神獣戦という、バトルがガラリと変わるシーンがあったのでそれを踏襲しつつ『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、空・地上・地下を冒険しますので、それを無双化するために、謎のゴーレムが変形して飛ぶことになりました。

松下
 『ティアーズ オブ ザ キングダム』では、皆さん空で過ごした時間が長かったと思います。何かしらの空を飛ぶ乗り物を作って飛んでいたと思うので、その体験も忘れてはいけないと思い、飛行形態になりました。

 飛行形態も謎のゴーレムの存在と同じく、やはり皆さんに驚いてほしくて取り入れました。どこからともなく現れたり、去っていったりと、飛行で移動するからこそ先の展開がわからなくなったと思います。

――物語を進めていくと、魔王軍が自分たちの陣地に攻めてくる陣地の取り合い要素がありますよね。歴史シミュレーションのようなコーエーテクモゲームスらしさを感じました。

松下
 『厄災の黙示録』のころから、オープンエアーで作られたフィールドを探索するといったシステムとは違っても、ハイラルの大地がもうひとつの主役であることは大事にしています。今回は、さらにそこに遊びを加えようと考えて“封印戦争”を題材にしているのだから、戦争感を出そうと陣地を取り合う要素が登場させました。おっしゃるようにコーエーテクモゲームスらしさもあって、自然とそうなっていきました。

 物語上でも戦ってはいますが、戦争状態なので本筋以外の場所でも戦いは起きているわけですよね。メインストーリーを描きながらも、その横でも戦っているという緊張感をマップ上で表現しつつ、プレイヤーの皆さんにも戦いに身を投じている意識を持ってもらう狙いがありました。

――冒頭に“初心者の方にもやさしく”といったお話があったように、魔王軍もそこまで急いで攻めてくるわけではなく、解決までの猶予があって適度な緊張感でよかったです。

青柳
 ありがとうございます。最初はもっと勢いのある魔王軍で、物語や装備の強化が進められなかったこともありましたね(笑)。

松下
 やはり“おもてなし”の精神と、ゲームとしての適度な緊張感はとても大事にしていたところです。

――最後に、本作をまだ遊んだことがない方々に向けて、ぜひ『封印戦記』のアピールをお願いします。

青柳
 ストーリーはもちろんのこと、Nintendo Switch 2ならではのなめらかな画面と、手触りのいいアクションで、誰にでも楽しめるゲームになりました。『ティアーズ オブ キングダム』ファンはもちろんですが、本作からでも始められるようになっているので、ぜひ遊んでみてください。

松下
 シリーズ好きの方々には、『ティアーズ オブ ザ キングダム』とのつながりをぜひ感じてほしいです。一方で、多くの方々に楽しめるように作っていますし、本作から『ティアーズ オブ ザ キングダム』にもう一度戻るのもオススメです。

早矢仕
 『ゼルダ無双』というシリーズ名は付いていますが、『ゼルダの伝説』シリーズ、“無双”シリーズを遊んだことがない人でも、本作単体で楽しめるようになっています。Nintendo Switch 2の魅力を体現するタイトルにもなったと思うので、ぜひハードをお持ちの方には手に取ってほしいです。

藤林
 『封印戦記』は“無双”が初めての人にも、多くの工夫で楽しめるようになっているのでぜひ遊んでいただきたいです。Nintendo Switch 2ではパワーアップした『ブレス オブ ザ ワイルド』、『ティアーズ オブ ザ キングダム』も遊べますし、スマートフォンアプリと連携した“ZELDA NOTES”があります。ぜひまとめて遊んでほしいです。

青沼
 松下さんが“おもてなし”とおっしゃっていましたが、本作はおもてなしの部分が行き届いていて、ゲームをただ進めているだけでいろいろなことができることをゲーム側が教えてくれます。

 説明書を読む必要もないですし、チュートリアルもゲームを順番に進めていくうちに、自然と遊びかたがわかるようになっています。プレイヤーをしっかり最後まで“おもてなし”してくれるんですよね。そこが、初心者の方々にもオススメしやすいポイントでした。

 『封印戦記』を遊んだあとに、『ティアーズ オブ ザ キングダム』を遊ぶと、また別の味わいがあると思いますので、ぜひ初めての方にはいっしょに遊んでいただけるとありがたいですね。ファンの方も、遊び終わったあとに、またリンクと冒険してみてほしいです。
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